持ち家と賃貸、どちらを選ぶ?住まいの選び方について徹底解説

持ち家VS賃貸 選択のポイントを徹底比較

「持ち家と賃貸のどちらが良いか?」という問いに対する明確な答えはありません。しかし、「生活の器」といわれる住まいだからこそ、両者の違いをよく理解して慎重に検討したいですよね。

そこで本記事では、持ち家か賃貸かで迷っている方のために、それぞれのメリットとデメリット、生涯コストの違いなどを解説します。住み替えをお考えの方もぜひご覧ください。

この記事を読むと分かること
  • 持ち家と賃貸、それぞれのメリットとデメリット
  • 持ち家と賃貸、それぞれにかかる生涯コストの比較
  • 持ち家と賃貸を選ぶ際のポイント
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1.持ち家と賃貸を徹底比較|持ち家のメリット・デメリット

持ち家と賃貸の特徴を理解するにあたり、それぞれのメリット・デメリットを解説します。まずは、持ち家のメリット・デメリットから見ていきましょう。

1-1.持ち家のメリット

持ち家とは、個人が所有している家のことを指します。自宅の区分としてよく使われる言葉で、戸建てかマンションかの種類は関係ありません。

持ち家の最大の特徴は、自分のものである、ということです。そのため、次のようなメリットがあります。

1-1-1.自身の資産になる

持ち家は自身の所有物です。いざというときには売却したり親族に相続したりと、資産として活用することができます。また、家を担保に金融機関から融資を受けることも可能です。

1-1-2.住宅ローン完済後は住宅費が大幅に低減される

持ち家の場合、住宅ローンの完済後は月々の住宅費が大幅に低減します。日々のランニングコストが抑えられるため、その分を貯蓄にまわすなど老後に向けて準備ができます。ただし、固定資産税や建物のメンテナンス費用、分譲マンションの場合は管理費などは継続して必要です。

1-1-3.団体信用生命保険に加入していれば、万が一のときにも安心

団体信用生命保険(以下、団信)とは、住宅ローンの契約者が死亡した、または所定の高度障害になった場合などに、保険金によって住宅ローンが完済される制度です。民間の金融機関の多くは、住宅ローンの契約に際し団信への加入を要件としています。

1-1-4.リフォームや間取り変更が自由にできる

持ち家は賃貸に比べて、リフォームや間取りの変更の自由度が高い点も特徴です。ライフスタイルの変化に合わせて、より理想に近い家に住むことができます。

1-2.持ち家のデメリット

一方で持ち家は、自分のものであるがゆえのデメリットもあります。具体的には、以下のとおりです。

1-2-1.購入する際に、大きな資金が必要となる

物件を購入する際には、大きな資金が必要になります。住宅金融支援機構の「2022年度 フラット35利用者調査」によると、2022年度の建売住宅の平均購入費用は3,719万円でした。住宅ローンを利用する場合でも、初期費用として、必要であれば頭金のほか仲介手数料や、印紙税、不動産取得税などの税金、登記費用等が必要です。

参考:“2022年度 フラット35利用者調査”. 住宅金融支援機構

1-2-2.ローンを利用すると長期間の返済が必要になる

住宅ローンは高額な融資であり、多くの方が利用し、長期にわたって返済を行なっています。しかし、返済の途中で離職や離婚など予期せぬ出来事が起こり、返済が困難になる可能性も否定できません。

1-2-3.修繕や設備の交換はすべて自分で行なう必要がある

持ち家の場合、建物や設備のメンテナンスや経年劣化に対する修繕は、すべて自己負担です。業者の手配なども自身で行なうため、負担に感じる方もいるでしょう。分譲マンションでは定期的に大規模修繕が行なわれるため、月々の修繕積立金も必要です。

