更新日:2025.01.09 不動産売却の基礎講座, 不動産売却のノウハウ 定期借地権とは?普通借地権との違いや種類、売却の注意点について解説 「定期借地権」とは、期間限定で土地を借りることができる権利のことです。契約終了後、借主は土地を更地にして地主に返還する必要があります。 本記事では、定期借地権と普通借地権の違いや種類のほか、定期借地権付き物件売却時の注意点などについて解説します。この記事を読んで、土地の権利に関する基礎知識を身に付けましょう。 この記事を読むと分かること 定期借地権の基礎知識・種類 定期借地権と普通借地権の違い 定期借地権付き物件を売却する際の注意点 「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格(※)”を見つけましょう※依頼する6社の中での最高価格 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます 完全無料一括査定依頼をスタート Contents1.定期借地権とは?2.定期借地権と普通借地権の違い3.定期借地権の種類4.定期借地権付き物件のメリット・デメリット5.定期借地権付き物件を売却する際の注意点まとめ 1.定期借地権とは? 定期借地権とは、1992年(平成4年)8月施行の借地借家法で定められた借地権の一種です。存続期間の満了により、必ず賃貸借契約が終了する「タイムリミット付きで土地を借りる権利」のことを指します。 契約が終了したら、原則、借主は土地を更地にして返還する必要があります。 ただし、一度の契約における存続期間は数十年単位なので、土地を居住用や事業用として使う分には十分といえるでしょう。 参考:“借地借家法”. e-GOV法令検索 借地権の詳細については「借地権とは?種類や特徴、メリット・デメリットをわかりやすく紹介」をご覧ください。 【無料】一括査定依頼スタート 2.定期借地権と普通借地権の違い 借地権は「定期借地権」と「普通借地権」の2種類に分けられますが、両者には以下のような違いがあります。 契約更新の可否 書面契約の要否 地代相場 借地権の売買価値 保証金の有無 それぞれ詳しく解説します。 2-1.契約更新の可否 定期借地権には、契約の更新という概念自体が存在しません。存続期間の満了とともに、地主への土地の返還義務が課されるので、借主はそれを履行する必要があります。 一方、普通借地権も存続期間は定められているものの、契約を更新できる点が大きな違いです。更新の手続きをすれば、借主は半永久的に土地を使える可能性があります。 なお、1992年(平成4年)7月31日以前の「借地法(旧法)」に基づく契約も、普通借地権と同じく契約の更新が可能です。 普通借地権、借地法(旧法)に基づく契約では、正当な事由がない限り、地主側から契約を解除することは非常に困難です。仮に契約を解除できたとしても、借主は地主に建物を時価で買い取ってもらう「建物買取請求権」を行使できるので、地主にとって不利な権利といえるでしょう。 定期借地権はこのような問題が解消されているため、地主は土地を貸し出しやすくなっています。 参考:“借地法・御署名原本・大正十年・法律第四十九号”. 国立公文書館デジタルアーカイブ “借地借家法”. e-Gov法令検索. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成 2-2.書面契約の要否 定期借地権は一部例外を除き、書面で契約を交わさなければなりません。公正証書が必要なケースもあるため、準備や手続きに手間がかかりますが、契約内容を書面で残せるので、地主・借主双方にとって安心です。 一方、普通借地権は書面契約に関する規定がなく、口頭による契約締結が認められています。ただし、当事者間でトラブルが起こりやすいため、やりとりの内容を書面で残したほうが安全です。 2-3.地代相場 定期借地権と普通借地権を比べると、定期借地権のほうが地代(土地を借りる際に支払う賃借料)は高くなる傾向にあります。 土地の広さや立地条件によって変動しますが、住宅の定期借地権の地代相場は「土地価格の2~3%程度」です。それに対し、住宅の普通借地権の地代相場は「固定資産税の3倍程度」が目安で、土地価格に換算すると1%未満になります。 普通借地権の地代が安い理由としては、存続期間の長さが挙げられます。更新によって半永久的に契約することが通例なので、一般的な地代相場より金額も低く設定されているケースが多いのです。 また、普通借地権の契約を締結する際、借主から地主へ「借地権料」という名目でまとまったお金を納めますが、これは地代の先払いとして扱われるので、その後に支払う地代を安く抑えることができます。 2-4.借地権の売買価値 借地権は数十年にわたって土地を利用できる権利なので、経済的価値が認められています。そのため、権利自体が売買されるケースも少なくありません。 しかし、定期借地権は効力を発揮できる期間が限られており、なおかつ残存期間が少ないほど価値は低下します。さらに、地代相場も高いため、高額売却は難しいといえるでしょう。 一方、普通借地権は半永久的な効力を有するうえ、地代相場も比較的安いので、より高い経済的価値を持っています。 2-5.保証金の有無 定期借地権の場合、契約の遵守を担保するため、契約締結時に借主から地主へ保証金を預けるケースがあります。 保証金は地代の不払いなどの債務不履行がなければ、契約終了時に返ってくる一時金です。ただし、必ずしも全額返還されるわけではなく、1~3割ほど償却される(費用として使われる)可能性もあります。 一方、普通借地権に保証金は不要ですが、その代わり借地権料が求められます。先述のように、借地権料は地代の先払いという性質を持つので、あとで返還はされません。 3.定期借地権の種類 定期借地権には、大きく分けて以下の3種類があります。 一般定期借地権 事業用定期借地権 建物譲渡特約付借地権 種類ごとに存続期間や契約内容をまとめたので、ぜひご確認ください。 3-1.