更新日:2025.08.20 専攻授業 - 相続, 税金・諸費用, 相続・贈与 相続税はいくらから?課税ラインは3,600万円の基礎控除額を超える財産!計算方法・節税特例まで解説 「親が亡くなったけれど、相続税の申告は必要?」「うちは財産家じゃないから関係ないはず」——相続を経験する多くの方が、このような疑問や不安を抱えています。 結論から言うと、相続税がかかるかどうかの基準(課税ライン)は、遺産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で決まる基礎控除額を超えるかどうかで判断します。 【1分で分かる】この記事の内容 遺産が3,600万円以下なら相続税は0円 相続税を払う人は全体の約1割と少数派 税額を大幅に減らせる特例・控除がある 特例の利用には期限内の申告が必須である 相続について基礎から詳しく知りたい方は、「ゼロから分かる相続ガイド」を併せてご覧ください。 一度の申し込みで 最大6 社に依頼 できる 売却したいけど何から始めたらいいかわからない方は 不動産売却のプロに相談しましょう! 大手から地元密着企業まで約2,500社参画 無料 売却のプロに相談する Contents1. 相続税がかかる基準は3,600万円~2. 法定相続人の数で変わる基礎控除額3. 相続税の計算方法と税率・速算表4. 相続税を減らす特例と控除制度5. 相続税の申告・納税と注意点6. 相続税に関するよくある質問7. まとめ:相続税の基準を正しく理解し、まずやるべきこと 1. 相続税がかかる基準は3,600万円~ 相続税は、亡くなった方(被相続人)から受け継いだ遺産の総額が、法律で定められた非課税枠である「基礎控除額」を超えた場合にのみ、超えた分だけ課税される税金です。 つまり、遺産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税は1円もかかりません。税務署への申告も一切不要です。 まずは、この最も重要な「基礎控除」の仕組みを正しく理解しましょう。 1-1. 基礎控除の仕組み 相続税の課税ラインとなる基礎控除額は、以下の計算式で求められます。この式は必ず覚えておきましょう。 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数) 基礎控除額は、法定相続人(民法で定められた相続人)の数によって変動します。相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円と、1人増えるごとに非課税枠が600万円ずつ増えていきます。この金額が、相続税がかかるかどうかの最初のボーダーラインです。 1-2. そもそも相続税を払っている人の割合は1割未満 そもそも、相続税を支払っている人はどのくらいいるのでしょうか。 国税庁の最新データによると、令和5年分の相続のうち、相続税課税対象となったのは9.9%と読み解けます。 令和5年分における被相続人数(死亡者数)は1,576,016人(前年対⽐100.4%)でした。 そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は155,740人(同103.2%)、その課税価格の総 額は21兆6,335億円(同104.6%)、申告税額の総額は3兆53億円(同107.4%)でした。 出典:国税庁.”令和5年分 相続税の申告事績の概要”.2024-12(参照2025-08-18) 相続税の課税対象になるのは全体の1割程度で、さらに4. 相続税を減らす特例と控除制度で解説するような制度があるため、実際に相続税を納めているケースはさらに少ないでしょう。 2. 法定相続人の数で変わる基礎控除額 まず基礎控除額の計算方法をおさらいしておきましょう。 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数) 上の計算式の通り、基礎控除額を計算するには法定相続人を正しく求める必要があります。 この章では、法定相続人の正しい数え方と、法定相続人数に応じた基礎控除額早見表を紹介します。 2-1. 法定相続人の数え方 法定相続人とは、民法で定められた遺産を相続する権利を持つ人のことです。 亡くなった方の配偶者は常に法定相続人となり、それ以外は以下の順位で相続権が移ります。 常に相続人:配偶者 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫などの直系卑属) 第2順位:親(親が亡くなっている場合は祖父母などの直系尊属) 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪) 図でも確認してみましょう。 第1順位がいる場合は、第2順位は相続人にはなりません。優先されるべき相続人がいない場合に、下位の相続人が対象となるのです。 配偶者だけは「特別」と覚えておきましょう。 “相続人カウントのよくある勘違い” 基礎控除額の計算で最も間違いやすいのが、法定相続人の数え方です。