敷地権とは?マンションの売買や相続で押さえるポイント

マンションにお住まいの方は、敷地権という言葉を耳にしたことはありますか?
不動産において、建物が建っている土地のことを「敷地」と呼び、敷地についての所有権が「敷地権」です。

マンションにおいて敷地権とは、建物の所有権と土地の共有持分権を、別々に売却できないように登記された権利形態のことです。
所有権のような権利を表す用語ではなく、権利の「形態・形式」を指す言葉になります。

聞きなれない言葉で少々混乱するかもしれませんが、敷地権について知ることで、相続するマンションが要件を満たしていれば相続税の特例を受けられる、すなわち節税が可能になります。

この記事では、マンションにおいての、

  • 敷地権とはどういうものなのか?
  • 固定資産税はどの程度かかるのか?
  • 相続で小規模宅地の特例は適用できるのか?

などについて、ステップ・バイ・ステップで説明していきますので、最後までじっくりとお付き合いください。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.敷地権とは

敷地権とは、マンション等の区分所有建物において建物と敷地の権利を分離して処分できなくなっている権利形態のことを指します。
区分所有建物とは、マンションのような一棟の建物の中に構造上・利用上独立して区分された2以上の部屋がある建物です。

1-1.マンションの土地の権利

マンションは、区分の部屋(建物)だけが独立して存在するわけではありません。
土地と建物は別の不動産なので、建物が存する以上、土地に対して所有権や賃借権等の何らかの権利が必ず存在します。

この建物が存することの根拠となる権利を「敷地利用権」と呼びます。
少しややこしいですが、「敷地利用権」と「敷地権」は異なります。

敷地利用権は区分所有建物が存在するための土地の権利ですので、所有権、賃借権、地上権等があります。

マンションでは、所有権は区分所有者全員で共有、賃借権又は地上権は準共有されていることが通常です。
準共有とは所有権以外の権利(賃借権等)を複数人で共有している権利を指します。

これらの敷地利用権と建物の所有権を分離処分できないように一体化したものが「敷地権」です。

1-2.分離処分の例

例えば、Aさんが土地と建物の所有権を持っているケースを考えます。
Aさんが土地だけをBさんに売却した場合、AさんはBさんから土地を借地することになります。

マンションでも、本来であれば「土地だけ」、または「建物だけ」を売却することが可能です。
土地と建物を別々に売却することを分離処分と言います。

ところが、区分所有者が多いマンションで分離処分を許してしまうと、「土地だけ」、または「建物だけ」を売却する人が現れてしまい、年中、土地の登記簿謄本を書き換えなければいけない事態が発生してしまいます。

実際に敷地権が制度化される以前は、土地の謄本に書き換えが頻繁に生じることでミスが多発していました。

このような事態を踏まえ、昭和58年の区分所有法改正により建物と敷地の権利を分離処分できないように一体化された「敷地権」という権利形態が生まれたのです。

2.敷地権割合の決まり方

敷地権割合は、多くの場合、壁芯面積割合で設定されています。
一部に販売価格割合で敷地権割合を決定している物件もあります。

壁芯面積とは、壁の中心線から測定した面積です。
分譲マンションの販売面積は壁芯面積に該当します。
それに対して、登記簿に記載されている面積は、内法(うちのり)面積です。

多くのマンションでは、敷地権割合は専有部の壁芯面積を専有面積の総床面積で割ったものとなっています。

敷地権割合 = 各専有部の壁芯面積 ÷ 専有面積の総床面積

例えば、マンションの登記簿謄本の中で、以下のような表示がなされていることがあります。

専有部床面積:87.35平米
敷地権の割合:2950530分の9187

上記のようなケースでは、内法面積が87.35平米であり、壁芯面積が91.87平米となっていることが多いです。

3.敷地権と所有権の違い

敷地権とは、敷地利用権が建物と分離処分できないように一体化された権利形態のことです。
一方で、所有権は敷地利用権の権利の一つになります。

敷地権は権利の「形態」を表す言葉であるのに対し、所有権は「権利」そのものを表す言葉であるという点が違いです。

敷地権というと「分離処分できない権利の形態」を指しますが、所有権というと「分離処分できるか否かに関わらず所有を表す権利」を指します。

つまり、敷地権化された所有権とは、所有権の一部です。
概念図で表すと以下のようになります。

多くのマンションでは、敷地利用権は共有持分権(共有の所有権)のため、所有権が敷地権化されています。

敷地権と所有権は概念の違う言葉ですが、実際にはほぼ同義で使われていることも多く、同義で使ったとしてもほぼ実害はありません。

4.敷地権が登記されていないマンション

敷地権は、昭和58年の区分所有法改正によって登場した権利形態であるため、昭和58年より前のマンションの中には、敷地権化されていないマンションもあります。

ただし、昭和58年以前のマンションであっても、法改正後にマンション管理組合によって敷地の権利が敷地権化されたマンションも多いです。

そのため、昭和58年以前のマンションが全て敷地権化されていないマンションというわけではありません。

敷地権化されていないマンションでは、土地と建物の2つの不動産があることを意識して売買や相続をすることが必要です。

敷地権化されていないマンションは、分離処分ができてしまうため、間違って建物だけを売却するようなことも考えられます。

敷地権化されていないマンションでは、土地と建物の所有者や抵当権の設定内容を常に同じにしておくことがトラブルを防ぐ対策となります 。

不動産売却塾 コラム

“敷地権化されていないマンションの売却の注意点”

