住宅ローンが残っている家の売却方法!売却損が出たら確定申告

住宅ローン 売却損

住宅ローン中の家を売ることは可能です。しかし、住宅ローン残債の額よりも、家を売ったお金が下回ってしまうオーバーローンの場合は売却損が出てしまいます。

「住宅ローンが残っている」「売っても売却損が出る」方に、住宅ローンが残っている家を売る方法、売却損が出た時の確定申告で使える税金の特例を紹介します。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.住宅ローンが残っている家の売却方法

住宅ローンが残っているときの売却方法住宅ローンが残っていて、売っても売却損が出る場合でも、家を売る方法はあります。

この章では住宅ローンが残っているときの家の売却方法についてご紹介します。

1-1.売却は抵当権を外すことが条件

住宅ローンが残っている家を売却する場合は、住宅に設定されている抵当権を外して売却することが絶対条件となります。

抵当権とは、銀行がお金を貸したとき、土地と建物を担保に取る権利になります。 具体的には土地と建物の登記簿謄本に抵当権の権利が記載されていますが、売却時には登記簿謄本から抵当権の抹消を行います。

抵当権は住宅ローン残債を一括返済することで抹消することができます。 通常は、売却額によって住宅ローンを一括返済します。

そのため、住宅ローンが残っている住宅を売却する場合は、引き渡し当日に、「買主からの残金入金」と「住宅ローン残債の一括返済」、「抵当権の抹消」の3つを同タイミングで行います。

抵当権は、引き渡しと同タイミングで抹消するという点がポイントとなります。

不動産売却塾 コラム

~抵当権を付けたまま売却するとどうなるか~

Q.抵当権を付けたまま住宅を売却するとどのような問題が発生するのですか。
A.買主が住宅を失うリスクがあります。

例えば売主AがX銀行から住宅ローンを借り、住宅にX銀行の抵当権が付いているとします。

ここで、抵当権が付いたまま売主Aが買主Cに売却した場合を想定します。 やろうと思えば、このような抵当権を付けたままの売却も可能です。

売却後に売主Aが住宅ローンを返済できなくなるとX銀行は買主Cの住んでいる家を競売にかけて売却することができます。

競売が成立すると、競売の競落人は買主Cを退去させることができます。 抵当権が残ったままだと、買主Cは自宅を失う可能性があるため、通常は抵当権が抹消された状態を条件として住宅を購入することになります。

1-2.オーバーローンの対処法

住宅ローン残債が売却額よりも大きい状態のことをオーバーローンと呼びます。

例えば、3,500万円の家をローンで購入して、ローン残高が2,500万あるのに、2,000万円で家を売却することになったらオーバーローンの上、500万円の売却損が出ます。

オーバーローンの状態で売却するには、売却額で返済しきれない残額を、何らかの方法で返済する必要があります。

オーバーローンで売却する方法は以下の通りです。

オーバーローンで売却する方法

  • 貯金を取り崩してローン残債を返済する。
  • 親族等からお金を借りてローン残債を返済する。
  • 住み替えローンを利用する。

住み替えローンとは、買い替えを行う場合、次に購入する物件の住宅ローンに返済しきれなかったローン残債を上乗せした形で借りるローンとなります。

住み替えローンは、購入する物件の担保価値以上のローンを組むことになるため、返済能力の高い人でない限り組めないローンとなっています。

オーバーローンの場合、まずは貯金を合算して返済することを優先的に検討します。

査定を依頼したら、まずはオーバーローンではないかどうかを確認することが第一歩となります。

なお、オーバーローンの売却では「4.居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の計算例」の特例が非常に有効ですので、ぜひご参照ください。

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2.売却損が出たとき確定申告で使える税金特例

売却損が出たときの税金住宅は、購入時よりも価格が下がることが多く、一般的には売却損が出ます。 売却損が出た場合、確定申告を行うことで税金を取り戻せる特例があります。