1-2-4.居住場所を簡単に変えることはできない

持ち家では住宅ローンを利用する場合が多く、返済が済んでいないうちは容易に居住場所を変えづらいのが難点です。結婚や出産、転勤などライフスタイルに変化が生じる可能性がある方は、十分に検討する必要があるでしょう。

2.持ち家と賃貸を徹底比較|賃貸のメリット・デメリット

住居とお金

次に、賃貸のメリット・デメリットについて解説します。

2-1.賃貸のメリット

賃貸の本来の意味は「賃料を取って、相手に物を貸すこと」ですが、不動産業界では一般的に、賃貸物件を略して賃貸と呼びます。

賃貸の最大の特徴は、自分のものではないことでしょう。それゆえに、以下のようなメリットがあります。

2-1-1.引越しが自由にできる

いつでも引越しができる点は、賃貸の大きなメリットです。ライフスタイルの変化に伴う転居はもちろん、住みにくい、飽きてしまった、といった理由で住居を変えられる自由があります。

2-1-2.メンテナンス費・修繕費がかからない

賃貸の場合は、建物のメンテナンスや修繕は基本的にオーナー(大家)が行ないます。設備等に関しても、入居者が故意に壊した場合などを除き、修理や交換の費用はオーナーが負担します。

2-1-3.固定資産税・都市計画税がかからない

持ち家の場合と異なり、賃貸では固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税といった税金の負担を求められません。

2-1-4.住み替えにより住居費をコントロールすることができる

住み替えにより住居費をコントロールできる点も、賃貸のメリットでしょう。例えば、収入が少ない時期や子育てにお金がかかる時期は家賃を安く抑え、収入が増えてきたら住居のグレードを上げるなど、住まいにかかるコストを選択する際の自由度が高いといえます。

2-2.賃貸のデメリット

賃貸は自分のものではないことを踏まえると、主に金銭面でのデメリットがあります。具体的には、以下のとおりです。

2-2-1.住み続ける限り、家賃を支払う必要がある

賃貸に住み続ける限り、月々の家賃負担が続きます。働いて収入があるうちはともかく、退職後は年金や老後資金から取り崩すことになるため、計画的に対策を立てておく必要があるでしょう。

2-2-2.定期的に更新料がかかる

居住地域にもよりますが、一般的に賃貸では定期的に更新料がかかります。関東圏では2年ごとの支払いとなる場合が多く、費用の相場は家賃の1ヵ月分とされています。収入が減る老後も賃貸に住み続ける場合は、更新料も計算に入れておきましょう。

2-2-3.老後は更新が難しくなる可能性がある

物件を借りられるかどうかは、オーナーの判断次第です。そのため、高齢者は、家賃の支払能力に不安がある、保証人が見つからない、といったことを理由に、更新や新規契約を断られる可能性もあります。

2-2-4.資産にならない

賃貸の場合、毎月の家賃を何十年と払っていても、自分の資産にはなりません。持ち家であれば貸し出したり売却したり、あるいは親族に相続するなど資産として活用する機会もありますが、賃貸ではそのような機会はありません。

3.持ち家と賃貸を徹底比較|それぞれの生涯コスト

持ち家と賃貸を徹底比較|それぞれの生涯コスト

持ち家の購入は賃貸に比べて高額になるというイメージがありますが、長い目で見たときにはどうでしょうか。持ち家と賃貸の生涯コストを比較するにあたり、まずはそれぞれにかかる主な費用を紹介します。

3-1.持ち家にかかるコスト

持ち家にかかるコストとしては、住宅の購入時にかかる費用と購入後にかかる費用があります。

住宅の購入にかかる費用

  • 住宅や土地などの購入費用(住宅ローン借入)
  • 初期費用(頭金や仲介手数料、印紙税、不動産取得税といった税金など)
  • 住宅ローンにかかる諸費用(事務手数料や保証料、印紙税、団体信用生命保険の保険料、火災保険料など)

住宅の購入後にかかる費用

  • 住宅ローンの返済
  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険などの保険料
  • 修繕費やリフォーム費用

