困った!認知症になった親の不動産を売却する正しい手順

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超高齢化社会が進む日本。
高齢者の4人に1人が認知症またはその予備軍といわれており、認知症患者は今後ますます増加が予想されます。

それに伴い、「認知症になってしまった親の代わりに不動産を売却して、介護費用を捻出したい」といったご相談が増えてきました。

認知症などの病気で「意思能力」がない人が不動産の売買契約を結んだ場合、契約は無効です。
でも、所有者が重度の認知症でも、「成年後見制度」を利用すれば不動産の売却が可能になります。

この記事では、成年後見制度を利用して不動産を売却する手順についてお伝えします。

2016年(平成28年)5月には「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行され、ますます利用しやすい制度になってきました。

ぜひ最後までお読みいただき、不動産売却を適切に行うための一助としてください。

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1. 認知症になってしまったら通常は不動産を売却できない

重度の認知症で、会話もできないような状態なら、不動産の売買契約が結べないということは容易に想像がつくことと思います。

でも、「軽度の認知症であっても、売却できないの?」「委任状を書いて『代理人』が売却すればよいのでは?」
という疑問が出てくるかもしれません。

まずは、認知症と不動産の売買契約、そして代理人について解説します。

1-1. 認知症で「意思能力」がなければ売買契約は無効

そもそも、なぜ認知症になったら不動産は売却できないのでしょうか?
正確に言うと、認知症などで「意思能力」が無くなっている場合には、不動産は売却できません。

意思能力」とは、法律用語で、自分の行為によってどのような法律的な結果が生じるか判断できる能力をいいます。

「意思能力」がない人が不動産の売買契約を結んでも、契約は無効です。
そのため、「不動産を売却したら所有権が買主に移転し、代わりに代金を受け取る」ということを所有者がはっきり認識できていないときには、不動産を売却することはできません

ただし、ひと口に認知症といっても、症状は様々です。
認知症が疑われる場合でも、「意思能力」があると判断されるなら、通常どおり単独で不動産を売却できる可能性もあります。

1-2. 所有者の「代理」で売却できる場合とは

例えば入院中などで、自分で不動産会社に行くことができなくても、判断能力が十分ならば売却は可能です。

つまり、身体的な能力に問題があっても、判断能力に問題がなければ契約はできます。

この場合には、委任状を準備して子供などが「代理人」となり、売却の手続きを進めることができます

ところが、所有者が重度の認知症の場合には、委任状を用意して子供などが代理人として不動産を売却することもできません
認知症で「意思能力」がなくなっている場合には、法的に有効な代理人を立てることができないからです。

代理人を立てるためには、「この人を代理人に任命します」という意思をしっかりと示せる状態であることが必要です。

2. 成年後見制度のしくみ

認知症の人が所有する不動産を売却するために活用できる制度が、成年後見制度です。
詳しく見ていきましょう。

2-1. 成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害などの理由で判断能力が十分でない人の代わりに、成年後見人が契約を結んだり財産の管理などを行って支援する制度です。

成年後見人は、本人の代わりに契約を結ぶだけでなく、必要のない住宅リフォームなどの不利益な契約を本人が結んでしまったときに取り消すことができます

成年後見制度には、大きく分けると「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

すでに認知症によって判断能力が十分でなくなっている場合には、「法定後見制度」を使います。
法定後見制度には、さらに「後見」「補佐」「補助」の3種類があり、後見人等に与えられる権限が異なるので、本人の判断能力に応じて利用できます。

  法定後見制度 任意後見制度
どんなときに使う? 認知症になってから 認知症になる前
成年後見人を選ぶのは誰? 家庭裁判所 本人
種類 後見:判断能力が全くない人を保護する
補佐:判断能力が著しく不十分な人を保護する
補助:判断能力が不十分な人を保護する

 

不動産売却塾 コラム “認知症になる前にできること”

