退去費用の相場とは?貸主・借主の負担や高額請求されやすいポイントを解説

退去費用の相場とは 貸主と借主の負担割合は?

退去費用の相場は、居住年数や間取り、補修箇所といった要素によって変動します。さらに、貸主と借主の負担割合も、状況によって異なるため注意が必要です。

本記事では、退去費用の概要をはじめ、条件ごとに異なる退去費用の相場、貸主と借主が負担する範囲、高額請求されやすいポイントなどについて詳しく解説します。

この記事を読むと分かること
  • 条件によって異なる退去費用の相場
  • 退去費用における貸主と借主の負担範囲
  • 退去費用で高額請求されやすいポイント、退去費用を抑える方法
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1.そもそも退去費用とは?

退去費用とは、一般的に賃貸物件を退去する際にかかる修繕費用のことです。

多くの場合、退去が決定すると管理会社による物件状況の確認が行なわれ、退去の1ヵ月後までに退去費用が決定します。

退去後の修繕は、次の入居者募集に向けて実施されるものですが、修繕の内容によっては、これまで居住していた借主が修繕費用を負担しなければならないケースもあるでしょう。

退去後の修繕費用には、主に物件の原状回復費用とハウスクリーニング費用が含まれています。

1-1.原状回復とは?

原状回復とは、借主が入居していた部屋を、入居前の状態に戻すために必要な修繕や補修のことです。

借主が入居時に敷金を支払っている場合には、敷金が原状回復費用にあてられます。

しかし、借主が負担するべき傷や汚れが敷金で修繕・補修しきれない場合は、退去後に追加で原状回復費用を請求されるケースもあるでしょう。

退去時に借主の負担でどこまで原状回復する義務があるのかについては、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で確認できます。

1-2.ハウスクリーニングとは?

ハウスクリーニングとは、一般的な清掃では落とせない汚れを落とすために、専門会社によって実施される清掃サービスのことです。

ハウスクリーニング費用は、原則として原状回復費用の一部として扱われることが多いです。また、敷金の代わりに「退去時のクリーニング代」として、入居時にハウスクリーニング費用を預けることもあります。

ハウスクリーニングの対象になりやすい清掃箇所は、主に以下のとおりです。

  • キッチン
  • トイレ
  • 浴室
  • エアコン
  • ベランダ
  • 壁紙(張り替えも含む) など

ハウスクリーニングの費用について詳しく知りたい方は、「ハウスクリーニング相場はいくら?場所別の費用相場と安くおさえるコツ」もご覧ください。

2.敷金やクリーニング代を支払っていても退去費用は必要?

前述のとおり、退去費用(原状回復費用+ハウスクリーニング費用)には、入居時に支払った敷金があてられるのが一般的です。

退去費用が敷金より安く収まった場合は、退去費用を支払う必要はなく、通常は残った差額が返金されます。

一方で、退去費用が敷金より高くなった場合は、追加で退去費用を支払う必要があります。

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なお、敷金なしの物件に入居していた場合は、ほとんどのケースで退去費用が発生し、敷金ありの物件に比べて、退去時の費用負担が大きくなりやすい点に注意しましょう。

3.退去費用の相場を左右する要素

引越し後の部屋

退去費用は、借主が退去したあとにどの程度の修繕や補修、クリーニングが必要なのかによって上下します。

例えば、長く住めば修繕箇所が増えて退去費用が高くなりやすく、間取りが広い物件は修繕箇所が多く退去費用もかさみやすい傾向にあります。

本章では、「居住年数」「広さ・間取り」「補修箇所」といった要素別に、退去費用の相場を紹介します。

3-1.居住年数

長く住めば住むほど、修繕が必要な箇所自体は増えていきます。しかし、長期的に住むことによって生じる傷や汚れは「経年劣化による自然消耗」とみなされ、原状回復費用は貸主の負担となるケースが多いです。

一般的には、6~8年ほど住むことで、経年劣化による自然消耗が認められて退去費用が安くなるとされています。

なお、経年劣化による自然消耗の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 壁に残った画鋲やピンの跡
  • 家具・家電を置いていた部分の床のへこみ
  • 太陽光による壁紙、フローリングなどの日焼け
  • エアコンの内部の汚れ
  • 耐用年数超過後の設備の故障

3-2.物件の広さ・間取り

広く、部屋数が多い物件では、退去費用も高くなる傾向にあります。ただし、一つの要素から退去費用が決まることはないため、物件の広さと退去費用は必ずしも比例するとは限りません。

