マンションに火災保険は必要?補償対象や費用に影響する要素を紹介

マンション火災保険 加入は必須?補償範囲は?

マンションを所有している場合、災害に備えて火災保険に加入しておくことが大切です。しかし、耐火性能に優れたマンションに住んでおり、そもそも加入が必要なのか疑問に思う方もいるでしょう。

そこで本記事では、マンションの火災保険に加入すべきなのかを検討するうえで重要な、補償の範囲や対象などについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • マンションの火災保険加入は必須なのか
  • マンションの火災保険における補償の範囲や対象
  • 加入する火災保険を選ぶ際のポイント
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1.マンションの火災保険は加入必須?

火災の煙

結論からいうと、マンションでは火災保険への加入は義務付けられていません。

しかし現実的には、火災保険への加入が住宅ローンの借入の条件になるケースが一般的です。これは、担保である建物が消失してしまうと、借入額の回収が難しくなるからです。

また、「失火責任法」に基づき、火災の原因がもらい火だったとしても、出火元に重大な過失がない限り損害を賠償してもらうことは不可能です。

したがって、もらい火で被害を受けたとしても、自身でローンを返済しながら新居を探す必要があります。経済的ダメージを最小限に抑えるためにも、マンションの火災保険には加入しておくのが安心です。

なお、「失火責任法」の正式名称は、「失火ノ責任ニ関スル法律」であり、1899年(明治32年)に定められました。

参考:“失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)”. e-Gov法令検索

2.マンションの専有部分と共用部分|火災保険で補償されるのは?

マンションのような集合住宅は、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)によって、専有部分と共用部分に分けられています。

本章では、火災保険で補償される範囲について紹介します。

参考:“建物の区分所有等に関する法律第一章”. e-Gov法令検索

2-1.専有部分は物件所有者が保険をかける

物件所有者が保険をかける「専有部分」とは、物件の所有者が単独で所有している居住スペースのことです。該当する場所としては、天井や間仕切り、住宅設備などがあります。専有部分であれば、室内の壁やドアを自由に変えても問題ありません。

専有部分と似ている呼び名で「専用使用部分」という場所がありますが、こちらは専有部分ではなく共用部分であることに注意が必要です。専用使用部分とは、住人が自身専用で使用できる部分を意味します。

例えば、ポーチやバルコニー、窓などは専用使用部分として住人専用で使用することが可能です。ただし、住人が所有する部分ではないため、勝手に設備を変えたり管理組合の許可を得ずに使用したりすることは認められていません。

2-2.共用部分は管理組合が保険をかける

管理組合が保険をかける「共用部分」とは、専有部分に該当しない場所のことです。例えば、エントランスやエレベーター、廊下、非常階段など、居住スペースではない場所をイメージするとわかりやすいでしょう。

共用部分は、「法定共用部分」と「規約共用部分」の2つに分類されます。法定共用部分は区分所有法の定めによる建物の躯体部分、規約共用部分は管理組合の規約によって決められた場所のことです。

なお、共用部分を変更するには、総会で3/4以上の賛成意見を得なければなりません。例えば、自身が所有する物件で壁に換気用の穴を開けたい場合、外壁や配管は法定共用部分にあたるため、管理組合の総会で賛成を得てからでなければ工事できません。

参考:“建物の区分所有等に関する法律第十七条”. e-Gov法令検索

3.マンションの火災保険の補償対象

粗大ごみ

火災保険では、建物も家財も補償対象になります。どちらか一方を対象とした契約にするか、両方を対象とした契約にするかは、契約者自身で選択することが可能です。

ここでは、火災保険の補償対象について以下の3パターンに分けて解説します。

  • 建物のみ
  • 家財のみ
  • 建物と家財の両方

3-1.建物のみ

建物の補償対象としては、建物や塀、車庫、玄関ドア、門、冷暖房装置などが挙げられます。

物件を賃貸に出す場合、貸主は家財を保有しないため、家財を補償対象にする必要はありません。賃貸に出す、建物と家財とで異なる補償内容にしたい、といった場合には、建物のみを補償対象にするとよいでしょう。

3-2.家財のみ

補償対象に含まれる家財としては、テレビや冷蔵庫、ベッド、ソファ、ファンヒーターなどが挙げられます。なお、エアコンは居住スペースにありますが、建物と一体になっているため、建物の補償対象である点に注意が必要です。

建物を自身で保有していない場合には、家財のみを補償する火災保険を選択するとよいでしょう。

火災保険では、自然災害や日常のアクシデントによる損害も補償されます。例えば、落雷の影響によってパソコンが壊れた場合などにも、補償の対象になります。ただし、建物の外に持ち出しているときに受けた損害は、補償の対象外です。

なお、被害を受けた場合、支払われる家財の保険金額は、「時価額」または「再調達価額」を基準に決まります。

  • 時価額:現時点で同等の物を再購入するのにかかる金額から、経年などによる消耗の相当額を差し引いた価格
  • 再調達価額:現時点で同等の物を再購入するのにかかる金額

