仮換地とは?権利関係や税金、売却のノウハウについて解説

仮換地とは 権利関係や売却のノウハウ

道路や公共施設などを整備するために行なわれる土地区画整理事業では、地権者に「仮換地」を提供することで、現在の土地から立ち退いてもらうケースがあります。

そこで本記事では、仮換地の概要や権利関係、各種税金への影響のほか、仮換地を売却する際のノウハウなどについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 仮換地の基礎知識
  • 仮換地の権利関係
  • タイミング別の仮換地売却の注意点
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1.仮換地(かりかんち)とは?

宅地

仮換地(かりかんち)とは、土地区画整理法に基づく「土地区画整理事業」の換地処分に先立って、地権者に仮の土地を割り当てる行為、あるいは仮の土地そのものを指す言葉です。

参考:“土地区画整理法”. e-Gov法令検索

土地区画整理事業は、都道府県・市区町村もしくは地権者が主体となる土地区画整理組合が施行者となって行なわれるのが一般的ですが、事業の進行を妨げる位置に土地が存在するケースがあります。このような土地には、居住用の建物が建てられていることが多く、区画整理を行なう際には、居住者の生活に配慮したうえで区画整理を進めなければなりません。

事業の都合上、地権者に従前地(現在の土地)からどうしても立ち退いてもらう必要がある場合、代わりに使用・収益できる土地として仮換地を提供します。

なお、仮換地は区画整理で新しく造成する換地予定地です。区画整理の工事が一通り終わったら、原則として換地予定地が正式に割り当てられます。つまり、「仮換地=一時的に与えられる仮の土地ではない」点に注意しましょう。

1-1.土地区画整理事業の流れ

土地区画整理事業の内容は、施行者によって異なります。施行者が自治体もしくは土地整理組合の場合の基本的な流れは、以下のとおりです。

土地区画整理事業の流れ

  1. 原案の作成・調査
    まちづくり協議会で地権者や住民と話し合ったり、区画整理に関する測量・地質調査などを行なったりしたうえで、土地区画整理事業の原案を作成します。
  2. 都市計画の決定
    土地区画整理事業の施行地区を都市計画として定めます。その際、都市計画の内容を公開したり、公聴会を開いたりしたうえで、地権者や住民から意見書を受け付ける必要があります。なお、この手順は組合施行なら任意です。
  3. 事業計画の作成
    資金計画・設計概要・スケジュールなど、具体的な事業計画を作成します。事業計画の内容は地権者などに公開し、意見書を受け付ける必要があります。
  4. 換地設計
    施行地区における土地の評価を実施します。その評価をもとに、区画整理後の土地の位置・形状などを設計案にまとめ、地権者に発表します。
  5. 仮換地の指定
    換地設計の内容に基づいて仮換地を指定し、地権者へ通知します。
  6. 建築物の移転・除却
    施行者から地権者へ建築物の移転・除却に関するスケジュールを通知します。地権者から協力を得られず、期日までに移転・除却が行なわれなかった場合、施行者が直接移転・除却することが可能です。
  7. 換地処分
    所有権移転や清算金について換地計画を定めたら、換地処分が可能です。換地計画の内容も地権者などに公開し、意見書を受け付ける必要があります。
  8. 登記
    換地処分後、施行者が土地区画整理登記の手続きを行ないます。
  9. 清算
    換地処分による不均衡を是正するため、金銭の徴収・交付を行なって清算します。

1-2.仮換地の目的

従前地(現在の土地)から新しい土地(換地)へ権利関係を移すには、換地処分とそれに伴う登記・清算の手続きが必要不可欠です。

換地処分は原則として「土地区画整理事業が完了した時点」で実施します。しかし、当該事業の工事が終わるまでには長期間を要し、事業開始からすべての処理・手続きが完了するまで10年以上かかるケースも少なくありません。

それゆえ、工事が完了した地区から仮換地を順次定め、地権者が使用・収益できるように手配するケースは数多く見受けられます。つまり、仮換地は地権者の生活を守るための措置といえるでしょう。

仮換地はそのまま本換地になるため、仮換地に建物を建てることも可能です。自分が住むためのマイホームはもちろん、不動産投資に使う賃貸住宅も建築できます。

1-3.保留地との違い

仮換地とよく混同されやすいものとして「保留地」があります。保留地は区画整理で新たに生み出された区域のうち、換地として割り当てられなかった土地のことです。

土地区画整理事業は地権者が従前地の一部を提供する「減歩(げんぶ)」という形で行なわれており、新たに割り当てられる換地は従前地よりも面積が狭くなるのが一般的です。その際に減少した面積の割合を「減歩率」と呼びます。

減歩には道路や公園のための用地を確保するほか、先述した保留地を取得する目的もあります。施行者は保留地を売却して区画整理事業で使う資金を賄っているため、地権者からは清算金以外の金銭を受け取ることはありません。

2.仮換地の権利関係はどうなる?

図面と模型

前提として、土地には持ち主であることを示す「所有権」と、一定の目的のために土地を使用できる「使用収益権」という2つの権利があります。

土地区画整理事業を進めている期間中、換地処分が終わるまで所有権は仮換地ではなく従前地(現在の土地)にあります。つまり、地権者は割り当てられた仮換地を所有しているわけではないということです。

ただし、使用収益権は区画整理事業が開始されると従前地から仮換地へ移行します。そのため、仮換地の所有権を持っていなくても建物を建てられるようになるのです。

仮換地の権利

なお、換地処分が完了すると、所有権・使用収益権はどちらも本換地に移ります。

3.仮換地は税金が高くなる?

