建売住宅を売却したい!高くスムーズに売るための全知識を解説

建売 売却

戸建住宅(一戸建て、個人住宅、専用住宅ともいう)には、大きく分けると「建売(たてうり)住宅」と「注文住宅」があります。その中でも、建売住宅は比較的売りやすい不動産とされています

建売住宅は、土地と家を戸建開発業者がセットで販売する新築分譲住宅のことを指します。
注文住宅は、土地所有者が自分の希望を反映して建築した新築住宅を指します。

建売住宅は、元々、戸建開発業者によって「売るための商品」として販売された家であるため、注文住宅と比較すると売りやすい状態となっています。

ただし、建売住宅は売りやすいといっても、売却するならしっかりと準備することが必要です。
建売住宅を売却するには、最初に一通りの知識を身に着けてから着手すると、スムーズです。

そこでこの記事では、「建売住宅」に注目して、売り方について解説致します。
建売住宅の売却に必要な書類や手順、税金などの知識を余すことなくお伝えいたします。

この記事をお読みいただければ、建売住宅をよりスムーズに売却できるようになるので、ぜひ最後までお付き合いください。

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家を売る完全ガイド』では、売却に関するもっと初歩的な情報から解説しています。売却に詳しくない方は合わせてご覧ください。

この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.建売住宅は売りやすいので自信を持って売ろう

建売住宅は、分譲時に開発事業者が売りやすい商品として家を作っているため、中古であっても基本的には売りやすいと言われています。

注文住宅は、こだわりの住宅として建てている人も多く、クセが強いとなかなか売れなかったりもします。
それに対して、建売住宅は新築時に万人受けするように建てられていることから、中古住宅として売却する際も売りやすくなっています

先祖から持っているような土地に注文住宅を建てているようなケースでは、土地の境界確定が必要となるケースがあり、売却できる状態に持っていくまでが大変です。
一方で、建売住宅なら基本的に土地の境界は確定しているため、いつでも売れる状態となっています。売却前にわざわざ測量を行う必要もありません。

土地や建物の規模や元の価格も適正であるため、「買主にとって安心して購入できる物件」と言えるのです。

建売住宅は買主が見つかりやすいので、まずは自信を持って売却に挑みましょう。

売却の一歩目は査定からです。
売却を決めた方は、さっそく不動産会社に査定を依頼していきましょう。

査定依頼の際は、適切な査定額を見極めるために複数社を比較することをお勧めします。

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2.売却前に確認したい書類

この章では売却前に確認したい資料について解説します。

2-1.購入当時の売買契約書

家の売却では、売却する不動産の「購入当時の売買契約書」が必要です。
購入当時の売買契約書は、売却時の税金を計算する上で使います

個人が不動産を売却した際は、譲渡所得というものを計算します。
譲渡所得とは、以下の式で表したものになります。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1 譲渡価額とは売却価額です。
※2 取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3 譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用のことを指します。

譲渡所得を計算する上で、取得費を求める必要があります。
所得費を求めるために、購入当時の売買契約書が必要となってきます。

取得費の求め方については、「9. 確定申告は必要?」にて詳しく解説します。
購入当時の売買契約書は、売却後の確定申告で必要な書類となりますので、確定申告が終わるまでは、必ず保管するようにしてください。

2-2.境界関係の資料

建売住宅は、分譲時に境界を確定しているため、境界関係の資料はあるはずです。

確定とは、隣地所有者や道路管理者との間で、境界ラインが定まっていることをいいます。

戸建て住宅の売却では、売主に境界明示の義務があります。
建売住宅は、境界が確定しているため、売却にあたり新たな測量を行うことは不要なことが通常です。

境界が確定していることを証する実測図のことを、「境界確定図」または「確定測量図」、「確定実測図」等と呼んでいます。
図面名称の中に「確定」という2文字があれば、境界が確定していることを意味します。

