検査済証とは?取得の流れや必要な場面、再発行の可否について解説

検査済証とは 取得の流れや必要な場面

不動産売却時にはさまざまな書類が必要ですが、その一つが「検査済証」です。検査済証は、建築物やその敷地が建築基準法やその他の関連規定に違反していないことを証明するための書類です。

本記事では、検査済証の概要や取得の流れ、検査済証が必要な場面、再発行の可否について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 検査済証の概要
  • 検査済証を取得する流れ
  • 検査済証が必要な場面
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1.検査済証とは?

検査済証とは、建築物や敷地が建築基準法や関連規定などに違反していないことを証明するための書類です。建築基準法に基づく「完了検査」をクリアした建物に対し、役所の建築主事もしくは指定された民間の確認検査機関が発行します。

検査済証

引用:“耐震マーク記入例1”. 東京都耐震ポータルサイト.(参照2024-03-07)

建物を使うためには、検査済証が必要です。この書類が発行された建物は、建築基準法などに適合している「合法の建物」として扱われます。

検査済証の目的は明文化されていませんが、「建物の質の向上や建物を利用する方の安全確保」を目的にしていると考えられます。

検査済証は、主に不動産売却の際に使用する書類です。その他の不動産売却時の必要書類について知りたい方は、「【不動産売却】土地・建物を売却する際の必要書類とは?」もご覧ください。

1-1.検査済証の取得は義務?

法令上、検査済証の発行・取得は義務化されていませんが、建物を建てる場合は竣工後に完了検査を受ける義務があります。完了検査を通過すれば、検査済証が発行されるので、義務を履行したことを証明できるようになります。

参考:“建築確認検査制度の概要”. 国土交通省.2019-03-14

また、詳細は後述しますが、住宅ローンの審査を受ける際には検査済証の確認が必要です。現状、不動産を購入する方の大半が住宅ローンを利用しているので、書類取得が実質的に義務化されているといえるでしょう。

ただし、完了検査がきちんと実施されるようになったのは2000年(平成12年)以降なので、それ以前に建てられた建物では未取得の可能性があります。

国土交通省が公表した調査データでは、建築確認件数に対する検査済証の発行数は特定行政庁と指定確認検査機関を合わせて、1998年(平成10年)で約38%、2000年(平成12年)でようやく約57%という結果でした。

なお、直近10年間では90%前後で推移しているので、大半の建物で完了検査が済んでいることがわかります。

参考:“建築基準法施行関係統計報告集計結果表 令和3年度集計”. 国土交通省

なお、検査済証の発行数が増加した背景には、住宅ローン審査に関する指針変更や違法建築物の規制強化などがあります。

参考:“新築の建築物向け融資における検査済証の活用等による建築基準関係規定遵守について”. 国土交通省.2003-02-24

1-2.建築確認・中間検査・完了検査について

完了検査を受けるには、事前に「建築確認」をクリアする必要があります。また、建築工事に特定工程(工事完了後に中間検査を申請する必要がある工程)が含まれる場合には、「中間検査」も通過しなければなりません。

詳細は下表のとおりです。

名称 検査の概要 発行される書類
建築確認 建築計画が建築基準法や関連規定に適合しているかどうか、着工前に確認すること。
建物の新築時だけではなく、改築・増築・移転などの際にも受ける必要がある。
建築確認をクリアしない限り、着工ができない。
確認済証
中間検査 特定工程に該当する工事の終了後に、現場検査を行なうこと。
中間検査をクリアしなければ、その先の工程に進めない。
中間検査の対象となる建物の種類は特定行政庁が自由に決められるため、各自治体によって中間検査の要否も異なる。
中間検査合格証
完了検査 建築確認をクリアした建築計画に沿って工事が進んだかどうか、竣工後に確認すること。
完了検査をクリアしない限り、建物は使用できない。
検査済証

なお、建築確認・中間検査に関する書類も完了検査と同様に、役所の建築主事もしくは民間の確認検査機関が発行します。

2.検査済証を取得する流れ

検査

検査済証などの各種書類の取得は、以下の流れで進行します。

検査済証取得の流れ

  1. 建築計画
    地盤調査・土壌検査・周辺環境の調査・費用の概算作成などを実施し、法令を遵守した建築計画を作成する
  2. 建築確認
    建物を建てる敷地や建物の構造・設備などが法令に適合しているかどうか、検査機関が確認する。これをクリアすれば、確認済証が発行される。
  3. 着工
    建築確認が済んだら、工事がスタートする。その際、騒音トラブルや事故を防ぐため、近隣住民への挨拶まわりが必須。地鎮祭を実施することもある。
  4. 中間検査
    各自治体が定めた特定工程を要する場合、その工事が完了した時点で中間検査を受ける。この検査にクリアすれば、中間検査合格証が発行される。
  5. 竣工
    工事が一通り完了したら、引き渡しに向けて準備を行なう。
  6. 完了検査
    建築計画に沿って工事が行なわれたかどうか、検査機関が確認する。これをクリアすれば、検査済証が発行される。
  7. 引き渡し
    完了検査が済んだら、物件の引き渡しを済ませて対応終了。ここまでの過程で発行された書類は、買主に渡される。

3つの書類を漏れなく取得できるよう、スケジュール管理をしっかり行ないましょう。

3.【検査済証】検査申請から取得までの期間

砂時計

完了検査を受けるには、工事完了日から4日以内に検査機関に申請する必要があります。そして、申請受理から7日以内に検査が実施され、書類が発行されるという流れが基本です。

