マンションの権利書を紛失したらどうする?3つの対処法を伝授

権利証(ケンリショウ)は権利書(ケンリショ)と聞き間違えやすいことから、「マンション 権利書」というキーワードで検索している人も多いようです。
この記事では、「権利証」を「権利書」という文字に置き換えて解説していきます。

一般的に権利書というと「登記済証」のことを指します。
登記済証とは、登記権利者として権利を取得したときに登記所から渡されている書類のことです。

2005年に不動産登記法が改正されたことにより、登記済証は廃止され、「登記識別情報通知書」に置き換わっています。
よって、昔の「登記済証」や今の「登記識別情報通知書」が、いわゆる権利書に相当します。

この記事では、「マンションの権利書(権利証)を紛失してしまった!」という方に向けて、対処法や売却時の注意点について解説します。
ぜひ最後までおつきあいいただき、この記事で得た情報を、窮地を脱するための道しるべとしてください。

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この記事の監修者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.権利書を紛失した場合の対処法3選

本章では、権利書を紛失した場合の3つの対処法について紹介します。

  1. 「事前通知制度」を利用する
  2. 「司法書士等による本人確認情報の提供制度」を利用する
  3. 「公証人による本人確認制度」を利用する

それではひとつずつ見ていきましょう。

1-1.「事前通知制度」を利用する

事前通知制度とは、失念、失効、当初からの不通知、紛失その他の事由により登記済証また登記識別情報通知書を提供できないことについて正当の理由がある場合、その理由を申請書に記載して登記を申請する制度のことです。

権利書が存在する通常の売買では、所有権移転登記申請は引渡日と同日に行います。
しかしながら、事前通知制度では制度名の中に「事前」という言葉があるように、引渡日の「前」に登記申請を行うことがポイントです。

原則的な制度ですが、タイミングが難しいことや、売主の手続き負担もあることから、実際には利用しにくい制度となります。

事前通知制度の流れは以下の通りです。

事前通知制度の流れ

(1)司法書士との事前面談

最初に、司法書士が売主・買主の双方に面談し、本人確認および所有権移転の意思を確認します。

その際、売主と買主は、司法書士に所有権移転登記を代理で行ってもらうための委任状や登記原因証明情報に署名し、実印での押印を行います。
また、売主は印鑑証明書(3ヶ月以内発行のもの)と住民票を用意します。

(2)登録免許税の用意

司法書士に法務局においてその場で所有権移転の登録免許税を支払ってもらうため、登録免許税を用意します。

通常の売買であれば所有権移転の登録免許税は買主が負担しますが、残金決済前であるため、売主が一時的に立て替えて用意することも多いです。
売主が立て替えた場合には、引渡時に精算して買主から登録免許税を受領します。

(3)所有権移転の登記申請

司法書士が所有権移転の登記申請を行います。
通常の売買であれば引渡日に登記申請を行いますが、事前通知制度では引渡の前に法務局に対して登記申請を行うことがポイントです。

(4)法務局による事前通知書の発送

登記申請後、1週間前後で法務局から郵便局に対して「本人限定受取郵便」が発送されます。
次に郵便局から登記記録上の住所地に「本人限定受取郵便到着のお知らせ」が送付されます。

(5)事前通知書を受領

売主本人は「本人限定受取郵便到着のお知らせ」と「本人確認書類」、「印鑑」を持参して郵便局に「本人限定受取郵便」を受け取りに行きます。
本人限定受取郵便には、事前通知書が封入されています。

事前通知書は売主が署名し、実印による押印を行って引渡日に決済場所へ持参します。
売主が署名・押印した事前通知書は、引渡日に法務局へ提出します。

ここで、通知書の有効期限は法務局が発送した日より2週間以内に提出しなければいけないというルールがあります。
そのため、引渡日から逆算して登記申請日を設定することがポイントです。

(6)引渡日(残金決済)

売主は署名・押印した事前通知書を決済場所へ持参します。
その他、買主へ引き渡すための書類や鍵等も決済場所へ持参します。
引渡日では、手付金を除いた残金が買主から振り込まれます。

(7)事前通知書を法務局へ提出

残金決済が完了したら、司法書士が売主から事前通知書を引き取り、その足で法務局へ提出に向かいます。
後は司法書士に任せれば、所有権移転の登記手続きは完了です。

1-2.「司法書士等による本人確認情報の提供制度」を利用する

本人確認情報の提供制度とは、司法書士等の資格者代理人が、「運転免許証」や「パスポート」等で登記名義人本人であることを確認し、本人確認情報を作成して提供することで登記官がその内容を相当と認めると「事前通知制度」が省略できる制度です。