「まだ認知症ではないけれど、高齢の親がいるので先々が心配・・・」という方もいらっしゃると思います。

そんなときに利用できるのが、任意後見制度です。
任意後見制度は、判断能力が十分なうちに、本人が将来のために支援者を選んでおく制度です。

支援者を選ぶのは裁判所ではなく本人、というのが大きな特徴で、支援してもらう内容についても自分で決められます。

任意後見制度を利用するには、元気なうちに公証人役場で任意後見契約を結び、判断能力が衰えてきたときに家庭裁判所で改めて手続きを行います。

2-2. 法定後見人になれる人

法定後見人になれるのは、親族、弁護士、司法書士、社会福祉士、福祉関係の法人などです。
未成年者、破産者、本人に対して訴訟をした者などは後見人になれません。

法定後見制度の大きな特徴は、裁判所が法定後見人を選ぶという点です。
親族等を法定後見人の候補者にすることはできますが、家庭裁判所がその人を選ぶとは限りません。
後見人になることを希望していた親族が選ばれなかったとしても、不服申し立てなどはできない点はご注意ください。

家庭裁判所が後見人を選任するときには、後見人の職業、経歴、本人との利害関係、その他の事情を考慮し、後見人として最もふさわしい方が選ばれます

なお、法定後見人は複数の人が選ばれる場合があります。
また、必要に応じて、成年後見人を監督するための成年後見監督人も選ばれる場合があります。

不動産売却塾 コラム “親族が後見人になれるの?”

親族が後見人になれるかどうかは、気になる方が多いと思います。

親族ではなく第三者が選ばれる可能性が高いのは、次のようなケースです。

  • 親族間で争いがある場合
  • 親族が本人の財産を使い込んでしまう恐れがある場合
  • 高齢の親族しかいない場合

厚生労働省によると、親族が後見人に選ばれているケースは約26%です(平成30年5月公表データ)。

参考:厚生労働省「成年後見制度の現状(平成30年5月)

これまでは、後見人になった親族による財産の使い込みなどの不正を防ぐため、弁護士等の選任が増やされていました。

ところが最近では、平成28年5月に施行された「成年後見制度の利用の促進に関する法律」の影響で、制度を利用しやすくするための見直しがなされています。

2019年3月、最高裁判所は「後見人にふさわしい親族がいる場合には、本人の利益保護のため親族を選任することが望ましい」という考えを示しました。
これを受けて、今後は親族等の専任が増える可能性が高いといわれています。

2-3. 法定後見人ができること

法定後見人は、本人の代わりに財産管理や契約などの法律行為を行います。
法定後見人が本人のために契約行為を行うと、所有者本人が契約を行った場合と同じ効力が発生します。

ただし、法定後見人になったら、本人の代わりに何でもできるわけではありません
一言でいうと、後見人ができるのは「本人の利益になること」だけです。

不動産の売却については、本人のために必要性があれば売却できます。
例えば、売却代金を生活費や医療費に充てたり、介護施設への入居費用に使う、といった場合なら認められる可能性が高いです。

建物が老朽化し、維持していると経費がかさむ場合にも正当理由になります。
一方で、成年後見人が自分の事業などのために売却代金を利用するためであれば許されません。

また、使い道だけでなく売買金額についても注意が必要です。
一般的な市場価格よりもずっと安く売ってしまうなど、本人にとって不利なことはできません。

なお、居住用の不動産を売却する場合には、本人にとって重要な財産であることから、家庭裁判所の許可が必要です。

裁判所の許可を得ないで居住用不動産の売買契約を結んだ場合、契約は無効です。
居住用不動産には、認知症の本人が現在居住している家だけでなく、病院から退院後に住む予定の家なども含みます。

2-4. 法定後見制度を利用するための費用

法定後見制度を利用するためには、最初にかかる申請費用のほかに、後見人への報酬が必要となる場合があります。

それぞれ見ていきましょう。

法定後見人制度を利用するために最初にかかる費用

家庭裁判所に申し立てをする際の手数料、切手代、戸籍謄本等を入手するための費用がかかりますが、合わせて1万円弱くらいです。

本人の判断能力を確認するための医師等による鑑定が行われるケースがあり、その場合は鑑定料が5~10万円前後かかりますが、鑑定が行われる人は全体の約10%です。

裁判所への手続きは、司法書士や弁護士に依頼することもできますが、その際は別途費用がかかります。

法定後見制度の利用後の費用

親族が後見人に選ばれ、報酬の請求をしなければ費用は発生しません。
一方、後見人から請求があった場合には、家庭裁判所の判断によっては、報酬の支払いが必要です。

弁護士・司法書士等が後見人になった場合は、本人の財産の中から一定の報酬を支払うのが一般的です。
報酬額は、財産の額その他の事情を考慮して家庭裁判所が決めます。

東京家庭裁判所が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」によると、基本報酬は月額2~6万円で、管理する財産額に応じて報酬が変わります。