一般定期借地権 一般定期借地権とは、建物の利用目的に制限が設けられていない借地権です。存続期間が50年以上あるので、長期的に土地を利用できます。 契約の更新および存続期間の延長は認められていないため、契約終了のタイミングで地主に土地を返還しなければなりません。また、建物買取請求権も行使できないので、返還時に建物を取り壊して更地にする必要があります。 ただし、借主と地主で話し合って、新規契約を結び直すことはできれば、再契約は可能です。 なお、一般定期借地権は、公正証書などの書面で契約しなければならないので注意しましょう。 3-2.事業用定期借地権 事業用定期借地権とは、事業のために建物を所有することを目的としている借地権です。飲食店、ホテル、倉庫、工場といった用途に対応していますが、居住は認められていません。 存続期間は10年以上50年未満と定められていますが、30年を区切りに権利内容が変わります。 10年以上30年未満の場合、契約の更新、存続期間の延長、建物買取請求権の行使ができないことを、特約で定めなければなりません。 30年以上50年未満の場合、上記の特約は任意で定めます。つまり、当事者間の交渉によって契約を延長したり、建物を買い取ってもらったりすることが可能です。 50年以上の契約を締結する場合、事業用であっても一般定期借地権となります。 なお、契約の手続きには公正証書が必要なので、忘れずに準備しましょう。 3-3.建物譲渡特約付借地権 建物譲渡特約付借地権とは、30年以上の存続期間満了時、建物を地主に売却できる特約を付けた借地権です。売却が完了した時点で借地権は消滅しますが、地主と定期借家契約を新たに締結すれば、建物を引き続き利用できます。 この特約は、一般定期借地権、あるいは30年以上の事業用定期借地権のオプションとして付け加えることが可能です。「建物の状態が悪い」といった理由で地主が買い取らない場合、存続期間満了をもって借地権が消滅し、更地にして返還することになります。 なお、建物譲渡特約付借地権は口頭のみでも契約可能です。しかし、後々のリスクを考慮すると、書面を作成するほうが無難でしょう。 参考:“建設産業・不動産業:定期借地権の解説”. 国土交通省 4.定期借地権付き物件のメリット・デメリット 定期借地権付き物件には、以下のようなメリット・デメリットがあります。 <メリット> 購入価格が安い保証金が発生することがあるものの、物件の価格自体は抑えられている傾向にあります。所有権付きの物件と比較した場合、戸建て住宅なら6割程度、マンションなら8割程度の価格で購入できます。 税金の負担が軽い土地は地主が所有したままなので、土地に対する固定資産税・都市計画税は課税されません。家計への負担も軽減できます。 <デメリット> 毎月の地代がかかる土地を借りる対価として、毎月地主に対して地代を支払わなければなりません。土地評価額が上昇すると、地代もアップする可能性があります。 担保的価値が低い土地を地主が所有している関係上、抵当権は建物だけに設定されるため、物件の担保的価値も低くなりがちです。そのため、住宅ローンの審査に落ちたり、融資額が減ったりする可能性もあります。 建物の解体費用がかかる土地は更地にして返還するので、建物の解体工事に伴う費用が発生します。 自由にリフォームしにくい建物は借主が所有しますが、リフォームを行なう際はあらかじめ地主から許可を得る必要があります。リフォームの条件が規定されている場合、それに従わなければなりません。 5.定期借地権付き物件を売却する際の注意点 定期借地権付き物件はデメリットも少なくありませんが、一方で「購入価格が安い」という魅力的なメリットがあります。売主としても、「価格が安い=売れやすい」という点は見逃せません。 ただし、定期借地権付き物件の売却には注意点もあります。そこで本章では、定期借地権付き物件を売却する際の注意点を解説します。 なお、不動産売却に関しては「売れやすい家の条件は5つ!家をスムーズに売却する手順を伝授」や「マンション売却に適した時期を徹底解説」も併せてご覧ください。 【無料】一括査定依頼スタート 5-1.売却には地主の承諾が必要 定期借地権付き物件を売却する場合、地主の承諾が必須です。売却活動を始める前に一言伝えないと、地主の心証を悪くするだけではなく、トラブルに発展する可能性もあります。 地主に不利がないのに承諾してもらえない場合は、裁判所に申し立てると承諾を得ることができます。 なお、以前は慣行として、借地権を第三者に譲渡するときに譲渡承諾料を求められるケースがありました。しかし、現在の定期借地権については、譲渡承諾料などの金銭を支払わない運用方法が定着しています。 参考:“建設産業・不動産業:定期借地権の解説”. 国土交通省 5-2.定期借地権の残存期間に要注意 定期借地権の残存期間が少ない場合、売却価格が下がりやすいうえ、買い手が現れない可能性も高いでしょう。あと数年しか利用できない物件は、使い道に困るためです。 少しでも有利な条件で確実に売却したいなら、残存期間が十分にある間に売却活動を始めることをおすすめします。 まとめ 定期借地権とは、タイムリミット付きで土地を借りる権利です。存続期間満了とともに更新・延長なしで必ず賃貸借契約が終了するので、地主は安心して土地を貸し出すことができます。 借主にも、購入価格の安さや税金の負担が軽いというメリットはありますが、担保的価値やリフォームに関するデメリットも存在するため、両面を踏まえて検討したいところです。 「定期借地権付き物件を売却したいけれど、どの不動産会社に依頼すべきかわからない」という方は、ぜひ不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご利用ください。「不動産売却 HOME4U」には、日本全国から約2,500社の優良不動産会社が参画しているので、売却活動の心強い味方が見つかるはずです。 不動産の査定価格には、数百万円以上の差が出ることも珍しくないため、複数社の査定を慎重に検討することをおすすめします。