解約手付とは?手付の種類や解除可能な期限、金額目安を解説

解約手付とは 期日や目安金額を解説

解約手付とは、締結した不動産の売買契約を解除できる手付金のことです。理由を問わず契約を解除できますが、解約手付は違約金として扱われます。しかし、履行の着手で手付解除ができなくなるため、目安になる期日を決めることが大切です。

本記事では、手付の種類や解約手付の役割、手付解除の方法、金額の目安についてわかりやすく解説します。

この記事を読むと分かること
  • 不動産売買における手付の役割
  • 解約手付による手付解除と履行の着手について
  • 解約手付の金額の目安
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1.そもそも手付とは?

不動産契約

手付(手付金)とは、不動産の売買契約が成立する際に、買主から売主に支払う金銭のことです。不動産の取引で手付金を支払う理由は、売主と買主が安易に契約を解除できないようにするためです。

手付金

買主が売主に手付を支払うことで、契約する意思が固まっており、買主の都合でキャンセルしない、ということを示します。一方、手付を受領した売主が契約を解除するには、当初の手付よりも多い金額を買主に支払うなどの対応が必要です。

つまり、手付は売買契約が成立した証拠になるとともに、一方的に契約を解除できない保証にもなるのです。また、支払った手付は、契約が成立しなかったときの違約金、損害賠償金と似た働きをします。

なお、契約成立前の手付は、不動産の売買代金には含みません。契約が正式に成立したときに、手付金を売買代金の一部として充当します。

手付と混同されやすい「内金」は、売買代金の一部として先払いをする金銭のことです。手付は民法557条に基づくものである一方で、内金は法律の取り決めではなく契約上で定めるものとなっています。

参考:“民法 第五百五十七条”. e-Gov法令検索

2.手付の種類

手付には、「解約手付」「証約手付」「違約手付」の3種類があります。

2-1.解約手付

解約手付とは、一度締結した売買契約であっても、一定期間内は理由を問わず契約を解除できる手付のことです。

解約手付の授受があった時点で、売主と買主の間に「解約権」が留保されます。解約手付の放棄や返還により、売主と買主はいつでも売買契約を解約できる権利を持ちます。

解約手付の金額に制限はありませんが、売主が宅地建物取引業者である場合には、代金の20%を超える額にすることはできません。

なお、不動産の売買契約で支払う手付の種類は、当事者間の合意によって決められます。特段の合意や定めがない限り、解約手付の性質を含むものとして扱うのが一般的です。

参考:“宅地建物取引業法 第三十八条”. e-Gov法令検索

2-2.証約手付

証約手付とは、不動産の売買契約が成立したことを証明する手付のことです。証約手付を支払うことで、売主に対して売買契約をする意思を伝えられます。

つまり、証約手付は売買契約における頭金に似た性質を持つといえます。

2-3.違約手付

違約手付とは、売主と買主のどちらかが契約義務を果たさない、債務不履行があった場合に、契約違反の違約金として没収される手付のことです。

契約違反に該当する債務不履行は、買主側、売主側で事情が異なります。具体的には、買主側が不動産の購入代金を支払わない、売主側が期限までに不動産を引き渡さない、といったケースが挙げられます。

また、違約手付は損害賠償の役割も果たします。損害賠償は、債務不履行に対する損害を補償するものですが、立証には時間と手間がかかります。そこで、違約手付を支払って損害賠償金として扱うことで、問題の早期解決を図れるのです。

3.解約手付と手付解除の関係性

解約

本章では、手付解除するときの解約手付の扱いと、手付解除の期限について解説します。

3-1.手付解除における手付金の扱い

手付解除とは、手付金の交付により契約を解除できるようにすることです。手付解除については、以下のとおり民法557条に定められています。

  • 民法557条(手付)
  • 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

引用:“民法 第五百五十七条”. e-Gov法令検索

解約手付を受け取った売主が自身の都合で契約を解除したい場合、預かった手付金の「倍額」を買主に返還することで契約を解除できます。これを「手付倍返し」といい、売主側が契約を解除する方法です。

一方、解約手付けを支払った買主側が契約を解除する場合、買主が解約手付を「放棄」することで契約を解除できます。これを「手付流し」といい、解約手付が返還されない代わりに、損害賠償を支払わずに契約を解除できるメリットがあります。

手付倍返し、手付流し

3-2.手付解除の期限に関わる「履行の着手」とは?