特に以下の2点は注意してください。 養子:法定相続人に含めますが、人数に制限があります(実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで)。 相続放棄した人:相続の権利を放棄しても、基礎控除の計算上は法定相続人の数に含めます。例えば、相続人が3人いてそのうち1人が相続放棄しても、基礎控除は3人分(4,800万円)で計算します。 2-2. 基礎控除額早見表(人数別) 法定相続人の人数に応じた基礎控除額を一覧表にまとめました。ご自身の家族構成と照らし合わせ、非課税枠の目安を確認してみましょう。 法定相続人の人数別 基礎控除額 法定相続人の数 基礎控除額(申告不要ライン) 1人 3,600万円 2人 4,200万円 3人 4,800万円 4人 5,400万円 5人 6,000万円 2-3. 《具体例》家族構成ごとの非課税枠 具体的な家族構成を例に、非課税枠がいくらになるか見てみましょう。 ケース1:配偶者と子2人 家族構成が「被相続人・配偶者・父・母・長男・長女」である場合の法定相続人を考えていきましょう。 まず配偶者は常に相続人です。加えて、第1順位の子(長男・長女)も相続人になります。 第2順位の父・母は相続人になりません。 法定相続人:配偶者、子2人の合計3人 基礎控除額:3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円 ケース2:配偶者のみ(子・親・兄弟姉妹なし) 家族構成が「被相続人・配偶者」の場合は、法定相続人の範囲に含まれる、子・親・兄弟姉妹がいないので、そのまま配偶者一人が相続人となります。 法定相続人:配偶者のみの1人 基礎控除額:3,000万円 + (600万円 × 1人) = 3,600万円 ケース3:独身(配偶者・子なし)、両親は他界、兄が1人 被相続人が独身の場合でも考えてみましょう。 例えば、家族構成が「被相続人・兄」の場合は、相続人は兄一人です。 法定相続人:兄のみの1人 基礎控除額:3,000万円 + (600万円 × 1人) = 3,600万円 3. 相続税の計算方法と税率・速算表 遺産総額が基礎控除額を上回る場合、相続税の計算に進みます。計算は少し複雑ですが、手順を追って理解していきましょう。 3-1. 課税遺産総額の求め方 まず、相続税の計算の元となる課税遺産総額を算出します。これは、プラスの遺産からマイナスの財産や非課税財産を差し引いた後の金額です。 プラスの財産を合計する:預貯金、不動産(土地・建物)、有価証券、生命保険金など、金銭に見積もれるすべての財産を評価し、合計します。 マイナスの財産と費用を差し引く:借入金や未払金などの債務、被相続人の葬儀費用を差し引きます。 基礎控除額を差し引く:上記で計算した金額から、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を差し引きます。 この結果、残った金額が課税遺産総額となります。 3-2. 税率・速算表の見方 次に、算出した課税遺産総額を法定相続分で按分し、各相続人の取得金額に応じた税率をかけて税額を計算します。税率は、取得金額が大きくなるほど高くなる累進課税方式が採用されています。 相続税の速算表 法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 1,000万円以下 10% – 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円 出典:国税庁.”No.4155 相続税の税率”. 2024-04-01(参照2025-08-18) 各相続人の税額を合計したものが、相続税の総額となります。最終的に、この総額を実際に遺産を取得した割合に応じて各相続人が分担して納税します。 3-3. 《目安が分かる》相続税の早見表 法定相続人の組み合わせごとに、相続税の総額がいくらになるかの目安をまとめました。ご自身の家族構成に近いパターンで、おおよその税額を把握してみましょう。※法定相続分で遺産を取得し、配偶者控除を適用した場合の概算値です。実際の税額は遺産の分割内容によって異なります。 配偶者控除について詳しくは、4-1. 配偶者控除をご覧ください。 【配偶者と子】が相続人の場合の相続税額(総額) 遺産総額 配偶者+子1人 配偶者+子2人 配偶者+子3人 5,000万円 40万円 10万円 0円 7,000万円 160万円 110万円 80万円 1億円 385万円 290万円 230万円 1.5億円 920万円 665万円 570万円 3億円 3,460万円 2,380万円 1,860万円 【子のみ】が相続人の場合の相続税額(総額) 遺産総額 子1人 子2人 子3人 子4人 5,000万円 160万円 80万円 20万円 0円 7,000万円 480万円 320万円 220万円 160万円 1億円 1,220万円 770万円 630万円 490万円 1.5億円 2,860万円 1,840万円 1,440万円 1,240万円 3億円 9,180万円 