ただし、後見制度の利用促進のため、2019年1月に最高裁は、報酬を業務量や難易度に応じた金額とするように、全国の家庭裁判所に通知を出しました。
そのため、後見人の報酬についての傾向は、今後変わってくる可能性があるといわれています

なお、法定後見制度を利用する際の経費を助成している市町村もありますので、市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

約80%の市区町村で、成年後見制度の利用支援のための助成制度があります。
例えば東京都台東区や江東区では、一定の要件のもと、家庭裁判所への申立費用や後見人等に支払う報酬についての助成制度があります。

参考:
台東区「成年後見制度利用支援事業について
江東区「成年後見制度

2-5. 法定後見制度のデメリット

法定後見制度は、2つのデメリットを知った上で利用を検討するとよいでしょう。

第一に、相続税対策のための生前贈与ができなくなること。
贈与は本人の財産を減らす行為ですし、相続税を節税できても本人のトクになるとはいえません。
成年後見制度は本人を保護するための制度なので、財産を減らしてしまう贈与が正当化されるケースは極めて少数です。

第二に、成年後見開始の審判を受けた人は、株式会社の役員になれないこと。
現在、法人の役員になっている人が成年被後見人になった場合は、役員変更を行う必要があります。

3. 法定後見制度を使って不動産を売却するための手順

法定後見制度を使って不動産を売却する手順は、次のとおりです。

  1. 「成年後見制度開始」の審判を申立てる
  2. 家庭裁判所により審理され、必要があれば医師の鑑定を受ける
  3. 法定後見人が選定される
  4. 不動産会社と媒介契約を結んで不動産を売り出す
  5. 居住用不動産の場合は裁判所の許可を受ける
  6. 買主と売買契約を結ぶ
  7. 決済、引渡し

それぞれのステップを詳しくみていきましょう。

3-1. 「成年後見制度開始」の審判を申立てる

まず、成年後見人の選任を家庭裁判所に申立てます。

申立てできる人は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。
申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

詳細な手続き方法は、裁判所のホームページでご確認ください。

参考:裁判所「成年後見制度に関する審判

管轄裁判所はこちらで調べられます。

参考:裁判所「裁判所の管轄区域

いきなり申し立てをすることに難しさを感じる場合には、司法書士や弁護士、役所の相談コーナーなどに相談することから始めてみることをおススメします。

3-2. 家庭裁判所により審理され、必要があれば医師の鑑定を受ける

申立書が受理されたら、成年後見人の選任を認めるかどうか家庭裁判所が審理します。
家庭裁判所の調査官が、申立人、本人、後見人の候補者から事情を聞きます。

親族にも照会して、親族同士の争いがないかなどが確認されます。
必要があると判断された場合には、本人の判断能力の程度を医学的に十分に確認するため、医師による鑑定が行われます。

3-3. 法定後見人が選定される

家庭裁判所が後見開始の審判を出し、法定後見人を選定します。
申立てから審判までは、通常2ヶ月くらいかかります。
審判が確定したら、家庭裁判所によって法定後見の登記が行われます。

法定後見人が選定され次第、不動産査定に進むことができるので、この段階で次のステップを意識して準備しておくとよいでしょう。

3-4. 不動産会社の査定を受け、媒介契約を結んで不動産を売り出す

まず、信頼できる不動産会社を探して、売却を依頼するための「媒介契約」を結びます。

成年後見人は市場価格と乖離した安値で売るわけにはいきませんし、早急に介護施設への入居費用等が必要な場合も多いので、できるだけ高くスムーズに売ってくれる不動産会社を選びたいものですよね。

ちなみに、不動産の査定額というものは、不動産会社によって異なり、時には数百万円の差がつくこともあります。
一目で高く売ってくれそうな不動産会社を見抜く“目利き力”があれば良いですが、普通の人は複数の不動産会社にあたってみないことには判別することはできません

