住宅ローン控除には確定申告が必要!必要書類や還付金について詳しく解説

住宅ローン控除 申請方法・還付金について解説

住宅ローンを借り入れてマイホームを新築、購入、増改築した場合には、住宅ローン控除を利用できます。ただし、住宅ローン控除を受けるには、確定申告や年末調整が必要で、手続きに不安を感じる方もいるでしょう。

そこで本記事では、住宅ローン控除の概要や適用要件、1年目と2年目の申請方法、還付金などについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • 住宅ローン控除の控除額
  • 確定申告、年末調整で住宅ローン控除を申請する方法
  • 住宅ローン控除で受けられる還付金
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1.そもそも住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除の書類

はじめに、住宅ローン控除の概要のほか、具体的な控除額や建物の環境性能、適用要件について解説します。

1-1.住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した際に、所得税の負担が軽減される制度です。新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に加え、省エネ設備やバリアフリーなどの改修工事(リフォーム)にも適用されます。

住宅ローン控除は正式名称が「住宅借入金等特別控除」で、「税額控除」の一種です。税額控除とは、その年の課税所得金額に所得税率をかけた所得税額から一定額を差し引くものです。

もう一つの控除の方法である「所得控除」は、収入から経費などを引いた所得金額から一定額を差し引くものです。一般的に、所得控除よりも税額控除のほうが、大きな節税効果が見込めます。

ただし、住宅ローン控除を受けるには、2025年12月末までに購入した物件に入居することが要件です。新築住宅を購入した際、住宅の環境性能によっては住宅ローン控除が適用されない場合もあるので注意しましょう。

1-2.住宅ローン控除の控除額とは?

住宅ローン控除では、原則「年末時点の住宅ローン残高に対して0.7%」が所得税額から控除されます。

所得税額から控除しきれない分は、翌年の住民税額から控除される仕組みです。住民税の場合は、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9万7,500円)の範囲内で控除されます。

ただし、入居した年と住宅の性能により、借入限度額、合計最大控除額、控除期間が異なります。2022年・2023年に入居、2024年・2025年に入居した場合の、借入限度額、合計最大控除額、控除期間は次のとおりです。

新築/既存等 住宅の環境性能等 借入限度額
(合計最大控除額)
控除
期間
2022年・2023年入居 2024年・2025年入居
新築住宅
買取再販
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 5,000万円
(455万円)
4,500万円
(409.5万円)
13年間
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円
(409.5万円)
3,500万円
(318.5万円)
省エネ基準適合住宅 4,000万円
(364万円)
3,000万円
(273万円)
その他の住宅 3,000万円
(273万円)
0円(※)
(140万円)
既存住宅 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円
(210万円)
10年間
その他の住宅 2,000万円
(140万円)

(※)2023年末までに新築の建築確認を受けた住宅に2024年・2025年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年間

参考:“住宅ローン減税の概要について(令和4年度税制改正後)”. 国土交通省
“住宅ローン控除について知りたい”. 公益財団法人 生命保険文化センター. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

1-3.住宅ローン控除額の計算方法

上記にある合計最大控除額は、あくまで最大値であり、実際の控除額は異なります。これは、下記のうち少ない金額が控除されるからです。

  1. 1年間の最大控除額
  2. 年末時点の住宅ローン残高×0.7%

例えば、2023年末までに認定長期優良住宅を購入・入居した場合、合計最大控除額は455万円です。控除期間(13年)をもとに、年間の最大控除額に換算すると、455万円÷13=35万円となり、最大で35万円(1)が控除される計算になります。

ただし、年末の住宅ローン残高が3,000万円だった場合、控除額は3,000万円×0.7%=21万円(2)となります。

この場合、(1)(2)を比較したうえで、金額が少ない21万円(2)が控除可能額になります。

所得税が7万円、住民税が15万円と仮定すると、上記の21万円(2)のうち、所得税(7万円)から控除しきれない額(14万円)については、所得税の課税所得金額等の5%(上限9万7500円)の範囲内で、住民税から控除できます。

つまり、最終的な控除額の合計は、所得税(7万円)+住民税の控除上限(9万7500円)=16万7,500円となります。

住宅ローン控除額の計算方法

そして、実際の控除額をもとに税金の支払い額を算出すると、(所得税7万円+住民税15万円)-16万7,500円=52,500円となり、これが住宅ローン控除後の住民税額になります。

住宅ローン控除額の計算方法

参考:“No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁
“住宅ローン減税の概要について(令和4年度税制改正後)”. 国土交通省. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

1-4.住宅ローン控除に関係する、建物の環境性能とは?

