民泊とは?ビジネスの仕組みや関連する法律、収益性などについて全解説

民泊ビジネス メリットや収益性を徹底解説

空き部屋や空き家を利用して民泊を始めたいと考えているものの、民泊ビジネスの注意点や実態などについてはよくわからない、という方もいるでしょう。

そこで本記事では、民泊のビジネスの仕組みや確認すべき法律、収益性などについて詳しく解説します。この記事を読めば、民泊ビジネスへの理解がより深まるでしょう。

この記事を読むと分かること
  • 民泊の基礎知識
  • 民泊に関連する法律
  • 民泊の収益性
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1.民泊とは?

民泊とは、戸建て住宅やマンションの一部あるいは全部を、観光客などに有償で貸し出すことです。

交通機関や宿泊施設がきちんと整備されていなかった時代、民泊は提供者の善意に基づく無償の宿泊サービスを指していました。しかし、時代の移り変わりとともに民泊の意味が変化し、現在では「有償の宿泊サービス」を指す言葉として使われています。なお、「民泊」そのものに法律上の明確な定義はありません。

特に近年はAirbnbをはじめ、所有する空き部屋や空き家を貸し出したいオーナーと、宿泊したい観光客などとをマッチングするビジネスが世界各国で展開されているため、民泊の普及が急速に進んでいる状況です。

日本も例外ではなく、ここ数年で民泊ビジネスに参入する企業や投資家が増えています。それに伴い、政府が新法制定や法改正を行なっているため、今後も動向から目が離せません。

2.近年、民泊が注目を集めている背景

観光を楽しむ訪日外国人

近年、日本でも民泊が注目を集めていますが、そこには以下のような背景があります。

  • 訪日外国人観光客の増加
  • 全国的な宿泊施設の不足
  • 超高齢社会による空き家の増加

こういった現状をビジネスチャンスに変えるためにも、民泊を取り巻く状況を押さえておきたいところです。本章では、公的なデータも交えつつ、各背景の概要を解説します。

2-1.訪日外国人観光客の増加

日本は成長戦略の一つとして、国内の観光資源を活用した「観光立国」を推進しています。戦略的な訪日プロモーションやキャッシュレス化の推進、航空サービスの拡大といった取り組みを通じ、国内外の観光客を増やすことが狙いです。

新型コロナウイルス感染症対策の緩和や長引く円安傾向などの影響により、2023年の訪日外国人観光客は前年と比べて急増しています。

日本政府観光局(JNTO)の報道発表資料によると、2023年10月推計の訪日外国人観光客数は251万6,500人でした。新型コロナウイルス感染症の拡大後、初めて2019年同月の数値(249万6,568人)を超えており、同月比は100.8%となっています。

参考:“訪日外客数(2023年10月推計値)”. 日本政府観光局. 2023-11-15

2-2.全国的な宿泊施設の不足

訪日外国人観光客の増加によって観光界隈が盛り上がりを見せている一方で問題となっているのが、日本国内におけるホテルや旅館などの宿泊施設の不足です。

国土交通省観光庁の「宿泊旅行統計調査(2023年9月・第2次速報、2023年10月・第1次速報)」によると、外国人延べ宿泊者数は2019年同月の数値を超えています。新型コロナウイルス感染症によって観光需要は一時的に落ち込んだものの、2023年から急激に高まってきていることがわかります。

全国的な宿泊施設の不足1

出典:“宿泊旅行統計調査(2023年9月・第2次速報、2023年10月・第1次速報)”. 国土交通省観光庁.2023-11-30

同調査によれば、客室稼働率もゆるやかに上昇を見せており、宿泊施設全体の稼働率は2023年10月の時点で61.8%でした。

全国的な宿泊施設の不足2

出典:“宿泊旅行統計調査(2023年9月・第2次速報、2023年10月・第1次速報)”. 国土交通省観光庁.2023-11-30

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で雇用調整を迫られた事業者は多く、2024年時点で、観光業界全体が深刻な人手不足に陥っています。サービス品質を維持できず、客室の稼働制限をかけざるを得ない宿泊施設も少なくありません。

上記のような事情から、東京や大阪といった大都市圏を中心に客室が不足し、タイミングによっては宿泊施設の予約を取るのも困難という状況が発生しています。こういった現状を打破する手段の一つとしても、民泊は注目を集めています。