敷地権化されていないマンションでは、以下の2点が売却時の注意点となります。

  1. 建物と敷地利用権を一体化して売る必要があること
  2. 所有権移転登記は土地と建物の両方必要であること

敷地権化されていないマンションは、分離処分のミスを防ぐためにも、信頼できる不動産会社に仲介してもらうのが適切です。

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経験豊富な司法書士と組んでいる不動産会社も多いので、登記に関しても適切に行うことができます。
古いマンションは敷地権のみならず、設備の不具合等の様々な問題を抱えていることが通常です。
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5.固定資産税評価額と敷地権の固定資産税


この章ではマンションの固定資産税評価額と敷地権の固定資産税について解説します。

5-1.固定資産税と都市計画税

敷地利用権が所有権の場合、マンションでも土地の固定資産税がかかります。
都市計画区域内の土地であれば都市計画税も課税されます。

固定資産税および都市計画税は以下の計算式で求められます。

固定資産税および都市計画税 = 課税標準 × 税率

税率は、固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%(基本税率)です。
都市計画税の税率は、自治体によって若干異なります。
課税標準額は固定資産税評価額から求めます。

5-2.固定資産税評価額がわかる納税通知書

固定資産税評価額や課税標準額、税額については所有者には毎年送られてくる納税通知書に記載されています。

固定資産税納税通知書には、「宅地」や「居宅」の分類がありますが、宅地と記載されている部分の固定資産税が敷地権の固定資産税に該当します。

宅地の固定資産税評価額は、マンション全体の敷地の評価額が記載されていることがあります。
固定資産税評価額が「億単位」の数値になっている場合は、大抵は全体敷地の評価額です。

5-3.敷地権の評価額の求め方

全体敷地の評価額が記載されている場合、敷地権の評価額は、全体敷地の評価額に敷地権割合を乗じて求めます。

敷地権の評価額 = 全体敷地の評価額 × 敷地権割合

敷地権の評価額を求めたら、次に課税標準額を求めます。
課税標準額は、税率を直接乗じて税額を求めるための数値です。

ここで、マンションのような住宅用地には「住宅用地の軽減措置」が適用されています。

5-4.小規模住宅用地と一般住宅用地の定義

住宅用地の軽減措置が適用される住宅用地には、「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」の2つがあり、以下のような定義がされています。

小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200平米までの部分
一般住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200平米を超え、家屋の床面積の10倍までの部分

「小規模住宅用地」または「一般住宅用地」では、固定資産税評価額に以下の係数が乗じられて課税標準額が求められます。

区分 固定資産税係数 都市計画税
小規模住宅用地 1/6 1/3(東京23区はさらに1/2)
一般住宅用地 1/3 2/3

小規模住宅用地は、「住宅1戸につき200平米までの部分」という定義がなされています。
戸数がわずか5戸の集合住宅でも、1,000平米(=200平米×5戸)の土地が全て小規模住宅用地となるということです。

マンションは戸数が多いので、マンションの敷地全体は全て小規模住宅用地が適用されているのが一般的です。

そのため、多くのマンションは固定資産税評価額に小規模住宅用地の「1/6」を乗じると課税標準額となります。

課税標準額 = 全体敷地の評価額 × 敷地権割合 × 1/6

よって固定資産税および都市計画税は以下のように計算されます。

固定資産税 = 課税標準 × 税率
      = 全体敷地の評価額 × 敷地権割合 × 1/6 × 1.4%

都市計画税 = 課税標準 × 税率
      = 全体敷地の評価額 × 敷地権割合 × 1/3 × 0.3%

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6.小規模宅地の特例も適用可能

小規模宅地の特例とは、相続財産のうち、一定の敷地について限度面積までの部分について80%または50%減額するという制度です。

前章で紹介した固定資産税の「小規模住宅用地の特例」と名前が似ていますが、この特例は固定資産税ではなく、「相続税」を大幅に節税してくれる税制となります。

6-1.小規模宅地の特例が適用できる土地

小規模宅地の特例が適用できる土地とは、その相続開始直前において、被相続人等の「事業の用」または「居住の用」に供されていた宅地等で、建物または構築物の敷地の用に供され、相続税の申告期限まで居住や事業を継続していた土地です。

