準工業地域とは?制限やメリット・デメリット、調べ方について解説

準工業地域とは 制限やメリットを解説

準工業地域は、都市計画法に定められた用途地域の一種です。住宅、商業施設、オフィスビル、工場などが混在し、「主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域」と定義されています。

本記事では、準工業地域の概要や制限、メリット・デメリットのほか、用途地域の調べ方などを解説します。

この記事を読むと分かること
  • 準工業地域の基礎知識
  • 準工業地域における制限
  • 準工業地域のメリット・デメリット
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1.準工業地域とは?

準工業地域とは、都市計画法によって定められた用途地域(使い道が指定されているエリア)の一種です。住宅、商業施設、公共施設、オフィスビルなどと混在する形で、軽工業の工場やサービス施設が置かれている地域を指します。

この地域には、工場やそれに連なる関連施設を建てることができますが、一方で危険性が高い工場や環境を著しく悪化させる工場を建てることはできません。例えば、火薬やガスといった危険物を大量に取り扱うタイプの工場の建築は認められていません。

法律上、準工業地域は「主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域」と定義されています。イメージとしては、昭和以前から続いている町工場街や職人街が近いでしょう。

参考:“都市計画法 第九条”. e-Gov法令検索

用途地域について、詳しくは「用途地域とは?全13種類の特徴と、併せてチェックすべきポイントについて解説」の記事もご覧ください。

1-1.工業地域・工業専用地域との違い

用途地域は、以下の3つのカテゴリに大別できます。

  • 住居系
  • 商業系
  • 工業系

「準工業地域」が属する工業系の用途地域は、「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」の3種類に分けられます。

141_1

工業地域とは、あらゆる工場の建築が認められている地域を指します。準工業地域で禁止されている危険物を大量に取り扱う工場、環境を損なうリスクが高い工場も建てることができます。

また、工場・工業系施設だけではなく、戸建て住宅やマンション、小売店や飲食店といった店舗の建築も認められていますが、学校、病院、宿泊施設、劇場などを建てることはできません。また、店舗系の施設でも規模が大きいものは禁止されています。

工業専用地域とは、あらゆる工場を建てることが可能ですが、住宅類の建築は一切認められていない地域です。その名称が示すように工業目的に特化しており、工業系の用途地域では唯一、居住のために使うことができません。

また、工業専用地域はその他の建物も厳しく規制されており、工業地域で禁止されている建物に加えて、飲食店や大半のレジャー施設も建築不可です。教会、保育所、自動車教習所、カラオケボックスなど、一部の施設のみ許可されています。

1-2.準工業地域に建てられる建物

準工業地域に建てられる建物、禁止されている建物は下記のとおりです。

<建てられる建物>
  • 住宅(戸建て、マンション、下宿など)
  • 店舗兼事務所兼住宅(一定規模以下)
  • 幼稚園、保育所
  • 小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校
  • 病院
  • 老人ホーム、身体障がい者福祉ホーム
  • 老人福祉センター、児童厚生施設
  • 寺院、神社、教会
  • 図書館
  • 診療所、公衆浴場
  • 交番
  • 店舗
  • 事務所
  • 自家用倉庫、営業用倉庫
  • ホテル、旅館
  • ボーリング場、スケート場、ゴルフ練習場
  • プール
  • 劇場、映画館
  • カラオケボックス
  • パチンコ店
  • 自動車教習所
  • 建築物に附属した自動車車庫
  • ガソリンスタンド
  • 自動車・自転車修理工場(一定規模以下)
  • 工場(危険性や環境を悪化させる可能性が低い~やや高いもの)
  • 危険物の貯蔵量・処理量が少ない~やや多い施設 など
<禁止されている建物>
  • 工場(危険性や環境を悪化させる可能性が高いもの)
  • 危険物の貯蔵量・処理量が多い施設 など

このように大半の建物を建てられるので、準工業地域は比較的暮らしやすいエリアといえるでしょう。

2.準工業地域の制限

家とメジャー

準工業地域の建物には、主に以下のような制限が設けられています。

  • 建ぺい率
  • 容積率
  • 高さ制限
  • 日影規制
  • 斜線制限

各種制限の内容や注意点をまとめました。

2-1.建ぺい率

建ぺい率とは、建物を真上から見たときの面積(土地面積に対する建築面積)の割合のことです。準工業地域の場合、原則として「50%」「60%」「80%」の3段階で設定されています。

準工業地域での建ぺい率は他の工業系の用途地域に比べて上限値が高いため、敷地に対して、比較的大きな建物を建てることが可能です。

141_2(建ぺい率)

2-2.容積率

容積率とは、土地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。準工業地域では、「100%」「150%」「200%」「300%」「400%」「500%」の6段階で設定されています。

こちらも工業系の用途地域において上限値が最も高いため、階数が多いマンションを建築しやすく、限られた土地を有効活用することが可能です。

141_3(容積率)

2-3.高さ制限

高さ制限とは、建築物の高さを規制するルールです。隣接する建物の通風性や採光性を確保するため、守るべき高さの上限値が定められています。

規制内容は自治体によって異なりますが、準工業地域は高さ制限自体が設けられていないケースも少なくありません。ただし、後述の日影規制・斜線制限も高さに関連しているので、そちらも併せて遵守することが求められます。

