ノンリコースローンとは?メリット・デメリット、活用に向いている不動産を紹介

ノンリコースローン メリット・デメリット

住宅ローンの契約では、「ノンリコースローン」という選択肢があります。しかし、ノンリコースローンは日本ではまだ普及しておらず、個人が利用できるケースは限定的です。

本記事では、ノンリコースローンのメリット・デメリット、活用に向いているケースのほか、利用時に注目すべき項目についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • ノンリコースローンの概要やメリット・デメリット
  • ノンリコースローンの活用が向いているケース
  • ノンリコースローン利用時に注目すべき契約内容
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1.ノンリコースローンとは?

はじめに、ノンリコースローンについて理解するため、リコースローンとノンリコースローンの概要をそれぞれ解説します。

1-1.リコースローンとは?

リコースローン(Recourse Loan)とは、ローンの返済が滞った際に、担保物件だけでなく、借主のその他の資産や連帯保証人などからも返済を追求できる融資形態です。

「リコース」には「遡及」という意味があり、リコースローンは「遡及型融資」とも呼ばれます。

例えば、住宅ローンを返済できなくなった場合、金融機関は「抵当権」や「根抵当権」を設定していた住居(土地と建物)を売却し、返済に充てます。しかし、それでも返済しきれなかった分については、預金や自動車などの資産から返済しなければなりません。

日本の住宅ローンの融資形態は、金融機関に有利なリコースローンが採用されるのが一般的です。

なお、抵当権については「抵当権とは?設定のタイミングや登記にかかる費用、抹消登記の方法をわかりやすく解説」、根抵当権については「根抵当権とは?抵当権との違いやメリット・デメリット、抹消方法などを解説」の記事を参考にしてください。

1-2.ノンリコースローンとは?

リコースローンに対して、ノンリコースローン(Non Recourse Loan)は、「非遡及型融資」です。具体的には、ローンの返済が滞っても、担保物件のみにしか責任がおよばない融資形態を指します。

ノンリコースローン

ローンを返済できなくなった場合、担保物件を売却して返済に充てるところまでは、リコースローンと同様です。しかし、ノンリコースローンでは、担保物件の売却でまかないきれなかった分の返済義務は生じません。

ノンリコースローンとリコースローンの比較

担保物件以外からの返済義務がないノンリコースローンは、借主に有利といえます。一方金融機関にとっては、「この担保物件には価値や収益性がある」と判断できなければ、ノンリコースローンを採用するのは難しいでしょう。

そのため日本では、一般的な居住用物件ではなく、収益性のある投資用物件がノンリコースローンの担保の対象になります。

2.ノンリコースローンのメリット

ビルと虫眼鏡

ここでは、不動産の買主から見たノンリコースローンのメリットを紹介します。

2-1.責任範囲を限定できる

ノンリコースローンは、責任を負う範囲を担保物件のみに限定できる点が大きなメリットです。不測の事態により、万が一ローンの返済が困難になった場合でも、担保物件以外の資産には影響が出ません。

基本的には連帯保証人も必要ないため、安心してローンを利用可能です。

2-2.リコースローンに落ちても利用できる可能性がある

リコースローンでは、以下のような理由により、審査に落ちることがあります。

  • 十分な収入がない
  • 収入の安定性がない
  • 勤続年数が短い
  • すでに多額の借入をしている

一方、ノンリコースローンで審査されるのは、個人の返済能力ではなく、担保物件の価値や収益性です。担保物件の収益性が非常に良ければ、収入額などに不安があっても、審査を通過できる可能性があります。

3.ノンリコースローンのデメリット

続いて、不動産の買主から見たノンリコースローンのデメリットも見てみましょう。

3-1.審査基準・融資条件が厳しい

責任範囲が限定されるノンリコースローンは、金融機関にとってリスクのある融資です。そのため、担保物件の収益性は慎重に判断されます。

また、リスクを低減させるために、融資条件も厳しくなるケースがほとんどです。具体的には、リコースローンよりも金利が高く、返済期間は3~5年程度と短い傾向にあります。

さらに、担保物件の価値が下がらないよう、金融機関は一定の条件のもと物件の運営に介入可能です。融資が実行されたあとも、担保物件の状況が随時チェックされる点を理解しておきましょう。