住宅の売却で使える特例はいくつかありますが、この章では売却損が出た場合に使える特例に絞り、解説していきます。

まず、住宅は、国策として売却時になるべく税金がかからないような配慮がなされています。 ここで言う税金の特例を受けることのできる住宅は、「居住用財産」と呼ばれます。

居住用財産とは、簡単に言うとマイホームのことです。 アパートや投資用ワンルームマンションなどの賃貸物件はマイホームではないため、居住用財産とはなりません。

居住用財産の定義は以下の通りです。

居住用財産(マイホーム)

  1. 現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
  2. 転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡するする敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
  3. 災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合
  4. 転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

そして、その居住用財産を売却した際に売却損が出たときの特例は2種類あります。

  • 買い替えや住み替えなど売却後に新たな住宅を購入する際に使える特例
  • 単純に売却だけを行うときに使える特例

ひとつずつ解説します。

2-1.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、居住用財産であるマイホームを売却して、売却損が出た時に使える特例です。

この特例は、売却損を給与所得など他の所得から控除し、全体所得を小さくすることができる特例です。 これを「損益通算」と呼びます。

サラリーマンであれば、会社が給与所得を前提に源泉徴収という形で所得税を支払っています。 しかしながら、損益通算によって所得が小さくなれば、会社が給与所得を前提に天引きしていた所得税は払い過ぎということになります。

その払い過ぎの税金を、確定申告で取り戻せるというのがこの特例の仕組みです。

また、売却損が大きく、1年間の給与所得では控除しきれなかった損失は、3年間繰り越すことができます。 これを「繰越控除」とよびます。

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」では、売却資産と買換え資産(購入資産)に以下の要件を満たす必要があります。

売却資産

令和3年12月31日までの間に譲渡される自己の居住の用に供する家屋またはその敷地で、その譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、次の1から4のいずれかに該当するものであること

  1. 現に自分が住んでいる住宅
  2. 以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡されるもの
  3. 1や2の住宅及びその敷地
  4. 災害によって滅失した1の住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地 ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限る。
買換え資産

  1. 譲渡資産の譲渡した年の前年の1月1日から翌年12月31日までの間に取得される自己の居住用に供する家屋またはその敷地
  2. その家屋の居住部分の床面積が50m2以上であること
  3. その取得の日から取得した年の翌年の12月31日までの間に自己の居住の用に供すること、または供する見込みであること
  4. 繰越控除を受けようとする年の12月31日において、買換え資産に係る住宅借入金等(返済期間10年以上のローン契約等によるもの)の金額を有していること

以上の要件を満たしている場合には、確定申告により、この特例が適用されます。
※特例は、災害や経済的状況など、社会情勢により要件や適用期限が変更になることもあります。国税庁のサイトで最新の情報を確認してください。

2-2.特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

新しい住宅は購入せず、単純に売却だけをするときは「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用することができます。

この特例も基本的には前節の譲渡損失の買換え特例と同じで、損益通算繰越控除で支払い過ぎていた源泉徴収税を取り戻すことができる特例です。

また譲渡損失の売却特例は、オーバーローンで売却した場合、オーバーローン部分が繰越控除限度額となる特例です。

譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

譲渡損失の売却特例が使える売却資産は以下の要件を満たす必要があります。

売却資産

令和3年12月31日までの間に譲渡される自己の居住の用に供する家屋またはその敷地で、その譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、次の1から4のいずれかに該当するものであること

  1. 現に自分が住んでいる住宅
  2. 以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡されるもの
  3. 1や2の住宅及びその敷地
  4. 災害によって滅失した1の住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地 ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限る。
  5. その個人がその譲渡にかかる契約を締結した日の前日においてその譲渡資産に係る一定の住宅借入金等の金額を有すること
  6. 繰越控除する各年分の合計所得金額が3,000万円以下であること
  7. 譲渡先が、その個人の配偶者その他特別の関係がある者ではないこと