前述のとおり、住宅ローン控除では所有する住宅の環境性能により、借入限度額、合計最大控除額、控除期間が異なります。住宅ローン控除を受けるには、自宅の環境性能がどの種類に該当するか、あらかじめ調べる必要があります。

まず、基本的な環境性能の種類、住宅の特徴は次のとおりです。

環境性能の種類 特徴
認定長期優良住宅
  • 「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づく「認定長期優良住宅」の基準を満たした住宅
  • 長期間の使用を想定した構造や設備、空気や温熱などの環境、自然災害への配慮などの措置を講じた住宅
認定低炭素住宅
  • 「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく低炭素建築物に該当する住宅、および低炭素建築物とみなされる特定建築物に該当する住宅
  • 二酸化炭素の排出を抑制し、省エネ基準を超える省エネ性能がある
ZEH水準省エネ住宅
(特定エネルギー消費性能向上住宅)
  • 上記2つ以外で、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量等級6以上に該当する住宅
  • 断熱性能が高く、消費エネルギーを大幅に抑えられる
省エネ基準適合住宅
(エネルギー消費性能向上住宅)
  • 上記3つ以外で、断熱等性能等級4以上、一次エネルギー消費量等級4以上に該当する住宅
  • 省エネ性能を確保するための構造、設備の基準を満たした住宅
その他の住宅
  • 省エネ基準を満たさない住宅

1-4-1.新築住宅を購入した場合

前述の環境性能を満たす住宅を取得し、住宅ローン控除を受けるための要件は、新築住宅と中古住宅で異なります。

新築物件の購入で住宅ローン控除を受けるには、以下の9つの要件を満たす必要があります。

番号 適用要件
1 住宅の新築から6ヵ月以内に住居として使用していること
2 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで、引き続き住居として使用していること
3
    次の(1)または(2)のいずれかに該当すること

    (1)特例居住用家屋または特例認定住宅等以外の場合

  • 住宅の床面積が50平米以上、かつ床面積の1/2以上を住居に使用している
  • 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下

    (2)特例居住用家屋または特例認定住宅等の場合

  • 床面積が40平米以上50平米未満、かつ床面積の1/2以上を住居に使用している
  • 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下
4 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
5 2以上の住宅を所有する場合、主に居住する住宅と認められること
6 居住した年、および前2年を含む3年間で、譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと
7 居住した年の翌年以降3年以内に居住した住宅以外で、一定の資産を譲渡し、当該譲渡の譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと
8 生計を一にする親族など、特別な関係者から取得した住宅でないこと
9 贈与により取得した住宅ではないこと

参考:“住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

1-4-2.中古住宅を購入した場合

中古住宅で住宅ローン控除を受ける要件は、上記の新築住宅の要件と一部内容が異なります。中古住宅における、住宅ローン控除の適用要件は次のとおりです。

番号 適用要件
1 中古住宅の取得から6ヵ月以内に住居として使用していること
2 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで、引き続き住居として使用していること
3 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
4 住宅の床面積が50平米以上、かつ床面積の1/2以上を住居に使用していること
5 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
6 2以上の住宅を所有する場合、主に居住する住宅と認められること
7 居住した年、および前2年を含む3年間で、譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと
8 居住した年の翌年以降3年以内に居住した住宅以外で、一定の資産を譲渡し、当該譲渡の譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと
9 生計を一にする親族など、特別な関係者から取得した住宅でないこと
10 贈与により取得した住宅ではないこと
11 建築後に使用された家屋であり、以下のいずれかに該当すること
(1)1982年1月1日以後に建築されたもの
(2)(1)に該当しない場合、以下のいずれかに該当すること
イ・取得の日前2年以内に、耐震住宅と証明されたもの
ロ・(1)と(2)イ以外で、住宅の取得日までに耐震改修工事を申請し、居住日までに耐震改修基準の適合が証明されたもの

参考:“中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁. (参考2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

中古住宅で注意すべき点は、耐震基準の適合の有無です。所定の耐震基準を満たさない中古住宅は、住宅ローン控除を受けられません。

また、自らが住むための住宅でない場合や、登記簿上の床面積が50平米未満、取得日から6ヵ月以内に入居が完了していないといった場合も、住宅ローン控除は適用とならないので注意しましょう。