分譲マンションの場合は、上記に加えて管理費、修繕積立金、駐車場代などが必要です。

3-2.賃貸にかかるコスト

賃貸にかかるコストとしては、物件の契約時にかかる費用と契約後にかかる費用、退去時にかかる費用があります。

契約時にかかる費用

  • 初期費用(敷金や礼金、前家賃)
  • 仲介手数料
  • 火災保険料(加入時)

契約後にかかる費用

  • 毎月の家賃(月額×期間分)
  • 管理費や共益費
  • 火災保険や家財保険など保険料
  • 駐車場代

退去時にかかる費用

  • 退去費用(修繕費用)
  • 引越し費用

4.持ち家と賃貸を徹底比較|生涯コストのシミュレーション

次に、持ち家と賃貸それぞれにおける生涯コストをシミュレーションします。

4-1.生涯コストシミュレーションに用いる費用

まず前提として、同じ物件を購入しても、例えば、住宅ローンの借入額や金利、家族構成などによって、かかる費用は異なります。

そこで、今回のシミュレーションでは、以下のモデルと項目をもとに、住居の種類やローンの借入額、居住年数などを変えてシミュレーションを行ない、傾向を確認します。

モデル
Aさん:30歳男性
家族構成:妻、子ども2人
居住エリア:東京近郊(3LDK)

シミュレーションに用いる項目

  • 持ち家の場合

物件の購入金額:4,000万円および5,000万円の2パターンを想定

算出費用:初期費用として頭金および諸費用(購入金額の7%とする)、住宅ローン支払い(固定金利1.4%、返済期間は最長の35年間とする)、固定資産税・都市計画税、火災保険料、修繕費

分譲マンションの場合は、上記に管理費、修繕積立金、駐車場代を加える

  • 賃貸の場合

家賃:14万円、65歳以降は11万円(2LDK)の物件に住み替え

算出費用:初期費用、賃料、契約更新料、管理費・共益費、火災保険料、駐車場代

4-2.生涯コストシミュレーション4選

さっそく具体的に計算していきましょう。

4-2-1.持ち家を購入する場合(1)

まずはAさんが住宅ローンの返済を終える65歳までの35年間、同じ持ち家に住むことを想定した生涯コストです。

●4,000万円の土地付きの建売戸建ての場合
項目 費用(頭金あり) 費用(頭金なし)
初期費用:
 頭金
 諸費用(7%)
400万円
280万円
0万円
280万円
住宅ローン支払い:
 住宅購入残金
 月々の支払金額※1
総支払額(月々の支払額×12ヵ月×35年)※2
3,600万円
10万8,471円
4,555万7,820円
4,000万円
12万524円
5,062万80円
固定資産税※3(年12万円×35年) 420万円 420万円
都市計画税※4(年4万円×35年) 140万円 140万円
火災保険料(年3万円×35年) 105万円 105万円
35年で想定される修繕費(年15万円×35年) 525万円 525万円
総額 6,425万7,820円 6,532万80円
●4,000万円の分譲マンションの場合
項目 費用(頭金あり) 費用(頭金なし)
初期費用:
 頭金
 諸費用(7%)
400万円
280万円
0万円
280万円
住宅ローン支払い:
 住宅購入残金※1
 月々の支払金額
総支払額(月々の支払額×12ヵ月×35年)※2
3,600万円
10万8,471円
4,555万7,820円
4,000万円
12万524円
5,032万80円
固定資産税※3・都市計画税※4(年20万円×35年) 700万円 700万円
管理費※5(月1万862円×12ヵ月×35年) 456万2,040円 456万2,040円
修繕積立金※6(月1万1,243円×12ヵ月×35年) 472万2,060円 472万2,060円
火災保険料(年3万円×35年) 105万円 105万円
駐車場代※7(月1万円×12ヵ月×35年) 420万円 420万円
総額 7,389万1,920円 7,465万4,180円