6,920万円 5,460万円 4,580万円 3-4. ケース別の税額シミュレーション 【前提】 遺産総額:8,000万円 相続人:配偶者、子2人(合計3人) 相続税額シミュレーション 1 基礎控除額の計算 3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円 2 課税遺産総額の計算 8,000万円 - 4,800万円 = 3,200万円 3 法定相続分に応じた取得金額の計算 配偶者:3,200万円 × 1/2 = 1,600万円 子1人あたり:3,200万円 × 1/4 = 800万円 4 各人の税額計算(速算表を使用) 配偶者:1,600万円 × 15% - 50万円 = 190万円 子1:800万円 × 10% = 80万円 子2:800万円 × 10% = 80万円 5 相続税の総額 190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円 ただし、ここからさらに各種控除を適用できるため、実際の納税額はさらに少なくなることがほとんどです。 この350万円を、実際の遺産取得割合に応じて分担します。 ただし、ここからさらに各種控除を適用できるため、実際の納税額はさらに少なくなることがほとんどです。 4. 相続税を減らす特例と控除制度 相続税には、納税者の負担を軽減するための様々な特例や控除制度が設けられています。 これらをフル活用することで、納税額がゼロになることも少なくありません。 配偶者控除(1億6,000万円まで非課税) 小規模宅地等の特例(自宅土地の評価減) 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人) 未成年者控除(年齢に応じた控除額) 障害者控除(障害の程度に応じた控除額) 相次相続控除(短期間に相続が続いた場合の軽減) 贈与税額控除(生前贈与との通算) 外国税額控除(海外資産の二重課税調整) 4-1. 配偶者控除(1億6,000万円まで非課税) 正式名称を「配偶者の税額の軽減」といいます。配偶者が相続した遺産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは相続税がかからないという非常に強力な制度です。多くのケースで配偶者の相続税はゼロになりますが、この特例を使うためには必ず相続税の申告が必要です。また、一次相続(例:父の相続)で配偶者が多くの財産を相続すると、二次相続(例:母の相続)の際に子の税負担が重くなる可能性がある点に注意が必要です。 4-2. 小規模宅地等の特例(自宅土地の評価減) 被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地などを相続した場合、一定の要件を満たすことで、その土地の評価額を最大80%減額できる制度です。たとえば、評価額1億円の自宅土地が2,000万円として計算できるため、相続税額を劇的に下げられる可能性があります。適用要件が非常に複雑なため、専門家への相談が不可欠です。 4-3. 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人) 被相続人が亡くなったことで受け取る生命保険金(死亡保険金)には、相続税がかからない非課税枠が設けられています。 非課税となる金額は、次の計算式で求めます。 500万円 × 法定相続人の数 たとえば法定相続人が3人いれば、1,500万円までの死亡保険金は相続税の課税対象になりません。 ただし、次のような要件や注意点があります。 受取人が相続人であること 相続放棄者は計算に入れない 4-4. 未成年者控除(年齢に応じた控除額) 相続人が未成年者(18歳未満)である場合に適用できる控除です。控除額は、その未成年者が18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します。 4-5. 障害者控除(障害の程度に応じた控除額) 相続人が85歳未満の障害者である場合に適用できる控除です。控除額は、その障害者が85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)で計算します。 4-6. 相次相続控除(短期間に相続が続いた場合の軽減) 今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続税を支払っていた場合に適用できる控除です。短期間に何度も相続が重なり、税負担が過重になるのを防ぐ目的があります。 4-7. 贈与税額控除(生前贈与との通算) 相続開始前7年以内(※)に被相続人から贈与を受けていた財産は、相続財産に加算して相続税を計算する必要があります。このとき、すでに支払った贈与税がある場合は、その金額を相続税額から差し引くことができます。(※2024年1月1日以降の贈与から、加算期間が3年から7年に段階的に延長されます) 4-8. 