自宅を売却するのみで、上記要件にあてはまるときには、確定申告で特例による税金の還付を受けるようにしましょう。

3.譲渡所得・取得費・減価償却の計算方法

住宅ローンが残っている家の売却後に確定申告を行うには、売却損(譲渡損失)がいくら出たのか確かめるために、譲渡所得を計算しなければなりません。

この章では譲渡所得(譲渡損失)の基本的な計算方法を解説します。

3-1.譲渡所得の求め方

譲渡所得とは、以下の計算式で求められる所得のことを指します。

譲渡所得

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額とは売却額のことになります。 取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。 譲渡費用は売却に要した仲介手数料や測量費が該当します。

上記の計算の結果、譲渡所得がマイナスとなり、売却損のことを譲渡損失と呼んでいます。

3-2.取得費の求め方

取得費は、単純に購入額というわけではなく、建物については減価償却後の価格になります。 土地については購入額になります。

そのため、取得費の計算では、土地と建物の取得費を別々で求め、合算することがポイントです。

取得費の求め方

取得費 = 土地の取得費 + 建物の取得費     = 土地の購入額 + (建物の購入額 - 減価償却費)

取得費が不明の住宅の場合には、「概算取得費」というものを用います。 概算取得費は譲渡価額の5%となります。

取得費が不明な場合の取得費の求め方

取得費 = 概算取得費     = 譲渡価額 × 5%

昔から持っている土地の上に注文住宅を建てると、建物の取得費だけが分かり、土地の取得費が不明な場合があります。

その際は、土地の取得費は概算取得費の概念を併用し、以下のように求めます。

土地の取得費だけが不明な場合の土地取得費の求め方

土地の取得費 = (譲渡価額 - 建物取得費) × 5%        = (譲渡価額 - (建物の購入額 - 減価償却費)) × 5%

3-3.減価償却費の求め方

減価償却費は以下の計算式で求めます。

減価償却費

減価償却費 = 建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

マイホームなどの非業務用建物の償却率は以下の通りです。

建物構造 耐用年数 償却率
木造 33年 0.031%
軽量鉄骨 40年 0.025%
鉄筋コンクリート造 70年 0.015%

ここで、具体的に以下のような建物の取得費を計算してみます。

建物の概要

種別:マンション 構造:鉄筋コンクリート造 建物購入価格:2,000万円 築年数:15年

減価償却費は以下のようになります。

減価償却費

減価償却費 = 建物購入価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数       = 2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 15年       = 405万円

建物の取得費は以下のようになります。

建物の取得費

建物の取得費 = 建物の購入額 - 減価償却費        = 2,000万円 - 405万円        = 1,595万円

4.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の計算例

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の具体的な計算例、シミュレーションをご紹介します。

Aさんが売却するマンションの概要は以下の通りです。

売却したマンションの概要

引渡日:2018年9月1日 譲渡価額:4,200万円 取得費:5,800万円 (2000年に取得、所有期間5年超) 譲渡費用:126万円

買い替えで購入するマンションに関しては、譲渡損失の買換え特例を満たしているものとします。

またAさんの所得と源泉徴収税額を以下の通りです。

給与所得 源泉徴収税額
2018年 800万円 62.89万円
2019年 850万円 71.06万円
2020年 900万円 79.22万円(2020年の所得控除額は250万円とします)

その他の所得はないものと仮定します。

譲渡損失の買換え特例を適用した場合の所得税額は以下のようになります。

(1)2018年の損益通算

譲渡所得 = 譲渡価額 ― 取得費 ― 譲渡費用      = 4,200万円 ― 5,800万円 ― 126万円      = ▲1,726万円

損益通算 = 給与所得 ― 譲渡所得      = 800万円 ― 1,726万円      = ▲926万円

よって、2018年は所得税がゼロとなり源泉徴収税額62.89万円について全額還付を受けることができます。 控除しきれなかった926万円については、翌年に繰り越されます。