そんな時に便利なのが、一括査定サービス「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」です。

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HOME4Uを利用すると、所在地や物件タイプに応じてその不動産に適した複数の不動産会社をシステムが自動的に抽出してくれ、簡単にまとめて査定を依頼できるので、査定結果を比較して優良な不動産会社を選びやすくなります。

査定額はもちろんのこと、成年後見制度を利用することにもしっかりサポートしてくれる担当営業マンかどうかを比べて、不動産会社を選んでください。

不動産会社を選んで「媒介契約」を結んだら、不動産を売り出します。
売り出し後、購入を検討する人が不動産を「内覧」に来るので、それまでにしっかり掃除・整理整頓しておきましょう。

「媒介契約」と「内覧」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

3つの媒介契約のメリット、デメリット。自分に有利な契約はどれ?
家を売る際、内覧者を迎えるときのポイント

3-5. 居住用不動産の場合は裁判所の許可を受ける

居住用不動産等の売却では、裁判所の許可が必要なので、裁判所に「居住用不動産処分の許可の申立て」を行います。

許可が必要なのは、本人が居住している不動産や、病院から退院後に戻る予定の家などを売却する場合です。
居住用不動産について裁判所の許可を得ないで売買契約を結ぶと、契約は無効となります。

申立てに必要な主な書類は、次の通りです。

  • 申立書
  • 不動産の全部事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 売買契約書の案
  • 不動産会社が作成した査定書

申立書には、売却代金の使い道や、売却の必要性などを記載し、やむを得ない理由で売却するかどうかが審理されます。

なお、居住用以外の不動産を売却する場合には、裁判所の許可は不要です。
本人のための正当な理由があれば、成年後見人の判断で売却できます。

※自宅が一戸建てなら、ひとまず売らずにリバースモーゲージを利用する手段もある

リバースモーゲージは、自宅を担保にして借入する制度です。
借入後も自宅に住み続けることができ、生存中は返済する必要がありません。
借入金は、本人が亡くなったときに、不動産を売却して返済するのが一般的です。

認知症で判断能力がない場合には、本人がリバースモーゲージを契約することはできません。

成年後見人の判断で利用するときは、自宅に担保を設定するので、売却と同様に家庭裁判所の許可が必要です。
リバースモーゲージの利用には推定相続人の同意が必要です。
また、一戸建てが対象となり、マンションでは利用できないのが一般的です。

3-6. 買主と売買契約を結ぶ

居住用不動産の売却について家庭裁判所の許可が下りたら、売買契約を結びます。
売買契約は原則として、法定代理人と買主が不動産会社などに集まって契約内容を確認し、署名押印します。

なお、居住用不動産の売却で、家庭裁判所の許可が下りる前に、「裁判所の許可が得られた場合に契約の効力が発生する」という条件を付けて売買契約を結ぶ場合もあります。

3-7. 決済、引渡し

決済は、法定後見人・買主・不動産会社・司法書士が金融機関などに集まって行うのが一般的です。
買主から残りの売買代金を受領し、不動産を引き渡します。
決済日当日に、司法書士が法務局に申請書類を提出して、所有権移転登記を行います。

成年後見制度について詳しく知りたい方は、法務省のパンフレットも参考になさってください。

参考:法務省「成年後見制度 成年後見登記

まとめ

それではおさらいです。
重度の認知症で「意思能力」がない場合には、不動産の売買契約は結べません。
委任状を用意して、代理人を立てることもできません。
そのような場合でも、「法定後見制度」を使えば、売却が可能になります。

法定後見制度を使って不動産を売却するには、まず法定後見人の選任を家庭裁判所に申立てします。
後見人が選任されたら、不動産会社と「媒介契約」を結んで不動産を売り出します。
買主が見つかったら売買契約を結び、家の売却の場合には裁判所の許可を受けてから、決済・引き渡しとなります。

お急ぎの場合には、裁判所の手続きと不動産の売却準備を同時並行して進めたほうがいいので、まずは「不動産売却 HOME4U」で複数の不動産会社から査定を受け、不動産会社選びから始めてみてください。

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