外国税額控除(海外資産の二重課税調整) 海外にある財産を相続し、その国で日本の相続税にあたる税金を支払った場合に、その外国で支払った税額を日本の相続税額から控除できる制度です。国際的な二重課税を防ぐために設けられています。 5. 相続税の申告・納税と注意点 相続税は、自分で計算して税務署に申告し、納税まで行う必要があります。期限やルールを守らないとペナルティが課されるため、注意が必要です。 相続税申告が必要となるケース 申告期限と納付方法の基本(10か月以内・延納/物納) 控除・特例を受けるための申告漏れに注意 5-1. 相続税申告が必要となるケース 相続税の申告が必要になるのは、主に以下の2つのケースです。 遺産総額が基礎控除額を超える場合:計算の結果、納税額が1円以上発生する場合は必ず申告が必要です。 特例を適用して納税額がゼロになる場合:「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」といった評価額や税額を大きく下げる特例は、適用を受けるために相続税の申告が必須となります。申告をしなければ、特例は適用されません。 5-2. 申告期限と納付方法の基本(10か月以内・延納/物納) 相続税の申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。申告書の提出先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署です。納税は、現金一括払いが原則ですが、期限までに金銭で納付することが難しい場合は、一定の要件のもとで延納(分割払い)や物納(不動産などで納める)が認められることもあります。 5-3. 控除・特例を受けるための申告漏れに注意 前述の通り、「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」は、適用すれば納税額がゼロになるケースも多い強力な制度です。しかし、「税金がゼロになるなら申告しなくていい」と勘違いし、申告をしない方が後を絶ちません。これらの特例は、期限内に申告して初めて適用が認められます。 申告を忘れると、本来払わなくてよかったはずの多額の税金と、ペナルティとしての加算税を支払う羽目になりかねません。 5-4. 期限を過ぎた場合のペナルティ 正当な理由なく申告期限を過ぎてしまったり、申告した税額が少なかったりした場合には、本来の税額に加えて以下のようなペナルティ(附帯税)が課されます。 無申告加算税:期限内に申告しなかった場合に課される税金。 過少申告加算税:申告した税額が本来より少なかった場合に課される税金。 延滞税:納付が期限に遅れた場合に、利息に相当するものとして課される税金。 これらのペナルティは税率も高く、大きな負担となるため、期限内の正確な申告・納税が非常に重要です。 6. 相続税に関するよくある質問 Q タンス預金なら税務署にバレませんか? A 税務署は、亡くなった方やご家族の所得・資産状況を把握するために、金融機関からの照会や国税総合管理(KSK)システムなどを通じて幅広い情報を収集しています。そのため、タンス預金や名義預金であっても、調査の過程で発覚する可能性があります。申告せずに財産を隠した場合は、重加算税などの厳しいペナルティが課される可能性があるため、隠さず正しく申告することが重要です。 Q 相続税の相談は誰にすれば良いですか? A 相続税に関する税務相談や申告書の作成は、税理士の独占業務です。特に相続税は専門性が非常に高いため、相続案件の実績が豊富な税理士に相談することをおすすめします。銀行や司法書士、行政書士は税務申告の代理はできません。 Q 借金も相続しないといけませんか? A プラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多い場合は、「相続放棄」という手続きを家庭裁判所で行うことで、すべての財産(プラスもマイナスも)を相続しない選択ができます。相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に行う必要があります。 7. まとめ:相続税の基準を正しく理解し、まずやるべきこと 本記事で解説した通り、相続税がかかるかどうかの最初の基準は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除額です。 相続が発生したら、まずは慌てずに以下の2ステップでご自身の状況を確認することから始めましょう。 おおよその遺産総額を把握する 誰が法定相続人になるのかを確定させる この2つが分かれば、基礎控除額を超えそうか、申告が必要になりそうかの見当がつきます。もし基礎控除額を超える場合や、判断に迷う場合は、できるだけ早い段階で相続専門の税理士に相談することをおすすめします。無料相談などを活用し、専門家のアドバイスを受けることが、円満な相続への第一歩です。 一度の申し込みで 最大6 社に依頼 できる 売却したいけど何から始めたらいいかわからない方は 不動産売却のプロに相談しましょう! 大手から地元密着企業まで約2,500社参画 無料 売却のプロに相談する