※1ローン返済金額は、PMT関数(金利、支払期間、借入総額)を用いて計算
※2住宅ローン控除が適用される場合がある
※3固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×1.4%(標準税率)」であり、詳細は個別に計算すること
※4都市計画税の計算式は「固定資産税評価額×制限税率(0.3%)」であり、詳細は個別に計算すること
※5駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たりの管理費の総額
※6駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たり修繕積立金の総額
※7埼玉県のおおよその平均値で計算。駐車場代はエリアによって大きく異なる

参考:“No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁
“平成30年度マンション総合調査結果”. 国土交通省. (参照2024-04-03)をもとに、HOME4Uが独自に作成

次に、Aさんがより高額な物件を購入した場合の生涯コストを算出します。

●5,000万円の土地付きの建売戸建ての場合
項目 費用(頭金あり) 費用(頭金なし)
初期費用:
 頭金
 諸費用(7%)
500万円
350万円
0万円
350万円
住宅ローン支払い:
 住宅購入残金
 月々の支払金額※1
総支払額(月々の支払額×12ヵ月×35年)※2
4,500万円
13万5,589円
5,694万7,380円
5,000万円
15万655円
6,327万5,100円
固定資産税※3(年12万円×35年) 420万円 420万円
都市計画税※4(年4万円×35年) 140万円 140万円
火災保険料(年3万円×35年) 105万円 105万円
35年で想定される修繕費(年15万円×35年) 525万円 525万円
総額 7,734万7,380円 7,867万5,100円
●5,000万円の分譲マンションの場合
項目 費用(頭金あり) 費用(頭金なし)
初期費用:
 頭金
 諸費用(7%)
500万円
350万円
0万円
350万円
住宅ローン支払い:
 住宅購入残金※1
 月々の支払金額
総支払額(月々の支払額×12ヵ月×35年)※2
4,500万円
13万5,589円
5,694万7,380円
5,000万円
15万655円
6,327万5,100円
固定資産税※3・都市計画税※4(年20万円×35年) 700万円 700万円
管理費※5(月1万862円×12ヵ月×35年) 456万2,040円 456万2,040円
修繕積立金※6(月1万1,243円×12ヵ月×35年) 472万2,060円 472万2,060円
火災保険料(年3万円×35年) 105万円 105万円
駐車場代※7(月1万円×12ヵ月×35年) 420万円 420万円
総額 8,698万1,480円 8,830万9,200円

※1ローン返済金額は、PMT関数(金利、支払期間、借入総額)を用いて計算
※2住宅ローン控除が適用される場合がある
※3固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×1.4%(標準税率)」であり、詳細は個別に計算すること
※4都市計画税の計算式は「固定資産税評価額×制限税率(0.3%)」であり、詳細は個別に計算すること
※5駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たりの管理費の総額
※6駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たり修繕積立金の総額
※7埼玉県のおおよその平均値を採用。駐車場代はエリアによって大きく異なる

参考:“No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁
“平成30年度マンション総合調査結果”. 国土交通省. (参照2024-04-03)をもとに、HOME4Uが独自に作成

4-2-2.持ち家を購入する場合(2)