不動産の売買契約で解約手付の授受があった場合、売主と買主のそれぞれに解除権が与えられます。ただし、解約の理由は一切問われないため、いつまで解除できるのかが問題になります。

いつ契約が解除されるかわからない状況では、決済や住み替えの準備を進められません。また、売買契約の締結後に、資金調達や引越しなどの準備を進めるなかで契約を解除されると、買主側は大きな不利益を被ります。

このような事態を防ぐために、不動産売買における手付解除は、「相手方が契約の履行に着手するまで」に実施しなければなりません(民法557条)。

「履行の着手」とは、売買契約の内容を履行する準備、および履行行為に取りかかることです。客観的に認識できるかたちで、履行行為の一部を実行、または契約履行の前提に必要な行為を実施すると、履行の着手が認められます。

履行の着手に該当する状況
買主 内金や中間金など、購入代金の一部を支払う
代金を準備し売主に対し引き渡しを催告する
売主 所有権移転登記、土地の分筆登記などを行なう
売却した物件を引き渡す
建築工事に着手する

参考:“民法 第五百五十七条”. e-Gov法令検索. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

3-3.手付解除期限を決める方法と期限の目安

履行の着手は、民法における手付解除の期日でもあります。しかし、いつ履行に着手したかを判断するのは難しく、両者の解釈が食い違う可能性もあります。

そこで、不動産の売買では、民法の手付解除を補完する「手付解除期限」の特約を定めるのが一般的です。手付解除期限を設けることで、契約を解除される不安やリスクを軽減できます。

手付解除期日を決める目安となる、標準的な期日は次のとおりです。

契約~決済までの期間 手付解除期日の目安
1ヵ月間以内 残代金支払日の1週間前~10日前
1ヵ月~3ヵ月 契約日から1ヵ月前後
4ヵ月~6ヵ月 契約日から2ヵ月〜3ヵ月前後
買主が住宅ローンを借り入れる場合 金融機関の融資承認の期間を含めた、
「融資利用による契約解除期日」の翌日以降

具体的な手付解除期限は、決済日の日程や契約内容などを考慮し、売主と買主の合意によって決める必要があります。しかし、不動産会社の都合で手付解除期日を決める場合もあるため、不明点があるときは事前に確認してください。

参考:“民法 第五百五十七条”. e-Gov法令検索
“契約の解除と手付金の返還等”.一般財団法人不動産適正取引推進機構. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

4.解約手付の金額目安

電卓と現金

不動産売買における解約手付の金額は、売買代金の5%~20%の範囲で決めるのが一般的です。また、売主が宅地建物取引業者の場合、宅地建物取引業法第39条により、解約手付は20%以内と法律で定められています。

解約手付は、売買契約の安易な解約を防ぐ「担保」の役割も果たしますが、金額が安すぎると簡単に解約できてしまい、高すぎると解約が困難になってしまいます。したがって、ルールの範囲内で適切な金額を決めることが大切です。

なお、解約手付の支払い方法に決まりはありませんが、売買契約時に「現金」で支払うのが一般的です。ただし、解約手付の金額が高額だったり、遠隔地での取引だったりする場合には、銀行振込とすることもあります。

まとめ

解約手付とは、理由を問わず売買契約を解除できる手付です。売買契約を解除するには、買主側は解約手付の放棄(手付流し)、売主側は倍額の返還(手付倍返し)が必要です。しかし、相手側が履行に着手すると手付解除ができなくなるため、実際の不動産売買では目安となる手付解除期日を設けます。

解約手付は、代金の5%~20%の範囲の金額にしましょう。解約手付は基本的に現金で支払うため、手もとに現金を残しておくことが重要です。

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