不動産の相続登記とは?3つのケース別の必要書類を全解説

不動産の相続登記 3つのケースを全解説

土地や建物といった不動産を相続したときは、相続登記を行なわなければなりません。しかし、相続登記の申請をする際には、状況によって異なる書類の提出が求められます。

そこで本記事では、相続登記の必要書類について3つのケースに分けて詳しく解説します。申請手続きを円滑に進めるためにも、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 相続登記の基礎知識
  • 相続登記が必要な3つのケース
  • ケース別の相続登記の必要書類
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1.不動産の相続登記とは?

相続

亡くなった親族が所有していた不動産を相続した場合、譲り受けた土地や建物の名義変更をする必要があります。そのための手続きが「相続登記」です。相続登記を申請することにより、土地や建物の所有者を、「亡くなった方」から「相続した方」に移転できます。

はじめに、相続登記の基礎知識として、以下の内容を見ていきましょう。

  • 登記を行なわないリスク
  • 登記の申請期限
  • 登記にかかる費用

1-1.登記を行なわないリスク

土地や建物を相続したという事実は、自分と親族が承知していれば問題ないと考える方もいるかもしれません。しかし、不動産の登記を申請しないまま放置することにはリスクがあります。第三者から見れば、登記されない限り、相続があったことにはなりません。

つまり、登記を怠ると、相続人が「この物件の所有権は自分にある」と法的に主張できないのです。したがって、不動産を相続したら、早めに登記を済ませることが重要です。

1-2.登記の申請期限

登記を行なわないことにはリスクがありますが、これまで相続登記は義務ではありませんでした。

しかし、2024年(令和6年)4月1日からは、相続登記が義務化されます。相続人は今後、不動産の権利を得たことを知った日から3年以内に、登記を申請しなければなりません。

この制度変更は、登記が任意だったために所有者が不明な土地が増加し、社会問題となっていたことを受けて実施されるものです。制度変更後は、相続人は期限までに法務局で登記申請の手続きを終える必要があり、正当な理由なく義務を果たさなかった場合はペナルティの対象となります。

想像登記の義務化について詳しく知りたい方は「相続登記の義務化は2024年4月1日から!申請期限と罰則は事前に把握しよう」を確認してください。

なお、登記の手続きは司法書士(弁護士)に委任することも可能です。「権利関係が複雑で申請が難しそう」「急いで登記を済ませたい」といった事情がある場合は、司法書士(弁護士)に相談してみるとよいでしょう。

1-3.登記にかかる費用

登記を申請する際には、「登録免許税」という税金がかかります。不動産の所有権移転登記における税額は、土地や建物の評価額(自治体ごとの固定資産課税台帳による価格)に所定の税率をかけた金額です。

<登録免許税の税率>

内容 税率
売買 2%(※)
相続 0.4%
贈与・交換など 2%

(※1)2026年(令和8年)3月31日までに登記を受ける場合、1.5%

出典:“No.7191 登録免許税の税額表”. 国税庁

なお、申請手続きを委任する場合は、登録免許税と併せて司法書士に支払う報酬も必要です。具体的な報酬額は依頼先や依頼内容によって異なりますが、おおむね5~12万円が相場です。

2.相続登記が必要な3つのケースとそれぞれの必要書類

相続登記の申請に必要な書類は、以下のどのケースに該当するかによって変わります。

  • 法定相続分どおりに相続登記する
  • 遺産分割協議によって相続登記する
  • 遺言書に沿って相続登記する

主に「遺言書があるか」と「遺産分割協議を行なうか」の2つの条件によって、どのケースになるかが決まると考えればわかりやすいでしょう。

相続登記のパターン

  1. 法定相続パターン:法定相続分に基づいて、法的な権利をもつ相続人が遺産を相続する。
  2. 遺産分割パターン:遺産分割協議の内容に基づいて、遺産を分割する。
  3. 遺産パターン:遺言書の内容に基づいて、法定相続人に遺産を分割する。
  4. 遺贈登記パターン:遺言書で指定された法定相続人以外の相続人が、相続した不動産の登記手続き(遺贈登記)をする。遺贈登記は、相続人がその所有権を第三者に主張するために行なう。

なお、必要書類には役所やコンビニエンスストアで取得できるもののほか、「登記申請書」のように自分で作成しなければならない書類もあります。

3.法定相続分どおりに相続登記する場合の必要書類

法定相続分とは、民法で定められている相続の割合のことです。それぞれの法定相続人が、どれくらいの割合で財産を受け取るのかを決める際の目安だと考えればよいでしょう。

また、法定相続人とは、民法で規定されている相続の権利がある人物のことです。配偶者は必ず法定相続人であり、加えて「直系卑属(子や孫)」「直系尊属(父母や祖父母)」「傍系血族(兄弟や姉妹)」の優先順位で権利を得ることになります。