続いては、Aさんが男性の平均寿命である81歳まで生きた場合です。持ち家(4,000万円)に51年間、住み続けた場合の生涯コストを算出します。

この場合、65歳でローンを完済したあとの16年間は住居費の支払いはありません。しかし維持費などはかかるため、退職後に備えてまとまった貯蓄が必要です。

●4,000万円の土地付きの建売戸建ての場合
項目 費用(頭金あり) 費用(頭金なし)
初期費用:
 頭金
 諸費用(7%)
400万円
280万円
0万円
280万円
住宅ローン支払い:
 住宅購入残金※1
 月々の支払金額
総支払額(月々の支払額×12ヵ月×35年)※2
3,600万円
10万8,471円
4,555万7,820円
4,000万円
12万524円
5,062万80円
固定資産税※3(年12万円×51年) 612万円 612万円
都市計画税※4(年4万円×51年) 204万円 204万円
火災保険料(年3万円×51年) 153万円 153万円
51年で想定される修繕費(年15万円×51年) 765万円 765万円
老朽化によるリフォーム代 1,200万円 1,200万円
総額 8,169万7,820円 8,276万80円
●4,000万円の分譲マンションの場合
項目 費用(頭金あり) 費用(頭金なし)
初期費用:
 頭金
 諸費用(7%)
400万円
280万円
0万円
280万円
住宅ローン支払い:
 住宅購入残金※1
 月々の支払金額
総支払額(月々の支払額×12ヵ月×35年)※2
3,600万円
10万8,471円
4,555万7,820円
4,000万円
12万524円
5,062万80円
固定資産税※3・都市計画税※4(年20万円×51年) 1,020万円 1,020万円
管理費※5(月1万862円×12ヵ月×51年) 664万7,544円 664万7,544円
修繕積立金※6(月1万1,243円×12ヵ月×51年) 688万716円 688万716円
老朽化による室内リフォーム 600万円 600万円
火災保険料(年3万円×51年) 153万円 153万円
駐車場代※7(月1万円×12ヵ月×51年) 612万円 612万円
総額 8,973万6,080円 9,079万8,340円

※1ローン返済金額は、PMT関数(金利、支払期間、借入総額)を用いて計算
※2住宅ローン控除が適用される場合がある
※3固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×1.4%(標準税率)」であり、詳細は個別に計算すること
※4都市計画税の計算式は「固定資産税評価額×制限税率(0.3%)」であり、詳細は個別に計算すること
※5駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たりの管理費の総額
※6駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たり修繕積立金の総額
※7埼玉県のおおよその平均値で計算。駐車場代はエリアによって大きく異なる

参考:“No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)”. 国税庁
“平成30年度マンション総合調査結果”. 国土交通省. (参照2024-04-03)をもとに、HOME4Uが独自に作成

実際には経年による住み替えや建て替えが必要になったり、車を手放して駐車場代が不要になったりすることが想定されるため、あくまでも参考として考えてください。

4-2-3.賃貸に住み続ける場合(1)

ここからは、賃貸に住み続ける場合の生涯コストシミュレーションを紹介します。

まずはAさんが65歳までの35年間、月14万円の賃貸物件に住むことを想定して算出します。

項目 費用
初期費用:
敷金・礼金・仲介手数料など(賃料3ヵ月分で計算)+賃料1ヵ月分
56万円
賃料:
1年目の家賃(14万円×11ヵ月):
残り34年間、払い続けた場合(14万円×12ヵ月×34年)
154万円
5,712万円
契約更新料(2年更新として、14万円×17回) 238万円
管理費・共益費(月1万4,000円×12ヵ月×35年) 588万円
火災保険料(年1万円×35年) 35万円
駐車場代※(月1万円×12ヵ月×35年) 420万円
総額 7,203万円

4-2-4.賃貸に住み続ける場合(2)

次に、Aさんが平均寿命である81歳まで生きた場合です。ローン返済後の65歳からは賃料11万円の物件に住み替え、そこに16年間、住み続けると仮定して算出します。

項目 費用
初期費用:
敷金・礼金・仲介手数料など(賃料3ヵ月分で計算)+賃料1ヵ月分
44万円
賃料:
1年目の家賃(11万円×11ヵ月):
残り15年間、払い続けた場合(11万円×12ヵ月×15年)
121万円
1,980万円
契約更新料(2年更新として、11万円×8回) 88万円
管理費・共益費(月1万円×12ヵ月×16年) 192万円
火災保険料(年1万円×16年) 16万円
駐車場代※(月1万円×12ヵ月×16年) 192万円
総額
30~65歳にかかるコスト(7,203万円)との合計
2,633万円
9,836万円