2-4.日影規制

日影規制とは、近隣の日照を確保して住環境を守るためのルールです。冬至の日(12月22日頃)をベースに、一定時間きちんと日が当たるよう、建築物の高さに制限が設けられています。

準工業地域の場合、高さ10mを超える中高層建物が規制対象となります。日影の発生が許容される制限時間は、下記のとおりです。

敷地境界線からの範囲 制限時間
敷地境界線から5~10mの範囲 4時間または5時間
敷地境界線から10m超の範囲 2.5時間または3時間

※いずれも冬至の日の8時から16時の間

物件の資料やデータでは、以下のような形式で表記されます。

制限時間〇-〇h/測定した地面からの高さ〇m(例:5-3h/4m)

なお、地域によって日照時間や環境は異なるため、日影規制の内容も異なります。

2-5.斜線制限

準工業地域には「道路斜線制限」と「隣地斜線制限」の2種類があります。どちらも通風性や採光性を守るためのルールですが、前者は敷地に接する道路、後者は隣地が対象です。

具体的な制限内容を表形式でまとめました。

種類 制限内容
道路斜線制限 適用距離(※1) 20m、25m、30m、35m
勾配(※2) 1:1.5以下
隣地斜線制限 立ち上がり(※3) 31mまたは適用なし
勾配 1:2.5以下または適用なし

(※1)適用距離:前面道路の反対側の境界線からの一定距離
(※2)勾配:傾斜の比率
(※3)立ち上がり:制限対象の起点

3.準工業地域のメリット

生活圏

準工業地域の主なメリットは、以下のとおりです。

  • 利便性が高い
  • 土地価格が安い
  • 日照条件が良い

不動産売却でもアピールできるポイントなので、ぜひ押さえておきましょう。

3-1.利便性が高い

準工業地域は、建てられる建物の種類が多いのが特徴です。住宅や飲食店、商業施設はもちろん、各種学校、病院、宿泊施設、レジャー施設などの建築も認められています。

普段の暮らしに役立つ施設が集まりやすいうえ、幹線道路も近くにあるケースが多いので、生活の利便性は高いといえるでしょう。

3-2.土地価格が安い

準工業地域に該当する土地は、土地価格が比較的安い傾向にあります。健康面や環境面のリスクがある工場を建築できるため、住居系・商業系の用途地域よりややニーズが少ないからです。

一方で、土地価格の安さに反して利便性にも優れているので、コストパフォーマンスにこだわりたい方や、より大きい土地を購入したい方には、有力な選択肢の一つになるでしょう。

3-3.日照条件が良い

準工業地域には日影規制や斜線制限が設けられているため、日当たりがしっかり確保されている点もメリットです。部屋が明るくなりやすい、洗濯物が乾きやすいといったメリットを享受できるので、住環境の向上につながります。

さらに、日照条件の良さをアピールすれば、売却や賃貸運用にも良い影響が出るため、資産価値の観点から考えても、大きなメリットといえるでしょう。

4.準工業地域のデメリット

一方、準工業地域には以下のようなデメリットもあります。

  • 騒音や異臭が発生しやすい
  • 土壌汚染のリスクがある

メリットと併せてデメリットも確認しておきましょう。

4-1.騒音や異臭が発生しやすい

準工業地域の工場は比較的安全ですが、それでも機械の稼働音による騒音や薬品による異臭などが生じる可能性はあります。

また、飲食店、商業施設、レジャー施設、倉庫など、多くの方々が集まる施設があるため、たとえ近隣に工場がなくても、騒音や異臭の発生リスクは比較的高いといえるでしょう。

4-2.土壌汚染のリスクがある

準工業地域の工場でも、一定のルールに基づき危険物を取り扱うケースはあります。その結果、土地が汚染されてしまうと、健康被害を引き起こしかねません。

汚染の有無は見た目だとわからないため、不動産の取引後に大きなトラブルになる可能性も否定できません。準工業地域の不動産の売却を検討している場合には、事前に土壌汚染調査を行ないたいところです。

5.準工業地域|用途地域の調べ方

PCと女性

不動産売買を検討している場合、あらかじめ用途地域の種類を調べておけば、建築計画や交渉のシーンで役立ちます。

用途地域の主な調べ方を、以下の表にまとめました。

調べ方 概要
用途地域マップ 都道府県・市町村を選択するだけで、用途地域の種類・位置・範囲などを調べることができる。国土交通省の情報をベースに作成されているが、最新情報が反映されていない可能性もある。
自治体 自治体によってはホームページで用途地域の情報が公開されている。
また、役所の土木建築課の窓口に行って調べたり、電話で質問したりすることも可能。
国土数値情報ダウンロードサイト 国土数値情報の用途地域データは、地域別に整理されており、ダウンロードが可能。
ハウスメーカー・不動産会社 ハウスメーカーなどの住宅建築会社や不動産会社も用途地域の情報を押さえているため、担当者に質問する。

まとめ

準工業地域とは、住宅や店舗のような一般的な建築物に加えて、軽工業の工場やサービス施設が置かれている地域です。工業系の用途地域のなかでは、建てられる建物の種類が最も多く、利便性やコストパフォーマンスに優れています。

しかし、騒音、異臭、土壌汚染といったリスクも抱えているため、不動産売買の際には注意しなければなりません。用途地域マップや各自治体のホームページで用途地域を調べることができるため、事前に確認しましょう。

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