変動金利の今後の推移は?住宅ローンはいつ上がる?専門家が解説

変動金利の今後の推移は?住宅ローンはいつ上がる?専門家が解説

日銀は2024年3月19日、マイナス金利政策を解除しました。これを受け、一部の金融機関は住宅ローンの変動金利を引き上げています。

そこで直近の主要金融機関の動向をふまえて、変動金利が上がるタイミングについて専門家の秋山芳生氏に伺いました。

この記事を読むとわかること
  • 直近の変動金利の推移
  • 変動金利の概要と固定金利との違い
  • 主要金融機関の変動金利の動向
  • 今後、変動金利が上がる可能性

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この記事の監修者

1.変動金利の最新推移

はじめに大手銀行における2024年4月までの変動金利の推移についてグラフを用いて解説します。

変動金利の推移グラフ
出典:淡河範明:住宅ローンアドバイザー. “【2024年最新】住宅ローン変動金利ランキング|今後の金利上昇を見越して固定を選ぶべきか?”. ダイヤモンド 不動産研究所. 2024-04-01.(参照2024-04-22)

2024年3月19日に日銀は、異次元のマイナス金利政策を解除し、2007年2月以降、およそ17年ぶりに金利の引き上げを決定しました。

春闘などにより賃金の上昇を伴う2%の物価安定目標の実現が見通せるようになったためです。

なお、物価安定目標とは、中央銀行や政府が金利を上下させたり、世の中に出回るお金の量を増減させたりして、目標の達成を目指す物価上昇率のことです。2%の物価安定目標は、主要国のグローバルスタンダードになっています。

マイナス金利が解除されると、変動金利が上昇するのでは、と不安になっている方もいるでしょう。

しかし、2024年4月時点では上のグラフ(赤線)のとおり、変動金利の相場は過去最低です。

また、金融機関にとって住宅ローンは数少ない収益を得られる金融商品であるため、住宅ローンを組む方の獲得を競い合い、金利の引き下げを積極的に行っている背景もあります。

マイナス金利の解除を受け、一部の金融機関は金利をわずかに引き上げましたが、大手5銀行は低金利を維持しています。

2.変動金利とは?固定金利との違い

日銀のマイナス金利政策の解除により、すでに固定金利は上昇トレンドにあります。しかし一方の変動金利は2024年4月時点で過去最低になっています。そこでこの章では、金利の種類とそれぞれのメリット・デメリットをふまえて、変動金利について詳しく解説します。

2-1.金利の種類を解説

住宅ローンの金利タイプは、全期間固定金利型・変動金利型・固定金利期間選択型の3種類です。

■全期間固定金利型
借入時に契約した金利が返済中ずっと変わらないタイプの金利です。民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している「フラット35」は全期間固定金利型の代表格です。

■変動金利型
一般的に半年に1回金利が見直され、返済額は5年ごとに変更されるタイプの金利です。

■固定金利期間選択型
5年や10年など自身が選択した期間は固定金利が適用され、その後、改めて固定金利もしくは変動金利を選択するタイプの金利です。

それぞれの金利の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

金利の種類 メリット デメリット
全期間固定金利型 ・返済計画が立てやすい
・金利上昇に伴うリスクが抑えられる
・変動金利と比べて金利が高めに設定されている
変動金利型 ・固定金利型と比べて金利が低めに設定されている ・金融情勢によって金利が上昇するおそれがある
固定金利期間選択型 ・全期間固定金利型よりも金利を抑えられるケースが多い ・借入時に返済総額が確定しない

なお、変動金利型については次項で詳しく解説します。

2-2.変動金利の仕組みとは?

変動金利とは、前述のとおり住宅ローンの返済期間中に金利が変動する金利のことです。借入後は一般的に、半年に1回金利が見直されます。

ただし、借入から5年間は「5年ルール」により金利は変わらず、返済額も変わりません。5年後の返済額はその時点の元金や金利、残りの返済期間をもとに再計算が行われ、決定されます。

しかし、5年後に金利が大幅に上昇しても、直近の返済額の「最大1.25倍まで」というルールがあるため、返済負担が一気に増すことはありません。

なお、金融機関によっては、5年ルール、1.25倍ルールが適応されないこともあります。変動金利を選択して住宅ローンを組む前に、必ず金融機関に確認しましょう。

3.主要金融機関の変動金利の動向

さて、直近の金融機関の変動金利の動向はどのようになっているのでしょうか。この章では、主要なメガバンク、ネットバンクの動向を解説します。

<新規の借り入れ>

金融機関名 2024年7月の変動金利(年) 前月比
三菱UFJ銀行 0.345%
みずほ銀行 0.375%
三井住友銀行 0.475%
りそな銀行 0.340%
auじぶん銀行 0.179% +0.01
PayPay銀行 0.270% -0.11
住信SBIネット銀行 0.298%
SBIマネープラザ 0.298%
楽天銀行 0.693% +0.01
ソニー銀行 0.397%
イオン銀行 0.380%

※表の変動金利は最低金利になります。住宅ローンのプランや金額によって変わる可能性があります。

2024年7月は、auじぶん銀行と楽天銀行でわずかに変動金利が上昇しました。
両行とも前月から0.01%の金利引き上げを実施しています。

一方、PayPay銀行は変動金利を0.11%引き下げました。

とはいえ、0.3%前後の金融機関も複数あり、依然として低金利が維持されている状態といえます。

4.変動金利は今後上昇する?固定金利とどっちがおすすめ?専門家が解説

今後、変動金利は上昇する可能性はあるのでしょうか。専門家の秋山芳生さんに解説していただきました。

4-1.変動金利が上がる可能性は?

