自然災害で家が被災したら住宅ローンはどうなる?救済措置・補償制度を全解説

自然災害で家が被災 住宅ローンはどうなる?

地震や台風などの自然災害が起こると、家の倒壊などにより住めなくなってしまうことがあります。その際、支払っている住宅ローンがどうなるのか気になる方もいるでしょう。

本記事では、自然災害で家が被災した場合、返済中の住宅ローンはどうなるのかをはじめ、被災した際に利用できる救済措置・補償制度を紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 自然災害で家が被災した場合、返済中の住宅ローンはどうなるのか
  • 自然災害で家が被災した際の救済措置・補償制度について
  • 自然災害債務整理ガイドラインについて
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1.突然の被災!返済中の住宅ローンはどうなる?

悩む人

結論からいうと、台風や地震などで自宅が被災してしまっても、基本的に住宅ローンの返済義務は免除されません。

自然災害で想定される主なリスクは、以下のとおりです。

  • 家や家財が損壊してしまう
  • 家に住めなくなる
  • 職場が被災し、失業したり休業したりせざるを得なくなり、収入がなくなる

被災状況によっては、住宅ローンに加えて、修繕費が必要となるでしょう。また、家を再建する場合は、二重ローン(ダブルローン)となってしまう可能性もあります。そのため、被災後は経済的な負担がかなり大きくなることが予想されます。

なお、ダブルローンについて詳しく知りたい方は、「ダブルローンとは?使うメリット・デメリットも解説!」をご覧ください。

2.被災した住宅への救済措置・補償制度はある?

ハート

家が被災してしまった際の救済措置・補償制度は、「公的制度」と「任意加入の保険」に大別できます。

公的制度
  • 被災者生活再建支援制度(給付)
  • 災害援護資金(融資)
  • 災害復興住宅融資(融資)
任意加入の保険
  • 火災保険
  • 地震保険
  • 居住不能信用費用保険

各制度について詳しく見ていきましょう。

2-1.公的制度

国や地方自治体は、自然災害によって住宅が被災した際に利用できる、下記のような支援制度を設けています。

  • 被災者生活再建支援制度(給付)
  • 災害援護資金(融資)
  • 災害復興住宅融資(融資)

2-1-1.被災者生活再建支援制度(給付)

被災者生活再建支援制度とは、自然災害により住んでいる家が全壊するなど、生活するうえで著しい被害を受けた世帯に対して、支援金が支給される制度です。実際に制度を利用する場合は、市区町村の役所窓口で申請手続を行ないます。

支援金の支給額は、基礎支援金と加算支援金の合計額です。基礎支援金とは、住宅の被害程度に応じて支給される支援金で、加算支援金とは、住宅の再建方法に応じて支給される支援金です。

具体的な金額は以下のとおりです。

基礎支援金
全壊 100万円
大規模半壊 50万円
加算支援金
建築・購入 200万円
補修 100万円
賃借(公営住宅除く) 50万円

※全壊・大規模半壊の場合

参考:
“被災者生活再建支援制度の概要”. 内閣府
“公的支援制度について:防災情報のページ”. 内閣府. (参照2024-03-26)をもとに、HOME4Uが独自に作成

ただし、世帯人数が1人の場合は、支給額が上記の4分の3となるため注意してください。また、支援金の最大金額は300万円です。

2-1-2.災害援護資金(融資)

災害援護資金は、自然災害によって負傷したり住居・家財に被害を受けたりした世帯に対して、生活を立て直すために資金の融資を行なう制度です。実際に制度を利用する場合は、市区町村の役所窓口で申請手続を行ないます。

災害援護資金による貸し付けの限度金額は350万円です。どれくらいの融資が受けられるかは、住宅の損壊度合いや世帯主が負傷しているかどうかによって異なります。

また、支給条件として所得制限が設けられているため、自分が支給条件に当てはまっているかどうかを確認する必要があります。詳しい条件は、厚生労働省ホームページの「災害援護資金の概要」をご確認ください。

2-1-3.災害復興住宅融資(融資)

災害復興住宅融資は、独立行政法人 住宅金融支援機構が運営する制度です。住宅を復旧するための建設資金、または購入資金として融資が受けられます。

融資の対象者は、原則、り災証明書が交付されている方です。り災証明書には、災害によって住宅が「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」したと記されていなければなりません。また、り災日から2年の間に申し込む必要があります。

融資の限度額は、住宅の建設のみだと4,500万円、土地を購入して住宅を建設する場合だと5,500万円です。

なお、すでに被災住宅の復旧が行なわれている場合は、原則、融資を利用できないため注意しましょう。

参考:
“公的支援制度について:防災情報のページ”. 内閣府
“災害復興住宅融資”. 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)

