更新日:2025.01.14 不動産売却の基礎講座, 不動産売却のノウハウ 消費者契約法とは?不動産売買契約が取消しになるケースを詳しく解説 売買契約は、法律や公序良俗に反するもの以外、原則自由に結ぶことができます。しかし、事業者と消費者では交渉力や知識の面で差があることから、消費者を保護するためのルールが制定されています。これが消費者契約法です。 本記事では、消費者契約法の概要や不動産売買契約との関係、取引を取消しできるケースなどについて解説します。 この記事を読むと分かること 消費者契約法の概要 消費者契約法と不動産売買契約の関係 消費者契約法により不動産売買契約が取消しになるケース 「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格(※)”を見つけましょう※依頼する6社の中での最高価格 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます 完全無料一括査定依頼をスタート Contents1.消費者契約法とは?2.消費者契約法が適用される不動産取引とは?3.消費者契約法によって不動産売買契約が取消しできるケース4.改正消費者契約法のポイント5.不当な不動産売買契約条項の無効についてまとめ 1.消費者契約法とは? 消費者契約とは、事業者と消費者の間で締結される契約を指します。 一般的に、事業者と消費者が契約を結ぶ際には、双方の交渉力や契約に関する情報(質や量)などに差があります。そこで、消費者の利益を守るために2001年(平成13年)4月に施行された法律が「消費者契約法」です。 消費者契約法では、消費者契約に関して、主に以下の2点が規定されています。 不当な勧誘による契約の取消し 不当な契約条項の無効 消費者契約法はたびたび改正が行なわれており、2022年(令和4年)の改正では、取消しできる不当な勧誘行為の追加や、無効となる不当な契約条項の追加などがあり、2023年(令和5年)1月および6月に施行されました。 参考: “消費者契約法”. e-Gov法令検索 “知っていますか?消費者契約法 -早分かり!消費者契約法-”. 消費者庁 2.消費者契約法が適用される不動産取引とは? 消費者契約法は、不動産の売買契約にも適用されます。ただし適用には条件があるため、注意が必要です。 【無料】一括査定依頼スタート 2-1.消費者契約法が適用される不動産取引 先述のとおり、消費者契約法が制定された目的は、事業者と消費者の契約において、消費者の利益を守ることにあります。 事業者と消費者の定義は、消費者契約法第2条で以下のように定められています。 事業者法人その他の団体のほか、事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合における個人 消費者個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く) 上記を踏まえ、不動産売買において消費者契約法が適用されるのは以下の場合です。 「法人」と「事業目的ではない個人」の不動産取引 「事業目的の個人」と「事業目的ではない個人」の不動産取引 参考:“消費者契約法”. e-Gov法令検索 2-2.消費者契約法が適用されない不動産取引 一方で、以下のような不動産取引では消費者契約法は適用されないため、注意が必要です。 「法人」と「法人」の不動産取引 「法人」と「事業目的の個人」の不動産取引 「事業目的の個人」と「事業目的の個人」の不動産取引 「事業目的なしの個人」と「事業目的なしの個人」の不動産取引 3.消費者契約法によって不動産売買契約が取消しできるケース 不動産売買などの大きな取引では、売主と買主、双方の信頼関係に基づいて契約が締結されます。そのため一般的に、一方の都合で容易に契約を解除できるものではありません。契約解除の内容によっては、手付金の放棄や違約金の負担などが発生します。 ただし、契約に至るまでに不当な勧誘により消費者が誤認したり、困惑したりした場合は、消費者契約法第4条に基づき、契約締結後でも取消しが可能です。これを消費者の「取消権」といいます。 本章では、不動産売買において取消権が認められる、以下のようなケースについて解説します。 重要事項について虚偽の内容が含まれていた場合(不実告知・不利益事実の不告知) 必ず得をする、といった断定的表現で勧誘された場合(断定的判断の提供) 不退去・退去妨害があった場合 判断力の低下を不当に利用された場合 好意や不安を不当に利用された場合 契約前に強引な損失補償を請求された場合 参考: “知っていますか?消費者契約法 -早分かり!消費者契約法-”. 消費者庁 “消費者契約法”. e-Gov法令検索 3-1.虚偽の内容が含まれていた場合(不実告知・不利益事実の不告知) 不実告知とは、取引の際に事業者が重要事項について嘘を言うなど、事実ではない内容を告げることです。 例えば、子育てしやすい物件を探している消費者が、事業者から「徒歩10分圏内に小学校や複数の公園がある」との説明を繰り返し受けマンションを購入したところ、事実とは異なった場合などが該当します。このように説明内容に虚偽の内容が含まれていた場合は、契約の取消しが可能です。 