売却にあたっては、「境界確定図」の有無を確認するようにして下さい。
確定測量図は最終的に買主へ引き渡す書類です。

また、現地においても、境界標が飛んでないかどうかも確認しておきます。
仮に境界標が飛んでいる場合には、売却までに復旧が必要となります。

確定測量図を見つけたら、現地が境界確定図通りになっているか、確認しておきましょう。

2-3.建物関係の資料

建売住宅を売却する場合、原則として、以下の建物関係の書類を買主へ引き渡します。

  • 確認申請書
  • 確認済証
  • 検査済証

建売住宅は、不動産会社が建物を合法的に建てて分譲しているはずですので、基本的には検査済証はあるはずです。

また、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認申請を通した建物は旧耐震基準、昭和56年(1981年)6月1日以降に建築確認申請を通した建物は新耐震基準の建物と呼ばれます。

旧耐震基準の建物でも、以下の書類があれば、新耐震基準に適合することを証することができます。

新耐震基準に適合することが確認できる書類

  • 耐震診断結果報告書
  • 既存住宅に係る建設住宅性能評価書
  • 瑕疵保険の保険付保証明書(以前に交付されたもの)
  • 建築士法第20条第2項に規定する証明書(構造計算書)の写し
  • 耐震基準適合証明書の写し
  • 住宅耐震改修証明書の写し
  • 固定資産税減額証明書の写し
  • 増改築等工事証明書の写し

新耐震基準に適合することが確認できる書類があれば、物件価値を引き上げることができます。
書類がある場合には、査定の時点で必ず不動産会社にアピールするようにしてください。

旧耐震基準の場合には、上記の資料の有無を確認しておきましょう。

3.どれだけお金が残るかの計算方法について知る

建売住宅の売却では、どれだけお金が残るかの計算方法は以下の式で計算されます。

手残り = 売却価格 - 住宅ローン残債 - 諸費用 - 税金

3-1.住宅ローン残債

住宅ローンが残っていても、売却時に住宅ローン残債を一括返済すれば売却は可能です。
住宅ローンが残っている不動産は、銀行の抵当権がついています。
抵当権とは、土地建物を担保にとっている権利のことです。

銀行の抵当権は、引渡時の入金と同時に外します。
そのため、建売住宅を売る場合には、事前に銀行に売却する旨を伝えるようにしてください。
抵当権抹消について詳しくは下記の記事でも紹介しております。あわせて参考にしてください。

関連記事:「抵当権抹消はどうやってするの?」

3-2.売却に必要な費用

建売住宅の売却では、主に以下の費用が発生します。

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 抵当権抹消の登録免許税
  • 司法書士手数用

これらの費用は、合計すると概ね物件価格の3.5%程度です。
このうち、仲介手数料が3%程度ですので、最も大きな費用になります。

仲介手数料の報酬上限額は、宅地建物取引業法によって、以下のように定められています。

取引額 仲介手数料(別途消費税)
200万円以下 取引額の5%
200万円超から400万円以下 取引額の4%+2万円
400万円超 取引額の3%+6万円

ほとんどの建売住宅は400万円超であるため、仲介手数料は「取引額の3%+6万円」となります。

3-3.売却で発生する税金

不動産を売却して譲渡所得が発生すると、所得税および住民税、復興特別所得税の税金が発生します。

税金については「9. 確定申告は必要?」で詳述しますが、3,000万円特別控除と呼ばれる特例を用いると、一般的には譲渡所得がマイナスとなり、税金はかからないことがほとんどです。

マイホームの売却は、税金の特例が多いため、税金に関してはそれほど心配する必要はありません。
節税特例の要件を良く理解し、税金が発生するかどうかを早めに確認しておきましょう。

4.価格査定をする

建売住宅の売却では、まず価格査定から開始します。

 

