不動産売却時の取得費の計算方法│取得費の内訳と具体的な計算方法まで

不動産売却時には納税のために税金の計算が必要となるケースがあります。

たとえば、不動産売却時の譲渡所得税を算出するには、取得費の対象となるものを把握し、正しい計算方法を理解しておく必要があります。

しかし、初めての納税の場合「何が取得費の対象なのか」「取得費の計算方法がわからない」など、どこから手をつけるべきか悩む方も多いのではないでしょうか。

売却した不動産の取得税をスムーズに算出するには、

  • 建物の取得費の計算方法
  • 土地と建物の内訳が不明確な場合の計算方法
  • 売買契約書や領収書がない場合の計算方法

などを、一つひとつ押さえることが大切です。

本記事を最後までお読みいただくことで、建物の取得費の計算方法、土地と建物の内訳が不明な場合の計算方法などを理解し、損をしない不動産売却の税金の支払いができるでしょう。

「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「不動産を売りたいけど、どうしたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」なら複数社に査定依頼でき”最高価格”が見つかります
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます

1.不動産売却時の取得費は譲渡所得の計算に必要

不動産売却時の取得費とは、「譲渡所得」を算出する際に必要となる費目です。

譲渡所得とは、端的にいうと不動産売却時の利益分です。確定申告の際、適切に譲渡所得税を納めるためには、以下の計算式で譲渡所得を求める必要があります。

■譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 不動産売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

上記のように、譲渡所得を算出するには不動産売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引く必要があります。

取得費の内訳の詳細は「2.不動産売却時の取得費の対象となるもの」で後述しますが、売却した不動産を取得した際に発生した、購入代金、購入手数料などを含む費用などのことです。

取得費が不明だと譲渡所得を正確に算出できず、正しい譲渡所得税が計算できません。正しい譲渡所得を算出するためにも、どのような費用が所得費に該当するのか、次章で取得費の対象一覧と計算方法を確認しましょう。

なお、不動産売却時の税金の詳しい計算方法は、以下の記事で解説しています。

2.【一覧】不動産売却時の取得費の対象となるもの

不動産売却時の取得費の対象となるものは、以下のとおりです。

■取得費となるもの一覧

  • 土地・建物の購入代金
  • 建築代金
  • 仲介手数料
  • 設備費
  • 改良費(リフォーム費用など)
  • 購入時に発生した税金(登録免許税、印紙税、不動産取得税など)
  • 購入時の借主立退料、契約違約金など
  • 整地費、測量費、建物取り壊し費用など
  • 一定の借入金利子

参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」

なお、不動産所有時にかかったリフォーム費用・増改築費用は、取得費にできますが、不動産の価値を上げる場合のみの費用が対象です。

たとえば、耐震性を上げるための耐震工事やお風呂のバリアフリー化、複層ガラスによる断熱性のアップなどは対象ですが、故障した設備の修理など、建物の修繕や維持が目的のリフォーム費用は、取得費の対象外なので注意が必要です。

どれが取得費にあたるのか不明な場合は、売却を依頼する不動産会社に確認しましょう。

NTTデータグループが運営する一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」を利用すれば、信頼できる優良な不動産会社が見つかりやすくなります。
ぜひ「不動産売却 HOME4U」をご活用ください。

3.取得費は土地と建物を分けて計算する

取得費は、土地と建物を分けて計算する必要があります。

土地は年数が経過しても劣化しないと判断されますが、建物は使用して年数が経過すると劣化により価値が減少していくため、建物に対する「減価償却」の計算をして、その金額を差し引く必要があるからです。