土地区画整理事業が行なわれると、土地の区画や道路がきれいに整備されるので、結果的に土地の評価額が上がります。仮換地が提供された場合、土地の評価額の上昇に伴い固定資産税や相続税が高くなる可能性があるため、あらかじめ注意が必要です。

ここでは、仮換地と各種税金との関連性について詳しく解説します。

3-1.固定資産税・都市計画税

固定資産税は、毎年1月1日時点における土地・建物の所有者に課せられる地方税です。固定資産税の金額は、その不動産が属する市町村(東京23区は東京都)が決めた固定資産税評価額に一定の税率をかけて算出します。なお、税率や特例措置などは自治体によって異なるので、事前にホームページなどで確認しておくとよいでしょう。

仮換地に課される固定資産税は「みなし課税(みなす課税)」を適用するケースが多く見受けられます。みなし課税とは、使用・収益が認められた土地に対して、登記簿の有無に関わらず固定資産税および後述の都市計画税を課す制度です。

参考:“令和5年度から固定資産税・都市計画税の土地区画整理事業に係る「みなす課税」が行われる区域のお知らせ”. 東京都主税局

原則、固定資産税は土地評価額に比例して増えるので、整備されて価値が上がった仮換地は税額も上昇しやすくなります。

また、都市計画税が新たに課税される可能性もあります。都市計画税は毎年1月1日時点における市街化区域内の不動産所有者が課される税金で、固定資産税とセットで納めます。

3-2.相続税

相続税とは、亡くなった方(被相続人)から遺産を受け継いだ相続人に課せられる税金です。相続税は遺産の総額に対して課されるので、遺産の価値が高いほど税額も増えます。

土地区画整理事業中に相続が発生した場合、相続税の対象となる土地の評価方法は、以下のとおりです。

進捗 評価方法
仮換地指定 なし 従前地の価額をもとに評価
あり 仮換地の価額をもとに評価
あり
(例外)
仮換地の使用・収益を開始できない場合
仮換地の造成工事が行なわれていない場合
従前地の価額をもとに評価
仮換地の造成工事を行なっている途中で、工事完了まで1年超の期間を要すると見込まれる場合 仮換地の価額×95%で評価
換地処分後 換地の価額をもとに評価

なお、課税のタイミングで清算金の授受がある場合、徴収される分は仮換地の評価額からマイナス、交付される分は仮換地の評価額にプラスして計算する必要があります。

4.仮換地は売却できる?タイミング別の注意点

住宅地

仮換地に所有権は発生しませんが、使用収益権に基づいて売却することは可能です。ただし所有権は従前地にあるので、売買契約書には従前地の情報が記載されます。

また、仮換地の売却価格は以下のように土地区画整理事業の進捗状況によって変動する傾向にあるため注意が必要です。

  • 都市計画の決定前
  • 仮換地指定前
  • 仮換地指定後
  • 換地処分後

ここからは、仮換地を売却する際に知っておきたいタイミング別の注意点を解説します。

4-1.都市計画の決定前

都市計画がまだ決まっていない場合は、通常と同じように対象の土地を売却できます。

ただし、正式に決定されていなくても区画整理事業の計画自体は立ち上がっている可能性があるので、状況によっては重要事項説明書に記載したほうがよいでしょう。どうすべきか迷った際は、不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。

4-2.仮換地指定前

仮換地が指定されていない場合、売却価格は安くなる傾向にあります。現在の土地より広くなるか狭くなるか、指定前のタイミングでは判断がつかないうえ、土地の用途も制限されて評価が上がりにくいためです。

また、上記の理由から購入希望者も現れにくいので、土地を売却するなら仮換地の指定が終わるまで待つほうが得策でしょう。

4-3.仮換地指定後

仮換地が正式に決まったら、対象の土地の売却活動を進めやすくなります。今後、土地やその周辺が整備されることで、土地の資産価値が上がりやすい点をアピールできるからです。

ただし、所有権の関係から契約上は従前地を売却したこと、登記手続きも従前地に対して行なうことなどをあらかじめ買主に伝える必要があります。また、換地処分や清算金の発生時期についても明確にしなければなりません。

各自治体の窓口で発行している「仮換地指定証明書」があれば形状や面積などに関する情報を買主へ提示しやすくなり、スムーズな取引につながります。

4-4.換地処分後

換地処分後は土地評価額が最も上がりやすく、かつ買主も住宅を建てるイメージがしやすいタイミングです。売却を急いでいないなら、換地が終わるまで待つことを推奨します。

ただし、換地によっては用途に制限が設けられていることがある点に注意が必要です。買主とのトラブルを避けるためにも、事前に確認しておくとよいでしょう。

まとめ

仮換地とは、土地区画整理事業に際し所有している土地を供出した地権者へ提供する仮の土地のことです。仮換地であっても売却は可能ですが、土地区画整理事業の進捗状況によって売却価格は異なります。少しでも高く、かつ早く売却したいなら、換地処分がなされるまで待ったほうがよいでしょう。

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