4-1.適正な査定価格が売却の成否を決める

建売住宅の売却は、適正な査定価格が売却の成否を決定します。

中古の不動産は分譲時とは異なり、価格が設定されていません。
建売住宅を売る際は、売値をいくらにするかということから始めます。

売り出し価格は、安過ぎれば損をしますし、高過ぎればなかなか売却できなくなってしまいます。
損をせず、確実に売却するためには、適正な売り出し価格を決めることが重要です。

適正な売り出し価格を決めるには、適正な査定価格が元になります。
適正な査定価格は、誰が査定するかが重要になります。

極端に言えば、親戚の素人のおじさんが5,000万円と査定するのと、プロの不動産会社が4,000万円というのでは、信頼度が全く異なります。

仮に親戚のおじさんが高く査定してくれたとしても、それは意味がありません。
査定価格が高いとか低いというのは、あまり意味がなく、重要なのは信頼できる不動産会社に査定を依頼するということです。

査定は、「いくらで査定されるか」よりも、「誰に査定してもらうか」の方が重要であるということを理解しておきましょう。

4-2.価格査定は必ず複数の不動産会社に依頼する

価格査定は必ず複数の不動産会社に依頼するという点が売却を成功させる最も重要なポイントです。

価格査定を1社からしから取らないと、その査定価格が高いのか、安いのかが分かりません。

また、査定価格は、不動産会社により数十万円~数百万円の差が出ることも珍しくないため、できるだけ高く売るためには、複数の不動産会社の査定を受けることが賢明です。

とはいえ、複数の不動産会社を自分で探して査定を依頼するのは非常に手間ですよね。
しかも自分で探した不動産会社が信頼できるかどうかも分かりません。

そこで、査定を依頼するのであれば、「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」を利用することをおススメします。

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また、査定をする不動産会社は、NTTデータグループによる厳正な審査を通った実績豊富な企業ばかりです。
信頼できる不動産会社の査定価格や販売戦略をしっかり比較することが、建売住宅の売却を成功させる第一歩です。

建売住宅を売却する際は、HOME4Uで複数の不動産会社に査定を依頼することから始めてみてください。

5.不動産会社を決めて媒介契約を締結する

複数の不動産会社からの査定結果をもとに、売却をお願いしたい不動産会社を決定します。

不動産売却 HOME4U」を使えば、売却予定の建売住宅があるエリア内で戸建て売却が得意な不動産会社が抽出されるため、どの不動産会社に依頼しても基本的には大丈夫です。

不動産会社の選び方については、詳しくはこちらの記事でも紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

“お家のいろは”関連記事:「不動産売却ってどの会社に頼めばいい?大手と中小の違いを解説」

近年は、不動産会社各社がインターネット広告を非常に工夫して差別化しています。
豊富な写真や、動画、360度パノラマビューを載せている会社の広告は、購入希望者の興味を引くため、売却しやすくなるでしょう。

不動産会社を選ぶ際には、どのような広告を行ってくれるのか、聞いてみましょう。
査定価格だけでなく、広告戦略や営業マンの真摯な対応等も加味した上で、不動産会社を選ぶようにしてください。

不動産会社が決定したら、次にその不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に依頼する仲介の契約のことです。

媒介契約には、「専属専任媒介契約」、「専任媒介契約」、「一般媒介契約」の3種類があります。

専属専任媒介契約 他の不動産会社に重ねて依頼ができない。自己発見取引も不可。
専任媒介契約 他の不動産会社に重ねて依頼ができない。自己発見取引は可能。
一般媒介契約 他の不動産会社に重ねて依頼できる。自己発見取引も可能。

 ※自己発見取引とは自分で買主を見つけてくることです。

3つの契約形態は、専属専任媒介契約または専任媒介契約は1社にしか依頼できませんが、一般媒介契約は、複数の不動産会社に仲介を依頼することができるという点が異なります。

また、専属専任媒介契約では、自己発見取引が禁止されています。
親族や知人で買ってくれそうな人がいないか事前にリサーチし、可能性があるなら専属選任は避けるようにしてください。