結論からいうと、変動金利がすぐに大きく上がる可能性は低いと思います。

変動金利は基本的に短期プライムレート(※)を参考に決定されています。そして、短期プライムレートは日本銀行の政策金利をもとに決められます。

そのため、日銀の政策金利が上がる、短期プライムレートが上がる、変動金利が上がるという流れで住宅ローンの金利上昇が懸念されているのです。

しかし、短期プライムレートは2009年から変化が小さくなっており、2016年に日銀がゼロ金利政策からマイナス金利政策に金利を引き下げたにもかかわらず、短期プライムレートは据え置きでした。

また、2024年3月に発表された政策金利の利上げにより、現在の政策金利は0.1%ですが、過去に政策金利が0.1%だった時期の短期プライムレートも現在と同じ利率でした。

このことからも、今回の日銀の政策金利の利上げがすぐに短期プライムレート上昇にならないことも考えられます。

さらに日銀の政策金利により、短期国債の金利も決まりますが、国債の発行総額がすでに1100兆円にものぼっているため、簡単に金利を上げることは難しいでしょう。

「金利を上げれば、国債の利息も増える」ことから急激な金利の上昇は国債の利息を莫大にあげてしまいます。

つまり、このような状況から、金利は上がっても大幅な上昇は難しく、日銀の利上げがすぐに短期プライムレートの上昇や住宅ローン金利の上昇につながるものではないと見ています。

※金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利のこと。金融機関によっては短期プライムレートと連動しない場合もある。

4-2.変動金利と固定金利 どっちがおすすめ?

これから借りる方であれば、変動金利をおすすめします。変動金利と固定金利では、常に固定金利のほうが金利が高いです。

一方で、先述したように、変動金利もすぐに上がらないことが見込まれます。さらに、多くの金融機関が「5%ルール」や「125%ルール」を設定しているため、今後金利が上昇しても生活に及ぼす影響は限定的です。

そのため、変動金利のなかでも、できる限り低い金利で住宅ローンを組み、固定金利に比べて返済額が下がった分を貯蓄や投資に回し、資産形成に取り組むことが、金利上昇やその他のリスクに備えるうえでもよいと思います。

4-3.借り換えや住み替えはすべきか?タイミングは?

すでに住宅ローンを組んでいる一部の方には、借り換えや住み替えのメリットはあると思います。

一般的には、「現在との金利差1%以上、残債1,000万円以上、残りの返済期間10年以上」の場合、借り換えを検討したほうがよいといわれますが、この基準に当てはまらなくても借り換えにより、トータル数十万円の節約につながる場合があります。

借り換えには手数料などがかかりますが、金利の低い銀行への借り換えを検討してみるのもよいと思います。

また、月々のローン返済が辛いという状況になっている方は、借りすぎの可能性が高いです。

このよう場合は自宅を売却して、適切な家に住み替えを検討するという選択肢も入ってきます。

そのため、オーバーローン(※)になっていないか、定期的に自宅を査定して、現在の価値を把握しておくことも大切です。

※購入する住宅や土地の価格(価値)をローンの借入額(残高)が上回る状態のこと。

まとめ

日本銀行が17年ぶりに政策金利を引き上げたことにより、住宅ローンの金利も引き上がるのではないかと心配している方も多いと思います。

長い目で見れば、金利は上昇していくと思いますが、すぐに大幅な上昇をするわけではないでしょう。

住宅ローンは返済期間が長いローンです。金利も大切ですが、無理のない計画的な返済のほうがもっと大切です。

これから家を買う予定の方は、慌てずに計画的に取り組みましょう。すでに住宅ローンを組んでいる方は、低金利の今、一度借り換えを検討してみると、返済額が下がるかもしれません。

また、住宅ローンの毎月の返済が厳しいという方は、借りすぎの状態なので、せっかくのマイホームを手放したくないかもしれませんが、売却も選択肢に入れて適切な家計運営を目指してください。

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この記事の監修者
秋山 芳生
家計簿アプリマネーフォワードMEの元事業責任者。
複数のベンチャー企業での上場経験を通じて資産構築をしFIREを達成。現在はFPとして講演・執筆・面談を行う傍らYouTube(チャンネル登録2万人以上)で情報発信するなどマルチに活動をしている。
あなたのよしおさんFP相談室