3-3.建物と家財の両方

マンションは戸建てとは異なり建物のすべてが自身の所有物ではないため、建物の保険は不要と考える方もいるかもしれません。しかし、部屋の天井や壁、床、内装などの専有部分も、「建物」の一部とみなされるため、保険をかけておいたほうが安心です。

建物と家財の補償内容を変えたい場合は、それぞれを分けて契約する必要があります。

4.マンションの火災保険の費用相場|保険料に影響する要素7つ

保険に加入するとなれば、毎月の保険料についても慎重に検討したいものです。

マンションの火災保険料にはさまざまな要素が影響し、物件によって保険料が異なります。そのため、具体的な数字で明確な相場を示すことはできません。

そこで本章では、保険料を左右する以下の要素について解説します。

  • 構造
  • 所在地
  • 建物の面積
  • 築年数
  • 補償内容
  • 保険期間
  • 保険会社

4-1.構造

通常、火災保険の保険料は、建物の構造によって上下します。

具体的には、建物は「M構造」「T構造」「H構造」の3種類に分類されます。この分類は、すべての保険会社に共通する判断基準です。

構造級別 条件
M構造 鉄筋コンクリート造のマンションなど(耐火構造)
T構造 木造の共同住宅や一戸建て(耐火構造)
鉄骨造の集合住宅(非耐火構造)
鉄筋コンクリート造の戸建て住宅(耐火構造)
H構造 木造の共同住宅や一戸建てなど(非耐火構造)

物件の構造は、売買契約書などの書類で確認しましょう。

4-2.所在地

たとえ同じような構造の物件でも、建物があるエリアによって災害リスクは異なります。近隣に河川や海があると、水害被害を受けるリスクは高まるでしょう。

住宅が密集しているエリアにおいても、周辺で火災が発生すれば巻き込まれる可能性は高まります。そのため、構造上は保険料が安くなる物件だとしても、物件のあるエリアによっては想定よりも高くなる可能性があります。

4-3.建物の面積

保険をかける建物の面積のことを、専有面積といいます。専有面積が広いと、火災保険の保険料は高くなります。これは、専有面積が広いほど、火災が発生した際の被害規模が大きくなるからです。

専有面積は建物の各階の床面積を合計して算出します。ただし、各戸のバルコニーやロフトなどは、床面積に含まれません。

4-4.築年数

築年数が古いマンションでは、設備の劣化による事故が起こりやすいでしょう。特に、給排水設備の劣化は水漏れ事故につながるため、古い物件ほど保険料は高くなる傾向にあります。

保険会社によっては、築年数が浅い物件向けに「築浅割引」を設けているケースがあります。その他、建物の築年数に応じて保険料率を設定している保険会社もあるため、保険の加入を検討する際は直接聞いてみるのも良いかもしれません。

4-5.補償内容

火災保険は、風災や落雷などによる被害も基本補償に含むのが一般的です。盗難や汚損、水漏れなど、さらなるリスクに備えたい場合には、オプションや特約の追加などで対応するとよいでしょう。保険料は高くなりますが、自身が所有する物件に適した補償内容を選定することが大切です。

付帯する補償を自身で取捨選択することで、結果的に不要な保険料を節約することにもつながります。

4-6.保険期間

一般的な火災保険では、1~10年の間で契約期間を選択できます。保険期間を長期に設定すればするほど、保険料は割安になります。

したがって、こまめに補償内容を見直したい方には短期契約が、できるだけ保険料を抑えたい方には長期契約がおすすめといえます。

4-7.保険会社

建物の構造や補償内容、所在地などの条件が同様の物件でも、保険会社によって保険料は異なります。また、補償の対象となる事故の範囲などにも違いがあります。

保険会社のなかには、独自の割引制度を設けているケースもあるため、事前に確認してみるとよいでしょう。

以下に挙げた大手保険会社5社の特長や保険金額、費用保険金などを参考に、自身に適した保険について考えてみましょう。

ソニー損保 楽天損保 セゾン自動車火災保険 日新火災海上保険 ジェイアイ損害火災
特長 自由に補償を組み合わせられる 災害だけでなく偶然起こってしまった事故の補償も受けられる 手続きをインターネットで済ませることで中間コストを軽減できる 特約セットで保険料が3%割引になる インターネットからの手続きで10%割引になる
保険金額
(建物/家財)
1,000万円/500万円 1,000万円/500万円 1,000万円/500万円 1,000万円/500万円 1,000万円/500万円
費用保険金
(支払い割合/限度額)
10%/100万円 15%/300万円 10%/100万円 10%/100万円 10%/100万円

※2024年(令和6年)3月時点

5.万一の備えとして、地震保険も検討すると良い

地震

日本に住んでいれば、地震を回避することは難しいため、オプションとして用意されている地震保険への加入も検討するとよいでしょう。

ここでは、地震保険の基本情報や、4つの損害区分について解説します。

5-1.地震保険の基本情報

地震大国の日本では、万一に備えて地震保険に加入しておくと安心です。

各社の地震保険は、政府と保険会社が共同で運営しており、保険金も共同で負担します。地震保険に加入することによって、地震や津波、噴火が起因の火災、流失、埋没、損壊などに対する補償を受けられるようになります。