対象となる土地にはマンションの敷地権も含まれますので、マンションでも小規模宅地の特例を適用することができます。

6-2.小規模宅地の特例

小規模宅地の特例は、土地の相続税評価額が減額される制度ですので、敷地権の評価額だけ大きく減額されます。

一方で、建物の相続税評価額は固定資産税と同額です。
小規模宅地の特例では、建物の相続税評価額は特に変化せず、敷地権のみの相続税評価額が減額される特例となります。

2015年1月1日以降の相続において、小規模宅地の特例が適用される区分と減額割合、限度面積の関係は以下のように定められています。

区分 減額割合 限度面積
特定居住用宅地等 80% 330平米
特定事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等
80% 400平米
貸付事業用宅地等 50% 200平米

6-3.特定居住用宅地等とは

特定居住用宅地等とは、ざっくり言うと被相続人(他界した人)の自宅の土地です。

特定事業用宅地等とは、被相続人が漬物屋や床屋等の事業に使っていた土地になります。
賃貸アパートのような賃貸事業の土地は特定事業用宅地等には含まれません。

特定同族会社事業用宅地等とは、被相続人等の持ち分割合が50%超の法人の事業の用に供されていた土地です。

6-4.貸付事業等宅地とは

貸付事業等宅地とは、不動産の貸付事業の用に供されていた土地です。
区分の賃貸マンションやアパート、時間貸し駐車場といった賃貸事業は貸付事業等宅地に該当します。

6-5.親の自宅マンションを相続する場合

相続対象が親の自宅マンションの場合は、「特定居住用宅地等」が対象となります。
特定居住用宅地等は、適用できる敷地面積が330平米となっています。

敷地権の平米数は、全体敷地面積に敷地権割合を乗じて求めます。

敷地権の面積 = 全体の敷地面積 × 敷地権割合

ほとんどのケースでは、敷地権の面積は330平米以下になることが多いです。
要件を満たす敷地権の面積が330平米以下の場合、敷地権の評価額は全て80%減額できることになります。

小規模宅地の特例は適用要件が厳しく、利用できないことも多いです。

例えば、親と子供が別居し、親も子供もそれぞれ家を持っているケースでは小規模宅地の特例を利用できません。

一方で、被相続人が経営していた区分ワンルームマンションの収益物件を相続する場合、小規模宅地の特例の区分は貸付事業等宅地に該当します。

貸付事業等宅地でも、敷地権の平米数は全体敷地面積に敷地権割合を乗じて求めたものになります。
敷地権の平米数が200平米までなら敷地権の評価額の50%減額が可能です。

小規模宅地の特例については、国税庁のホームページに記載されている要件を十分に確信した上で、適用するようにしてください。

相続した親の自宅を売却したい方は、関連記事もご覧ください。

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7.敷地権の相続税評価額

敷地権の相続税評価額を求める方法は、その敷地全体を評価し、登記簿謄本に記載のある敷地権割合を乗じて求めます。

マンション敷地の評価額 = マンション敷地全体の評価額 × 敷地権割合

マンション敷地の評価額は、マンションの敷地に接している相続税路線価を用います。
相続税路線価は平米あたりの千円単価です。

通常、マンションの登記簿謄本には敷地全体の土地面積が記載されていますので、まずはざっくり相続税路線価に全体面積を乗じてマンション敷地全体の評価額を出してみてください。
その後、敷地権割合を乗じれば、マンション敷地の概算評価額を出すことができます。

【マンション敷地の評価額の超概算を出す方法】

全体敷地面積:15,000平米
相続税路線価:180千円/平米
敷地権割合:2880450分の7875

マンション敷地全体の概算評価額 = 15,000平米 × 180千円/平米
                 = 2,700,000,000円

マンション敷地の概算評価額 = マンション敷地全体の概算評価額 × 敷地権割合
              = 2,700,000,000円 × 7,875 / 2,880,450
              ≒ 7,381,659円

本来であれば、マンション敷地の評価額を算出する際は、奥行価格補正や側方路線影響加算等の修正を行う必要があります。

敷地の評価修正には、専門的な知識が必要ですので、最終的には税理士に算出してもらうようにしてください。

まとめ

いかがでしたか。
マンションの敷地権について解説してきました。

マンションの土地と建物は敷地権によって分離処分できないことになっています。
敷地権割合は、壁芯面積割合で決まっていることが多いです。

敷地権は権利の形態を指す言葉であり、所有権は権利そのものを指します。
敷地権化された所有権は、所有権の一部です。

敷地権化されたマンションの土地は、要件を満たせば相続税の小規模宅地の特例を適用することができます。
小規模宅地の特例は、要件を十分に確認した上で適用を検討するようにしましょう。

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