また、購入の意思決定に影響をおよぼす重要な事実(不利益事実)の不告知があった場合も同様に、契約の取消しが可能です。 具体例としては、隣接する土地にマンションが建つ計画があり、いずれ日当たりや眺望が阻害されることを事業者が知りながら、消費者に対して「日当たり・眺望良好」と説明し、不動産を販売した場合などです。 3-2.必ず得をする、といった断定的表現で勧誘された場合(断定的判断の提供) 事業者が物件を販売する際に、不確実な情報を確実であるかのように消費者に告げた場合も、契約の取消しが可能です。 例えば、将来的に物件の価値が上がるかどうか確実でないのに、事業者が「必ず値上がりします」と消費者に説明して販売行為を行なった場合などです。 3-3.不退去・退去妨害があった場合 自宅に訪問販売にやってきた事業者に対して、消費者が「帰ってほしい」と告げたのに事業者が帰らなかった(不退去)、販売店での説明会に消費者が参加したところ、契約するまで帰らせてもらえなかった(退去妨害)といった場合も、契約の取消しができます。 3-4.判断力の低下を不当に利用された場合 消費者の心身の故障や加齢などによる判断力の低下を、不当に利用された場合も、契約の取消しが可能です。 例えば、生活の維持に不安を抱いている高齢者に対し、「今のうちに投資用のマンションを買わないと、生活が破綻する」などと伝え、事業者が不安をあおることで結んだ契約などが該当します。 3-5.好意や不安を不当に利用された場合 消費者の好意や不安を不当に利用された場合も、契約の取消しが可能です。 いわゆるデート商法やセミナー商法のほか、消費者やその家族などに将来重大な不利益が起こる、などと事業者が告げて消費者の不安をあおり、契約を締結させる霊感商法などが該当します。 3-6.契約前に強引な損失補償を請求された場合 契約前にも関わらず、事業者に契約による義務の全部(または一部)を実施されるなどして、不当に代金を請求された契約は取消しが可能です。 また、契約前に契約締結を目的とした事業活動を実施され、それによって生じた損失の補償を請求された場合も該当します。 例えば、遠方から来た事業者に「投資マンションについての説明を聞いてほしい」と勧誘されて会ったところ、「投資しないなら、ここに来るためにかかった交通費を払え」などと強要された場合などです。 4.改正消費者契約法のポイント 消費者契約法はたびたび改正されています。 直近では、2022年(令和4年)に改正され、2023年(令和5年)1月および6月に施行された改正消費者契約法では、前章で紹介した取消権に新たに3項が追加されたほか、取消権の行使期間の一部が延長されました。 ここでは、改正消費者契約法のポイントを解説します。 参考:“知っていますか?消費者契約法 -早分かり!消費者契約法-”. 消費者庁 4-1.取消権に新たに3項が追加された 法改正により、取消権に以下の3項が新たに追加されました。 退去困難な場所への同行 威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害する行為 契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にする行為 各項目について解説します。 4-1-1.退去困難な場所への同行 事業者が消費者に勧誘について告げないまま、消費者を退去困難な場所へ連れ出して、勧誘する行為です。 例えば、事業者が消費者に対して「旅行へ行こう」などと告げ、一人では帰宅困難な山奥に連れ出して契約させる、といった行為がこれに該当します。 4-1-2.威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害する行為 事業者が威迫する言動を交え、消費者による第三者への相談の連絡を妨害して勧誘する行為です。 具体的には、消費者が契約内容について「電話で家族に相談してから決めたい」と伝えたにも関わらず、事業者が「大人なんだから自分で決めないとダメだ」と言って連絡を妨害し、勧誘した場合などが該当します。 4-1-3.契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にする行為 事業者が契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にする行為です。 不動産売買の例ではありませんが、契約の際に事業者が「実際に商品に触れるため」などと言って、購入前の商品パッケージを開封するなどして、消費者が購入せざるを得ないような状況を作って勧誘する行為を指します。 4-2.取消権の行使期間の一部が延長になった 消費者契約法に基づく取消権の行使には、以下のように期間制限があります。 追認できるとき(消費者が誤認に気付くなどして、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ取消権を有することを知ったとき)から1年間 契約締結時から5年間 2022年(令和4年)の改正では、霊感商法などを用いた勧誘の場合、正常な判断を行なえない状態から抜け出すには相当の時間を要することから、行使期間が下記のように延長されました。 霊感商法などの場合は、追認できるときから3年間 霊感商法などの場合は、契約締結時から10年間 5.