法定相続人と法定相続分

※兄弟・姉妹が複数いる場合には、法定相続分を兄弟・姉妹の人数で割る

参考:“No.4132 相続人の範囲と法定相続分”. 国税庁. (参照2024-03-22)をもとに、HOME4Uが独自に作成

法定相続分どおりの相続登記は、本記事で説明している3つのケースのなかで最も基本的といえるものです。

ここからは、法務局への申請の際にそろえて提出する必要がある、以下の書類について説明します。

  • 被相続人の全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)
  • 不動産取得者の住民票
  • 固定資産課税明細書
  • 登記申請書
  • 委任状
  • 相続関係説明図

3-1.被相続人の全部事項証明書(戸籍謄本)

被相続人(亡くなった方)を証明するための書類として、出生から死亡までの経過を確認できる「全部事項証明書(戸籍謄本)」または「除籍全部事項証明書(除籍謄本)」が必要です。

また、被相続人が1994年(平成6年)の制度改正以前に生まれている場合は、「改製原戸籍(旧様式の戸籍のこと)」の提出も求められます。

上記のいずれも、被相続人の本籍地がある市区町村から取得できます。

3-2.被相続人の住民票の除票

被相続人の最終的な住所・氏名が、登記された内容と異なる場合は、「住民票の除票」または「戸籍の附票」の提出が必要です。これらの書類は、登記があった時点から現在までの経緯を確認するために使用されます。

住民票の除票は住まいのあった市区町村から、戸籍の附票は本籍地の市区町村から取得できます。

3-3.相続人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)

相続人であることを確認するための書類として、「全部事項証明書(戸籍謄本)」または「戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)」の提出が必要です。これらの書類は、財産を相続する全員の分が求められます。

いずれも本籍地の市区町村から取得可能です。ただし、被相続人が亡くなった日以降に発行されたものでなければなりません。

3-4.不動産取得者の住民票

不動産の相続人となる方の住所を証明する書類として、住民票の提出が求められます。これは、不動産を相続する全員の分が必要です。

住民票は、住んでいる市区町村から取得できます。

3-5.固定資産課税明細書

「固定資産課税明細書」は、登録免許税の税額を計算する際の根拠となる評価額が正しいことを確認するための書類です。毎年4月頃に市区町村から送付されるため、相続する物件のものを用意しておきましょう。ただし、登記を申請する年度のものである必要があります。

なお、固定資産課税明細書の代わりに「固定資産評価証明書」を用いることも可能です。こちらの書類は、市区町村(東京都23区の場合は都税事務所)から取得できます。

3-6.登記申請書

「登記申請書」は、新たに不動産の所有者となる方が作成しなければならない書類です。法務局から所定の様式を取得し、記載例にしたがって作成しましょう。

法定相続分のとおりに相続するのであれば、相続人のうちの1人が登記申請書を作成して全員分を申請することも可能です。

なお、手続きを司法書士に委任する場合は、登記申請書の作成も代行してもらえます。

3-7.委任状

代理人による申請の際には、委任状の提出が求められます。

委任状は、司法書士に手続きを委任するのに必要な書類です。委任状の書式は司法書士が作成してくれるため、内容を確認したうえで日付・住所・氏名を記入し、押印すればよいでしょう。

なお、相続人が自分で申請手続を行なうのであれば、委任状を提出する必要はありません。

3-8.相続関係説明図

「相続関係説明図」とは、相続人それぞれが被相続人とどのような関係にあるのかを説明するための書類です。家系図のようなものだと考えればよいでしょう。

この書類は、相続登記の手続きが完了したあとに、「全部事項証明書(戸籍謄本)」や「除籍全部事項証明書(除籍謄本)」を返却してもらいたい場合に必要です。これらの書類の返却を希望しないのであれば、相続関係説明図の提出は求められません。