2-2.任意加入の保険

公的制度とは別に、下記のような任意加入の保険を利用して、住宅に関する補償を受けることも可能です。

  • 火災保険
  • 地震保険
  • 居住不能信用費用保険

2-2-1.火災保険

火災保険とは、火災のほか、落雷や雪災、爆発などによって住宅や家財に被害を受けた際に利用できる保険です。補償される範囲は、加入している保険会社や保険商品ごとに異なります。

ただし、地震や噴火、またこれらの影響で発生した津波による損害に関しては、火災保険では補償されないため注意してください。もし、地震や噴火などによって被害を受けた際に補償を受けたい場合は、別途、地震保険に加入する必要があります。

2-2-2.地震保険

地震保険とは、主に地震や噴火、またこれらの影響で発生した津波によって、建物・家財が被害を受けた際に、損害を補償する保険です。地震保険は単体で加入ができず、火災保険に付帯して加入します。

地震保険の保険金額は、契約している火災保険の保険金額の30~50%の範囲内です。また、建物は5,000万円、家財は1,000万円までの上限があるため注意しましょう。

参考:“地震保険制度の概要”. 財務省

2-2-3.居住不能信用費用保険

居住不能信用費用保険とは、火災や自然災害などによって住宅が全壊または大規模半壊となり、その建物に住み続けられない状態が続いた場合に、毎月の住宅ローン返済相当額が保険金として受け取れる保険です。

火災や豪雨のほか、地震、噴火などの幅広い災害が補償対象となります。

なお、補償期間については、金融機関や、どれだけ住宅に被害があったかによって異なります。

3.自然災害に対しての救済措置は全額補償ではない

上記で紹介した制度や保険などは、条件を満たせば一定の金額が補償されますが、いずれも損害の全額が支払われるわけではありません。

自然災害の規模によっては、補償される金額を大きく上回って被害が出ることもあります。そのため、必ずしも補償が十分であるとは限りません。保険に加入しているにも関わらず、大きな被害を受けてしまい生活の再建が難しくなるケースもあるでしょう。

このように、大規模な自然災害によって住宅ローンの返済が困難になってしまった方のために「自然災害債務整理ガイドライン」が存在します。

具体的な内容については次章で紹介します。

4.自然災害債務整理ガイドラインとは?

エコイメージ

自然災害債務整理ガイドライン(以降、ガイドライン)とは、2016年(平成28年)4月から運用が開始された民間の自主的なルールのことです。正式名称は「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」といい、「被災ローン減免制度」と呼ばれることもあります。

地震や噴火、台風、洪水などで家や職場が被災してしまった場合、働く場所や住む家がなくなり、住宅や車のローンだけが残ってしまうこともあります。このような状況に陥った被災者の生活の再建をサポートするために、このガイドラインが設けられました。

一定の条件を満たせば破産手続などは必要なく、金融機関の合意のもと、ローンの減額や免除を受けることができます。

参考:“自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインについて”. 一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関

4-1.自然災害債務整理ガイドラインの対象

ガイドラインの対象となるのは、東日本大震災または2015年(平成27年)9月2日以降に「災害救助法」が適用された自然災害によって被災した、個人または個人事業者です。

住宅ローンだけでなくリフォームローン、自動車ローン、事業性ローンなども適用対象となっています。

なお、法人の債務については対象外であるため、注意しましょう。ガイドラインは、あくまで個人または個人事業者のための救済措置です。

参考:
“災害救助法”. e-Gov法令検索
“大規模な自然災害でローンの返済が困難になったかたへ 「自然災害債務整理ガイドライン」をご利用ください。”. 政府広報オンライン
“自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインについて”. 一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関

4-2.自然災害債務整理ガイドラインを利用するメリット

ガイドラインを利用する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 弁護士などの専門家が無料で手続きを支援してくれる
  • 個人信用情報として登録されず、新たな借り入れにも影響がない
  • 財産の一部を手もとに残しておける

それぞれ詳しく説明します。

4-2-1.弁護士などの専門家が無料で手続きを支援してくれる

1つ目のメリットは、弁護士などの登録支援専門家が無料で手続きを支援してくれる点です。

手続きをサポートしてくれる登録支援専門家は、債務者である被災者と債権者である金融機関、いずれに対しても利害関係を持たない方です。そのため、複雑な債務整理を間違いなくスムーズに行なえるよう、中立かつ公正な立場で手続きを支援してくれるでしょう。

4-2-2.個人信用情報として登録されず、新たな借り入れにも影響がない

2つ目のメリットは、個人信用情報として登録されず、今後の新たな借り入れにも影響がない点です。

被災して破産手続や再生手続を行なうと、その内容が信用情報機関に個人信用情報として登録されてしまいます。そのため、新たに借り入れを行なったり、クレジットカードを作ったりすることに支障が出る恐れがあります。

