仮登記とは?種類やメリット・デメリット、申請手順などを全解説

仮登記とは 種類や申請手順を解説

不動産の購入を検討していると、仮登記付きの不動産を見かけることがあるでしょう。仮登記とは、本登記を行なう前に、優先順位を確保するために行なう登記のことです。

本記事では、仮登記の概要や種類のほか、メリット・デメリット、申請手順などを詳しく解説します。仮登記に関する正しい知識を身に付けるためにも、ぜひご一読ください。

この記事を読むと分かること
  • 仮登記とは何か
  • 仮登記のメリットやデメリット
  • 仮登記の申請手順
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1.仮登記とは?

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仮登記とは、本登記を行なう前に登記上の優先順位を確保するために行なう登記のことです。仮登記はあくまで「仮」の登記であるため、順位を確保する対抗力をもつことでしかありません。仮登記は「予備登記」と呼ばれることもあります。

実際に仮登記を行なうのは、以下のようなケースです。

Aさんが所有する不動産Xを売却すべく、AさんはBさんと交渉をしますが、Bさんは登記申請に必要な書類をすぐにそろえられなかったため、取り急ぎ仮登記を行ないました。

その後、Bさんの手続きがなかなか進まないため、AさんはCさんとも交渉を行ないます。Cさんは書類をそろえてすぐに本登記を行なったため、この時点で不動産Xは本登記を完了したCさんのものになります。

しかし、その後Bさんの準備が整い、仮登記から本登記手続きを行なった場合には、Cさんの本登記は抹消され、不動産XはBさんのものになるのです。

仮登記の仕組み

ただし、仮登記してから本登記を行なう場合には、第三者の承諾が必要となります。上記の例であれば、Bさんは本登記手続きを行なう前にCさんの承諾が必要です。しかし、Cさんには応じる義務はありません。

1-1.仮登記の目的

そもそも登記は、登記を行なった順番によって優先順位が決まるというルールがあります。本登記に必要な条件が一部そろっていないことが原因で、登記がまったくできないとなると、買主にとって不利益になるため、仮登記が存在します。

参考:“不動産登記法第四条”. e-Gov法令検索

1-2.仮登記の種類

仮登記には「1号仮登記」と「2号仮登記」があり、それぞれさらにいくつかの種類に分けられます。

仮登記の種類 仮登記名
1号仮登記 所有権移転仮登記
抵当権設定仮登記
賃借権設定仮登記
2号仮登記 所有権移転請求権仮登記
条件付賃借権設定仮登記

詳しく見ていきましょう。

1-2-1.1号仮登記

1号仮登記(物件保全の仮登記)は、所有権移転などの権利変動がすでに生じているものの、本登記申請の手続きを行なうための条件が欠けているときに行なう登記です。1号仮登記には、「所有権移転仮登記」「抵当権設定仮登記」「賃借権設定仮登記」があります。

具体的には、登記申請に必要な書類が紛失などによりそろっていない、第三者からの許可などは得られているが、それを証明するための書類がそろっていない、といった状況が挙げられます。

1-2-2.2号仮登記

2号仮登記(請求権保全の仮登記)は、権利変動はまだ生じていないものの、権利変動が生じる請求権はすでに発生しているときに行なう登記です。2号仮登記には、「所有権移転請求権仮登記」「条件付賃借権設定仮登記」があります。

農地の売買契約を例に説明すると、農地の売買には農地法による制限があり。農業委員会または都道府県知事などの許可を受けないと権利変動が発生しません。

したがって、農地法の許可がまだ取得できていない段階では本登記ができないため、まずは2号仮登記を行なうのが一般的です。その後、農業委員会または都道府県知事などの許可を得られれば、不動産売買契約の締結が可能です。

参考:“農地法第三条”. e-Gov法令検索

2.仮登記を行なうメリット

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本章では、仮登記を行なうメリットを紹介します。

2-1.順位を確保できる

登記はルール上、登記を行なった順番で優先順位が決まります。したがって、仮登記をしておけば、仮登記した日にちまでさかのぼって本登記を行なうことができます。

つまり、自分よりあとに仮登記や本登記をした方よりも、有利な立場を確保できるのです。

2-2.免許登録税が安い

不動産売買による所有権移転登記(本登記)を行なう際の登録免許税は、不動産価額の2%(※)です。一方の仮登記では、不動産価額の1%と半額になります。
(※)2026年(令和8年)3月31日までは1.5%

