買い戻し特約とは?期間や抹消手続き、再売買の予約との違いも解説

買い戻し特約とは 有効期間や抹消手続き

不動産には、「買い戻し特約」と呼ばれる特別な条件が付加されていることがあります。買い戻し特約とは、一定期間内なら売却した不動産を買い戻せるという特約のことです。

本記事では、買い戻し特約の概要や有効期間、抹消手続きを解説するとともに、「再売買の予約」との違いなどについてわかりやすく紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 買い戻し特約の有効期間や抹消手続き
  • 買い戻し特約を付けた不動産が売れにくい理由
  • 買い戻し特約と再売買の予約との違い
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1.買い戻し特約とは?

買い戻し特約とは、不動産の売買契約時に付ける契約解除の特約で、民法第579条(買戻しの特約)に定められています。具体的には、売主が買主に売買代金・契約費用を返還することで、一定期間内なら対象の不動産を取り戻せるという内容です。

137_1(買い戻し特約の仕組み)

例えば、公的機関の宅地分譲事業において、買い戻し特約が付けられる場合があります。買主が以下のような条件を守らなかったときに、売主である自治体などが、買い戻し特約により分譲した土地を買い戻せる仕組みです。

  • 取得した土地に一定期間内に住宅を建てる
  • 建てた住宅に買主自らが居住する
  • 取得した土地を一定期間内に転売・貸付しない

なお、民法第581条に基づき、所有権移転登記と同時に買い戻し特約を登記することで、買い戻しを第三者に主張できます。

参考:“民法第三節第三款”. e-Gov法令検索

所有権移転登記については、「所有権移転登記とは?どのタイミングで実施する?手続きと必要書類も解説」をご覧ください。

2.買い戻し特約の有効期間

契約

買い戻し特約により、売主が買い戻しを主張できる期間は最長10年です。仮に、「買い戻し期間は15年」などと10年を超える期間を定めて契約したとしても、10年に短縮される点に注意しましょう。

一方、期間が具体的に定められなかった場合は、最長5年として扱われます。

また、売買契約時に「買い戻し期間は7年」と定めたなら、あとから「10年に延長する」といった変更はできません。

参考:“民法第五百八十条”. e-Gov法令検索

3.買い戻し特約を抹消するには、手続きが必要

前述のとおり、買い戻し特約には有効期間があります。しかし、その期間を過ぎたからといって、特約の存在が自然に消滅するわけではありません。

買い戻し特約の有効期間が過ぎたら、登記事項証明書(登記簿謄本)から抹消する手続きが必要です。

買い戻し特約の抹消登記は、原則として不動産の売主と買主が共同で申請します。

公的機関の宅地分譲事業を例にとると、よくある手続きの流れは以下の2パターンです。

137_2(買い戻し特約の抹消登記)

パターン(1) 1.不動産の買主または代理人(司法書士など)が必要書類を作成する
2.公的機関に書類を提出する
3.公的機関が法務局で抹消登記申請をする
パターン(2) 1.不動産の買主または代理人と、公的機関との間で必要書類を作成する
2.買主または代理人が法務局で抹消登記申請をする

買い戻し特約の抹消登記にかかる登録免許税は、原則として不動産1件につき1,000円です。

参考:“登録免許税法”. e-Gov法令検索. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

なお、相続登記や抵当権抹消登記の手続きの際に、買い戻し特約が残っていたことに気付くケースも少なくありません。不動産を売却する予定がある場合などは、買い戻し特約に気付いた段階で、早めに抹消しておく必要があります。

3-1.2023年(令和5年)4月から、単独申請が可能に

上記のパターン(1)(2)の手続きの流れを見ると、どちらも売主(この例では公的機関)との協力が必要であることがわかります。

しかし、改正不動産登記法が2023年(令和5年)4月1日に施行され、買い戻し特約の抹消登記は、不動産の買主が単独で申請できるようになりました。対象となるのは、売買契約から10年が経過しているケースです。

参考:“不動産登記法第六十九条の二”. e-Gov法令検索

4.買い戻し特約を付けた不動産が売れにくい理由

ローン

「所有する不動産に買い戻し特約を付けて売却したい」と考える方もいるかもしれません。しかし、買い戻し特約を付けると、不動産が売れにくくなる可能性があります。

ここでは、買い戻し特約を付けた不動産が売れにくい2つの理由を解説します。

4-1.一時的に不動産を所有したい方は少ないから

不動産を購入する方の多くは、その不動産を半永久的に所有することを目的としています。

買い戻し特約が付いていると、期限の定めがあるとはいえ、「不動産を買い戻されるかもしれない」という不安定な状況に置かれます。したがって、買い戻し特約が付いた不動産は、多くの場合好まれません。

実際に、買い戻し特約を付けた不動産は、一般の相場よりも安い価格で取り引きされる傾向にあります。

4-2.物価変動により買主が損をする可能性があるから

買い戻し特約は最大10年間有効となるため、その期間中に物価が変動する可能性があります。

不動産を買い戻す際は、売主が買主に売買代金と契約費用を返還する必要があり、その金額は当初の売買取引と一致していなければなりません。そのため、以下のようなことが起こり得ます。

買主が3,000万円を支払い、不動産を購入したとします。その後物価が上昇し、不動産の価格が3,500万円になりました。

そのとき、売主が不動産の買い戻しを希望します。しかし、売主から買主へ返還される金額は、当初の売買取引と同額の3,000万円です。すなわち、買主は実質500万円分の損をしてしまうのです。

137_3(買い戻し特約と物価変動)

一方で、逆に物価が下落した場合は、買主が利益を得られる可能性もあるでしょう。しかし、物価変動を確実に予測することはできないため、買い戻し特約の付いた不動産の購入にはリスクがあります。

5.「再売買の予約」という選択肢もある

書類と印鑑

買い戻し特約と似た制度に、「再売買の予約」があります。再売買の予約とは、その名のとおり、一度売却したものを将来買い戻す旨を予約することで、不動産以外の目的物も対象に含まれます。

買い戻し特約は、当初の売買取引と同額で買い戻すという決まりがありますが、再売買の予約の場合は、買い戻す際の金額に決まりがないのが特徴です。

したがって、再売買の予約なら、買い戻す際に物価変動などを考慮した金額を設定でき、当初の買主が損をする可能性も低くなるでしょう。また、再売買の予約は当初の売買契約時に設定しなくても、当事者間の合意があればあとから付加できます。

このように、自由度の高い再売買の予約は、リースバックの買い戻しにも用いられています。

リースバックの仕組みなどを知りたい方は、「リースバックの仕組みとは?利用条件やデメリット、注意点まで全解説」をご覧ください。

まとめ

買い戻し特約は、売主が買主に売買代金・契約費用を返還することで、最長10年間は対象の不動産を取り戻せるという特約です。

有効期間が過ぎた買い戻し特約を抹消するには、手続きが必要です。不動産を売却する予定がある場合などは、早めに手続きを済ませましょう。

買い戻し特約を抹消したあとは、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト、「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」で不動産の売却先を探すのがおすすめです。

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