準防火地域とは?建築制限の内容やメリット・デメリット、調べ方について解説

準防火地域とは 建築制限の内容や調べ方

準防火地域とは、市街地で火災の被害を抑えるために建築制限が設けられたエリアのことです。準防火地域は、都市計画法に基づいて各自治体によって指定されます。

本記事では、準防火地域の概要や建築制限の内容、主なメリット・デメリット、調べ方について解説します。マイホームの新築や売買を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 準防火地域の基礎知識
  • 準防火地域の建築制限の内容
  • 準防火地域のメリット・デメリット
「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格(※)”を見つけましょう
  • ※依頼する6社の中での最高価格
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます

1.準防火地域とは?

工場地帯

準防火地域とは、市街地において火災の発生や被害拡大を防ぐため、一定の建築制限が設けられたエリアのことです。都市計画法に基づいて各自治体が指定しており、対象エリアに住宅や店舗を建てる場合、他のルールと併せて建築制限も遵守する必要があります。

参考:“都市計画法 第九条”. e-Gov法令検索

準防火地域の特徴は、後述する「防火地域」の周辺を取り囲むように指定されることです。対象エリアの具体例としては、主に市街地の中心部や駅から近い住宅地が挙げられます。

また、準防火地域の周辺には「法22条区域」が指定されることもあります。詳細は別途解説しますが、防火地域および法22条区域も「火災の被害を抑えること」が主な目的で、互いに深い関連性を持つエリアです。

法22条区域

なお、自治体によっては独自の条例をもとに、火災対策のエリアを指定しているケースもあります。例えば、東京都が定めている「新たな防火規制区域」は、準防火地域に比べて厳しい建築制限が設けられているため、注意しましょう。

参考:“新たな防火規制について(制度の概要)”. 東京都都市整備局

1-1.防火地域とは?

防火地域も準防火地域と同様に、火災を予防し、被害拡大を防ぐために、都市計画法に基づいて指定されます。準防火地域との違いは、準防火地域と比較してより厳しい建築制限が設けられている点です。

防火地域の対象エリアは、主に建築物が密集しているターミナル駅周辺や主要幹線道路沿いなど、火災の被害が広がりやすい場所です。火元から周囲への延焼を防ぎ、消防車や救急車などの緊急車両の通行を妨げないようにすることが、防火地域を指定する目的です。

火が燃え広がらないよう、防火地域内の建築物は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造が大半を占めます。しかし、それ以外が禁止されているわけではなく、一定の要件を満たせば、木造の建築物なども認められるようになります。

1-2.法22条区域とは?

法22条区域とは、建築物の屋根を不燃材料で造る、あるいは葺く(覆う)ことが義務付けられているエリアのことです。正式名称は「建築基準法第22条指定区域」ですが、別称で「屋根不燃化区域」とも呼ばれています。

参考:“建築基準法 第二十二条”. e-Gov法令検索

法22条区域の対象エリアは、防火地域・準防火地域に属さない、木造住宅が密集している市街地です。建築基準法に基づいて、特定行政庁(都道府県知事・市町村長)が指定します。

そして、屋根に用いる不燃材料は「加熱開始後20分以上」経過しても、以下の要件を満たせるものです。

  • 燃焼しない
  • 防火上有害な変型・溶融・き裂・その他の損傷が発生しない
  • 避難上有害な煙・ガスが発生しない

不燃材料の具体例としては、コンクリート・瓦・レンガ・金属板などが挙げられます。このような燃えにくい材料を使用し、火災の被害を抑えることが目的です。

なお、防火地域・準防火地域にも、別途規定で法22条区域と同じ制限が適用されています。

2.準防火地域の建築制限

大工の後ろ姿

準防火地域の建築制限は、建築物の階数・延床面積によって内容が変わります。

延床面積500平米以下 延床面積500平米超1,500平米以下 延床面積1,500平米超
地上4階以上 耐火建築物
地上3階 耐火建築物
準耐火建築物
技術的基準適合建築物
耐火建築物
準耐火建築物
耐火建築物
地上1~2階 通常の建築物で問題なし(木造の建築物については、外壁・開口部・軒裏などに一定の防火措置が必要)

なお、防火地域の建築制限は以下のとおりです。

延床面積100平米以下 延床面積100平米超
地上3階以上 耐火建築物
地上1~2階 耐火建築物
準耐火建築物
耐火建築物

2-1.耐火建築物

耐火建築物とは、建築基準法の規定に基づく「耐火性能」を備えた建築物のことです。火災の規模によっては、損傷個所を修繕することで再利用できます。

参考:“建築基準法 第二条”. e-Gov法令検索

耐火性能とは、通常の火災が鎮火するまでの間、建築物の倒壊・延焼を防ぐために必要な性能のことです。耐火建築物は、主要構造部(壁・床・屋根・柱など)に一定の耐火性能を有する建材を使い、なおかつ延焼しやすい開口部に防火戸・防火設備などを設置します。

耐火建築物と認められるためには、火災発生時に周囲への延焼を防ぎ、建築物の利用者が避難を終えるまで倒壊しないことが求められます。主に該当するのは鉄骨造・鉄筋コンクリート造・レンガ造・鉄鋼モルタル造などですが、木造の建築物でも要件を満たすことは可能です。