(2)2019年の損益通算

損益通算 = 給与所得 ― 繰越の譲渡所得      = 850万円 ― 926万円      = ▲76万円

よって、2019年も所得税がゼロとなり源泉徴収税額71.06万円について全額還付を受けることができます。 控除しきれなかった76万円については、翌年に繰り越されます。

(3)2020年の損益通算

損益通算 = 給与所得 ― 繰越の譲渡所得      = 900万円 ― 76万円      = 824万円

所得税は以下のように計算されます。 所得税 = (824万円 - 250万円) × 20% ― 42.75万円※     = 72.05万円 ※課税される所得金額が330万円超695万円以下の場合、税率は20%で控除額が42.75万円となります。

さらに、所得税に対し復興特別所得税(税率2.1%)がかかります。

復興特別所得税 = 所得税 × 税率         = 72.05万円 × 2.1%         = 1.51万円

所得税合計 = 所得税 + 復興特別所得税       = 72.05万円 + 1.51万円       = 73.56万円

2020年は源泉徴収税額が79.22万円ですので、払い過ぎていることになります。 還付額は以下のようになります。

2020年の還付額 = 79.22万円 - 73.56万円          = 5.66万円

以上より、3年間で以下の還付金を受けることができます。

3年間合計還付額 = 62.89万円 + 71.06万円 + 5.66万円          = 139.61万円

5.特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の計算式

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の具体的な計算例(シミュレーション)をご紹介します。

Bさんが売却するマンションの概要は以下の通りです。

売却したマンションの概要

引渡日:2018年9月1日 譲渡価額:3,700万円 取得費:7,400万円 (2000年に取得、所有期間5年超) 譲渡費用:300万円 住宅ローン残債:6,200万円

またBさんの所得と源泉徴収税額を以下の通りです。

給与所得 源泉徴収税額
2018年 960万円 76.77万円
2019年 980万円 78.10万円
2020年 1,020万円 80.25万円(2020年の所得控除額は256万円とします)

その他の所得はないものと仮定します。

譲渡損失の売却特例を適用した場合の所得税額は以下のようになります。

(1)2018年の損益通算

最初に譲渡所得を計算します。 譲渡所得 = 譲渡価額 ― 取得費 ― 譲渡費用      = 3,700万円 ― 7,400万円 ― 300万円      = ▲4,000万円

次に繰越控除限度額を計算します。 繰越控除限度額 = 住宅ローン残債 ― 譲渡価額         = 6,200万円 ― 3,700万円         = 2,500万円

計算の結果、繰越控除限度額(2,500万円)が譲渡損失(4,000万円)よりも小さいため、繰越控除の対象となる金額は2,500万円となります。この繰越控除対象額の求め方が「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」との違いになります。

損益通算 = 給与所得 ― 繰越控除対象額      = 960万円 ― 2,500万円      = ▲1,540万円

よって、2018年は所得税がゼロとなり源泉徴収税額76.77万円について全額還付を受けることができます。 控除しきれなかった1,540万円については、翌年に繰り越されます。

(2)2019年の損益通算

損益通算 = 給与所得 ― 繰越の譲渡所得      = 980万円 ― 1,540万円      = ▲560万円

よって、2019年も所得税がゼロとなり源泉徴収税額78.10万円について全額還付を受けることができます。 控除しきれなかった560万円については、翌年に繰り越されます。

(3)2020年の損益通算

損益通算 = 給与所得 ― 繰越の譲渡所得      = 1,020万円 ― 560万円      = 460万円

所得税は以下のように計算されます。 所得税 = (460万円 - 256万円) × 10% ― 9.75万円※     = 10.65万円 ※課税される所得金額が195万円超330万円以下の場合、税率は10%で控除額が9.75万円となります。