※埼玉県のおおよその平均値を採用。駐車場代はエリアによって大きく異なる

こちらも持ち家の場合と同様、実際には収入に応じて複数回の住み替えを行なったり、駐車場代が不要になったりすることが想定されるため、あくまでも参考としてお考えください。

4-3.生涯コストの試算結果からわかること

上記の生涯コストはあくまでも試算ですが、結果からどのようなことがわかるのでしょうか。4000万円の物件を例に挙げて、生涯コストの一覧を紹介します。

居住年数 持ち家 賃貸
戸建て マンション  
35年間 4,000万(頭金あり)
6,425万7,820円
4,000万(頭金あり)
7,389万1,920円
家賃14万
7,203万円
4,000万(頭金なし)
6,532万80円
4,000万(頭金なし)
7,465万4,180円
51年間 4,000万(頭金あり)
8,169万7,820円
4,000万(頭金あり)
8,973万6,080円
65歳以降は家賃11万
9,836万円
4,000万(頭金なし)
8,276万80円
4,000万(頭金なし)
9,079万8,340円

持ち家と賃貸を比較すると、総額は賃貸に住み続けるほうが大きくなります。特に賃貸の場合、長生きするほど月々の家賃負担がかかってくる点に注意が必要です。

同じ持ち家でも、戸建てとマンションを比較すると総額はマンションのほうが大きくなります。これは、管理費や修繕積立金・駐車場代の影響と考えられるでしょう。また、ローンの返済総額は頭金の有無によっても変化します。

ただし、生涯コストは物件の購入金額や家賃、その他の条件によって大きく変動するため、あくまでも参考として、それぞれの傾向を把握してみてください。

5.持ち家か賃貸か、選ぶ際にはライフイベントを考慮する

前章では、持ち家と賃貸にかかる生涯コストについて解説しました。しかし、持ち家か賃貸を選ぶ際には、費用以外に自分や家族のライフスタイルやライフイベントを考慮することも重要です。

また、老後に必要な条件についても確認しておくとよいでしょう。

5-1.年齢やライフスタイルによって、住宅に求める条件は変化する

住宅に求める条件は、自身の年齢や家族構成などによっても変化します。ここでは先ほどのAさんをモデルに、生涯における変化をみてみましょう。

モデル
Aさん:30歳男性
家族構成:妻、子ども2人
居住エリア:東京近郊

  • 年齢:30代

成長期の子どもがいる家庭では、暮らしやすい間取りへのニーズが高まります。具体的には、広さは2~4LDK程度、子どもの様子がよく見えて、なおかつ家事動線を意識した住居が求められます。また、学校や職場に近い、周囲に子育てを支援してくれるコミュニティがあるなど、ワークライフバランスを考慮することも重要です。

  • 年齢:40~50代

40~50代は、働き手として充実している時期です。社会的地位の向上とともに自己資金にも余裕が出てきて、住み替えの資金計画も立てやすくなります。住まいに求める要素としては、子どもの成長とともに部屋数や収納が必要になったり、家族団らんのための広めのリビングが欲しくなったりするでしょう。

  • 年齢:50~60代

子どもが独立し、妻・夫と2人の生活が始まります。築年数の経った持ち家であれば、リノベーションや大規模修繕などによって新鮮さを復活させたいという希望も出てきます。あるいは、独立した子ども世帯の近くに引越すことなども考えられます。

このように住まいに求める要素は、年齢や家族構成、ライフイベントなどで変化するものです。住宅の選定に際しては、さまざまな要素を自分自身がどう判断するかが重要といえるでしょう。

5-2.老後の家には、より高い利便性が求められる

老後(一般的に定年退職後)は、さらに大きくライフスタイルが変わる可能性があります。以下は、高齢者の住まいに必要な配慮の一例です。

  • お互いの健康状態を確認しやすい間取り
  • バリアフリー性能やヒートショック(※)対策
  • 買い物や通院などの利便性が高く、外出がしやすい
  • 駅やバス停が徒歩圏内にあるなど、自動車に乗らない生活への移行