耐火性能を有する建材で軸組(建物の骨組み)を覆う構造上、耐火建築物は壁や柱が厚くなりがちです。そのため、マンションや商業施設など、大きな建築物に採用されるのが一般的です。

耐火性能の基準は、以下のとおりです。

主要構造部の部分 最上階および最上階から数えた階数
2以上4以内の階 5以上14以内の階 15以上の階
間仕切壁
(耐火力壁のみ)
1時間 2時間 2時間
外壁(耐火力壁のみ) 1時間 2時間 2時間
1時間 2時間 3時間
1時間 2時間 2時間
1時間 2時間 3時間
屋根 30分 30分 30分
階段 30分 30分 30分

2-2.準耐火建築物

準耐火建築物とは、耐火建築物を除く建築物のうち、主要構造部が「準耐火性能」を満たしており、延焼しやすい開口部に防火戸などを設けたものを指します。

耐火建築物(耐火性能)との違いは、建築物の倒壊防止を目的にしていないことです。延焼を抑制するための性能が求められる点は共通していますが、火災を鎮火したあとには倒壊してしまうリスクが高いです。

準耐火建築物も鉄骨造や鉄筋コンクリート造が多いものの、主要構造部を耐火被覆で覆えば、木造の建築物でも要件を満たすことは可能です。

準耐火性能の基準についても表形式でまとめました。

主要構造部の部分 耐火時間
間仕切壁
(耐火力壁のみ)
45分
外壁(耐火力壁のみ) 45分
45分
45分
45分
屋根 30分
階段 30分

3.準防火地域のメリット・デメリット

準防火地域のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

<メリット>

  • 建築制限が比較的緩い
    防火地域ほど厳しい建築制限が適用されないので、構造・建材・設備などの自由度が比較的高いのがメリットです。

  • 立地条件が良い
    高層ビルが立ち並ぶ市街地の中心部や駅から近い住宅地が主な対象エリアなので、好立地の物件がそろっています。買い物や交通などの利便性に優れているため、快適な生活を送ることが可能です。

  • 火災保険料が安くなる
    耐火建築物・準耐火建築物を建てると、保険会社から「火災発生時の損害が少ない」と判断され、火災保険料が安くなる傾向にあります。

  • 建ぺい率が緩和される
    準防火地域にある耐火建築物・準耐火建築物は、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)が10%緩和されるので、より大きな建築物を建てやすくなります。

<デメリット>

  • 建築方法や材料が限定される
    耐火建築物・準耐火建築物を建てる場合、所定の要件を満たす建築方法や材料を選ばなければなりません。

  • 建築コストが高い
    耐火性能・準耐火性能の基準を満たすには、火災に強い上質な建材を使ったり、防火設備などを設置したりしなければならないため、必然的に建築コストも高くなる傾向にあります。

4.準防火地域と他エリアに不動産がまたがる場合はどうなる?

家の模型

住宅や店舗などの建築予定地が準防火地域と他のエリアにまたがる場合は、原則として厳しいほうの規制が適用されます。

例えば、準防火地域と法22条区域にまたがっている場合、建築物全体が準防火地域による建築制限を受けるのが一般的です。ただし、当該エリア内において建築物を防火壁で区画した場合は延焼する可能性が低いとされ、準防火地域の規制が適用されません。

準防火地域と法22条区域

ただし、法22条区域と指定なし区域にまたがった場合は、例外的に無条件で法22条区域の規制が適用されます。

5.準防火地域の調べ方

建築予定地や売買する土地が準防火地域かどうか知りたい場合、主に2つの調べ方があります。

  • 各自治体のWebサイトで確認する
  • 役所の窓口で直接確認する

それぞれの基本的な概要や注意点をまとめました。

5-1.各自治体のWebサイトで確認する

各自治体が運営するホームページや都市計画情報システムにアクセスすれば、建築制限を地図に反映した「都市計画図」などが閲覧でき、エリアごとの情報を確認できます。都市計画情報システムの一例としては、東京都の「都市計画情報等インターネット提供サービス」が挙げられます。

なお、アクセス手順や情報の掲載方法は自治体によって異なります。

5-2.役所の窓口で直接確認する

役所の都市計画課や街づくり課などの窓口に行けば、準防火地域の事情に詳しい担当者と直接話すことができます。必要な情報を教えてもらえるのはもちろん、Webサイトよりも詳細な情報が手に入る可能性もあるため、足を運んで損はないでしょう。

地図を持参すれば、的確にエリアを指定しながら確認できるので、情報の精度も高まります。

まとめ

準防火地域とは、火災の発生および被害拡大を防ぐため、各自治体が建築制限をかけているエリアのことです。このエリアで住宅や店舗を建てる場合、階数や延床面積によっては耐火建築物または準耐火建築物の基準を満たす必要があります。

準防火地域は、防火地域より建築制限が緩い、立地条件が良いといったメリットを有する一方で、建築方法や建築コスト関連のデメリットも抱えているため、両者を踏まえて土地活用や売買に臨みたいところです。

準防火地域の物件を売却したいなら、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご利用ください。

不動産売却 HOME4U」は、23年の実績を誇る老舗の不動産査定サイトで、全国約2,500社の優良不動産会社のなかから、最大6社の査定価格をまとめて取り寄せできます。不動産の査定価格には、数百万円もの差が出ることも珍しくないため、複数社の査定結果や対応を慎重に比較検討し、最も有利な条件での売却を叶える不動産会社を見つけましょう。