さらに、所得税に対し復興特別所得税(税率2.1%)がかかります。

復興特別所得税 = 所得税 × 税率         = 10.65万円 × 2.1%         = 0.22万円

所得税合計 = 所得税 + 復興特別所得税       = 10.65万円 + 0.22万円       = 10.87万円

2020年は源泉徴収税額が80.25万円ですので、払い過ぎていることになります。 還付額は以下のようになります。

2020年の還付額 = 80.25万円 - 10.87万円          = 69.38万円

以上より、3年間で以下の還付金を受けることができます。

3年間合計還付額 = 76.77万円 + 78.10万円 + 69.38万円          = 224.25万円

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、基本的には同じ計算を行いますが、最初の繰越控除対象額の求め方が違うという点がポイントです。 譲渡損失の売却特例は、オーバーローンとなってしまっている場合には、とても有効な特例と言えます。

6.住宅売却の基本的な流れ

家を売るときは、売却の流れを知っておくと計画的に売却できます。住宅ローンが残っている家を売る「基本的な流れ」は以下の図をご覧ください。

住宅売却の流れ

6-1.査定を依頼する

住宅の売却では、査定の依頼からが本格的なスタートとなります。 この章では査定の依頼について解説します。

6-1-1.査定で分かること

査定では、売却の予想価格が分かります。

住宅の価格は土地と建物で構成されています。 土地については景気によって価格が上がったり、下がったりします。 同じ場所でも売却時期によって値段が上下するのが土地価格の性質です。

それに対して、建物については年々価格が下がります。 仕上げ材やデザインが良い建物であれば、価格は緩やかに下がりますが、管理が不十分な建物であれば、価格は大きく下がります。

住宅価格は「上下する土地価格」と、「下がり続ける建物価格」の合計で構成されています。 つまり、住宅価格は一体、今いくらなのかが分かりにくいという性質を持っています。

そのため、売却前はプロによる価格査定が必要となるのです。

価格査定をすることで、以下の2つのことが可能になります。

“価格査定をするとできる2つのこと”

  1. 適切な資金計画を立てることができる
  2. 適切な売値を設定できる

売却予想価格が分かれば、住宅ローン残債を返済できるのか、または次に購入できる物件の頭金をいくらくらい確保できるのか等々の適切な資金計画を立てることができます。

また、売却予想価格が分かれば、適切な売り出し価格を設定することが可能です。 売り出し価格は、高すぎると買い手がみつからず、低すぎてもなにか欠陥があるのではないかと疑われて買い手がみつかりにくくなります。

適正な売り出し価格を提示してくれる不動産会社に査定を依頼することが、損をせずスムーズに売却する最大のポイントになります。

6-1-2. 査定を依頼するなら一括査定サービスが便利

では、適正な売り出し価格を提示してくれる不動産会社はどのように探したらよいのでしょうか。
適正価格で売り出して、できるだけ高く、損をせずスムーズに売却するなら、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
複数の会社に査定依頼することで、価格以外のことでわかることがあります。

複数の会社に査定依頼をするとわかる2つのこと

  1. 迅速で丁寧な社風の会社はどこか
  2. コミュニケーションのとりやすい担当者は誰か

査定価格について質問をしたときに、すぐに回答がもらえて納得するまで説明してもらえる会社は信頼できます。買い手の方にも同じような対応をしてもらえれば、売却期間も短くなる可能性が高くなります。

また、コミュニケーションがとりやすい担当者であれば、数ヶ月にも及ぶ販売活動も気持ちよくすすめられることでしょう。

しかし、複数の会社に個別に査定を依頼することには、莫大な時間と手間がかかります。
そんなときに便利なのが、一括査定サービスです。

一括査定サービスなら、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」が便利です。

あなたの不動産いくらで売れる?