不動産売却塾 コラム

内覧について

購入希望者に物件を実際に見て確かめてもらうために行うのが「内覧」です。

チラシやWEBなどに掲載されている物件情報を見て興味を持ち、足を運んでもらえるということは、あなたの物件の間取りや立地条件、価格などが希望に見合っているということです。つまり購入してもらえるかどうかは、内覧の印象次第といっても過言ではありません。

興味を持った買主候補の購買意欲を後押しするためにも、事前にしっかりと準備してください。
中古住宅の売却の場合、住みながら売却活動を進めるというケースも少なくありません。

内覧者を迎えるためのポイントは、こちらの記事を参考にしてみてください。

関連記事:「家を売る際、内覧者を迎えるときのポイント」

6.インスペクションを検討する

2018年4月以降の売却では、媒介契約締結時に不動産会社が依頼者に対してインスペクションのあっせん希望の有無を確認することになっています。

インスペクションとは、建物状況調査のことです。

インスペクションでは、主に柱や基礎、壁、屋根などの構造耐力上主要な部分や、外壁や開口部などの雨水の浸入を防止する部分について、専門家による目視や計測等の調査が行われます。

インスペクションに合格すると、専門家によるチェックを通過したことになるため、買主に大きな安心感を与えることができるというメリットがあります。

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会では、2017年3月に「土地・住宅に関する消費者アンケート調査」を公表しています。

アンケートでは、インスペクションの利用効果についても調査が行われており、その結果は以下の通りです。

インスペクションを行った人の回答では、「自宅の売却が希望価格で売れた」、「買手が早く見つかり売却がスムーズにできた」と回答している人が半数以上を占めています。

インスペクションを実施すると、家が高く売れる効果があることが分かります。

特に、木造の戸建住宅は、鉄筋コンクリート造のマンションよりも躯体の劣化が早いため、購入希望者から厳しい目が注がれる傾向があります。

そのため、建売住宅を売却する人は、ぜひインスペクションを実施することをおススメします。

インスペクション費用の相場は5万円前後です。
検査に要する時間は3時間程度なので、半日もあれば終わります。

インスペクションには、インスペクター(検査する人)の手配で1週間、報告書の作成で1週間、合計2週間程度の時間を要します。

インスペクションに合格している事実は、物件広告に載せることができます。
広告に合格実績が載っていると効果的ですので、実施する場合には広告を打つ前にインスペクションの依頼をしましょう。

7.付帯設備表と告知書を作成する

売却活動を開始すると、売主は不動産会社から付帯設備表と告知書の記載を求められます。

購入希望者が現れ、条件などの交渉がまとまると、物件情報の提供が行われます。物件情報は、不動産会社を通して買主に伝えられますが、そのための書類を準備しておく必要があります。

付帯設備表は、設備の撤去の有無や不具合状況を書く書類です。
告知書は、設備以外の瑕疵(かし)に関して記載する書類となります。

瑕疵とは売買契約の目的物が通常有すべき品質・性能を欠いていることをいいます。
例えば、建物の雨漏りやシロアリによる床下の腐食、土壌汚染、過去にあった忌まわしい事件、近隣からの騒音・振動・異臭等が瑕疵に該当します。

建売住宅の場合、エアコンやウォシュレットなどの外せる設備が存在します。
エアコンやウォシュレットを外して、引越先に持っていきたい場合には、付帯設備表に「撤去」と記載しておきます。

付帯設備表は、売るものと売らないものを明確に分ける役割を果たします。
次に、そのまま残して売る設備に関しては、不具合状況も記載します。

例えば、お風呂の湯沸かし器で追い焚き機能が壊れて使えないような場合には、「追い焚き機能が使えない」といった不具合を記載しておきます。

付帯設備表は、修繕を目的としたものではなく、その状態で売ることを買主に了承してもらうことを目的に作成します。
不具合を事前に告知しておくことで、売却後のトラブルを防ぎます。