2-3.超高齢社会による空き家の増加

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点における全国の空き家の数は848万9,000戸に上り、2013年と比べると、29万3,000戸(3.6%)増という結果になりました。

以下のグラフからわかるように、この20年で空き家の数は約1.5倍(576万4,000戸→848万9,000戸)に増加しています。

超高齢社会による空き家の増加

出典:“平成30年住宅・土地統計調査結果”. 総務省統計局. 2019-09-30

日本は2007年以降、65歳以上の高齢者人口が全人口の21%以上を占める「超高齢社会」に突入しました。高齢化率は2060年まで上昇すると予測されており、今後も空き家の増加が見込まれています。

このような状況下で空き家を有効活用する手段として、民泊への期待が高まっています。

3.民泊ビジネスの仕組み

民泊による健全な宿泊サービスの普及を図るため、2018年に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」では、以下の3つの事業者を設定したうえで、それぞれに役割を定めています。

  • 住宅宿泊事業者
  • 住宅宿泊管理業者
  • 住宅宿泊仲介業者

民泊ビジネスの仕組み

出典:“住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?”. 民泊制度ポータルサイト

住宅宿泊事業者は、住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をして住宅宿泊事業を営む者です。民泊の運営に携わるオーナー(ホスト)を指します。

住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業法第22条第1項の登録を受け、住宅宿泊管理業を営む者です。住宅宿泊事業者から委託されて代わりに民泊を運営する、いわゆる代行業者を指します。

住宅宿泊仲介業者は、住宅宿泊事業法第46条第1項の登録を受けて、住宅宿泊仲介業を営む者です。住宅宿泊事業者から民泊に関する物件情報を提供してもらい、Webサイトなどを介して事業者と宿泊者とのマッチングを行ないます。

安定的かつ適切な民泊ビジネスを展開するためには、こういった仕組みもきちんと把握する必要があります。

参考:“住宅宿泊事業法”. e-Gov法令検索

4.民泊の種類|主な2つの形態を紹介

観光客

民泊には、大きく分けて「家主不在型」と「家主居住型」の2種類があります。

4-1.家主不在型

家主不在型とは、家主(住宅提供者)が届出住宅に居住していない、あるいは宿泊者の滞在期間中に不在となる形態の民泊施設のことです。

住宅宿泊事業法の第11条では、以下のいずれかに該当する場合、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に必ず委託しなければならないと規定されています。

  1. 届出住宅の居室の数が、国土交通省令・厚生労働省令で定める居室の数を超える場合
  2. 届出住宅に人を宿泊させる間、家主が不在になる場合

参考:“住宅宿泊事業法”. e-Gov法令検索

家主不在型は、宿泊者に住宅を貸す形で民泊を運営するため、長期の出張や旅行で家を空ける方、空き家を持て余している方などに適しています。

4-2.家主居住型

家主居住型とは、宿泊者が滞在している間も家主(住宅提供者)が届出住宅内にいる形態の民泊施設のことです。ホームステイ型と呼ばれることもあり、1部屋や離れなど自宅の一部を貸し出すケースがこれに該当します。

家主居住型でも届出住宅の居室の数が規定数を超える場合には、原則として管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。ただし、家主自身が住宅宿泊管理業者の登録を受けて自ら管理業務を行なう場合、委託は不要です。

家主居住型では、宿泊者を自宅に招いてともに時間を過ごすことになるため、コミュニケーションを楽しみたい方におすすめです。特に訪日外国人観光客が多いエリアでは、言葉や文化が異なる相手と同じ屋根の下で交流するため、貴重な体験ができるでしょう。

また、民泊施設に家主が住む性質上、家主不在型より宿泊者の動向に目が届きやすく、騒音、盗難、器物破損といったトラブルの発生リスクを比較的抑えやすいのもメリットです。

5.民泊ビジネスを検討する前に|確認すべき法律

民泊は国内外を問わず注目されていますが、安全性や公衆衛生の確保が難しいほか、無許可で運営されているケースも少なくありません。実際、近隣住民との間でトラブルが起こった事例も報告されています。

政府はサービスの健全化およびトラブル防止を目的に、民泊に関連する法整備を急ピッチで進めています。民泊ビジネスへの参入を検討しているなら、法律もしっかり確認しておきましょう。