売却予定物件があるエリアにおいて、戸建てやマンションのそれぞれの売却を得意とする不動産会社に査定を依頼することができます。

厳しい審査をくぐり抜けた信頼できる不動産会社だけが提携先となっているため、安全かつ簡単に複数の会社に査定の依頼ができます。適切な不動産会社を自動で選んで査定が依頼できますので、とても便利です。

最大6社に無料で査定依頼をできますので、ぜひ利用してみましょう。

6-2.不動産会社選び

複数の不動産会社に査定をしてもらったら、その中から依頼する不動産会社を選びます。
不動産会社を選ぶときは、まず、査定価格が極端に高かったり、安かったりする会社は避けます。適正価格で売り出したいからです。

次に、以下の項目に注目して選んでください。

  1. 迅速で丁寧な社風の会社はどこか
  2. コミュニケーションのとりやすい担当者は誰か

どんな小さな質問にも、迅速で丁寧に答えてくれる会社、営業マンを選びましょう。

商品は「あなたの家」ですので、商品自体を変えることはできません。 ただ、売ってくれる営業マンなら選ぶことができます。

一括査定サービスを使うと、一度に何人かの営業マンと面談することになりますが、「この人ならなんとなくやってくれそう」というのも分かってきます。

査定を依頼しつつも、営業マンと十分に会話を行い、頑張って売却してくれそうな人を探してみてください。

6-3.媒介契約を締結

依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
媒介契約は、次の表のとおり、契約内容により3つの種類にわけられます。

専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
複数業者との契約
自分で買い手を見つけられるか
売主への業務状況の報告義務 1週間に1回以上 2週間に1回以上 任意
※レインズへの登録義務 媒介契約締結後、5日以内 媒介契約締結後、7日以内 任意
契約の有効期間 最長3ヶ月 最長3ヶ月 任意

※レインズとは?
媒介契約を締結すると不動産会社が、「レインズ(指定流通機構)」というサービスに物件情報を登録します。物件情報をレインズに登録することで、より多くの不動産会社の目に止まり、買主が見つかりやすくなります。

どの契約を選んだらよいのか迷うところですが、専属選任媒介契約は、他社と契約できなくなる分、販売活動に最も力を入れてもらえます。急いで売却したいときにはおすすめです。

また、専属選任や専任媒介契約は、最低限連絡する回数が決まっているため、不動産会社と音信不通になる心配がありません。

一般媒介契約は連絡の回数は特に決まっていませんが、他の不動産業者や自分で買主を探して売買契約することもできることが魅力です。人気のエリアで住宅を売却するのであれば、一般媒介契約にして間口を広げて販売する方がよいかもしれません。

いずれにせよ、大切なことは、不動産会社の言いなりに契約内容を決めるのではなく、自分の売却物件の状況に合った契約を、自分で選ぶことです。

6-4.インスペクションの実施

インスペクションとは建物状況検査のことです。
建物の専門家による目視や計測等によって、住宅の基礎や外壁等のひび割れ、雨漏りなど構造上の安全性や日常生活への支障があると考えられる劣化や性能低下の有無の検査が行われます。

インスペクションは義務ではありません。しかし、2018年4月以降の売却から不動産会社は売主と買主の両方に対し、インスペクションについての説明をすることが義務づけられました。
そのため、イクスペンションの認知は広がり、売主も買主も利用しようと思う人が増えています。

インスペクションを行うと以下のようなメリットがあります。

インスペクションのメリット

  • 物件に問題がないことのお墨付きがもらえる
  • 早く高く売れる可能性が高まる
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入できる

インスペクションに合格すると、物件に問題がないことのお墨付きがもらえるため、買主へ安心感を与えることができます

その結果、優良物件ということになり、住宅が早く高く売れる可能性が高まります

またインスペクションに合格すると、既存住宅売買瑕疵保険に加入することができます。

既存住宅売買瑕疵保険とは、売却後、瑕疵(かし:雨漏り等の通常有すべき品質を欠くこと)が発見された場合、その補修費用を保証金で補うことができる保険です。

参考:国交省「既存住宅売買瑕疵保険について

ただし、インスペクションにはメリットだけでなくデメリットもあります。

インスペクションのデメリット

  • 費用がかかる
  • 修理する場合、時間がかかる
  • 売却できないほどの状態だと判断されることがある

以上のようなデメリットがあるものの、売却後に発覚して莫大な修繕費用の請求をされることを考えると、決してデメリットとは言い切れません。
インスペクションをしておくとメリットが大きいため、査定価格も高くなることが期待できます。不動産会社の担当者とよく話し合った上でインスペクションを実施するか検討することをおススメします。