付帯設備表は、しっかりと記載しておかないと、売却後に「こんなことは聞いていなかった」とクレームになることが多いです。

建売住宅には色々な設備があるため、きちんと動作確認を行った上で、付帯設備表をしっかりと記載しましょう。

また、告知書は、売主の知っている瑕疵を買主へ告げるための書類です。
売主は、売却後、瑕疵担保責任を負います。
瑕疵担保責任については「8-1.契約不適合責任(瑕疵担保責任)」にて解説します。

売主の瑕疵担保責任は、契約によって全部または一部を免責することが可能です。
しかしながら、契約書で免責したとしても、売主が知っていながら買主に告げなかった瑕疵については免責対象とすることができません

売主は、知っている瑕疵は売却前に全て買主へ告げる必要があります。
告知書は、買主へ知っている瑕疵を告げるための重要な書類です。

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8.売買契約書のチェックポイント

条件がまとまり、売主・買主双方が合意となれば、売主・買主間で売買契約を締結します。

不動産売買の契約は、簡単には解除はできません。そのため、売買契約書に記載する内容について、事前にきちんと確認することが大切です。

この章では建売住宅を売る際の売買契約書のチェックポイントについて解説します。

8-1.契約不適合責任(瑕疵担保責任)

売買契約書の中で、売主が一番チェックしなければいけない部分は「契約不適合責任」です。以前は「瑕疵(かし)担保責任」と呼ばれていました。2020年4月1日に民法が改正され、名称や内容に変更され、売主の責任が重くなっています。

契約不適合責任では、契約内容と異なるものを売却したときに、売主が「債務不履行」の責任を問われます。民法が改正され、買主が売主に損害賠償請求を行う権利も認められました。そのため、売主は契約書を以前よりも詳しく書かなくてはいけません。

契約不適合責任によるトラブルを回避するためには、契約書作りが重要です。雨漏りがする建物を売却するなら、修繕してから売却するか、雨漏りの事実を明確に契約書に示す必要があります。建物に関する、一切の不具合を隠さないことがポイントです。

契約書を的確に作成すれば、契約不適合責任を問われることはないでしょう。売却する物件をインスペクション(建物状況調査)で隅々まで調査し、適切に契約書を作成してください。不動産会社に契約書作成を依頼した場合は、内容をよくチェックすることが大切です。

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8-2.ローン特約

建売住宅の売買契約書の中には、ローン特約というのも記載されています。
ローン特約とは、買主が住宅ローンを利用する際、銀行の融資審査に通らなかった場合、違約金を一切発生しない形で契約を解除できる特約です。

買主は、住宅ローンの本審査を受けるために売買契約書が必要となります。
そのため、売買契約を締結する前は、買主は住宅ローンの審査に通るか通らないか分からない状態です。

きちんとした買主であれば、売買契約前に銀行に仮審査を行っていますので、仮審査に通っている人であれば、基本的には本審査にも通ります。

しかしながら、事前に仮審査を受けている人ばかりではないため、住宅ローンの審査に通るかどうかは、売買契約後でないと分かりません。

もし、買主が住宅ローンの本審査に通らなかった場合は、ローン特約が発動され、契約は解除されます。

その際、売主は売買契約時点で買主から手付金を受け取っていますが、手付金については全額返金することになります。

また、売主は売買契約時点に不動産会社に仲介手数料の半額を支払っています。
ローン特約による解除の場合には、支払済みの仲介手数料については、当然に不動産会社から取り戻すことができます

ローン特約とは、売買契約書の中では「買主の融資利用に関する特約」といった名称で規定が設けられています。

ローン特約の発動はあり得ることなので、どのような条文になっているかしっかりと確認しておきましょう。

8-3.手付解除

売買契約書の中には、手付解除の規定もあります。
手付解除とは、売買契約書から引渡までの間に、手付金によって契約を取りやめるという解除です。

不動産の売買では、売買契約時点に買主から売主に対して手付金が支払われます。
手付金は売買代金の10%が相場です。
手付金は売買代金の一部になりますので、残りの90%の残金が引渡時点に入金されます。

