買い替え特約とは?メリット・デメリット、文言(条文)の例文を紹介

買い替え特約 メリット・デメリット

買い替え特約とは、旧居が売れる前のタイミングで新居の購入契約を結ぶ場合に、売主と買主の合意によって取り付ける約束のことです。旧居がスムーズに売れるか不安な方は、この買い替え特約を積極的に活用するとよいでしょう。

本記事では、買い替え特約の概要やメリット・デメリット、買い替え特約の文言(条文)などを紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 買い替え特約の基礎知識
  • 買い替え特約のメリット・デメリット
  • 買い替え特約に応じてもらうための工夫
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1.買い替え特約とは?

買い替え特約とは、旧居が売れる前に新居の購入契約を結ぶ場合に、売主と買主の合意によって取り付ける約束のことです。

この特約では「指定した期日までに旧居が一定価格以上で売却できない場合、新居の購入契約を白紙にできる」という約束事を取り付けます。買主が売主に打診して買い替え特約をつけるのが一般的です。

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買い替え特約があれば、旧居の売却がうまくいかなくても、違約金を支払わずに新居の購入契約を解除できます。そのため、旧居が希望通りの価格で売れるか不安な場合でも、安心して買い替えを進められるでしょう。

2.買い替え特約の期間はどのくらい?

買い替え特約で「指定した期日」として設定できる期間は、売主と買主双方の合意で自由に決められるため、特に明確な決まりはありません。しかし、新居を引渡した日より2~3ヵ月後が一般的とされています。

定めた期間内に旧居の売却ができなかった場合、買い替え特約に基づき新居の購入契約が白紙になります。

3.買い替え特約のメリット

カレンダーと時計

本章では、買い替え特約の主なメリットを解説します。

3-1.自宅の売却に十分な時間をかけられる

買い替え特約の利用により、自宅の売却に十分な時間をかけられます。住み替えでは、新居の購入と旧居の売却は同時進行で行なうのが一般的です。しかし、どうしても気になる物件が見つかった場合は、旧居が売れる前に購入したいケースもあるでしょう。

買い替え特約を活用すれば、新居の購入契約を交わしたあとでも旧居の売却に十分な時間をかけられます。

なお、自宅の売却手順や注意点について詳しく知りたい方は、「家を売る完全ガイド!注意点と初めにやるべき準備|高く売るコツも解説」も併せてご確認ください。

3-2.売却活動における費用負担を減らせる

不動産の売買では、契約締結後の一方的な理由による契約解除に、違約金がかかるのが一般的です。しかし、買い替え特約があれば、旧居の売却が期日に万が一間に合わなくても、違約金を支払わずに契約解除ができます。

売却活動による金銭的なリスクを低減できるため、特に旧居の売却が難航しているときや金融市場が不安定なときに、買い替え特約を付けるのがよいでしょう。

4.買い替え特約のデメリット

バツ印を掲げる男性の手元

買い替え特約には買主へのメリットがある一方、デメリットもあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1.買い替え特約を承諾する売主は少ない

買い替え特約を承諾してくれる売主は、実際のところ少ないのが現状です。

買い替え特約は買主側のメリットは大きいものの、売主側にはメリットがあまりありません。売主にとっては購入契約を白紙に戻されるリスクがあり、買い替え特約の期間中はほかの買主と購入契約を交わせません。そのため、売主にとって不利な契約といえます。

特に、新規物件や魅力的な物件の売買で、買い替え特約の承諾を得るのは困難でしょう。また個人の売主とも、買い替え特約の合意をしづらい傾向にあります。

4-2.旧居を安く売却してしまう可能性がある

買い替え特約を交わした物件を購入したいあまり、旧居を安く売却してしまう可能性があることも、デメリットといえるでしょう。

買い替え特約には期日を設定しますが、新居をキープできている状態だとしても指定した期日までに旧居が売れなければ購入契約が白紙になってしまいます。それを避けようと、新居の購入を優先するあまり、高値で売却できたはずの旧居を相場よりも安く手放してしまうという方も少なくありません。

旧居を売却できれば希望した新居を諦めずに済みますが、損をする場合があることを理解しておきましょう。

5.買い替え特約に応じてもらいやすい2つの条件

前述のとおり、買い替え特約を承諾してくれる売主は多くありません。では、どのような場合に買い替え特約に応じてもらえるのでしょうか。

5-1.売主が売却に苦戦している場合

物件や市場の状態などにより売主の売却活動が難航している場合、物件を手放したい売主と、旧居を売却するため時間を確保したい買主との間で利害が一致します。そのため、売主に買い替え特約を承諾してもらいやすくなるでしょう。

ただし、長く売れ残っている物件には、なんらかのマイナス要素があることが考えられます。立地や物件の設備などにマイナス要素がないか、購入前によく確認しましょう。

5-2.売主が法人である場合

不動産会社などの法人は事業として売却を行なっており、一つの物件に固執する必要がありません。そのため、買い替え特約を承諾してもらえる可能性が高いといえます。

買い替え特約の利用を検討する場合は建売分譲や中古も含め、不動産会社が売主となる物件を探してみましょう。

6.買い替え特約に応じてもらうための工夫

不動産会社での相談

買い替え特約は売主にとってメリットが少ないため、付帯には売買を仲介する不動産会社の協力が不可欠です。したがって、以下のような工夫をすることが大切です。

  • 売却と購入を同じ不動産会社に依頼する
  • 専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶ

6-1.売却と購入を同じ不動産会社に依頼する

不動産会社は、不動産の売買が成立した際に報酬として仲介手数料を得ます。そのため、売却と購入を同じ会社に依頼すると、不動産会社は多く手数料を得られる可能性が高まります。