インスペクションについては、下記の記事で詳しく解説しています。

6-5.販売活動・内覧対応

住みながら家を売却する場合、売主は購入希望者へ家の中を見せる内覧の対応を行います。 この章では内覧について解説します。

6-5-1.内覧までの準備

不動産会社と媒介契約を締結し、販売活動を開始して購入希望者が現れると、不動産会社は購入希望者を内覧に連れてきます。

そのため、内覧に備え、早めに以下の2つの準備を行うようにして下さい。

内覧までの準備

  1. 部屋の中の荷物を減らす
  2. 場合によってはハウスクリーニングも実施する

家の中は、モノが溢れかえっていると生活感が溢れ、部屋が狭く見えてしまいます。 そのため、本格的に内覧が始まる前に、思い切ってモノを捨てるか、実家に一時的に送るか等の準備をしておく必要があります。

また、キッチンやバスのカビや水垢は厳しく見られてしまうため、汚れがひどい場合には、ハウスクリーニングで綺麗にしておくのもおススメします。 もちろん、自分で綺麗にできる場合はそれでも十分です。

6-5-2.内覧当日の対応

内覧当日は、以下の4つを準備するようにして下さい。

内覧当日の対応

  1. スリッパを用意する
  2. 全ての部屋を見ることができるようにする
  3. 部屋の空気を全て入れ替える
  4. 全ての部屋の電気を付けておく

スリッパは全員分用意します。 特に、フローリングの家は、スリッパは必須です。 冬場などは足から体温が奪われ、内覧が終わった後、購入希望者が体調を崩してしまうようなこともあります。 印象を左右しかねないため、スリッパは必ず用意しておきましょう。

部屋は全て見ることができる状態にしておきます。 内覧は、購入希望者が広告写真では見られない部分を確認しに来る行為でもあります。 内覧で、「いや、ここはちょっと見せられません」というのはNGです。

あらかじめ全部屋の空気の入れ替えを行ってください。 各家庭には独特のニオイがあり、そのニオイが気になる人もいます。夏も冬も、時間を計算して空気の入れ替えをして、快適な温度で内覧者をお迎えできるようにしましょう。

電気に関しては、事前に全部屋の電気を付けておきます。 明るい印象を与えることができますので、無駄とは思わずに内覧中は付けておくようにしましょう。

6-5-3.購入申し込み

内覧で物件を気に入ってもらうと、購入希望者から「買付証明書(または購入申込書)」を受領します。

買付証明書には、購入希望価格や手付金、契約時期、引き渡し時期等々の希望が記載されています。

購入希望価格が売値と同じであれば全く問題ありません。 ただし、買付証明書では購入希望価格が売値より下回っていることもあります。

購入希望価格が売値を下回った金額でしか出てこない場合、売るか売らないかは最終的に売主の判断となります。

6-6.売買契約と引き渡し

売買契約と引き渡し売買価格が合意したら、いよいよ売買契約と引き渡しです。 売買契約と引き渡しとの間は、通常、1ケ月ほどの時間を要します。 この章では売買契約から引き渡しまでに行うことについて紹介します。

6-6-1.売買契約で行うこと

売買契約当日は、主に以下の8つのことを行います。

売買契約で行うこと

  1. 売主と買主の紹介
  2. 運転免許証等による本人確認
  3. 売買契約書の読み合わせ
  4. 設備表等の添付資料の内容確認
  5. 署名・押印・印紙の貼付
  6. 手付金の受領
  7. 仲介手数料の支払い(通常は半額)
  8. 今後のスケジュールの確認