4.遺産分割協議を経て相続登記する場合の必要書類

遺産分割協議書

「遺産分割協議」とは、どのように遺産を分けるかを相続人全員で話し合って決めることです。

遺産分割協議を経て相続登記をする際には、法定相続分どおりの相続登記の必要書類に加えて、以下の書類も必須です。

  • 遺産分割協議書
  • 相続人の印鑑証明書

ここでは、遺産分割協議を行なったうえで相続登記をする場合の必要書類について説明します。

4-1.遺産分割協議書

「遺産分割協議書」は、遺産分割協議の結果を書面にしたものです。この書類には相続人全員が署名し、実印を押す必要があります。

相続人が1人でも欠けてしまうと、有効な遺産分割協議書とは認められません。未成年の相続人がいる場合は、代理人(親権者など)が遺産分割協議に参加し、署名して実印を押します。

遺産分割協議について詳しく知りたい方は、「遺産分割、協議の流れと4つの方法とは?」も併せてご覧ください。

4-2.相続人の印鑑証明書

すべての相続人について、印鑑証明書の提出が求められます。これは、遺産分割協議書への押印に用いる印鑑と同じものでなければなりません。

印鑑証明書は、相続人それぞれが住んでいる市区町村から取得可能です。

なお、相続人が未成年のために代理人が遺産分割協議に加わった場合は、印鑑証明書も代理人のものを用意する必要があります。

5.遺言書に沿って相続登記する場合の必要書類

不動産の相続に関して、遺言が残されている場合もあるでしょう。

ここでは、遺言書に沿って相続登記を行なう場合の必要書類について説明します。法定相続分どおりの相続登記で提出が求められる書類に加えて、以下も必要書類となっています。

  • 遺言書
  • 遺言執行者の印鑑証明書
  • 遺言執行者選任審判謄本
  • 相続人の印鑑証明書

5-1.遺言書

相続登記では、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類の遺言書のうち、いずれかの提出が求められます。

自筆証書遺言または秘密証書遺言を用いる場合は、家庭裁判所による検認(遺言の存在を相続人に知らせるとともに、偽造・変造を防止すること)の手続きが必要です。

ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用しているのであれば、家庭裁判所による検認は必要ありません。

参考:“自筆証書遺言書保管制度について”. 法務省

5-2.遺言執行者の印鑑証明書

法定相続人でない方が遺言による相続を受けるとき、「遺言執行者」が選任されている場合には、遺言執行者の印鑑証明書が必要です。

遺言執行者とは、遺言を実現する役割を担う方のことで、遺言によって選ばれるほか、家庭裁判所に選任されることもあります。具体的には、相続財産を管理するとともに、遺言執行の権利・義務を有します。相続人が、遺言執行者の行為を妨げることはできません。

遺言執行者の印鑑証明書は、選任された方が住んでいる市区町村から取得できます。

5-3.遺言執行者選任審判謄本

「遺言執行者選任審判謄本」は、法定相続人ではない方が遺言により相続を受けるとき、遺言執行者が家庭裁判所によって選任された場合に必要な書類です。

この書類は、家庭裁判所で審理が行なわれて遺言執行者が選任されたあとに、申立人と遺言執行者に送付されます。

5-4.相続人の印鑑証明書

法定相続人でない方が遺言によって相続を受けることになっているものの、遺言執行者がいない場合には、相続人の印鑑証明書が必要です。

このとき、すべての相続人が印鑑証明書を提出する必要があります。印鑑証明書は、それぞれの相続人が住んでいる市区町村で取得可能です。

6.相続した不動産を売却する場合

住まいと電卓

不動産を相続することになったものの、「遠方にあるため管理しきれない」「所有していても今後の使い道がない」「毎年の固定資産税の支払いが苦しい」といった理由から売却を検討している方もいるでしょう。

その場合は、相続登記による名義変更を済ませたうえで、不動産会社に査定を依頼して売却価格の目安を確認することから始めるのがおすすめです。

依頼する不動産会社によって、査定価格に数百万円の差が出ることもあります。少しでも高く売るためには、複数の不動産会社に一括で査定を依頼し、査定結果や対応の質などを比べるとよいでしょう。

まとめ

不動産を相続したときは、土地や建物の名義を変更するために相続登記が必要であり、これを怠るとさまざまな不都合が生じる恐れがあります。そして、2024年(令和6年)4月1日からは、相続登記が義務化されます。

相続登記に必要な書類は、遺言書や遺産分割協議の有無によって変わります。本記事の内容を参考に、申請してください。

なお、不動産を相続すると、毎年の固定資産税などのコストが発生します。相続した土地や建物が遠方にあったり、今後の活用予定がなかったりして、持て余している方も多いでしょう。

ご自身にとって不要な不動産であれば、売却を検討してみるのもおすすめです。早めに手放すことで、固定資産税の支払いや定期的なメンテナンス費用なども不要になります。

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