5-1.民泊の運営には、許可または届け出が必要

民泊にまつわるトラブルの増加を受けて、2018年6月に住宅宿泊事業法が施行されました。今後、日本国内で民泊での宿泊サービスを提供するためには、以下のいずれかの法律に則って許可を得るか、行政機関に届出を行なうことが必須となります。

  1. 旅館業法の許可を得る
  2. 国家戦略特別区域法の認定を得る
  3. 住宅宿泊事業法の届出を行なう

参考:“はじめに「民泊」とは”. 民泊制度ポータルサイト

どの方法を選択するかで要件や義務が大きく変わるため、3つの法律は一通りチェックしておきましょう。

5-2.民泊に関連する3つの法律の概要

政府が運営する「民泊制度ポータルサイト」の内容に基づき、旅館業法・国家戦略特区法・住宅宿泊事業法の比較表を作成しました。

旅館業法
(簡易宿所)
国家戦略特別区域法
(特区民泊に係る部分)
住宅宿泊事業法
所管省庁 厚生労働省 内閣府
(厚生労働省)
国土交通省
厚生労働省
観光庁
許認可等 許可 認定 届出
住専地域での営業 不可 可能
(認定を行なう自治体ごとに制限を設けている場合あり)
可能
(条例によって制限される場合あり)
営業日数の制限 制限なし 2泊3日以上
(下限日数は条例によって規定されるが、年間営業日数の上限は設けていない)
年間提供日数180日以内
(条例で実施期間の制限が可能)
宿泊者名簿の作成・保存義務 あり あり あり
玄関帳場の設置義務
(構造基準)
なし なし なし
最低床面積、最低床面積
(3.3平米/人)の確保
最低床面積33平米以上
(ただし、宿泊者数が10人未満なら3.3平米/人)
原則25平米以上/室 最低床面積3.3平米/人
衛生措置 換気・採光・照明・防湿・清潔等の措置 換気・採光・照明・防湿・清潔等の措置、使用の開始時に清潔な居室の提供 換気・除湿・清潔等の措置、定期的な清掃等
非常用照明等の安全確保の措置義務 あり あり
(6泊7日以上の滞在期間の施設は不要)
あり
(家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要)
消防用設備等の設置 あり あり あり
(家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要)
近隣住民とのトラブル防止措置 不要 必要
(近隣住民への適切な説明、苦情および問い合わせに適切に対応するための体制および周知方法、その連絡先の確保)
必要
(宿泊者への説明義務、苦情対応の義務)
不在時の管理業者への委託業務 規定なし 規定なし 規定あり

参考:“はじめに「民泊」とは”. 民泊制度ポータルサイト. (参照2024-03-28)をもとに、HOME4Uが独自に作成

上記の内容を踏まえつつ、法律ごとの向き不向きをまとめたので、ぜひ参考にしてください。

  • 旅館業法
    空き家を継続的に民泊として活用したい方、高い収益性を求める方におすすめ
  • 国家戦略特別区域法
    認定手続きに時間・コストをかけたくない方、営業日数の制限を避けたい方におすすめ
  • 住宅宿泊事業法
    気軽に民泊を始めたい方、一時的に空き部屋や空き家を貸し出したい方におすすめ

6.旅館業法の特例が受けられる「特区民泊」とは?

ドミトリーで会話を楽しむ宿泊者

特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)とは、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊サービスのことです。

国家戦略特別区域に指定されている一部地域では、特例制度の恩恵を受けて特区民泊を開業・運営することが認められています。ほかの法律に基づく民泊にはないメリットを享受できるため、民泊ビジネスを検討している場合、自身が所有する物件が特区民泊として運営可能な地域にあるかも確認したいところです。

6-1.国家戦略特別区域とは?

国家戦略特別区域とは、町おこしや国際競争力の向上を目指して2013年に定められた経済特区のことです。

2024年1月現在、以下の地域が国家戦略特別区域の認定を受けています。

区分 地域
1次指定
東京都、神奈川県、千葉県成田市
新潟県新潟市
大阪府、京都府、兵庫県
兵庫県養父市
福岡県福岡市
沖縄県
2次指定
秋田県仙北市
宮城県仙台市
愛知県
3次指定
千葉県千葉市
広島県、愛媛県今治市
福岡県北九州市
スーパーシティ型国家戦略特区指定
茨城県つくば市
大阪府大阪市
デジタル田園健康特区指定 石川県加賀市、長野県茅野市、岡山県加賀郡吉備中央町

