物上保証人とは?連帯保証人との違い、物上保証人になる際の注意点などを解説

物上保証人とは いつ必要?注意点はある?

物上保証人とは、自身の財産を担保として金融機関などに提供し、他人の債務を保証する方のことです。

本記事では、物上保証人の概要のほか、連帯保証人との違い、物上保証人が必要となる場面、物上保証人に関する注意点などについて解説します。親の土地に家を建てる、購入資金の一部を配偶者が出す、といった場合に参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 物上保証人の概要と設定の目的
  • 物上保証人が必要となる場面
  • 物上保証人に関する注意点
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1.物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)とは?

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「物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)」とは、自身の財産を担保として金融機関などに提供し、他人の債務を保証する方のことを指します。物上保証人は、担保提供者と呼ばれることもあります。

物上保証人は普通の保証人とは異なり、債務者の債務をすべて弁済する義務はありません。提供した財産の範囲で返済を行なうのが特徴です。

ただし、物上保証人になった場合、担保として提供した不動産などに関しては、弁済の際に抵当権が実行されて財産を失う場合もあるため注意が必要です。そのような事態を回避するには、債務者の残債を肩代わりしたうえで、抵当権を抹消しなければなりません。

1-1.物上保証人を設定する目的

お金を借りる債務者側としては、物上保証人を設定することで、スムーズに融資を受けられるようになります。

債務者は、住宅ローンを組むために住宅や土地を担保として提供しますが、資産の価値が足りない場合もあります。そのような際に、物上保証人を設定して担保を追加することで、債務者は融資を受けることが可能になるのです。

一方、お金を貸す側である金融機関としては、債務者からの返済が滞るリスクに備えて、あらかじめ物上保証人を設定すれば、貸し倒れのリスクを軽減することが可能です。

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例えば、Aさんが銀行で5,000万円の住宅ローンを組もうとします。しかし、担保となる住宅の評価額は3,000万円程度で、銀行からの融資を受けられませんでした。そこで、AさんはBさんを物上保証人として設定します。その後、残り2,000万円分の担保をBさんに提供してもらえれば、Aさんは住宅ローンを組めるといった仕組みです。

その後、万が一Aさんが住宅ローンを返済できなくなった場合、金融機関はAさんの住宅に加え、Bさんが担保として設定した2,000万円分の担保を差し押さえて、貸付額を回収します。

2.物上保証人と連帯保証人の違い

物上保証人と似た言葉として挙げられるのが連帯保証人です。連帯保証人とは、債務者が借りた借金の返済について債務者と同等の責任を負う方のことを指します。

連帯保証人と物上保証人の最大の違いは、ローン全体の責任を負うかどうか、という点にあります。

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連帯保証人は、債務者と同じ立場であるとみなされます。そのため、債務者がローンを返済できなくなった場合、債権者は連帯保証人に対して、債務者が返済できなかった残りの借金全額の返済を請求することが可能です。

一方の物上保証人は、残った借金のすべてを弁済する責任はなく、担保として提供した財産の範囲で弁済を行ないます。万が一、債務者の返済が滞った場合、担保として金融機関に提供していた自分の財産を手放すか、被担保債権(担保の元になった債権)を返済して、抵当権を抹消しなければなりません。

3.物上保証人になれるのは誰?

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物上保証人は、誰でもなれるわけではありません。物上保証人として設定できるのは、一般的に身内のみです。ただし、金融機関によって物上保証人の対象範囲は異なるため、事前の確認が必要です。

いずれにしても、まったくの第三者が物上保証人になるケースはほぼないため、第三者からお願いされた場合には十分に注意しましょう。

ここでは、具体的にどのような方が物上保証人になれるのかを紹介します。

3-1.両親

債権者の両親は通常、物上保証人になることが可能です。例えば、子どもが両親の所有している土地に家を建てる場合、両親が物上保証人になるのが一般的です。

なお、義理の両親(配偶者の両親)に関しても、金融機関によっては物上保証人として認められることもあります。

3-2.配偶者

債権者の配偶者も、物上保証人になることが可能です。

ただし、結婚と同時に家を購入する場合には注意が必要です。婚約者の状態でも物上保証人になれる場合もありますが、融資を行なう段階で入籍していないと物上保証人として認められないなど、金融機関によってルールが異なります。

また、ローンを組んだあと婚約破棄や離婚となった場合にも、物上保証人としての責任を放棄することはできないため、注意が必要です。

3-3.子ども

債務者の子どもも、物上保証人になることが可能です。

例えば、両親が高齢であるため物上保証人にするのは難しいと判断した場合などに、子どもを物上保証人にするケースがあります。

ただし、子どもが未成年の場合、たとえ働いていて収入があったとしても、物上保証人としては認められないこともあります。もし子どもを物上保証人にしたい場合は、金融機関に相談しましょう。

3-4.兄弟や姉妹

兄弟や姉妹を物上保証人に設定することもあります。

例えば、兄弟姉妹が同居をする場合や、兄弟姉妹が事業を始める場合などには、一方が債務者、もう一方が物上保証人となるケースも見られます。

3-5.パートナー

金融機関によっては、パートナーを物上保証人として認めているところもあります。

ただし、パートナーを物上保証人にするためには、パートナーであることを証明するための書類を用意し金融機関に提出しなければなりません。具体的には「任意後見契約に関わる公正証書」や「合意契約に関わる公正証書」などが挙げられます。

もしパートナーを物上保証人にしたい場合には、必要書類や手続きなどについて、ローンを組む予定の金融機関に問い合わせるようにしましょう。

3-6.祖父母

一般的に債務者の祖父母も、物上保証人になることが可能です。

ただし、義理の祖父母(配偶者の祖父母)の場合は、認められないケースもあります。詳細については、金融機関に確認するようにしましょう。

3-7.不動産の共有名義人

1つの不動産を誰かと共有している場合、物上保証人に共有名義人を設定することがあります。

金融機関としては、債務者が返済できなくなるリスクに備え、不動産全体に抵当権を付け担保にするのが理想です。そのため、共有不動産の名義人全員を物上保証人にし、不動産全体に抵当権を付けることがあります。

4.不動産担保ローンの場合保証人は必要?