不動産会社側のメリットを考慮して、売却と購入の両方の仲介を依頼すれば、買い替え特約付帯の成功率が上がるでしょう。

6-2.専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶ

不動産会社と結ぶ媒介契約には以下の3種類がありますが、買い替え特約をしたいなら、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶのがおすすめです。

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レインズ(REINS)とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営するネットワークシステムのことで、売り出し中の不動産情報を登録するサービスのこと

専任媒介契約や専属専任媒介契約を締結できるのは1社のみであるため、不動産会社が仲介手数料を得られる可能性が高くなります。

ただし、専属専任媒介契約を選択すると、不動産の買手を自身で探して直接取引することはできません。そのため、契約の際には、慎重に不動産会社を比較検討することが大切です。

7.買い替え特約の文言(条文)を決める際の注意点

買い替え特約の内容は、当事者間で自由に決められます。

しかし、一定の条件下で買主が解除権を行使することを認める特約であるため、以下のような内容を明記するのが理想的です。

  • 買主に解除権が発生する際の具体的な条件
  • 買主の解除権行使時における買主の義務の内容
  • 買主の解除権行使時における売主の義務の内容

不法行為に該当する内容や社会通念上不可能な内容にならないよう、注意して文言を考える必要があります。

8.買い替え特約の文言(条文)の文例

買い替え特約を結ぶ場合は、不動産売買契約書に特記事項として記載します。

買い替え特約の文例は、以下のとおりです。

  1. 買主は、買主のうち○○氏が所有する○○市○○所在の土地建物(以下「買替物件」という。)の売却代金をもって本物件を購入するものとする。そのため、買主は、○年○月○日までに買替物件が金○○万円以上で売却する契約が締結できなかったとき、またその売買代金が○年○月○日までに受領できなかったときには、本物件の所有権移転の時期までであればこの契約を解除できるものとする。
  2. 前項によってこの契約が解除された場合、売主は受領済みの金員全額無利息で買主に返還するものとする。
  3. 第2項による解除の場合、第○条(手付解除)および第○条(契約違反による解除)の規定は適用されないものとする。
  4. 買主は、本契約に関する債権を共同して行使し、債務についてはその共有持分にかかわらず連帯して履行するものとする。

出典:“不動産契約における特約・容認事項の必要性について(売買・賃貸)”. 東京都宅建協同組合. (2024-03-29)

上記を参考に、実際の取引に合わせて特約事項を検討し、不動産売買契約書に明記しましょう。どのような内容にするかは、弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法です。

9.買い替え特約に応じてもらえない場合の対処法

買い替え特約は売主にとってリスクが大きいことから、承諾してもらえないケースが少なくありません。ここでは、買い替え特約に応じてもらえないときの対処法を3つ紹介します。

9-1.売り先行で住み替えする

住み替えでの不動産売買の進め方には、「売り先行」と「買い先行」があります。

買い替え特約に応じてもらえない場合には、旧居の売却を先に行ない、その後新居を購入する「売り先行」を選択するとよいでしょう。売り先行であれば、新居の購入費用を旧居の売却益から支払えるうえに、旧居の売却益が確定しているため、資金計画が立てやすくなります。

ただし、旧居の引渡しまでに新居が購入できなければ、賃貸住宅などの仮住まいが必要になり、仮住まいに移る手間や費用がかかります。

なお、家の買い替えのベストなタイミングや手順については、「家の買い替えのタイミングは「売り先行」がおすすめ?失敗しない手順とは?」で解説していますので、ぜひご一読ください。

9-2.つなぎ融資を活用する

つなぎ融資とは、旧居の売却が済んでおらず手持ち資金が不足している場合に、新居の購入費用を賄うために活用できる融資のことです。旧居の売却益が入るまでのつなぎを意味するため、「つなぎ融資」と呼ばれます。

2_つなぎ融資とは

旧居の売却が済んでいないものの、どうしても購入したい新居が見つかった場合に検討できる手段の一つです。つなぎ融資では、売却する不動産を担保に融資を受け、最終的な期限までは毎月利息分のみを支払い、売却益が入ったら元金を一括返済します。

住宅ローンと合わせて契約するのが一般的ですが、つなぎ融資を取り扱う金融機関は少ないうえ、審査が厳しい傾向にある点に注意しましょう。

つなぎ融資について、さらに詳しく知りたい場合は「住み替えで登場する「つなぎ融資」とは?メリット・デメリットを解説!」をご覧ください。

9-3.買い取り会社に旧居を売却する

買い取り会社に旧居を売却すると、仲介会社を利用するよりも短期間で確実に売却できます。

通常、仲介での売却には5~6ヵ月ほどかかりますが、買い取り会社への売却であれば、2週間~1ヵ月ほどの短期間で完了します。査定価格に納得できたら、すぐに売買契約を締結することが可能です。

ただし、買い取り会社への売却では、仲介よりも売却価格が安くなる傾向にあり、標準的な物件の場合、市場価格の80%程度となるでしょう。売却にあまり手間や時間をかけたくない場合にのみ、検討してください。

まとめ

買い替え特約は、買主にとって旧居の売却に時間をかけられるなど大きなメリットがある一方、売主にとっては購入契約が白紙になるリスクが大きい契約といえます。そのため、買い替え特約に応じる売主は少なく、特に個人の売主であればなおさらでしょう。

買い替え特約に応じてもらいやすくするには、仲介を担当する不動産会社の協力が不可欠です。しかし、どうしても応じてもらえない場合は、売り先行での住み替えやつなぎ融資、買い取り会社への旧居売却も検討してみましょう。

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不動産会社によって、査定価格に数百万円の差が生じることも珍しくないため、まずは旧居の一括査定をして、少しでも有利に売却を進められる不動産会社を見つけましょう。