本人確認情報の提供制は手続きが簡単なため、実際の売買では最も多く利用される制度となっています。
本人確認情報の提供制度の流れは以下の通りです。

(1)本人確認情報の作成

売主は、マイナンバーカードや運転免許証、パスポート等の本人を確認できる書類を用意します。
司法書士は売主が用意した本人確認資料と面談に基づき、「本人確認情報」と呼ばれる法務局に提出する資料を作成します。

本人確認情報が作成できる人は限定されており、申請代理人となる司法書士または弁護士に限られます。

(2)引渡日(残金決済)

司法書士は売主と買主の双方と面談し、本人確認および所有権移転の意思を確認します。
売主と買主は、司法書士に所有権移転登記を依頼する委任状や登記原因証明情報に署名し、実印での押印を行います。
また、売主は印鑑証明書(3ヶ月以内発行のもの)と住民票を用意します。

(3)所有権移転の登記申請

残金決済が完了したら、司法書士が売主から所有権移転に必要な書類を引き取り、その足で法務局へ提出に向かいます。
後は司法書士に任せれば、所有権移転の登記手続きは完了です。

1-3.「公証人による本人確認制度」を利用する

公証人による本人確認制度とは、登記名義人が登記の委任状等に公証人の面前で署名捺印し、公証人が登記名義人本人であることを確認し、委任状等に認証文を付して認証する制度です。

公証人による本人確認制度も、登記官がその内容を相当と認めると「事前通知制度」が省略できる制度になります。

公証役場へ支払う費用が数千円で抑えられ、司法書士等による本人確認情報の提供制度よりも費用を抑えられる点がメリットです。

公証人による本人確認制度の流れは以下の通りです。

公証人による本人確認制度の流れ

(1)司法書士へ委任状の作成依頼

公証役場に行く前に、まず司法書士に所有権移転登記を代理で行ってもらうための委任状の作成を依頼します。
作成してもらった委任状は、売主に郵送してもらいます。

(2)公証人と面談

売主が必要書類を持参し、公証役場で面談します。
公証役場に持っていく必要書類は以下の通りです。

(公証役場での必要書類)

  • 身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等)
  • 印鑑証明書(3ヶ月以内発行のもの)
  • 実印
  • 委任状(司法書士に事前に発送してもらったもの)

公証人との面談により、売主が登記名義人本人であることを確認してもらいます。
公証人との面談時間は30分程度です。

委任状へは公証人の面前で署名・押印を行います。
公証人が「本人確認認証書類」を作成しますので、それを受け取ります。

(3)司法書士への事前確認

公証人に作成してもらった「本人確認認証書類」を事前に司法書士に確認してもらいます。
内容に不備があると「事前通知制度」が省略できないため、引渡日前に事前に司法書士のチェックを受けておくことが通常です。

(4)引渡日(残金決済)

司法書士は売主と買主の双方と面談し、本人確認および所有権移転の意思を確認します。
売主は登記原因証明情報に、買主は委任状や登記原因証明情報に署名し、実印での押印を行います。

(5)所有権移転の登記申請

残金決済が完了したら、司法書士が売主から所有権移転に必要な書類を引き取り、その足で法務局へ提出に向かいます。
後は司法書士に任せれば、所有権移転の登記手続きは完了です。

2.権利書を紛失したときの売却の注意点

本章では、権利書を紛失したときの売却の注意点について、以下の3点を解説します。

  1. 査定時に不動産会社に相談する
  2. 本人確認情報の提供制度では司法書士手数料が売主負担となる
  3. 相続の名義変更自体には権利書は不要

それではひとつずつ見ていきましょう。

2-1.査定時に不動産会社に相談する

権利書を紛失しているときは、査定時に不動産会社に相談することが重要です。
査定時に、権利書がないことを不動産会社に伝え、どのような対応をしたら良いのか相談してください。

権利書は、引渡時の所有権移転登記だけでなく、査定時においても本人確認のために不動産会社に提示することが一般的です。

経験の浅い不動産会社だと、本人確認が取れない物件の売買に対し、地面師と呼ばれるような売主詐欺等のリスクを感じて査定を受け付けないこともあります。

そのため、売却時に権利書を紛失している場合には、経験豊富で信頼できる不動産会社に査定を依頼することがポイント です。

ちなみに、信頼できる不動産会社は、「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」で探すことができます。