減価償却とは、不動産が経年劣化によって、その価値が減少していくという考え方のことです。

そのため、土地は取得費として計上し、建物部分については不動産の購入金額や経過年数をもとに不動産売却の減価償却の計算をして、取得費を求めることになります。

4.建物の取得費の計算方法

建物の取得費の計算方法は、以下のとおりです。

建物の取得費 = 購入価格 − 減価償却費

建物の取得費を調べるには、不動産の購入代金から「減価償却費」を差し引く必要があります。

減価償却費とは、不動産の価値が低下することを事前に踏まえて、使用期間に従って見積もった費用のことです。

以下の項目から、取得費の算出方法を具体的に解説します。

4-1.耐用年数と償却率を調べる

減価償却費を計算するには、「耐用年数」と「償却率」を調べる必要があります。

耐用年数とは、経年によって建物の資産価値がなくなるまでの年数のことを指します。

耐用年数は、事業用と非事業用、建物構造の種類によって、それぞれ定められています。

たとえば、非事業用(居住用)の鉄筋コンクリート造であれば70年、木造であれば33年です。つまり、木造戸建てのマイホームの耐用年数は33年ということになります。

なお耐用年数は、国税庁により税務上の基準として設定された年数のため、実際に住むことができる建物の寿命とは異なります。

一方、建物の価値が毎年減少していく割合のことを「償却率」と言います。耐用年数と同じく、建物構造の種類によって割合は異なります。

建物ごとの耐用年数と、償却率を調べることで、減価償却費を算出できます。

非事業用の建物構造ごとの耐用年数と償却率は、以下のとおりです。

建物構造の種類 耐用年数 償却率
鉄筋コンクリート造 70年 0.015
金属造(骨格材の肉厚が4ミリ超) 51年 0.020
金属造(骨格材の肉厚が3ミリ超4ミリ以下) 40年 0.025
金属造(骨格材の肉厚が3ミリ以下) 28年 0.036
木造 33年 0.031
木造モルタル造 30年 0.034

出典:国税庁「「減価償却費」の計算について」

4-2.減価償却費を計算する

減価償却費を算出するためには、以下の計算式に当てはめて計算していきます。

■減価償却費の計算式

減価償却費 = 建物の取得費 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

建物の取得費は、「2.不動産売却時の取得費の対象となるもの」で解説した費用のことです。

経過年数とは、建物を購入してから売却して手放すまでの保有年数のことを指します。建物の築年数でないことに気をつけましょう。

また、経過年数の端数は、6ヶ月以上であれば切り上げ、6ヶ月未満であれば切り捨てして計算します。

たとえば、購入から売却までの期間が、10年1ヶ月であれば、6ヶ月未満は切り捨てとするため、「10年」と計算に含めます。

上記の内容を踏まえ、例を用いて実際に計算してみましょう。

■減価償却費シミュレーション

建物の取得費(※購入価格):3,000万円

建物の構造の種類:木造

建物の経過年数:20年3ヶ月

減価償却費の計算式に当てはめると、以下のとおりです。

3,000万円(取得費※購入価格) × 0.9 × 0.031(償却率) × 20(経過年数) = 1,674万円(減価償却費)

さらに、以下の計算式を用いて、「建物の取得費」を算出します。

■建物の取得費の計算方法

建物の取得費 = 購入価格 − 減価償却費

紹介した例を、上記の計算式に当てはめると、以下になります。

建物の取得費 = 3,000万円 − 1,674万円 = 1,324万円

建物の取得費は1,324万円と算出できました。

なお前述のとおり、土地に減価償却は発生しないため、購入費をそのまま取得費として計上できます。

仮に、土地取得に発生した費用が1,000万円であれば、建物の取得費1,324万円と合計した2,324万円が土地・建物の取得費になります。

5.土地と建物の内訳が不明確な場合の計算方法

土地と建物の内訳が不明確な場合の計算方法は、以下の4つです。

  • 売買契約書の消費税額から計算する
  • 標準建築単価を元に計算する
  • 売買契約書の記載内容を調べる
  • 固定資産税評価額を調べる

4つのポイントを理解すれば、土地・建物の購入金額が不明であっても、建物の購入代金を調べられます。

5-1.売買契約書の消費税額から計算する

建物の購入代金を求めるには、売買契約書の消費税から計算する方法があります。

土地には消費税がかからないため、消費税額が記載されていれば、建物のみの価格を割り出せます。

建物の購入代金を算出するための計算式は、以下のとおりです。

建物の購入代金 = 売買契約書の消費税額 ÷ 消費税率 + 消費税

なお、消費税率は、物件を購入した当時の税率を参考にします。

各年の消費税率をまとめた表は、以下のとおりです。

■購入年月日ごとの消費税率

購入年月 消費税率
平成元年4月1日~平成9年3月31日 3%
平成9年4月1日~平成26年3月31日 5%
平成26年4月1日~令和元年9月30日 8%
令和元年10月1日以降 10%

参考:総務省「地方消費税」

仮に、平成6年に5,000万円(そのうち消費税90万円)で土地・建物を購入した場合の計算式は以下になります。

建物の購入代金 = 90万円 ÷ 3% + 90万円 = 3,090万円

5-2.標準建築単価を元に計算する

売買契約書に消費税の記載がなければ、標準建築単価を元に計算する方法もあります。

標準建築単価とは、建物の取得費を求める際に基準となる金額のことです。

国税庁が公表しており、建築当時の1平米あたり標準単価から、建物の延床面積をかけることで算出できます。

建物の購入代金 = 建築年の標準建築単価 × 延床面積

建築年や構造ごとの標準建築単価は、以下のとおりです。

建築年 木造・木骨モルタル 鉄骨鉄筋コンクリート 鉄筋コンクリート 鉄骨
1975年 67.7 126.4 97.4 60.5
1980年 92.5 149.4 129.7 84.1
1985年 104.2 172.2 144.5 96.9
1990年 131.7 286.7 222.9 147.4
1995年 158.3 228.8 199.0 143.2
2000年 159.0 204.3 182.6 132.3
2005年 151.9 185.7 171.5 132.8/td>
2010年 156.5 226.4 205.9 163.0
2015年 165.4 262.2 240.2 197.3