一方、ガイドラインを利用すれば、個人信用情報として特に登録はされません。そのため、新たにお金を借り入れたり、クレジットカードを作成したりする際にも、特に影響はありません。

4-2-3.財産の一部を手もとに残しておける

3つ目のメリットは、預貯金などの財産の一部を、自由財産として残すことができる点です。手もとに現金を残しておければ、比較的生活の再建がしやすくなるでしょう。

ただし、債務者の被災状況や生活状況など個々の事情が異なるため、必ずしも財産を手もとに残せるわけではありません。

4-3.自然災害債務整理ガイドラインの利用条件

ガイドラインの主な利用条件は、以下の3つです。

  1. 現在残っているローンを返せない、また近い将来返せなくなることが確実であること
  2. 災害が発生する前にローンの返済が遅れるなど、期限の利益喪失事由に当てはまる行為がないこと
  3. 債務整理を行なうことで、破産手続や民事再生手続と同じ金額、またはそれ以上の回収ができる見込みがあるなど、債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

なお、債務整理とは、法的に借金を減らしたり、返済を免除してもらったりして、債務者の負担を軽減する手続きのことです。

参考:
“大規模な自然災害でローンの返済が困難になったかたへ 「自然災害債務整理ガイドライン」をご利用ください。” .政府広報オンライン
“自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインについて”. 般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関

4-4.自然災害債務整理ガイドラインの申請手順

ここからは、ガイドラインの申請手順について紹介します。

おおまかな申請の流れは以下のとおりです。

自然災害債務整理ガイドラインの申請手順

  1. 手続き着手の申し出を行なう
  2. 登録専門家に手続きの支援を依頼する
  3. 債務整理の申し出を行なう
  4. 調停条項案の作成・提出をする
  5. 特定調停の申し立てを行なう
  6. 調停条項が確定すれば、債務整理が成立

4-4-1.手続き着手の申し出を行なう

はじめに、最も多額のローンを組んでいる金融機関に対して、ガイドラインによる手続きをしたいと申し出ます。

その際、金融機関から、預金などの資産や年収、借入先、借入残高といった、必要事項を聞かれます。あらかじめ調べておくと手続きがスムーズに進むでしょう。

その後、明らかに制度を利用できない場合を除き、申し出を受けた金融機関が10営業日以内に同意書の発行を行ないます。

4-4-2.登録専門家に手続きの支援を依頼する

金融機関から同意書を受け取ったら、地元の弁護士会などを通じて、登録支援専門家による手続きのサポートを依頼します。

登録支援専門家は、弁護士のほか、公認会計士や税理士、不動産鑑定士などで、必要書類の作成や金融機関との協議などを、無料で支援してくれます。

4-4-3.債務整理の申し出を行なう

続いて、債務整理の対象となる金融機関などに、債務整理開始の申し出を行ないます。

債務整理の申し出のあとは、しばらく債務の返済や督促が停止されます。

4-4-4.調停条項案の作成・提出をする

申し出を行なったら、登録支援専門家のサポートを受けながら、調停条項案を作成します。調停条項案とは、ローンの免除や減額などの債務整理に関する内容が記載された書類のことです。

調停条項案を作成したあとは、対象となるすべての金融機関などに提出し、説明を行ないます。提出後1ヵ月以内に、金融機関などから同意するか否かの回答が来ます。

4-4-5.特定調停の申し立てを行なう

対象となるすべての金融機関などから同意を得たら、簡易裁判所に対して特定調停を申し立てます。

特定調停には、原則、債務者自身が参加しなければなりません。登録支援専門家は基本的に参加できないため注意が必要です。

4-4-6.調停条項が確定すれば、債務整理が成立

特定調停手続が進み、調停条項が確定されると、無事、債務整理が成立となります。

参考:“大規模な自然災害でローンの返済が困難になったかたへ 「自然災害債務整理ガイドライン」をご利用ください。”. 政府広報オンライン

5.自然災害で被災した場合、まずは住宅ローンの金融機関に相談を

商談

これまで紹介したとおり、もし自然災害で被災した場合は、さまざまな制度を利用することで一定の補償を受けられたり、住宅ローンを減免してもらったりできます。

しかし、まずは住宅ローンを組んでいる金融機関に相談するようにしましょう。

金融機関によっては、住宅ローンの返済額を調整してくれたり、返済期間の延長による減額相談を受け付けてくれたりする場合があります。

住宅ローンを滞納してしまう前に、まず金融機関に事情を説明してから、今後どうするのがベストなのかを判断しましょう。

まとめ

地震や台風などによって家が被災してしまっても、原則、住宅ローンの支払いが免除されることはありません。ただし、国や自治体による公的制度や任意加入の保険、自然災害債務整理ガイドラインなど、救済措置・補償制度を利用することができます。

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