手付解除は、買主は手付金をそのまま放棄することで解除ができます。
それに対して、売主は手付金の倍額を買主へ支払うことで解除することができます。

売主は「倍額」と言っても、既に手付金を買主から受領していますので、自腹で支払うのは売主も手付金の「1倍」です。

つまり、売主も買主も手付金の額を支払えば、売買契約から引渡しまでの間に一方的に解除することができます。

ローン特約による解除の場合は、当事者の意思ではなく、銀行という第三者が原因で破談となります。

しかしながら、手付解除は売買当事者である売主や買主の一方的な都合による解除であるという点がローン特約による解除と異なる点です。

そのため、ローン特約による解除は違約金が発生しませんが、手付解除では「手付金」という違約金が発生することになります。
手付金は、いわゆる違約金の役割も果たしているということです。

尚、手付解除による解除では、売主が既に不動産会社に支払った半額の仲介手数料は取り戻すことができません

手付解除は、売買契約当事者の一方的な解除であり、不動産会社には非がないからです。
手付解除で仲介手数料が取り戻せない件については、揉めることが多いです。

揉める原因は、手付解除でも仲介手数料は取り戻せると勘違いしている人が非常に多いことが理由です。

売主としては、売買契約したら、原則として解除しないというのが基本になります。

9.確定申告は必要?

建売住宅を売却した際、以下の2つのケースに当てはまる場合には、確定申告を行う必要があります。

  • 納税する必要がある場合
  • 税金の特例を利用する場合

 

不動産を売却すると、譲渡所得を計算します。
譲渡所得がマイナスで、かつ、税金の特例を利用しない場合には、確定申告を行う必要がありません。

確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間までに行います。

建売住宅のようなマイホームの売却では、税金の特例が5つ用意されています。

譲渡所得が発生した場合の特例

  1. 3,000万円の特別控除
  2. 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え特例

譲渡損失が発生した場合の特例

  1. 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  2. 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

これらの特例は、建売住宅が居住用財産の要件を満たしていると利用することができます。
居住用財産の定義とは、以下の通りです。

  1. 現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
  2. 転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡するする敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
  3. 災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合
  4. 転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取り壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取り壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

簡単にいうと、今自分が住んでいる家か、または、住んでいた家を転居してから3年後の12月31日までに売却するケースは居住用財産に該当します。

確定申告では、まず譲渡所得を求めます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

ここで、取得費は土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額でした。
土地については減価償却を行いません。

そのため、取得費を求めるためには、まず購入当時の売買契約書によって土地と建物の価格を分けます
その次に、建物に関して減価償却という手続きを行います

減価償却費は以下の計算式で求めます。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

建売住宅の償却率は0.031、法定耐用年数は33年となります。
ここで、以下に譲渡所得の計算例を示します。

譲渡価額:3,500万円
譲渡費用:111万円
土地購入価額:3,000万円
建物購入価額:2,000万円
築年数:25年

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 2,000万円 × 0.9 × 0.031 × 25年
      = 1,395万円

建物取得費 = 建物購入価額 - 減価償却費
      = 2,000万円 - 1,395万円
      = 605万円

取得費 = 土地購入価額 + 建物取得費
    = 3,000万円 + 605万円
    = 3,605万円

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 3,500万円 - 3,605万円 - 111万円
     = ▲216万円