なお、マンションの場合、登記簿に記載される「内法面積」が50平米以上あることが適用要件です。内法面積とは、壁の内側の面積であり、マンションの広告などでは「壁芯面積」という異なる種類の面積が記載されるケースがあります。

正しい床面積を算出したいときは、登記簿の写しである登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局から取得するとよいでしょう。

1-4-3.リフォームなど改修工事をした場合

住宅ローンを借り入れ、リフォームや増改築などの改修工事をした場合、以下の要件を満たすと住宅ローン控除が受けられます。

番号 適用要件
1 住宅を増改築した日から6ヵ月以内に住居として使用していること
2 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで、引き続き住居として使用していること
3 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
4 増改築したあとの床面積が50平米以上、かつ床面積の1/2以上を住居に使用していること
5 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
6 2以上の住宅を所有する場合、主に居住する住宅と認められること
7 増改築をした年、および前2年を含む3年間で、譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと
8 居住した年の翌年以降3年以内に居住した住宅以外で、一定の資産を譲渡し、当該譲渡の譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと
9 自分で住居にするために取得した家屋で行なう増改築等であること
10 増改築等の費用が100万円超、かつ1/2以上の額が住居部分の工事費用であること

参考:“増改築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

増改築の住宅ローン控除で注意すべき点は、工事費用の自己負担額が100万円を超えており、半分以上の額が住居部分の工事費用でなければならないことです。

また、増改築における控除は住宅ローン控除のほかに、バリアフリーや省エネなどの特定の改修工事で利用できる「リフォーム減税」もあります。リフォーム減税とは、対象のリフォームをした際に、工事費用の一部が所得税から控除される制度です。

住宅ローン控除とリフォーム減税は併用できません。ただし、工事内容によっては、リフォーム減税のほうが、控除額が多くなるケースもあります。リフォームなどで改修工事を行なうときは、より減税効果が高い制度を選ぶことが大切です。

2.初年度は、確定申告で住宅ローン控除を申請する

PCと書類

会社員などの給与所得者の方は、初年度のみ確定申告をする必要があります。ここでは、確定申告での住宅ローン控除の申請方法、必要書類、確定申告書の書き方について解説します。

2-1.確定申告による住宅ローン控除の申請方法

住宅を取得して入居した年の翌年に、確定申告で住宅ローン控除を申請します。会社員などの給与所得者は、翌年1月4日から3月15日が申請期間です。なお、毎年確定申告を行なう個人事業主は、2月16日から3月15日までに通常の確定申告と同時に行なう点が異なります。

なお、確定申告による申請は、税務署の窓口や郵送のほかに、国税電子申告・納税システム(e-Tax)による電子申告も可能です。

2-2.確定申告の必要書類

会社員などの給与所得者の方が、確定申告で住宅ローン控除を申請するには、以下の書類をそろえる必要があります。

No. 名称 入手先
1 確定申告書(A書式) 税務署窓口
国税庁ホームページ
2 マイナンバーカード 本人のもの
3 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 税務署窓口
国税庁ホームページ
4 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 金融機関
5 取得した土地・建物の登記事項証明書 法務局
6 不動産売買契約書または工事請負契約書 不動産会社など
7 認定長期優良住宅など、建物の性能を証明する書類(※) 不動産会社など
8 源泉徴収票 勤務先

(※)住宅の性能や耐震基準の証明が必要なときに提出します。

参考:
“No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁
“番号法令、国税庁告示における主な本人確認書類等”. 国税庁. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

なお、税務署の窓口か郵送で申請する場合、マイナンバーカードがない方は、番号確認書類と身元確認書類が必要です。

番号確認書類としては、マイナンバーの通知カード、マイナンバーが記載された住民票の写し、マイナンバーが記載された住民票記載事項証明書が利用できます。また、身元確認書類として、運転免許証やパスポートなどの提示が必要です。

2-3.確定申告書の書き方

住宅ローン控除の確定申告で記入が必要な書類は、「確定申告書(A書式)」および「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」です。

「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」への記入を済ませたうえで、「確定申告書(A書式)」に記入するとスムーズでしょう。

