北側斜線制限とは?関連する規制と土地を購入する際の注意点を解説

北側斜線制限とは 土地を購入する時の注意点

家を建てるために土地を購入する際には、土地に「北側斜線制限」などの制限や規則が定められていないか、あらかじめ確認することが重要です。

本記事では、北側斜線制限の基礎知識をはじめ、関連する制限や規則、北側斜線制限を守らなかった場合のリスク、北側斜線制限がある土地を購入する際の注意点などを解説します。

この記事を読むと分かること
  • 北側斜線制限と関連する制限・規制
  • 北側斜線制限を守らなかった場合のリスク
  • 北側斜線制限のある土地を購入する際の注意点
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1.北側斜線制限とは?

北側斜線制限とは、敷地の北側に接する土地の日当たりに配慮するための規制のことです。北側斜線制限のある建物は、敷地北側に接する道路の反対側の境界線か敷地北側の隣地との境界線から、斜線状に設定された建物の高さ上限を超えてはならない、とされています。

北側斜線制限とは

北側斜線制限での建物の高さの上限は、用途地域によって以下のとおり定められています。

用途地域による北側斜線の高さ

用途地域 建物の高さ上限
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
5m+(敷地北側からの水平距離×1.25)m
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
10m+(敷地北側からの水平距離×1.25)m

上記以外の用途地域には、北側斜線制限の規制はありません。

参考:“建築基準法”. e-Gov法令検索. (参照2024-03-29)

北側斜線制限のある建物では、北側斜線の外側にはみ出す部分に傾斜をつけて、北側隣地の日当たりを妨げないようにします。

例えば、中高層住居専用地域などで、北側がルーフバルコニーになっているマンションなどがよく見られます。これはデザインとして傾斜をつけているのではなく、北側斜線制限を守りつつ、可能な限り容積率(敷地面積に占める建物の延床面積の割合)を満たせるよう建物を建てるために採用された構造なのです。

2.北側斜線制限と併せて知っておきたい制限・規制

日陰を作る住宅模型

北側斜線制限と併せて知っておきたい制限や規制には、主に以下が挙げられます。

  • 隣地斜線制限
  • 道路斜線制限
  • 日影規制

2-1.隣地斜線制限

隣地斜線制限とは、隣地にある建物での採光・通風の確保を目的とした制限のことで、主にオフィスビルやマンションが規制を受けます。

具体的には、20mまたは31mを超える部分についての高さ制限であり、用途地域によって斜線の勾配が以下のとおり定められています。

用途地域 高さ 斜線の勾配
一種中高層住居専用地域 20m以上の場合
※特定行政庁が都市計画審議会で指定した場合、31m以上
1.25
※特定行政庁が都市計画審議会で指定した場合、2.5
二種中高層住居専用地域
一種住居地域
二種住居地域
準住居地域
用途地域の指定のない区域
近隣商業地域 31m以上の場合 2.5
商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域

参考:“建築基準法 第五十六条(建築物の各部分の高さ)”. e-Gov法令検索. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

例えば、住居系用途地域では、20m以上の高さを超える部分が1.25の斜線勾配に制限されます。

ただし、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域では、建物の高さがもともと基準の高さより低い10mや12mで制限されているため、隣地斜線規制を受けることはありません。

2-2.道路斜線制限

道路斜線制限とは、道路の日当たりなどを確保するために、道路幅をもとに道路に面した建物の高さを制限する規定のことです。

道路から一定の距離(適用距離)を空けると制限がなくなりますが、その距離は容積率によって以下のように変動します。

<住居系用途地域の適用距離>

用途地域 容積率 適用距離
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域(※)
第二種中高層住居専用地域(※)
田園住居地域
第一種住居地域(※)
第二種住居地域(※)
準住居地域(※)
20/10以下 20m
20/10超え、30/10以下 25m(20m)
30/10超え、40/10以下 30m(25m)
40/10超え 35m(30m)