6-6-2.売買契約から引き渡しまでに行うこと

売買契約から引き渡しまでは主に以下の5つを行います。

売買契約から引き渡しまでに行うこと

  1. 売主と買主の紹介
  2. 引っ越し
  3. 設備表の記載内容について現場で確認
  4. 境界について現地で確認
  5. ゴミの完全な搬出

設備表とは エアコンやガスコンロ等の住宅設備について、「有」や「無」、「撤去」および不具合を記載する一覧表です。

設備表の内容確認においては、特に「有」と記載されていたものが「撤去」されているとトラブルの発生原因となります。

引っ越しでは「残すものをきちんと残す、撤去するものはきちんと撤去する」ということが注意点となります。

またゴミも残っているとトラブルの原因となるため、ゴミは引き渡しまでに完全なる撤去を行ってください。

6-6-3.引き渡し当日に行うこと

引き渡し当日では主に以下の5つを行います。

引渡当日に行うこと

  1. 買主から残金の受領
  2. 鍵および重要文書の引き渡し
  3. 抵当権の抹消
  4. 仲介手数料の支払い
  5. 固定資産税等の清算

引き渡しは、「売主」、「買主」、「売主の銀行担当者」、「買主の銀行担当者」、「司法書士」、「不動産会社」が一同に会して行います。

売買に何らかの問題を抱えている場合、基本的には、引き渡しまでにすべて解決した状態にしておきます。

引き渡しが終わると、司法書士が所有権移転登記を申請し、手続きは完了となります。

7.売却損を出さないためには複数社に査定依頼すること

売却損を出さないためには、可能な限り高い金額で売ることが重要です。そのためには、必ず複数の不動産会社に査定依頼しましょう。
複数社に査定依頼することで、適正な売却価格を把握できます。

相場を把握して適正な価格で売り出せば、なかなか買い手が見つからなくて値下げをしなければならない状態を回避できるため、売上損が生じる可能性も低くなります。
ただ、不動産会社に一件ずつ個別で査定をしてもらうには相当な手間と時間がかかります。そんなときに便利なのが、一括査定サービスです。

一括査定サービスは、一度のお申し込みで複数の不動産会社から査定結果が届きます。希望していた売り出し価格や相場を比較し、質問することで、信頼できる会社なのか、担当者との相性はどうか、なども比較検討することができます。

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まとめ

いかがでしたか。 住宅の売却の流れと特例について詳しく見てきました。

  • 住宅売却の大まかな流れは査定、媒介契約、インスペクション、内覧、売買契約、引き渡しです。
  • インスペクションは義務ではありませんが、不動産会社からインスペクションの実施の希望について問われます。
  • 内覧は、物の片づけやハウスクリーニングの実施など、一度しっかりと準備しておくことが大切です。
  • 売買契約から引き渡しまでは、1か月ほどの時間を要します。
  • 住宅の売却では、売却損も出ることが多く、特例を使うと税金を取り戻せることもあります。

住宅の売却は、大きな金額の取引となりますので、しっかりと準備したうえで取り掛かるようにしましょう。

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この記事のポイント

住宅ローンが残っていても家の売却はできるの?

住宅ローンが残っていても家は売却できます。

詳しくは「1.住宅ローンが残っている家の売却方法」をご覧ください。

売却損が出たときの税金の2つの特例は?

売却損(譲渡損失)が出たときに、確定申告で使える税金特例は以下の通りです。

  • マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

詳しくは「2.売却損が出たとき確定申告で使える税金特例」をご覧ください。

売却損を出さないためにはどうしたらいい?

売却損(譲渡損失)を出さないためには、できる限り高い金額で売却できるように、複数社に査定依頼することが大切です。

詳しくは「7.売却損を出さないためには複数社に査定依頼すること」をご覧ください。