3-2.取り扱う金融機関がまだ少ない

日本にも、ノンリコースローンを取り扱っている金融機関はありますが、法人向けの商品が多い傾向にあります。

したがって、個人が融資を受けられる可能性は、あまり高くありません。ただし、これからノンリコースローンが普及すれば、状況は変わるでしょう。

2024年(令和6年)3月現在、ノンリコースローンを取り扱う主な金融機関は、以下のとおりです。

  • あおぞら銀行
  • オリックス
  • SBI新生銀行
  • みずほ銀行
  • 三井住友信託銀行
  • 三井住友ファイナンス&リース
  • 三井住友銀行
  • 三菱UFJ銀行

上記のうち、個人向けのノンリコースローンを取り扱うのは、2024年(令和6年)3月現在、三井住友銀行(直担アパートローン)のみです。

参考:“アパートローン”. 三井住友銀行

4.ノンリコースローンの活用が向いているケース

積み木の家

ここまでの内容を踏まえ、ノンリコースローンの活用が向いている方や、活用が向いている不動産を紹介します。

4-1.ノンリコースローンが向いている方

ノンリコースローンは、収益性が高い物件が対象となるため、不動産投資を行なう方に向いています。なかでも、ある程度不動産投資の経験がある方や、複数の投資用物件を所有している方におすすめです。

ノンリコースローンではまとまった融資を受けられるため、より積極的に投資しやすくなり、収入を大きく伸ばすチャンスにもつながります。

しかし、ノンリコースローンは、担保物件の審査に時間がかかると想定されることから、緊急の融資を希望する方には向かないでしょう。

4-2.ノンリコースローンが向いている不動産

ノンリコースローンの活用が向いている不動産の例は、以下のとおりです。

  • 商業ビル
  • 宿泊施設
  • 賃貸マンション
  • 賃貸アパート
  • 物流倉庫
  • オフィス

これらの不動産がすでに稼働しているケースのほか、これから開発・建設するケースも融資の対象となる場合があります。

ただし、収益性が期待できなければ、たとえ上記の不動産に該当してもノンリコースローンの対象にはなりません。ローン商品ごとに、対象物件の収支状況や立地などが審査されます。

5.ノンリコースローン利用時に注目すべき契約内容

書類にサイン

最後に、ノンリコースローンを契約する際、特に注目すべき「制約条項(コベナンツ)」と「責任財産限定特約」について紹介します。

5-1.制約条項(コベナンツ)

制約条項とは、金融機関が融資する際に、借主に求める条件を定めたものです。具体的には、以下のような内容が記されます。

  • 担保物件をほかの融資の担保に利用してはならないこと
  • 担保物件の純資産やキャッシュフロー(※1)を一定水準以上に維持すること
  • 担保物件の収益に関する資料を提出すること

(※1)収入から支出を差し引いた、手元に残る現金(または現金の流れ)のこと。キャッシュフローが良い物件は、収益性が高いと判断される。

制約条項を定めることで、金融機関は資金を回収できなくなるリスクを軽減します。制約条項の内容に違反した場合、金融機関は原則として一括返済を求めることができます。

ノンリコースローンを利用する際は、制約条項が無理のない内容となっているか確認しましょう。

5-2.責任財産限定特約

責任財産限定特約は、「ノンリコース条項」とも呼ばれ、融資における責任範囲が定められています。具体的な内容の例は、以下のとおりです。

  • 返済の原資は、責任財産に限られる
  • 債権者(金融機関)は、責任財産以外に強制執行を実行しない
  • 責任財産の処分後も残債がある場合、債権者は債権を放棄することとなる

「ノンリコース条項」という名称や、上記例示内容からもわかるとおり、ノンリコースローンかどうかはこの特約の有無によって決まります。

まとめ

担保物件以外の資産などからも返済を追求できる「リコースローン」に対し、「ノンリコースローン」は、担保物件のみにしか返済責任がおよばない融資形態です。

金融機関にとってリスクが大きいノンリコースローンでは、担保物件の収益性が慎重に判断されるほか、金利や返済期間といった融資条件も厳しい傾向にあります。また、日本の住宅ローンにはリコースローンが採用されるのが一般的で、個人向けのノンリコースローンを取り扱う金融機関は未だ限られています。

このような点を踏まえると、現状、ノンリコースローンは商業ビルや宿泊施設、賃貸マンション・アパートなどを対象に、法人が不動産投資を行なう際に選択肢の一つになり得るローンといえるでしょう。

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