確定申告書の書き方:1枚

「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」の一面にある「2」には、入居した日、取得対価、建物の総面積を記入します。取得対価は売買契約書の内容を記入しますが、建物と土地で消費税の課税が異なるので注意が必要です。総面積は、登記事項証明書(登記簿謄本)の内容を転記します。

増改築で住宅ローン控除を利用する際は、右側にある「3」に必要事項を記入します。

確定申告書の書き方:2枚目

「4」の共有持分において、単独の場合は取得対価と同じ額を記入する必要があります。また、「7」では「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を参照し、「新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高」の欄に転記します。

確定申告書の書き方:3枚目

出典:“令和4年分(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書”. 国税庁

「9」で、最終的な控除額を算出します。「10」の「控除証明書の交付を要しない場合」に丸印をつけると、税務署から控除証明書が交付されません。控除証明書は、翌年以降の年末調整に必要な書類であるため、丸印をつけないよう注意しましょう。

そして、計算明細書に記入した内容を、「確定申告書(A書式)」の該当箇所に転記します。詳しい書き方は、以下の記載例を参考にするのがおすすめです。

参考:“給与所得者の住宅借入金等特別控除用の記載例”. 国税庁

また、詳しい書き方がわからない場合には、税務署の窓口などで相談しながら記入すると安心でしょう。

3.2年目以降は、年末調整で住宅ローン控除の申請が可能

書類と電卓

確定申告をした翌年以降は、年末調整で住宅ローン控除を申請します。ここでは、年末調整の申請方法や必要書類、書類の書き方について解説します。

3-1.年末調整による住宅ローン控除の申請方法

会社員などの給与所得者の方は、2年目以降は勤務先の年末調整で住宅ローン控除の手続きが可能です。確定申告と比べて必要書類も少なく、勤務先に書類を提出するだけで申請手続きが完了します。

ただし、書類の不備や漏れがあった場合、年末調整による手続きができず、個別で確定申告をしなければなりません。確定申告の場合、年末調整よりも還付金の支給が遅くなるため、年末調整に向けてあらかじめ書類を準備することが大切です。

3-2.年末調整の必要書類

年末調整で住宅ローン控除を受けるには、以下の必要書類を勤務先に提出します。

No. 名称 入手先
1 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書 税務署
2 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 金融機関

確定申告した年の秋頃に、税務署から1の書類が送付されます。住宅ローン控除が適用される残りの9~12年分の書類が、初年度にまとめて送付されるため、年末調整で申請する際は、該当する年度の書類であることを確認しましょう。

一方、2の書類は、住宅ローンを借り入れる金融機関から送付されます。ただし、繰上返済や借り換えなどをして、住宅ローン残高が変わるときは、最新の証明書を用意しなければなりません。

必要書類を紛失した場合、税務署や金融機関に申請すれば再発行が可能です。しかし、書類が届くまでに1~2週間ほどかかるため、なくさないよう大切に保管しましょう。

3-3.必要書類の書き方

確定申告後に税務署から送付される「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」に必要事項を記入します。なお、住宅ローン控除を受ける期間の書類がまとめて送られるため、「○年分」の年が合っているか確認が必要です。

記入する際は、金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を手もとに準備しましょう。以下の記入例を参考にしてください。

必要書類の書き方

出典:“令和4年分につき住宅借入金等特別控除を確定申告で受けた人が令和5年分について年末調整でこの控除を受ける場合”. 国税庁

なお、住宅ローンを連帯債務で借り入れている場合、年末残高の欄には「連帯債務割合に基づく残高」を記入します。年末残高が3,000万円、連帯債務割合が50%の場合は1,500万円と記入しましょう。

4.【2024年以降】住宅ローン控除の変更点

ここでは、2024年の税制改正大綱における、住宅ローン控除の変更点について解説します。

4-1.省エネ基準を満たさない新築住宅は対象外に

2024年1月から、省エネ基準に適合しない新築住宅は、住宅ローン控除の対象外となります。

省エネ基準適合住宅の基準は、以下のとおりです。

  • 断熱等性能等級4以上
  • 一次エネルギー消費量等級4以上

断熱等性能等級とは、建物の断熱性を評価する基準のことです。断熱等性能等級は1~7の段階があり、等級が高くなるほど建物から熱が逃げず、使用するエネルギー量を減らすことが可能です。