参考:
“国家戦略特別区域を定める政令”. e-Gov法令検索
“国家戦略特区の指定区域”. 内閣府. (参照2024-03-28)をもとに、HOME4Uが独自に作成

6-2.国家戦略特別区域のうち、特区民泊が可能な地域

前述した国家戦略特別区域のうち、条例を定めている自治体のみで、特区民泊の開業・運営が認められています。「国家戦略特別区域=特区民泊が可能」と間違えないよう、注意しましょう。

2024年1月時点では、以下に挙げた地域で特区民泊が可能です。

  • 東京都大田区
  • 千葉県千葉市
  • 新潟県新潟市
  • 大阪府(※1)(※2)
  • 大阪府大阪市
  • 大阪府八尾市 
  • 大阪府寝屋川市
  • 福岡県北九州市

(※1)大阪市、堺市、東大阪市、高槻市、豊中市、枚方市、八尾市、寝屋川市、吹田市の9市は、「大阪府国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例」の対象外地域です。ただし、2024年1月現在、大阪市、八尾市、寝屋川市の3市は、市の条例で特区民泊の運営が可能です。

(※2)条例の内容は自治体によって異なりますが、新たにホテルや旅館を運営できない「市街化調整区域」や宿泊施設を設置できない「第一種・第二種低層住居専用地域」でも、特区民泊なら認められるケースがあります。

参考:“国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(いわゆる「特区民泊」)について”. 大阪府
“大阪府国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例”. 大阪府. 2015-11-02. (参照2024-03-28)をもとに、HOME4Uが独自に作成

6-3.特区民泊のメリット・デメリット

特区民泊のメリットとしては、第一に「年間営業日数の上限がない」という点が挙げられます。365日営業することが認められているため、予約がある限り収益源の確保が可能ということです。

営業日数に制限がない点は旅館業法(簡易宿所)も同じですが、簡易宿所の営業許可は比較的取得難易度が高いとされています。

特区民泊の第二のメリットとして挙げられるのが「保健所への申請が通りやすい」という点です。特区民泊の消防設備に関する規定は緩和されており、多くの場合、一般家庭で用いられる消火器や火災報知機で済むため、保健所の認定を受けやすくなっています。

そして、第三のメリットとして「近隣住民の理解を得やすい」という点が挙げられます。特区民泊の運営が認められている地域はごく一部である関係上、当該地域にはほかにも民泊施設が多いことから、開業・運営は反対されにくいでしょう。

このように、ほかの法律に基づく民泊より参入障壁が低く、営業日数の上限も設けられていないので、多様な宿泊ニーズに対応できる可能性が高まります。

一方で、特区民泊は宿泊日数の下限が決まっており原則として2泊3日以上の滞在が条件となるため、短期宿泊のニーズに対応しづらいというデメリットもあります。

6-4.特区民泊の認定を受けるには?

特区民泊の認定を受けるためには、各自治体が定めている認定基準を満たす必要があります。

例えば、東京都大田区では、以下10項目について細かく基準を設けています。

  1. 滞在期間
  2. 居室
  3. 清潔な居室の提供
  4. 外国人旅客の滞在に必要な役務
  5. 滞在者名簿の備え
  6. 事業計画の説明
  7. 施設の周辺地域の住民への対応
  8. 滞在者の安全確保措置
  9. 欠格事由
  10. 実施地域

参考:“特定認定審査基準・添付書類等一覧”. 大田区

認定基準は自治体によって異なるため、事前に各自治体のホームページで詳細を確認しておきましょう。

7.民泊ビジネスの実態|儲からない、難しいとされるのはなぜ?

通帳を眺める男性

不動産を所有している方のなかには、近年話題の民泊ビジネスに参入したいと考えている方もいるでしょう。しかし、実際のところ「民泊はなかなか儲からない」「思うように運営できない」といった意見も見受けられます。

民泊が儲からない、難しいとされる理由には、以下のような収益性にまつわる問題があります。

  • 住宅宿泊事業法(民泊新法)で、営業日数は180日以内とされているから
  • 違法営業は罰則の対象になったから
  • 初期費用やランニングコストが高いから
  • 初期投資を回収するのに時間がかかるから