(※)急激な温度の変化で、心臓や血管に疾患が起こること。特に浴室やトイレなどで起きやすい。

また、親の介護が必要になるなどして、子ども世帯が実家の売却を検討する機会も出てくるでしょう。その場合の税制優遇や売却のコツについては、以下の記事を参考にしてください。

5-3.住宅を資産として、万一の事態に備えるのも一つの手段

持ち家には資産としての価値があるため、退職後は活用を考える機会も増えるはずです。ここでは、基本的な活用方法を紹介します。

5-3-1.売却して資金を得る

まずはシンプルに、所有する住宅を売却して資金を得る方法です。

まとまった資金があれば、より利便性の高い住まいへの引越しや、老人ホームなどへの入居も可能になります。

5-3-2.リースバック、リバースモーゲージなどを活用し、担保として資金を得る

住まいを変えたくはないものの、まとまったお金が必要という場合には、自宅を担保に資金を得る方法もあります。

  • リースバック

不動産会社などに自宅を売却し、同時に賃貸契約を結んで住み続ける方法です。月々の家賃が発生しますが、売却金を一括で得られるメリットがあります。

  • リバースモーゲージ

自宅を担保にして融資を受ける方法です。金融機関または一部の社会福祉協議会が取り扱っており、一括または分割で融資を受けることができます。

いずれも利用条件や注意点があるため、ご利用の際はよく調べてから検討することをおすすめします。

5-3-3.資産として次の世代へ残す

所持する住宅の資産価値が高い場合は、次世代に残すという選択肢もあります。不動産の資産価値を決めるポイントには、以下のような要素が挙げられます。

  • 駅に近いなど交通の便が良い
  • 買い物がしやすい、学校が近いなど周辺環境の利便性が高い
  • 住まいのエリアが都市計画などに含まれている、新駅や商業施設の開設が予定されているなど将来性がある
  • 住宅の築年数が浅い、十分なメンテナンスがされている など

持ち家と賃貸を比較する際には、上記の要素も参考にしてみてください。

6.持ち家と賃貸を徹底比較|持ち家が向いている方、賃貸が向いている方

持ち家と賃貸を徹底比較|持ち家が向いている方、賃貸が向いている方

最後に、個人の性格や価値観を踏まえ、持ち家が向いている方、賃貸に向いている方の特徴を紹介します。

6-1.持ち家が向いている方

持ち家が向いている方の特徴は、以下のとおりです。

  • 退職までに住宅ローンを完済できる方
  • 安定した収入がある方
  • ファミリー向け物件など、ある程度の部屋数が必要な方
  • 安心して老後を送りたい方

あくまでも目安ではありますが、ある程度ライフプランが定まっている方は、持ち家が向いているといえるでしょう。

6-2.賃貸が向いている方

賃貸が向いている方の特徴は、以下のとおりです。

  • ライフスタイルの変化に臨機応変に対応したい方
  • 転勤などで居住場所が頻繁に変わる方
  • 自宅のメンテナンスが面倒な方
  • 住宅ローン(借金)を背負いたくない方

定住が難しい方や臨機応変に動きたい方は、賃貸が向いているといえるでしょう。

まとめ

持ち家と賃貸にはそれぞれメリットとデメリットがあり、生涯コストにも違いが生じます。しかし、住まいとして持ち家を選ぶか賃貸を選ぶかに正解はなく、ご自身のライフスタイルや価値観に基づき判断することが重要です。

求める住まいのあり方は、結婚や出産、転勤、老後の生活などライフイベントによっても変化します。持ち家でも賃貸でも、生涯を通して大きなコストがかかることに変わりはないため、慎重に検討するとよいでしょう。

住まいを購入する際には、不動産会社の担当者へ相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

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