(※)で示した特定行政庁指定区域については、( )内の値を適用する

なお、上記は住居系用途地域の適用距離のみを取り上げたものであり、商業系や工業系の地域などでは別の適用距離が設定されています。

また、道路と敷地のルールに関しては「接道義務とは?知っておくべき道路と敷地のルールと売買時の注意点」で解説しているので、ぜひご一読ください。

2-3.日影規制

日影規制とは、日照時間が最も短い12月22日ごろの冬至の日の午前8時から午後4時(北海道では午前9時から午後3時)を基準に日影が一定時間以上発生しないよう、建物の高さを制限する規定のことです。正式には「日影による中高層の建築物の高さの制限」といいます。この制限により周囲の日当たりを確保し、心地良い暮らしを維持することが可能です。

日影規制

制限を受けるかどうかは、建物の高さと用途地域をもとに決められます。

例えば、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域、用途地域の指定のない区域の一部では、「軒の高さが7m超えの建物もしくは地階を除く階数が3階以上の建物」が対象です。それ以外の地域については、「高さが10mを超える建物」などが対象になります。

また、日影規制の対象となる用途地域は、主に第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域といった住居系用途地域のほかに、近隣商業地域や準工業地域、用途地域の指定のない区域です。このうち、地方公共団体が条例で指定する区域内にあり、建物の高さなどの条件が該当する建物に適用されます。

参考:“日影規制の概要(建築基準法第56条の2)”. 国土交通省

2-3-1.北側斜線制限と日影規制の違い

北側斜線制限は建物の北側に適用される高さ制限であり、日影規制は建物により日影が生じる時間の上限を定めた規制です。

なお、北側斜線制限が隣地斜線制限、道路斜線制限、日影規制のいずれかと重ねて指定されている場合は、より厳しい条件となるものが適用されます。

3.北側斜線制限を守らなかった場合に生じるリスク

日陰になった一軒家

北側斜線制限を守らなければ、隣家の日当たりが悪くなったり、周囲の人々の不満を引き起こしたりして、近隣住民との人間関係が悪化する恐れがあります。場合によっては、近隣住民から訴訟を起こされることも考えられます。

このほかに、北側斜線制限は建築基準法に基づく規制であるため、違反により建築許可が下りなくなる事態も考えられるでしょう。建築許可が下りなければ、建物を建てることもできません。

さらに、建築許可が下りた時点では北側斜線制限を守っていたとしても、工事途中で仕様を変更して北側斜線制限違反となった場合には、違法建築となり取り壊し命令を受ける恐れもあります。

また、北側斜線制限を守らないと以下のような罰金が科されることがあります。

対象者 内容
建築基準法に基づく確認・検査義務に違反した者 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
特定行政庁の工事施工停止命令または措置命令に違反した者 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

出典:“建築基準法第七章 罰則”. e-Gov法令検索. (参照2024-03-29)

なお、罰則の対象となるのは主に設計者や工事施工者ですが、建築主(家を建てる方)の行為によって発生したとみなされた場合には、建築主も処罰の対象となるため、十分に注意が必要です。

無用なトラブルを引き起こさないためにも、北側斜線制限を守ることが重要です。

4.北側斜線制限がある土地を購入する際の注意点

売地

前述のとおり、北側斜線制限では北側斜線の外側にはみ出す部分に傾斜をつけて、建物の高さを制限します。2階建て住宅で制限がかかるケースは少ないと考えられますが、3階建てだと制限にひっかかる可能性があります。

3階建て以上の住宅を希望する方は、購入予定地に北側斜線制限があるかどうかを確認しておくとよいでしょう。併せて、日影規制の有無についても調べておくと安心です。

ご近所トラブルを避け、気持ち良く新生活をスタートするためにも、住宅建築予定地の制限・規制などは正しく把握しておくことが大切です。

まとめ

住宅を建てる土地には、さまざまな制限や規則があります。北側斜線制限は、北側の隣地に建つ住宅の日当たりに配慮するための規則であり、これを守ることで近隣住民とのトラブルを防げるでしょう。

北側斜線制限により、住宅のデザインを一部変更する必要が出てくることも考えられます。建築基準法に違反して建てた住宅は、違法建築として解体を求められる場合があるため、事前に法律や規則を確認し、遵守することが大切です。

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