根抵当権とは?抵当権との違いやメリット・デメリット、抹消方法などを解説

根抵当権とは? 抵当権との違い、抹消方法

相続などにより取得した不動産に根抵当権がついており、「根抵当権と抵当権の違いは何?」「抹消するにはどうしたら良い?」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、根抵当権と抵当権の違い、メリット・デメリット、根抵当権の抹消方法などについてわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 根抵当権と抵当権の違い
  • 根抵当権のメリット・デメリット
  • 根抵当権の抹消方法
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1.根抵当権とは?

根抵当権とは?

根抵当権とは、抵当権の一種で、不特定の債権を担保するための権利です。不動産に根抵当権が設定されていれば、万が一、債務者(借主)からの返済が滞ったときに、債権者(貸主)が不動産を売却するなどして、債権を回収できます。

根抵当権を設定する債権者は、あらかじめ不動産の担保価値を算出し、貸し出せる「上限額(極度額)」を決めます。債務者は、その範囲内であれば何度でも借り入れと返済を繰り返せるのが特徴です。

なお、「不特定の債権」といっても、あらゆる債権を無限に担保するわけではなく、あらかじめ決められた一定の範囲の債権に限られます。対象となる債権の範囲は、以下のとおりです。

  1. 指定した特定の継続的取引契約、または取引の種類から生じる債権
  2. 特定の原因によって継続する債権
  3. 手形小切手債権

具体的には、金融機関との信用取引や、商社との継続的な購入契約により生じた債権が該当します。

根抵当権は、債務者が借り入れと返済を何度も行なえるため、経営者や企業による事業資金の調達に多く活用されています。

2.根抵当権と抵当権の5つの違い

一軒家の模型を持った女性

抵当権とは、金融機関で住宅ローンを組んで不動産を購入する場合に、その不動産に金融機関が設定する権利のことです。債務者からの返済が滞った場合は、抵当権を設定した不動産を金融機関が差し押さえすることができます。なお、抵当権は住宅ローンを完済したタイミングで「抹消登記」と呼ばれる手続きを行なうのが一般的です。

では、根抵当権と抵当権にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、それぞれの違いを5つのポイントに分けて解説します。

2-1.根抵当権と抵当権の違い(1)債権の扱い

根抵当権は、極度額の範囲内と債権の範囲内であれば、債務者が何度でも借り入れできます。一方、抵当権は1回の融資のみを担保するため、追加の借り入れには再度手続きや担保設定が必要です。

根抵当権と抵当権の違い

例えば、担保価値が3,000万円の土地に抵当権が設定されると、債務者は1回の融資で3,000万円を一括で借り入れします。一方、根抵当権が設定されると、債務者は契約時に1,000万円、1年後にもう1,000万円など、極度額の範囲内で複数回借り入れが可能です。

根抵当権は、1回の契約で何度も借り入れ可能なため、手続きにかかる手間や諸費用を削減できます。そのため、事業資金等を複数回にわたって借り入れする場合によく利用されます。

2-2.根抵当権と抵当権の違い(2)権利の消滅

根抵当権は借り入れと返済を繰り返せるため、1つの債権を完済しても権利は消滅しません。追加で融資する可能性があるため、債権者は根抵当権をそのまま残しておくのです。

一方、抵当権は、債権を完済すれば権利が消滅します。債権者は、抵当権の抹消登記に必要な書類を債務者に提出し、その書類によって債務者は抵当権の抹消登記を行なうことができます。

根抵当権の抹消には、債権者と債務者双方の合意が必要です。根抵当権の抹消方法については、後述します。

2-3.根抵当権と抵当権の違い(3)連帯債務者の有無

抵当権では連帯債務者を設定できますが、根抵当権ではそれが設定できません。連帯債務者とは、債務者とともに返済義務を負う人のことです。

抵当権は、返済額や返済期間が明確であるため、連帯債務者を設定できます。例えば、Aさんが何らかの理由でローンを返済できない場合、債権者は連帯債務者のBさんへの請求が可能です。

一方、根抵当権は返済額や返済期間が明確ではないため、連帯債務者を設定できません。根抵当権では、新たな債権の担保をしないことを前提に、返済額と返済期間を明確にする「元本確定」をしない限り、連帯債務者を設定できないのです。

2-4.根抵当権と抵当権の違い(4)権利の移転可否

抵当権は返済額や返済期間が明確であるため、債権者は債務者の許可なく権利を移転できます。

しかし、根抵当権の場合、元本確定するまで、債権者は債務者の許可なく権利を移転することはできません。根抵当権は返済額や返済期間が明確ではないため、都度返済などの調整をします。許可なく権利を移転すると、債務者が誰と返済の調整をするのかわからなくなるため、債務者の許可が必要になります。

2-5.根抵当権と抵当権の違い(5)優先弁済の範囲

根抵当権と抵当権では、優先弁済の範囲が異なります。優先弁済とは、複数の債権者が債務者の特定の財産をもとに弁済を受けるとき、ほかの債権者よりも優先して弁済を受けられることです。

抵当権の場合、優先弁済の範囲は元本および、利息と遅延損害金の最後2年分のみと定められています。一方、根抵当権では、極度額の範囲内であれば無期限に優先弁済を受けられます。