建築主は、第六条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。

前項の規定による申請は、第六条第一項の規定による工事が完了した日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員(以下この章において「建築主事等」という。)は、その申請を受理した日から七日以内に、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。

引用:“建築基準法 第七条”. e-Gov法令検索

ただし、申請内容に何らかの不備があったり、検査にクリアできなかったりすると、取得までの期間が延びてしまいます。完了検査の申請手続きは、基本的に施行会社が代理で行なうものですが、申請が行なわれているか不安な場合は、自身でも確認したほうがよいでしょう。

また、建築確認は木造2階建て以下の戸建て住宅などであれば、申請受理から7日以内に検査を行ない、確認済証が発行されます。

建築主事は、第一項の申請書を受理した場合においては、同項第一号から第三号までに係るものにあつてはその受理した日から三十五日以内に、同項第四号に係るものにあつてはその受理した日から七日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならない。

引用:“建築基準法 第六条”.e-Gov法令検索

一方、大規模建築物および特殊建築物の場合は、申請受理から35日以内と期間が長くなっています。

一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの
二 木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの
三 木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物

引用:“建築基準法 第六条”.e-Gov法令検索

中間検査については、特定工程の工事完了日から4日以内に申請する必要があります。申請受理後は4日以内に検査が実施され、中間検査合格証が発行されます。

前項の規定による申請は、特定工程に係る工事を終えた日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事等は、その申請を受理した日から四日以内に、当該申請に係る工事中の建築物等(建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事中の建築物及びその敷地をいう。以下この章において同じ。)について、検査前に施工された工事に係る建築物の部分及びその敷地が建築基準関係規定に適合するかどうかを検査しなければならない。

引用:“建築基準法 第七条の三(建築物に関する中間検査)”.e-Gov法令検索

4.検査済証が必要な場面とは?

説明

検査済証は、主に以下のような場面で必要になります。

検査済証が必要な場面

  • 建物を使用するとき
  • 住宅ローンの審査を受けるとき
  • 増改築を行なうとき
  • 不動産を売却するとき

それぞれ詳細をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

4-1.建物を使用するとき

前述のとおり、検査済証を取得していないと、対象の建物を使用できません。つまり、居住用物件(マイホーム)であれば住めない、投資用物件であれば運用できない、ということになります。

ただし、築古の中古物件においては、検査済証がない場合があり、その場合でも居住したり、賃貸住宅として運用したりできます。

参考:“検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について”. 国土交通省.2014-07

4-2.住宅ローンの審査を受けるとき

住宅ローンの審査では多くの場合、金融機関などから確認済証・検査済証の提出を求められます。提出できなければ、住宅ローンの契約締結を断られてしまうケースが多いでしょう。

上記の書類がない場合には、建築基準法の規定に違反していることも考えられます。そのような不動産に融資すると、コンプライアンス上の問題が生じて、金融機関が不利益を被ることになりかねません。

投資用物件を購入する際に使う「不動産投資ローン」の審査でも原則、検査済証が必要になります。

4-3.増改築を行なうとき

建築物の構造を変える増改築をする場合、新たに建築確認申請を行なう必要がありますが、その際にも検査済証が必要です。

検査済証の提出が求められる条件を一部紹介するので、こちらも併せてご確認ください。

  • 防火地域、準防火地域、防火指定外地域(10平米以上)で増築を行なうとき
  • 用途変更面積が200平米以上のとき
  • 3階建ての木造住宅や鉄骨造住宅の改築を行なうとき

一方、構造に影響しない軽微なリフォーム・リノベーションは建築確認申請が必要ないため、検査済証も不要です。

4-4.不動産を売却するとき

検査済証がないと、建物の適法性や安全性を証明できません。

不動産取引でやり取りする金額の大きさを考えると、買主にとってリスクが高いため、検査済証のない不動産は売却しづらい可能性が高いでしょう。仮に買主が見つかっても、割安価格での売却になるケースが多いです。

5.検査済証は再発行できる?

老夫婦

検査済証は、誤廃棄や盗難で紛失してしまったとしても、原則再発行はできません。したがって、保管場所や管理方法には十分に注意しましょう。

5-1.検査済証を紛失したときの対処法

検査済証を紛失してしまった場合には、「建物計画概要書」の取得で建物の適法性を証明することが可能です。建物計画概要書は、敷地面積や配置図といった情報を載せたものであり、建築確認番号と日付が記録されていれば、検査済証が発行済みであることがわかります。

また、建築確認台帳の内容をまとめた「台帳記載事項証明書」の取得でも、検査済証発行の事実を証明できます。

上記の書類はどちらも各自治体の役所で申請できるため、必要に応じて取得しましょう。

5-2.最初から検査済証がないときはどうする?

築年数が古い物件を購入した場合など、もともと検査済証がないケースもあります。その際には、法適合状況調査を依頼します。これは、専門の検査機関による現地調査や図面調査を通じ、建物の適法性を証明する調査です。

ただし、法適合状況調査を行なうには費用や時間を要するうえ、必要書類を準備する手間もかかります。また、調査で適法性が認められなかった場合には、改修が必要になることもあります。

まとめ

検査済証とは、建物が合法かつ建築計画どおりに建てられていることを証明する書類です。竣工後の完了検査が終わると、検査機関から発行されます。

検査済証がないと、建物を使用できないだけではなく、住宅ローンの契約や増改築も難しくなります。さらに、不動産売却にも影響しかねないため、紛失時・未取得時の対処法も併せて知っておくとよいでしょう。

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