単位:千円/平米

参考:国税庁「建物の標準的な建築価額表」

仮に、1990年建築の木造住宅で、延床面積が120平米であれば、以下の計算になります。

建物の購入代金 = 131.7千円 × 120 = 1,580万4,000円

5-3.売買契約書の記載内容を調べる

売買契約書の記載内容を調べることで、建物の購入代金を確認できます。

最も簡単なのは、不動産購入時の売買契約書に記載されている代金を計算に用いることです。

建物価格と土地価格が別々で記載されていれば、そのまま建物価格を計算に使用します。

別々に分かれていない場合は、消費税額から計算したり、標準建築単価を元に計算したりする必要があります。

5-4.固定資産税評価額を調べる

建物の購入代金を、固定資産税評価額から調べる方法もあります。

固定資産税評価額は、土地と建物でそれぞれ異なる価額なので、比率から建物の購入代金を求められます。

固定資産税評価額から、建物の購入代金を調べる計算式は、以下のとおりです。

建物の購入代金 = 土地・建物の購入代金 × 建物の評価額÷(建物の評価額 + 土地の評価額)

仮に、土地・建物の購入代金が3,000万円、建物の固定資産税評価額が800万円、土地の固定資産評価額が1,200万円であれば、以下の計算になります。

建物の購入代金 = 3,000万円 × 800万円 ÷(800万円 + 1200万円)= 1,200万円

さらに、土地・建物の購入金額から、建物の購入代金1,200万円を差し引くと、土地の購入代金も求められます。

土地の購入代金 = 3,000万円 − 1,200万円 = 1,800万円

6.「取得費が不明…」売買契約書や領収書がない場合の計算方法

「相続した不動産のため売買契約書や領収書が見つからず、取得費が不明…」といった場合でも、対策はあります。

国税庁は、購入金額が不明な場合は、売却収入額の5%を取得費として計算するよう定めています。

たとえば、不動産を3,000万円で売却した場合は、売却額の5%相当である150万円を取得費として計上できるということになります。

ただし、この計算方法だと実際の購入金額で計算した場合よりも、譲渡所得が高くなるケースがほとんどです。

少しでも税金を抑えるために、住宅ローンを借りた貸借契約書のコピーやローンの返済予定表、購入当初の価格が記載されているパンフレットなどの購入価格を証明できるような書類等を探してみましょう。購入当時の金額を推定できる可能性があります。

ここまで取得費にまつわる税金いついて解説してきましたが、不動産売却に関することは、不動産会社に相談するのもおすすめです。

知識が豊富で信頼できる不動産会社を探すには、一括査定サービスの「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご活用ください。まとめて複数社に同じ質問ができるため、担当者のレスポンスの速さや提供される情報の質などを簡単に比較でき、信頼できる不動産会社が見つけやすくなります。

無料で査定を依頼できますので、不動産売却がお決まりの方はぜひご利用ください。

この記事のポイント

不動産売却時の取得費の対象となるものは?

不動産売却時の取得費の対象となるものは、以下のとおりです。

  • 土地・建物の購入代金
  • 建築代金
  • 仲介手数料
  • 設備費
  • 改良費(リフォーム費用など)
  • 購入時に発生した税金(登録免許税、印紙税、不動産取得税など)
  • 購入時の借主立退料、契約違約金など
  • 整地費、測量費、建物取り壊し費用など
  • 一定の借入金利子

詳しくは「2.不動産売却時の取得費の対象となるもの」をご確認ください。

建物の取得費の計算方法は?

建物の取得費の計算方法は、以下のとおりです。

  • 耐用年数と償却率を調べる
  • 減価償却費を計算する

詳しくは「4.建物の取得費の計算方法」をご確認ください。

土地と建物の内訳が不明確な場合の計算方法は?

土地と建物の内訳が不明確な場合の計算方法は、以下のとおりです。

  • 売買契約書の消費税額から計算する
  • 標準建築単価を元に計算する
  • 売買契約書の記載内容を調べる
  • 固定資産税評価額を調べる

詳しくは「5.土地と建物の内訳が不明確な場合の計算方法」をご確認ください。