表示登記とは?権利登記との違いやかかる費用、手続きの流れを解説

表示登記とは 依頼費用や手続きの流れ

土地や建物は、ケースに応じた「不動産登記」が必要です。特に建物を新築したときなど、これまで登記情報がない不動産の場合は、「表示登記」をしなければなりません。

本記事では、表示登記の概要や権利登記との違いのほか、表示登記にかかる費用相場や手続きの流れなどについて解説するので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 表示登記の概要と権利登記との違い
  • 表示登記を土地家屋調査士に依頼した場合の費用相場
  • 表示登記手続きの流れ
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1.表示登記とは?

住宅

表示登記とは、不動産(土地や建物)の存在や状況を示したもので、一筆の土地または一個の建物ごとに行ないます。具体的には、以下のような情報が登記されます。

不動産 登記項目
土地 所在
地番
地目
地積
登記原因
所有者
建物 所在
家屋番号
種類
構造
床面積
登記原因
所有者

所在をはじめとする表示登記がなされることで、不動産を特定できるようになります。

表示登記には法的な義務があり、土地や建物を取得してから、原則として1ヵ月以内に申請しなければなりません。手続きを怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

参考:
“不動産登記法”. e-Gov法令検索
“不動産登記のABC”.法務省

2.表示登記と表題登記、権利登記の違い

表示登記と混同しやすい用語に、「表題登記」や「権利登記」があります。ここでは、3つの登記の違いを解説します。

2-1.表示登記と表題登記の違い

結論からいうと、表示登記と表題登記は同義で用いられます。

不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)は、「表題部」と「権利部」に大きく分けられます。このうち、表示登記は表題部になされるものであることから、表題登記とも呼ばれます。

125_1(表題部と権利部)

2004年(平成16年)の不動産登記法の改正により、法律上は「表示登記」ではなく、「表題登記」の名称が用いられるようになりました。

参考:“不動産登記法第二条第二十号”.e-Gov法令検索

2-2.表示登記と権利登記の違い

表示登記と権利登記の関係を一言で表すと、表示登記は権利登記のベースとなるものであり、表示登記がなければ、権利登記の申請はできません。

また、登記事項証明書(登記簿謄本)における項目や、登記される内容についても、以下の表のとおり違いがあります。

登記の種類 登記の項目(表示箇所) 登記される内容
表示登記 表題部 不動産の基本情報
権利登記 権利部 不動産の権利に関する情報

権利登記がなされる権利部は、さらに「所有権に関する事項(甲区)」と「所有権以外の権利に関する事項(乙区)」に分けられるのが特徴です。

甲区には、不動産の所有権の保存や移転、差し押さえ、仮処分などの情報が記載されています。一方、乙区の「所有権以外の権利」には、抵当権や質権、地上権、賃借権などが該当し、その不動産に対して誰がどのような権利を持っているかが記載されます。

参考:
“不動産登記法第二条第四号”.e-Gov法令検索
“不動産登記のABC”.法務省

3.表示登記にかかる費用相場

費用相場

不動産の表示登記手続きは、土地家屋調査士に依頼可能です。ただし、対象となる不動産(土地または建物)や登記が必要になった原因によって、以下のように表示登記の種類が変わるため、費用相場も変動します。

ケース例 表示登記の種類
土地の用途が変わった場合 土地地目変更登記
土地を複数に分割した場合 土地分筆登記
建物を新築した場合 建物表題登記
建物を増改築した場合 建物表題変更登記

例えば、建物を新築して、建物の表示登記(建物表題登記)が必要な場合、土地家屋調査士への依頼費用は、8万~12万円程度かかるのが一般的です。

また、不動産会社や建設会社と提携している土地家屋調査士に依頼するケースでは、依頼費用がやや割高になる傾向があります。

3-1.表示登記の費用を左右する要素

表示登記は、種類によって費用相場が変わるだけでなく、いくつかの要素によって追加費用がかかることがあります。

3-1-1.建物の規模や構造

前述のとおり、建物の表示登記には、建物の種類や構造、床面積などが記載されます。

そのため、建物の規模が大きいほど、また構造が複雑なほど、建物の調査や書類作成に時間がかかり、費用も高額になります。具体的には、以下のような建物の場合には注意が必要です。

  • 面積が広い建物
  • 部屋数が多い建物
  • 階数が多い建物
  • 複数の棟に分かれている建物

3-1-2.申請の難易度

土地や建物の状況によって、登記申請の難易度も異なります。

例えば、資料が不足しており情報収集が困難なケースや、不動産の相続人が複数関わるケースなどは、登記申請をする土地家屋調査士の作業量が増えるため、依頼費用が高くなりやすいでしょう。

4.表示登記は自分でできる?