理由をそれぞれ詳しく解説するので、しっかり押さえておきましょう。

7-1.住宅宿泊事業法(民泊新法)で、営業日数は180日以内とされているから

住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行により、これまで曖昧だった民泊の運営に関するルールが数多く追加されました。特に年間営業日数は180日以内(前述の特区民泊を除く)に制限されたので、実質、1年の約半分しか稼働できないことになります。

また、自治体によっては、独自のルールを設けているケースもあります。例えば、別荘地として知られる軽井沢の場合、5月の大型連休や7月~9月の夏場は営業が認められていません。

そのほか、地域ごとに営業時間の制限をかけていたり、年間営業日数が180日より短かったりするケースもあります。

営業日数が少ないと収益を得ることが難しくなるため、儲からないと悩むオーナーも少なくないでしょう。

7-2.違法営業が罰則の対象になったから

住宅宿泊事業法では、民泊のオーナーや管理業者が規則に従わなかった際の罰則も明記されました。

罰則の内容は違反事項によって異なりますが、最も重いものだと1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます。特に罰金は従来3万円とされていたため、30倍以上になりました。

また、新法施行後は無許可で運営されている民泊に対し、行政庁の立ち入り検査が認められるようになりました。従来は無許可であっても立ち入り検査ができず、違法な民泊ビジネスの蔓延につながっていたため、新法は今後の無許可営業の抑止力になるでしょう。

そして、立ち入り検査を妨害したり、虚偽の報告を行なったりした場合には、30万円以下の罰金が科されます。

こういった厳しい罰則が出てきたことも、民泊ビジネスを難しくする要因の一つといえるでしょう。

7-3.初期費用やランニングコストが高いから

民泊を運営する場合、宿泊者の暮らしに欠かせない家具家電はもちろん、インターネット環境やセキュリティ設備も用意しなければなりません。宿泊施設として必要な設備を一式そろえるためには、それなりの初期費用がかかります。

さらに、民泊ビジネス用に新たな物件を取得したり、既存物件のリフォームやリノベーションが必要になったりする場合、初期費用が数百万円以上に膨れ上がることも珍しくありません。

このほかにランニングコストとして、水道光熱費、通信費、消耗品費などはもちろん、施設の管理を委託する際の委託費用(手数料20%程度)もかかります。

「部屋が余っているから」と民泊ビジネスを始めたものの、想像以上に利益率が悪く、頭を抱えてしまうオーナーもいるでしょう。

7-4.初期投資を回収するのに時間がかかるから

コストの高さと関連して、初期投資の回収に時間がかかる点も民泊が儲からないとされる理由の一つです。

例えば、自身が所有する空き家で民泊を営む場合、初期費用や収益は以下のようにシミュレーションできます。一つの例として、参考にしてください。

【初期費用】
物件代 0円
リフォーム費用 300万円
設備費用・雑費 100万円
⇒合計400万円
【収益】
宿泊費 1万円
諸経費(30%で計算) 3,000円
⇒1泊あたりの利益は7,000円

上記のシミュレーション結果を踏まえ、2023年10月の宿泊施設の客室稼働率(60%)で計算すると、稼働率60%(108日)で利益は75万6,000円となります。つまり、初期投資の回収には5年以上かかることになります。

稼働率80%(144日)で計算したとしても、利益は100万8,000円となるため、初期投資をすべて回収するまでに丸4年がかかる計算です。

いかに初期投資の費用を抑えるかが、民泊ビジネスのカギになるといえるでしょう。

8.民泊経営で利益が見込めないなら、売却するのも選択肢の一つ

民泊ビジネスのシミュレーションを実施した結果、想像以上に儲けが出ないことに驚いた方もいるのではないでしょうか。

たしかに民泊は空き家の有益な活用方法ですが、労力に見合う収益が見込めない場合、思い切って物件を売却するのも一案です。不動産売却の際は、必ず複数社から見積もりをとって相場価格を比較したうえで、対応の良い会社を慎重に選定しましょう。

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まとめ

民泊とは、住宅の一部または全部を有償で貸し出す宿泊サービスのことです。訪日外国人観光客が増加し、高齢化の進行とともに空き家も急増している現在の日本では、大きな注目を集めています。

それに伴い民泊に関連する法整備も進んでいるため、民泊ビジネスを始める方は、各種法律の内容や違いもきちんと押さえておきましょう。

ただし、必ずしも儲かるとは限りません。不動産売却という選択肢も視野に入れつつ、事前にシミュレーションを行なったうえで検討することをおすすめします。

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