物件の広さ(平米数)や間取りによる退去費用の相場は、以下のとおりです。

【広さ】
面積 退去費用(目安)
15~20平米 4万円~6万円
21~30平米 4万円~7万円
31~40平米 7万円~9万円
41~50平米 7万円~9万円
51~60平米 7万円~9万円
61~70平米 8万円~9万円
71~80平米 8万円~10万円
81~90平米 9万円~10万円
91平米以上 9万円以上
【間取り】
間取り 退去費用(目安)
ワンルーム、1K 2万円~3万円
1DK、1LDK 3万円~5万円
2DK、2LDK 5万円~8万円
3DK、3LDK 7万円~11万円
4DK、4LDK以上 9万円以上

3-3.補修箇所

居住年数や広さに関係なく、補修や清掃が必要な箇所が増えるほど、退去費用は高くなります。

補修箇所ごとの費用相場は、以下のとおりです。

補修箇所 費用(目安)
トイレの水アカ、カビ 5,000円~1万円
浴室の水アカ、カビ 5,000円~2万円
キッチン周辺の汚れ 1万5,000円~2万5,000円
床の補修 2万円~5万円
壁や天井ボードの張り替え 2万円~6万円
床材の張り替え(1枚当たり) 8,000円~1万5,000円
壁紙クロスの張り替え(1平米当たり) 800円~1,000円

4.退去費用を借主が全額負担する必要はない

内見の風景

退去費用は原則、貸主と借主で負担するものであり、借主が全額負担する必要はありません。退去費用の負担割合には決まりがあり、国土交通省のガイドラインに記載されています。

一般的に、通常使用にともなう各箇所の傷や経年劣化などは、貸主が負担するべき部分です。一方の借主は、主に故意や過失で付けた傷や汚れの修繕費用を負担します。

参考:“原状回復をめぐるトラブルとガイドライン”. 国土交通省

本章では、貸主と借主、それぞれの負担になりやすい箇所のほか、注意すべき賃貸契約時の特約について紹介します。

4-1.貸主の負担になりやすい部分

経年劣化による傷や汚れの補修のほか、古くなったデザインや設備のグレードアップなどを図る場合は、基本的に貸主の負担になります。

物件の傷や汚れ、劣化のうち、貸主の負担になりやすい部分には、以下のようなものが挙げられます。

  • フローリング、畳、壁紙の日焼け
  • 家具の設置跡
  • 通常使用による凹みや傷
  • 家電製品の背面壁の電気焼け
  • エアコン設置による設置跡やビス穴
  • 時計設置などによる軽度の穴
  • 破損や紛失以外の鍵の交換
  • 設備や機器の寿命による故障
  • 自然災害による破損 など

4-2.借主の負担になりやすい部分

通常使用の範疇を超えた傷や汚れの補修のほか、清掃などの管理を怠ったことによって発生した損耗の補修などは、借主の負担となります。

借主の負担になりやすい傷や汚れには、以下のようなものが挙げられます。

  • 紛失や破損による鍵の交換
  • 壁や床の腐食
  • 壁紙の傷や落書き
  • フローリング、畳、カーペットの傷や汚れ
  • タバコのヤニ汚れ、臭い、焦げ跡
  • オイルや線香などの臭い
  • ペットの臭いや汚れ、傷
  • ドア、障子、網戸の傷や破損
  • 窓周辺や水回りのカビ
  • 清掃を怠ったことによるキッチンの油汚れやスス汚れ など

4-3.賃貸契約時の特約に注意

入居時に結んだ賃貸契約に特約が設けられている場合、退去費用が高額になる可能性がある点に注意しましょう。

特約とは、契約内容に追加されるオプションのようなもので、契約を結んだ時点で内容に同意したものとみなされます。

ただし、明らかに借主に不利となる特約や、法外な内容の特約は無効になるケースもあります。

退去費用をめぐる交渉では、入居時の賃貸契約に以下のような特約が付けられていないか、付いている場合は理不尽な内容となっていないか確認しましょう。

  • 通常、貸主負担となる退去費用が借主負担にされていないか
  • 敷金から所定の金額が差し引かれる「敷引き特約」が付いていないか

5.退去費用で高額請求されやすいポイントとは?