不動産担保ローンを借りる場合、担保に設定した不動産が債務者本人の所有であれば、保証人は原則必要ないケースが多いようです。不動産担保ローンとは、自身が保有する不動産を担保として設定することで、融資を受けるタイプのローンのことです。

担保として提供する不動産の評価や価値が高ければ、債務者がローンを返済できなくなっても、金融機関は担保を売却して、融資金を回収できるためです。

したがって、債務者が高齢である、返済能力に不安がある、といった事情がない限り、不動産担保ローンを組む際に、連帯保証人や物上保証人は必要ありません。

5.物上保証人はどのようなときに必要?

物上保証人が必要になるのは、主に以下のようなケースです。

  1. 親が住んでいる土地に家を建てる場合
  2. 住宅の購入資金の一部を配偶者が出す場合
  3. 事業資金の調達を行なう場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

5-1.親が住んでいる土地に家を建てる場合

本来、金融機関から融資を受ける際には、土地と家に抵当権を設定しますが、親が所有している土地に家を建てる場合には、家にしか抵当権を付けられません。しかし、それだと担保の価値が足りない可能性もあるでしょう。

そのような際に、親が物上保証人となり、家を建てる土地を担保として提供することで、ローンを組むことができるようになるのです。

5-2.住宅の購入資金の一部を配偶者が出す場合

住宅の購入資金の一部を配偶者が出すということは、物件が夫婦の共有財産になるということです。

抵当権は、一般的に住宅全体にかけられますが、夫婦の共有財産となっている場合、債権者だけの持ち分では担保の価値が足りない場合もあります。そういったケースでは、配偶者を物上保証人にし、住宅全体を担保として提供してローンを組みます。

5-3.事業資金の調達を行なう場合

事業資金の調達を行なう際にも、物上保証人が必要になることがあります。

例えば、債務者が新しく事業を始めるために、金融機関に融資を依頼したとします。しかし、金融機関に提供できる担保の価値が十分ではなく、これ以上の借入はできない状態だとします。

このような場合には、親や子どもなどが物上保証人となり、所有している家や土地などを担保として金融機関に提供します。そうすることで、債務者は新たな融資を受けられるようになるのです。

6.物上保証人に関する注意点

家とチェックリスト

物上保証人に関する注意点は、主に以下の2つです。

  1. 物上保証人の責任や義務に関して事前に確認する
  2. 物上保証人が亡くなった場合、物上保証人の地位も相続される

6-1.物上保証人の責任や義務に関して事前に確認する

物上保証人になるよう依頼された場合は、引き受ける前に責任や義務をよく確認することが重要です。

債務者が借金を返済できなくなった場合には、債務者が提供している担保はもちろん、物上保証人が担保として提供した家や土地などが差し押さえられ、競売にかけられてしまう恐れがあります。また、債務者の返済が滞ることで、良好だった関係が悪化するリスクもあるでしょう。

たとえ身内であっても、物上保証人になることを依頼された場合には、しっかりと契約内容を確認し、よく話し合ったうえで引き受けるかどうか決めるようにしてください。

6-2.物上保証人が亡くなった場合、物上保証人の地位も相続される

物上保証人が亡くなった際には、相続人に抵当権付きの財産が相続されることで、物上保証人の地位も引き継がれます。

もし物上保証人の地位を相続したくない場合は、相続放棄することも可能です。ただし、抵当権付きの不動産以外の財産もすべて放棄することになるため、ほかにも財産がある場合はおすすめできません。

万が一、債務者がローンを支払えなくなった場合にも、物上保証人が責任を負うのは、抵当権が付いている不動産の範囲のみであり、債務者が滞りなく返済を終えれば、抵当権を抹消することが可能です。しかし、債務者が返済できなくなり、抵当権が実行された場合には、相続した不動産を失う可能性もあるため、注意が必要です。

また、抵当権付きの不動産に関しては、相続したあとも返済が完了するまでは勝手に壊したり、売却したりすることはできない、ということを覚えておきましょう。

まとめ

物上保証人とは、自身の家や土地などの財産を金融機関などに担保として提供し、他人の債務を保証する方のことを指します。連帯保証人と混同されることがありますが、物上保証人は連帯保証人とは異なり、債務者の債務をすべて弁済する義務はありません。提供した財産の範囲で返済を行ないます。

不動産担保ローンを組む場合は、債務者本人が所有している不動産であれば、保証人は原則必要ない金融機関がほとんどです。ただし、両親の土地に家を建てる場合や配偶者が住宅の購入資金の一部を払う場合は、物上保証人の設定を求められることもあります。

物上保証人になるのは、一般的に両親や子どもなど身内であることがほとんどです。まったくの第三者から依頼されることはほとんどない、ということを知っておきましょう。

もし物上保証人になることを依頼された場合にはすぐに引き受けるのではなく、契約書を確認したり、債務者としっかりと話し合ったりしたうえで検討するようにしてください。

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