不当な不動産売買契約条項の無効について 続いて、不当な不動産売買契約条項の無効について見ていきましょう。 消費者契約法第8~10条では、消費者の利益を不当に害する契約の条項は、消費者保護の観点から無効とされています。ここでは、無効となる主な条項を紹介します。 参考: “消費者契約法”. e-Gov法令検索 “知っていますか?消費者契約法 -早分かり!消費者契約法-”. 消費者庁 【無料】一括査定依頼スタート 5-1.事業者の損害賠償責任を免除する特約の無効 不動産の売買契約では、事業者と消費者の間で契約書や利用規約が締結されます。この際、事業者の債務不履行や不法行為により消費者に生じた損害賠償責任の全部(または一部)を免除する条項が設けられている場合があります。 例えば、「当社は、いかなる場合も利用者に対し、損害賠償責任を負いません」「当社は、当社に過失があることを認めた場合に限り、損害賠償責任を負うものとします」といった内容のものです。 このような条項は、消費者の正当な権利行使を抑制するものとして、消費者契約法により無効となる場合があります。 なお、2022年(令和4年)の法改正により、「免責の範囲が不明確な条項は無効」となっている点にも注意が必要です。無効となる例と、有効となる例を比べてみましょう。 無効となる例当社は、法律上許される限り、1万円を上限として損害賠償責任を負います 有効となる例当社は、軽過失の場合には、1万円を上限として損害賠償責任を負います 無効となる例では、事業者に重大な過失などがあった場合の賠償の範囲が不明確で、消費者の誤解を招きかねません。そこで有効となる例のように、「軽過失の場合にのみ適用される」旨を明記する必要があります。なお、軽過失とは「通常、人が行なうべき注意義務を怠ること」を指します。 5-2.消費者が支払う損害賠償の額を予定する一定の条項の無効 事業者と消費者の間で締結された契約において、当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える額の違約金(損害賠償額)が定められた場合には、これを超える部分については無効とされます。 また、宅地建物取引業法第38条では、宅建業者が自ら売主となる売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除にともなう損害賠償の額を予定し、または違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2を超えてはならないと規定されています。 以上のことから、不動産売買契約においては、売買代金の20%を超える違約金(損害賠償額)については無効となります。 参考:“宅地建物取引業法 第三十八条(損害賠償額の予定等の制限)”. e-Gov法令検索 5-3.消費者の利益を一方的に害する条項の無効 消費者契約法では、消費者の権利を制限したり、消費者の義務を重くしたりする契約条項などにより、信義誠実の原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害するものは原則、無効になります。 信義則とは、社会の一員として誠実に行動しなければならない、という原則のことを指します。 例えば、家電量販店が、冷蔵庫の購入者を対象に冷蔵庫の配送と同時にウォーターサーバーを設置し、以降、断りの申し出がなければ、自動的に月々のサーバーレンタルを行なうといった契約条項がこれに該当します。 消費者の積極的な意思に基づく契約ではなく、その認識にかかわらず代金支払いが発生するため、消費者契約法第10条に基づき無効となる可能性があります。 消費者契約法について詳しく知りたい方は、消費者庁のホームページから確認できます。また、不動産の売買契約において疑問や不安がある方は、消費者ホットライン(電話番号188)への相談をおすすめします。 参考:“消費者契約法 第十条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)”. e-Gov法令検索 まとめ 消費者契約法は、契約における事業者と消費者が持つ情報の量・質の格差を鑑み、消費者を守るために制定された法律です。 消費者契約法における「不当な勧誘による契約の取消し」や「不当な契約条項の無効」は、不動産売買にも適用されます。契約の締結後であっても取消しが可能なため、疑問点や不安がある場合は、消費者ホットラインに相談しましょう。 「勢いで不動産を購入したものの、後悔している」「より家族の生活スタイルに合う家に住み替えしたい」などとお考えの方は、思い切って売却を検討するのも一つの方法です。そのような場合には、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご利用ください。 不動産売却 HOME4Uは、23年の経験と実績を有する不動産査定サイトで、全国約2,500社の優良不動産会社のなかから、最大6社の査定価格を一括で取り寄せできます。不動産の査定価格は、不動産会社によって数百万円以上の差が出ることも珍しくないため、スムーズな新生活のスタートを切るためにも、複数社の査定を慎重に検討することをおすすめします。