HOME4Uマンションプライスの売却査定

運営元であるNTTデータグループが厳正なる審査を行って不動産会社を選別しているため、安心して査定の依頼ができる不動産会社を探せるようになっています。

百戦錬磨の不動産会社が、適切な売却活動の進め方を助言してくれますので、ぜひご利用になってみてください。

2-2.本人確認情報の提供制度では司法書士手数料が売主負担となる

本人確認情報の提供制度では所有権移転登記の司法書士手数料が売主負担となる点が注意点となります。
理由としては、本人確認情報の提供制度を利用すると、司法書士が「本人確認情報」を作成しなければならず、司法書士手数料が通常よりも割高となるからです。

権利書がある場合の通常の売買では、所有権移転登記のための司法書士手数料は一般的に「買主」負担となります。

それに対して、権利書がない場合の売買では、司法書士手数料が割高となるため、司法書士手数料を売主負担とすることが多いのです。

権利書がある場合の通常の司法書士手数料の相場は5~6万円程度となります。
一方で、「本人確認情報」を作成する場合の司法書士手数料の相場は8~10万円程度です。

参考までに、「本人確認情報」の作成が必要な場合の司法書士手数料の相場を示します。

地区 低額者10%の平均 全体の平均値 高額者10%の平均
北海道地区 30,600円 72,341円 118,922円
東北地区 35,364円 71,997円 138,480円
関東地区 46,017円 91,375円 153,460円
中部地区 40,273円 82,166円 151,215円
近畿地区 44,168円 94,197円 155,436円
中国地区 35,381円 78,029円 133,230円
四国地区 45,723円 83,071円 124,140円
九州地区 37,857円 72,692円 115,492円

出典:日本司法書士連合会「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)

2-3.相続の名義変更自体には権利書は不要

相続の名義変更自体には権利書は不要です。
相続の名義変更の必要書類の中には権利書は含まれません。

理由としては、権利書は申請人が登記名義人本人であることを証する書面ですが、相続では登記名義人本人がすでに他界しており、登記名義人本人が申請人になり得ないからです。

相続の名義変更が終われば、新しい登記識別情報通知書が発行されるため、その登記識別情報通知書に基づいてマンションを売却することができるようになります。

相続の名義変更の方法には、「法定相続」と「遺言による分割」、「遺産分割協議による分割」の3種類があります。

法定相続とは、法定相続割合で共有のまま名義変更することです。
売却には共有者全員の同意が必要となりますが、売却によって得られた現金を法定相続割合で平等に分けることができます。

遺言による分割は、遺言書がある場合に行う名義変更のことです。
遺言証書が自筆遺言の場合には、法務局に提出する前に家庭裁判所で検認を行うことが必要となります。
検認とは、家庭裁判所による遺言証書の存在および内容の確認のことです。

遺産分割協議とは、相続後に相続人間で遺産の分割方法を決める話し合いを指します。
遺産分割協議は相続人全員の同意によって成立します。

名義変更に必要な書類は、下表の通りです。

名義変更方法  必要書類
法定相続
  • 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍の附票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続人全員の委任状(司法書士に依頼する場合)
遺言による分割
  • 遺言証書
  • 遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
  • 遺言により相続する相続人・受遺者の現在の住民票または戸籍の附票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続人または受遺者の現在の戸籍謄本
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)
遺産分割協議による分割
  • 遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
  • 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票または戸籍の附票
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 遺産分割により相続する相続人の現在の住民票または戸籍の附票
  • 固定資産税評価証明書
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

尚、相続の名義変更登記に関しては、2024年を目途に義務化される予定です。
義務化されると、既に発生している義務化前の相続も名義変更しなければならない対象となります。

まだ相続の名義変更をされていない方は、売却するか否かに関わらず、早めに名義変更をすることをおススメします。

まとめ

いかがでしたか。
「マンションの権利書(権利証)」について、紛失時の対応を解説してきました。

権利書を紛失した場合の対処法には、「事前通知制度」、「司法書士等による本人確認情報の提供制度」、「公証人による本人確認制度」の3つがあります。

マンションを売却する時に権利書を紛失している場合は、信頼できる不動産会社に売却を依頼し、相談しながら進めていくことがポイントです。

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