上記のように計算の結果、譲渡所得がマイナスとなることがあります。
マイナスの譲渡所得のことを譲渡損失と呼びます。

譲渡損失が発生する場合には、以下の2つの特例を利用できるケースがあります。

譲渡損失が発生した場合の特例

  • 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

譲渡損失の特例は、簡単に言うと、譲渡損失を給与所得と合算し、給与所得で天引きされていた源泉徴収を取り戻せるという特例です。

譲渡損失が発生している場合には税金を納める必要がないため、基本的には確定申告を行う必要がありません。

しかしながら、建売住宅のような居住用財産は、譲渡損失が発生しても使える税金特例があるため、かなりの確率で確定申告をする人は多いです。

譲渡所得がプラスの場合でも、「3,000万円の特別控除」のような節税のための特例を使うときは、やはり「特例を使うために確定申告が必要」となります。

確定申告が不要な人は、「譲渡損失が発生しており、なおかつ、譲渡損失が発生した場合の特例を使わない人」のみです。

建売の売却では、基本的に確定申告が必要となりますので、売却後、忘れずに確定申告の手続きを行うようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか。
建売の売却について見てきました。

建売戸建ては、既に売物となっていますので売却しやすい住宅です。

売却前には、まず「購入当時の売買契約書」や「境界関係の資料」、「建物関係の資料」等の書類の有無を確認するようにしてください。

売却で得られる手残りは、売却価格から住宅ローン残債と諸経費、税金を控除した金額となります。

適正な価格で売りに出すことが、損をせず、確実に売却できるコツです。
査定は「不動産売却 HOME4U」を使って、信頼できる複数の不動産会社に依頼するようにしましょう。

媒介契約の締結時には、不動産会社からインスペクションのあっせんの希望の有無を聞かれます。
インスペクションに合格すると売却しやすくなりますので検討してみてください。

付帯設備表や告知書は、早めに記入することが売却をスムーズに進めるコツとなります。
売買契約書の中では、特に瑕疵担保責任の規定を理解して確認することが重要です。

売却後は、納税をする場合や税金の特例を使う場合には、確定申告が必要となります。
マイホームの売却ではお得な税金特例が複数ありますので、自分のケースにあった特例を選択し、節税対策もしっかりと行い、お得に売却を成功させましょう。

この記事のポイント まとめ

建売住宅が売りやすい理由は?

注文住宅より建売住宅が売りやすい理由は以下の通りです。

  • 建売住宅は万人受けする商品として作られた家だから
  • 隣の家との境界が確定しているから
  • 建物の規模や価格が適正だから

詳細は「1.建売住宅は売りやすいので自信を持って売ろう」をご覧ください。

売却前に確認したい書類は?

建売住宅の売却前に確認する書類は以下の通りです。

  1. 購入当時の売買契約書
  2. 境界確定図または確定測量図、確定実測図など境界がわかる書類
  3. 確認申請書、確認済証、検査済証など建物関係の資料

詳細は「2.売却前に確認したい書類」をご覧ください。

住宅を売却した時、手元に残るお金を知る方法は?

売却額から、残っている住宅ローン、諸費用、税金を引いて計算します。

売却額から引かれるお金

  • ローン残債
  • 仲介手数料、印紙税、抵当権抹消の登録免許税、司法書士手数用などの諸費用
  • 所得税および住民税、復興特別所得税の税金

さらに知りたい方は「3.どれだけお金が残るかの計算方法について知る」をご覧ください。

建売住宅の売却を成功させるコツは?

売却を成功させるためには、物件の適正な査定価格を行うことが大切です。

売却を成功させる価格査定のコツ

  • 不動産のプロに査定を依頼する
  • 複数の不動産会社に査定を依頼
  • 一括査定サービスを利用する

詳しく知りたい方は「4.価格査定をする」をご一読ください。

売買契約書のチェックポイントは?

売買契約書のチェックポイントは以下の通りです。

  • 契約不適合責任
  • ローン特約
  • 手付解除

以前は「瑕疵担保責任」と言われていたものが、2020年4月1日の民法改正により「契約不適合責任」となりました。内容も変更されています。詳細は「8.売買契約書のチェックポイント」をご一読ください。