壁紙の剥がれ

退去費用の請求で特に高額になりやすい部分としては、以下の4点が挙げられます。

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  • DIYによる傷
  • カビ汚れ
  • ペットの臭いや傷
  • タバコのヤニ汚れや臭い

5-1.DIYによる傷

壁に釘やネジなどによる大きな穴があると修繕費用がかさみやすく、退去後に高額な修繕費用を請求される可能性があります。

また、DIYの材料などを置いていた床に、跡や塗料などが付いていると、床の張り替え費用が借主負担となる可能性があります。

賃貸でDIYを楽しむ場合は、賃貸向けの部材を使用するなど、家に傷を付けない配慮が必要です。

5-2.カビ汚れ

窓周辺の結露から発生するカビや、水漏れの放置などによるカビは、壁や床の内部まで腐食している場合もあり、費用がかさむ傾向にあります。

カビによる傷みは、通常使用の範囲を超えているものと判断されやすく、借主負担となるケースが多い点に注意しましょう。

カビが発生しやすい部分は、あらかじめ対策し、物をたくさん置かないようにしたり、日頃からこまめに清掃を行なったりすることが大切です。

5-3.ペットの臭いや傷

ペットの臭いが残っている場合、脱臭や除菌といったクリーニング費用が発生する可能性があります。

壁、柱、床、ドアなど、傷が広範囲にあると、修繕費用も高額になりやすい点に注意しましょう。

上記のことから、ペット可物件では、あらかじめ敷金が高めに設定されている場合もあります。

5-4.タバコのヤニ汚れや臭い

タバコのヤニ汚れや臭いがひどく、壁紙の張り替えが必要になると、修繕費用が高額になります。

例えば、6畳の部屋の壁と天井(合計40平米ほど)の壁紙交換が必要な場合、1平米当たり約1,000円の費用がかかり、全体で約4万円の費用が追加されることになります。

タバコによる汚れは、通常使用の範囲を超えているものと判断されやすく、基本的に借主の負担となるため、賃貸物件では喫煙の場所や方法を工夫することが大切です。

6.退去費用を抑えるためのポイント

賃貸借契約書

退去費用を抑えるには、入居の段階から退去時の修繕を想定しておくことが大切です。最後に、賃貸物件の退去費用を抑えるためのポイントを解説します。

6-1.退去費用に関する契約内容とガイドラインをよく確認する

入居の際は契約書類に必ず目を通し、退去費用について不明な点があれば管理会社に相談しましょう。

禁止事項を破って部屋を使用してしまうと、退去後の費用請求が高額になりやすい点に注意が必要です。

また、賃貸契約書の退去費用に関する部分で「借主負担」と記載されている場合でも、納得できない内容があれば、国土交通省のガイドラインと照らし合わせて確認しましょう。

参考:“原状回復をめぐるトラブルとガイドライン”. 国土交通省

6-2.入居前の状態を確認・記録しておく

入居前の部屋の状態を確認し、もともとある傷を写真やメモで記録しておくことで、退去費用の交渉に役立ちます。

退去の際、身に覚えのない費用を請求されることを防ぐためにも、入居時は部屋の状態を細かくチェックしておきましょう。

物件によっては、入居後すぐに「現況確認書(入居時チェックリスト)」の提出を求められる場合もあります。こうした物件では、入居時にもともとある傷の申告が可能です。

入居時の状況を正しく把握してもらうための対応が可能かどうか、入居時に不動産会社に確認しましょう。

6-3.定期的な掃除を行なう

日頃から掃除を行ない、部屋をきれいに保つことで退去時の費用負担を軽減できます。

特に、カビやシミなどは放置することで除去が困難となり、退去の際に追加のハウスクリーニング代を請求されやすいポイントです。

また、設備類に故障が見られた場合、借主に過失があれば修理や交換費用が借主負担となる可能性もあります。

備え付けのエアコンや食洗機など、設備類の定期的な手入れも欠かせません。

6-4.管理会社に相談・交渉する

管理会社との立会時や、退去費用の請求書を受け取った際に、退去費用について相談・交渉することも可能です。

あまりに高額な請求がきた場合や、費用の内訳が知らされていない場合などは、退去費用を支払う前に管理会社に連絡しましょう。

不明点や納得できない点、入居時に控えていた記録などをまとめておくと、交渉をスムーズに進められます。

まとめ

退去費用は、大きく分けて物件の原状回復費用とハウスクリーニング費用からなります。退去費用の相場は2万円~9万円以上と幅があり、居住年数や広さ、補修箇所の多さなど、さまざまな要素により金額が変動します。

住み始める段階から、物件を丁寧に扱う意識を持つことで退去費用を抑えましょう。

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