表示登記をビジネスとして(対価を得て)代理できるのは、土地家屋調査士のみです。したがって、表示登記手続きは、「土地家屋調査士に依頼する」または「自分で行なう」のいずれかが選択肢となります。

手続きを土地家屋調査士に依頼するとまとまった費用がかかるため、「自分で手続きをして依頼費用を節約したい」と考える方もいるかもしれません。

表示登記に関する情報を書籍やWebサイトで集めれば、自分で手続きすることも可能です。特に、小規模で単純な構造の建物なら、比較的スムーズに進めやすいでしょう。

ただし、表示登記の際には建物の図面なども作らなければならず、専門知識を持つ土地家屋調査士に依頼したほうが無難なケースも少なくありません。

次章で紹介する手続きの流れを参考に、自身で手続きできそうかを判断するとよいでしょう。

参考:“土地家屋調査士法”. e-Gov法令検索

5.表示登記の手続きの流れ

法務局

ここでは、表示登記に関連する一連の手続きの流れについて、建物を新築した場合の「建物表示(表題)登記」を想定して、5つのステップに分けて解説します。

125_2(表題登記の流れ)

  1. 資料調査
  2. 現地調査
  3. 申請書類作成
  4. 表示登記申請
  5. 所有権保存登記

なお、資料調査から所有権保存登記までの期間は、10~14日間程度かかるのが一般的であるため、手続きは余裕を持って行ないましょう。

5-1.資料調査

はじめに法務局で、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)や登記事項要約書を取得します。

登記事項証明書(登記簿謄本)と登記事項要約書の違いは、登記官による証明の有無です。表示登記の手続きでは、登記事項を証明書として用いるわけではないため、登記官の証明のない登記事項要約書でも問題ありません。

いずれかの資料をもとに、対象の土地に、存在しない建物の登記がなされていないかなどを調べましょう。また、各自治体の役所にて、新築した建物の所有者の住民票の写しも取得します。

なお、登記事項証明書(登記簿謄本)についての詳細は、「登記簿謄本(登記事項証明書)とは?種類や記載内容、取得方法」で解説しています。

5-2.現地調査

続いて、建物を建てる際に交付された建築確認通知書と、実際の建物との整合性を現地で調査します。建築確認通知書には、建物の基本情報とともに、平面図や立面図などの図面が添付されています。

また、建物表示登記でも図面を添付しなければならないため、現地で各種測量を実施しましょう。

5-3.申請書類作成

資料調査や現地調査で得たデータをもとに、建物表示登記の申請書類を作成します。準備すべき主な書類は、以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 建築確認通知書や検査済証など、所有者を証明する書類
  • 所有者の住民票の写し
  • 施工会社の工事完了引渡証明書
    ※印鑑証明書、登記事項証明書(登記簿謄本)を含む
  • 建物に関する図面
  • 委任状(代理人が申請する場合)

5-4.表示登記申請

必要書類を添付した登記申請書を、法務局に提出します。登記申請書が受け付けられたあとは、登記官などが現地調査を行ない、申請内容を審査する流れです。

内容に問題がなければ建物表示登記が完了し、登記申請書の写しを受け取ることができます。

5-5.所有権保存登記

建物の所有権を明示するため、建物表示登記完了後は「所有権保存登記」を行ないましょう。

表示登記は義務で、所有権保存登記は義務ではないのですが、所有権保存登記をしないと第三者に建物の所有権を主張できないため、速やかに手続きするのが理想です。

なお、表示登記の担当は土地家屋調査士ですが、所有権保存登記の担当は司法書士です。司法書士に所有権保存登記を頼む場合、一般的に2万~3万円程度の費用がかかります。

所有権保存登記の具体的な流れについては、「所有権保存登記とは?ほかの登記との違いや手続きの流れ、費用を解説」の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

表示登記(表題登記)は、土地や建物の存在や状況を示す登記で、権利登記のベースになります。建物を新築したり、土地の用途が変わったりして表示登記が必要な場合は、原則1ヵ月以内に申請しなければなりません。

表示登記の手続きは、土地家屋調査士に依頼するほか、自分で行なうことも可能です。ただし、プロである土地家屋調査士に依頼するほうが良いケースも少なくありません。土地家屋調査士に依頼する場合は、まとまった費用が必要になると覚えておいてください。

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