基準となる断熱等性能等級4以上は、長期優良住宅を認定する基準でもあり、壁や天井の断熱に加え、開口部には複層ガラスを使用しなければなりません。また、外皮平均熱貫流率(建物から外に逃げる熱量の平均値)が設定されています。

なお、省エネ基準に適合しない「その他の住宅」に該当する場合、2023年12月末までに建築確認を受け、かつ2024年6月30日までに建築された建物でなければなりません。

建築確認とは、地盤や建物が建築基準法や自治体の条例に適合しているか、工事前に確認することです。建築確認は自治体のほかに、自治体が指定する民間の検査機関が実施します。

上記の要件を満たすと、借入限度額2,000万円、控除期間10年間で住宅ローン控除が適用されます。

また、2024年以降は、省エネ性能で借入限度額が変わることも留意しなければなりません。前述のとおり、2022年・2023年入居と比較すると、2024年・2025年入居の借入限度額は、低く設定されています。

さらに、省エネ基準に適合した住宅だと証明するために、建設住宅性能評価書または住宅省エネルギー性能証明書の提出が求められます。

4-2.住宅ローン控除手続きの変更点

2024年以降の確定申告と年末調整では、年末残高等証明書の添付が不要となります。住宅ローン控除の申請書に、年末残高等証明書の内容を転記する必要もありません。

ただし、金融機関側でシステムの対応が間に合わない場合があるため、金融機関によっては経過措置を適用するケースもあります。経過措置が適用される場合、現行と同様に年末残高等証明書の添付や、必要書類に転記する作業が必要です。

5.住宅ローン控除で受けられる還付金について

通帳を持った笑顔の女性

最後に、住宅ローン控除による還付金の概要と金額、入金の時期、少ないと感じる理由について解説します。

5-1.住宅ローン控除の還付金とは?

還付とは、確定申告(還付申告)を行なうことで、払いすぎた所得税を返してもらう制度のことです。

会社員などの給与所得者の所得税は、給与からあらかじめ天引きされています。住宅ローン控除で確定申告を行なうと所得税が控除されるため、払いすぎた所得税は還付金として返金される仕組みです。

なお、還付申告は、所得税を払いすぎた年の翌年から5年間可能です。仮に住宅ローン控除の確定申告を忘れてしまっても、5年以内であれば還付申告により、払いすぎた所得税を受け取れます。

5-2.還付金はいくら受け取れる?

住宅ローン控除の還付金は、住宅ローン残高の0.7%程度になることが一般的です。ただし、建物の環境性能の種類によって借入限度額が異なるため、住宅ローン残高の0.7%満額が還付されるわけではありません。

例えば、6,000万円を借り入れて、長期優良住宅に認定されたとしても、2023年入居の場合、住宅ローン控除が適用されるのは5,000万円までにとどまるためです。

また、省エネ基準を満たしていない住宅では、借入限度額が低いため、受け取れる還付金も少なくなります。

5-3.還付金が入金される時期

還付金は、確定申告(還付申告)後、1ヵ月~1ヵ月半ほどで口座に振り込まれます。e-Taxで電子申告した場合は、3週間程度と書面での手続きと比較してやや早く入金されます。

年末調整では、10~11月にかけて申請し、12月か1月の給与に還付金が反映される仕組みです。

5-4.還付金が少ないと感じる理由

住宅ローン残高の0.7%程度が還付されるはずが、金額が少ないと感じることもあるかもしれません。還付金が少なく感じる理由は、前述の借入限度額があることに加え、すでに納めた所得税額が関係しています。

というのも、所得税の還付金は、納めた所得税の金額以上は還付されないためです。住宅ローン残高の0.7%よりも納めた所得税が少ない場合は、自動的に還付金も少なくなります。

まとめ

住宅ローン控除を利用すれば、所得税と住民税の節税効果が見込めますが、すべての適用要件を満たしているか確認が必要です。ただし、住宅の環境性能や借入限度額、納めた所得税額などの関係上、「年末の住宅ローン残高×0.7%」よりも控除額が少ないこともあります。

なお、住宅ローン控除を受けるには、初年度は確定申告、翌年以降は年末調整による申請が必要です。確定申告は自身で行なうため、書類の書き方がわからないときは税務署の窓口で確認すると安心でしょう。

また、将来的な住み替えや売却を検討している方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご活用ください。複数の不動産会社に査定を依頼することで、より高い金額で売却できる可能性が高まります。