ただし地震保険は火災保険のオプションであり、単体での加入は認められていません。すでに火災保険に加入している場合は、契約期間の途中であっても地震保険に加入できます。

しかし、地震保険はあくまでも火災保険のオプション的な存在であるため、受け取れる保険金額は火災保険金額の50%までという上限が設定されています。

5-2.地震保険の損害区分

地震保険の損害区分は、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つに分類されます。

建物・家財に対するそれぞれの保険金の支払いの割合は、以下のとおりです。

全損 地震保険の保険金額の100%
大半損 地震保険の保険金額の60%
小半損 地震保険の保険金額の30%
一部損 地震保険の保険金額の5%

参考:“地震保険制度の概要”. 財務省. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

なお、2016年(平成28年)以前は、「全損」「半損」「一部損」の3つに分類されていましたが、2017年(平成29年)以降、半損の項目が「大半損」と「小半損」へと変更になり、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つの分類となりました。

6.マンションの火災保険を選ぶ際のポイント

自身が所有するマンションに適した火災保険を選ぶには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

手続きを行なう前に、以下のポイントを確認しておきましょう。

  • 希望する補償がどれだけあるか確認する
  • 特約の充実度で選ぶ
  • 費用だけでなく、補償内容にも注目する

6-1.希望する補償がどれだけあるか確認する

ひとくちに火災保険といっても、商品のタイプはさまざまです。例えば、補償がセットになったパッケージ型と呼ばれる商品もあれば、補償を自由に選択できるカスタマイズ型と呼ばれる商品もあります。

そもそも災害リスクは、物件の状況によって異なります。高層階の物件なら浸水などの被害を受ける可能性は低く、水災に対しての備えはそれほど重要ではないかもしれません。しかし、低層の場合は水災被害を受ける可能性が高くなるため、備えておくと安心です。

また、マンションでは水漏れリスクにも備える必要があります。自身の被害だけでなく、被害を与えるリスクについても忘れてはいけません。

上記のことを考慮すると、所在地の災害リスクや築年数、物件の状況などを踏まえて自身でカスタマイズしたほうが、無駄なく補償を受けられるでしょう。

6-2.特約の充実度で選ぶ

マンションの火災保険には、さまざまな特約が用意されています。

6-2-1.臨時費用補償特約

災害が発生した際には、仮住まいが必要になるケースもあるでしょう。仮住まいを用意するためには費用がかかりますが、直接的な損害の扱いにならないため、火災保険では対応できない可能性があります。

災害時に必要な仮住まいの費用などを確実に受け取るには、臨時費用補償特約を付帯しましょう。臨時費用補償特約があれば、一般的に損害額の10~30%ほどを上乗せして受け取れます。

6-2-2.類焼損害補償特約

自身の建物から出火して近隣に飛び火した場合、近隣の方が加入している保険では補償が十分でないことも考えられます。類焼損害補償特約は、近隣の延焼先に対して保険金が支払われる特約です。

前述のとおり、失火責任法により損害賠償責任は負わずに済むかもしれません。しかし、被害者や自身の今後を考慮すると、付帯を検討する価値はあるでしょう。

類焼損害補償特約で支払われる保険金の限度額は、1億円が一般的です。

6-2-3.失火見舞費用特約

失火見舞費用特約を付帯しておけば、契約している物件から出火して近隣の住宅に延焼してしまった際に、近隣への見舞金を支払うことが可能です。前述の類焼損害補償特約と似ているように思えますが、あくまでもこちらは「見舞金」という扱いになります。

失火見舞費用特約の保険金の相場は、以下のとおりです。

1世帯当たりに支払われる保険金 20~30万円
1回の事故における保険金額 20~30%

6-2-4.個人賠償責任特約

個人賠償責任特約とは、契約者本人または家族が第三者に損害を与えてしまった場合に受け取れる補償のことです。例えば、自転車で走行している際に通行人にぶつかって怪我を負わせてしまった際や、買い物中に商品にぶつかって壊してしまった際などに補償を受けられます。

ただし、パソコン内のデータやソフトウェアといった無形資産は対象外です。また、補償の対象は契約内容によって異なることも理解しておかなければなりません。

6-3.費用だけでなく、補償内容にも注目する

費用を抑えることだけを重視すると、補償内容が薄くなりがちです。補償内容と費用のバランスを取るには、保険商品の割引制度を上手に活かしたり、複数の保険会社を比較検討したりするとよいでしょう。

具体的な方法としては、契約年数を長期にして割安にする方法や、不要な補償がないか見直して契約内容を改める方法が挙げられます。また、ダイレクト型の保険を検討するのも効果的です。

ダイレクト型保険とは、インターネットなどを介して自身で保険を探して契約する保険で、代理店への相談を挟む代理店型保険よりも、保険料が割安になる可能性があります。

まとめ

マンションの火災保険への加入は義務付けられていないものの、住宅ローンの加入条件として設定されているケースがあることや、もらい火など万が一の状況も想定されることから、加入しておくのが賢明な判断といえます。補償の範囲や対象への理解を深め、自身の物件に適した保険を選ぶことが大切です。

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