3.根抵当権のメリット・デメリット

メリット・デメリット

ここでは、根抵当権のメリットとデメリットを詳しく解説します。

3-1.根抵当権のメリット

根抵当権のメリットは、同じ金融機関から複数回融資を受ける場合に、手間や費用などのコストを削減できることです。

登記にかかるコスト

抵当権の場合は、借り入れや完済のたびに設定登記や抹消登記が必要なため、手続きの手間や、登録免許税、司法書士報酬、書類作成費用がかかります。

一方、根抵当権なら最初に設定登記を行なうのみなので、手間や費用を大幅に削減できます。

さらに根抵当権は、あらかじめ設定された債権の範囲内なら、どれでも担保できます。抵当権では1つの債権のみを担保しますが、根抵当権では、例えば登記簿上で債権の範囲が「銀行取引、手形債権、小切手債権」と記載されている場合、その3つのうちどれでも極度額の範囲内で担保できるのです。

3-2.根抵当権のデメリット

根抵当権のデメリットは大きく2つあります。それぞれ見ていきましょう。

3-2-1.融資先の変更が難しい

融資先を変更したくなっても、根抵当権の場合は債権者の承諾がない限り、融資先の変更はできません。交渉が難航した場合は、心理的な負担や時間がかかるでしょう。

住宅ローンで抵当権を設定している場合、融資先の変更は比較的容易です。債権者の承諾が得られなかったとしても、借り換え前の住宅ローンを完済して、抵当権を抹消するなど、所定の手続きを踏めば融資先を変更できます。

3-2-2.物件の売却が難しい

根抵当権が設定された物件の売却は困難です。理論的には、根抵当権が設定されたままでも売却自体は可能です。しかし、登記簿上では、根抵当権が残っている状態になるため、「誰かの借り入れの担保になっている不動産」と見られてしまいます。

先述のとおり、過去の借り入れを完済していたとしても、根抵当権は自動的には消滅しません。根抵当権が設定された物件を積極的に購入する方は少ないため、購入者が現れても、売却金額が低くなったり、売却条件が悪くなったりする可能性があります。

売却するときは、前もって「根抵当権の抹消登記」をしたほうがよいでしょう。

4.根抵当権を抹消する方法3ステップ

書類を記入する女性

根抵当権が設定された不動産の売却や相続には、根抵当権の抹消が必要です。ここでは、根抵当権を抹消する方法を3ステップで解説します。

4-1.ステップ1:金融機関と交渉する

まずは残債がどれだけあるか確認し、債権者である金融機関と「根抵当権の抹消」に向けて交渉を行ないます。ただし、金融機関がすぐに応じてくれないケースもあります。金融機関にとっては、根抵当権を抹消すると貸付先を失うことになるためです。

また、金融機関が「完済は難しい」と判断しかねない額の残債がある場合、交渉が成立しない可能性もあります。不動産の売却による完済が難しい場合は、別途資金を用意するか、任意売却を検討しなければなりません。

つまり、根抵当権をスムーズに抹消するには、不動産の売却金額が残債を上回る必要があります。したがって、なるべく良い条件で売却してくれる不動産会社を選ばなければなりません。効率良く不動産会社を選ぶなら、不動産一括査定サービスを活用するのがおすすめです。

4-2.ステップ2:元本確定を行なう

金融機関と根抵当権の抹消に関して合意できたら、元本確定を行ないます。元本確定とは、先述のとおり、新たな借り入れをやめてその時点での残債を明確にすることです。

例えば、極度額5,000万円で、3,000万円の借り入れがある場合、元本確定することで「残債は3,000万円である」と明確にできます。

根抵当権は、借り入れと返済を繰り返せる特性上、元本が変動します。元本確定すると新たな借り入れはできなくなり、抵当権と同じ扱いになります。

4-3.ステップ3:必要書類を提出し、抹消登記を行なう

元本確定した残債の完済後、金融機関などの債権者から必要書類を受け取ります。主な必要書類は以下のとおりです。

  • 登記原因証明情報(解除証書、放棄証書、弁済証書など)
  • 登記識別情報または根抵当権設定契約証書(登記済証)
  • 会社法人等番号が記載されている書類
  • 不動産所有者の委任状(司法書士が代理で行なう場合)
  • 金融機関などの委任状(司法書士が代理で行なう場合)

書類がそろったら、法務局に申請しましょう。申請後は書類一式が返送されて抹消登記が完了します。

なお、根抵当権は仕組みが複雑なため、抹消には手間がかかります。自身で手続きするのが難しい場合は、司法書士に依頼するのがおすすめです。

まとめ

根抵当権は、極度額の範囲内と定められた債権の範囲内なら、何度でも借り入れ・返済できる点が特徴であり、抹消登記しない限り権利は消滅しません。

根抵当権を抹消するには、金融機関と交渉したうえで、法務局に抹消登記の申請をする必要があります。交渉は難航する可能性もあるため、ある程度の時間がかかる前提で取りかかりましょう。根抵当権の抹消登記は複雑なため、司法書士に依頼すると安心です。

根抵当権を設定した借り入れの残債は、不動産を売却することで完済できる可能性があります。売却をお考えの方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご利用ください。