参考:“No.7191 登録免許税の税額表”. 国税庁

また、抵当権設定登記(本登記)の登録免許税は、債権金額の0.4%である一方、仮登記では、不動産1件につき1,000円です。

3.仮登記を行なうデメリット

続いて、仮登記を行なうことで想定されるデメリットについて紹介します。

3-1.第三者に対する抵抗力がない

仮登記の段階では、第三者に対して抵抗力がなく、あくまで順位の確保のみが可能です。

したがって、第三者に対して所有権や抵当権を主張するには、本登記をする必要があります。

3-2.本登記には利害関係のある第三者の承諾が必要

仮登記から本登記を行なう際には、登記上の利害関係のある第三者の承諾が必要です(不動産登記法109条1項)。

登記上の利害関係のある第三者とは、自分が仮登記を行なったあとに、本登記をした方などが挙げられます。

つまり、自分が先に仮登記をしたとしても、その後第三者が本登記した場合、原則その方の承諾を得たうえで本登記の申請をしなければならないのです。第三者が承諾しない場合には、本登記ができない可能性もあるため、注意が必要です。

参考:“不動産登記法第百九条第一項”. e-Gov法令検索

4.仮登記の申請手順

商談

ここでは、不動産売買に伴う所有権移転仮登記の申請手順について説明します。

4-1.仮登記は登記権利者と登記義務者が共同で行なう

仮登記は、登記権利者と登記義務者が法務局を通して共同で行なうのが原則です(不動産登記法60条)。また、仮登記の抹消に関しても共同で行なう必要があります。

ただし、条件がそろえば単独で仮登記申請を行なうことも可能です。詳しい条件に関しては次の小見出しをご覧ください。

参考:“不動産登記法第六十条”. e-Gov法令検索

4-1-1.単独で仮登記申請ができる条件

次のいずれかの条件に当てはまる場合、登記権利者は単独での仮登記申請が可能です。

  1. 登記義務者の承諾を証明できる書類を提供できる場合
  2. 仮登記を命ずる処分の決定書正本(※)を提供できる場合

(※)公証権限のある者が作成した原本の写し

参考:“不動産登記法第百七条”. e-Gov法令検索

なお、仮登記を命ずる処分とは、登記権利者が裁判所に申し立てすることにより、単独での仮登記申請を認める処分のことです。何らかの理由で登記義務者の承諾書などが得られない場合に、申し立てを行ないます。

4-2.仮登記に必要な書類を集める

不動産売買に伴う所有権移転仮登記を行なう際には、以下の書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 登記義務者と登記権利者双方の身分証明書
  • 登記義務者の印鑑証明書
  • 登記権利者の住民票
  • 登記原因証明情報(売買契約書や贈与証書など)
  • 固定資産税評価証明書

登記義務者の印鑑証明書は、発行後3ヵ月以内のものを用意します。固定資産税評価証明書は、登録免許税を計算するために必要です。

なお、登記申請書に添付する書面は、すべて原本が原則です。住民票に関してもコピーは不可であるため、注意してください。

4-3.法務局で申請を行なう

書類がそろったら、法務局で仮登記の申請を行ないます。登記の申請方法は以下の2通りです。

  • 書面申請
  • オンライン申請

仮登記は自分で申請することも可能ですが、不安な場合には、弁護士または司法書士に依頼するのがおすすめです。依頼先によって費用は異なりますが、数万円程度を想定しておきましょう。

5.仮登記に関する注意点

最後に、仮登記に関する注意点を2つ紹介します。

5-1.購入予定の不動産に仮登記が付けられている場合は要注意

購入する予定の不動産に仮登記がされている場合には、注意が必要です。

前述のとおり、仮登記に対抗力はありませんが、先に仮登記をした方が本登記をした場合、後から行なった本登記が抹消されてしまう可能性があります。

所有権移転仮登記付きの不動産の購入を検討している場合には、まず現在の所有者に仮登記の抹消を依頼しましょう。その後、仮登記の抹消を確認してから、本登記をするのがおすすめです。

また、自身が不動産を売却する際に仮登記が付いている場合には、トラブルを避けるためにも、必ず仮登記の抹消を行なってから売却するようにしましょう。

5-2.仮登記には時効がある

仮登記自体に時効はありませんが、「予約完結権」には時効があるため注意が必要です。予約完結権とは、仮登記のように所有権移転の予約を行なう権利のことです。

2024年(令和6年)2月現在、予約完結権の時効は5年です。しかし、2020年(令和2年)4月1日以前の契約の予約完結権は、10年となっています。

予約完結権が時効で消滅した場合にも、そのまま何もしなければ仮登記は残った状態になりますが、売主から仮登記を抹消するよう要請が来た際には、買主はそれに応じなければなりません。

まとめ

仮登記とは、本登記を行なう前に登記上の優先順位を確保しておくために行なう登記のことです。あくまで順位の確保のみが可能で、第三者に対する抵抗力はありません。

しかし、先に仮登記をした方が本登記をしてしまうと、後で行なわれた本登記は抹消されてしまう可能性があります。売却予定の不動産に仮登記が付いている場合には、抹消してから正式な売却の手続きに進みましょう。

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