不動産売却と住民税の関連性とは?住民税の基礎知識や節税のコツについても解説

不動産売却と住民税 課税の仕組みと節税のコツ

住民税は、自分が住んでいる地域の自治体に納める地方税の一種です。不動産売却によって利益(譲渡所得)が発生した場合にも課税されます。

本記事では、住民税の基礎知識のほか、不動産売却との関連性、節税のコツなどについてわかりやすく解説します。住民税への理解を深めて、税負担を抑えるコツを把握しましょう。

この記事を読むと分かること
  • 住民税の基礎知識
  • 不動産売却と住民税の関連性
  • 不動産売却後の住民税を節税するコツ
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1.そもそも住民税とは?

住民税

住民税とは、自身が住んでいる地域の自治体に納める地方税の一種です。「市町村民税」と「道府県民税」の2つが合わさったものですが、納付する際は「住民税」として一括で支払います。

なお東京都では、「市町村民税」を「特別区民税」、「道府県民税」を「都民税」と呼びます。

住民税の主な用途は、自治体が提供する公共サービス(教育、福祉、行政、衛生など)の財源です。学校教育に欠かせない教科書や備品の購入、道路や上下水道の維持管理、ゴミ処理施設の運営など、さまざまな方面で使用されます。

また、住民税はその地域の居住者が納付する「個人住民税」と、その地域に拠点を置く企業などが納付する「法人住民税」の2種類に分かれていますが、本記事では、「住民税=個人住民税」として話を進めます。

参考:“地方税の仕組み”. 総務省

1-1.住民税の仕組み

住民税は、主に「所得割」と「均等割」の二部構成となっています。

住民税の概要

所得割とは、納税義務者の所得に応じて課税される部分のことです。前年の所得が多ければ多いほど、所得割の税額も増えるので、結果的に税負担も大きくなります。

所得割の税率は、所得に対して10%(市町村民税6%+道府県民税4%)です。政令指定都市については、市町村民税が8%、道府県民税が2%、東京都については、区市町村民税6%、都民税4%と内訳が異なりますが、税率自体は変わりません。

もう一方の均等割は、納税義務者の所得に関わらず一律で課税される部分のことです。税額は4,000円(市町村民税3,000円+道府県民税1,000円)となっています。なお、東京都の均等割も同じく、個人区市町村民税3,000 円、個人都民税1,000 円の定額で課税されます。

ただし、東日本大震災の影響により、2023年(令和5年)までは、防災施策の財源確保の目的で市町村民税(個人区市町村民税)、道府県民税(個人都民税)のそれぞれが500円ずつ引き上げられます。

また、2024年度(令和6年度)からは、国内に住所のある個人に対して、森林環境税が課されます。森林環境税とは、市区町村において均等割と併せて1人あたり年額1,000円の徴収がされる国税で、その税収は森林環境譲与税として、全国の都道府県・市区町村に譲与されます。

また、以下のような所得に課税する仕組みもあります。

  • 利子割:預貯金の利子などに課税される
  • 配当割:株式の配当や割引債の償還差益などに課税される
  • 株式等譲渡所得割:源泉徴収ありを選択した特定口座内での株式などの譲渡益に課税される

税負担を少しでも軽減したいなら、このような仕組みも押さえておきましょう。

参考:“個人住民税”. 総務省

1-2.住民税が課税される方

以下の条件に当てはまる場合には、原則、住民税の課税対象となります。

  • 当年の1月1日時点で該当地域に住所がある方、もしくは該当地域に住所がなくても事業所や家屋敷(住宅、別邸、別荘など)がある方
  • 前年の1月~12月にかけて一定額を超える所得があった方

課税が始まるタイミングは、給与所得者なら社会人2年目の6月から、個人事業主なら事業を開始した年の分の確定申告に応じて、翌年の6月からです。

なお、社会人1年目や未成年の方でも、アルバイトなどで前年に一定以上の所得を得ているなら課税対象となります。

1-3.住民税が免除される方

以下のような非課税制度の条件に当てはまる方は、住民税が免除されます。

<所得割のみ免除>

前年の総所得金額などが次に挙げる金額以下の方

  • 生計を一にする配偶者または扶養親族がいる場合:35万円×(1+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+42万円
  • 生計を一にする配偶者または扶養親族がいない場合:45万円

<所得割・均等割ともに免除>

  • 生活保護法に基づいて生活扶助を受けている方
  • 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親に該当し、なおかつ前年の合計所得金額が135万円以下の方(給与所得者なら年収204万4,000円未満の方)
  • 前年の合計所得金額が次に挙げる金額以下の方(東京23区内の場合)
    ・生計を一にする配偶者または扶養親族がいる場合:35万円×(1+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+31万円
    ・生計を一にする配偶者または扶養親族がいない場合:45万円

参考:“個人住民税”. 東京都主税局

なお、各条件における基準額は地域によって異なるため、事前に自治体ホームページなどで調べておきましょう。

2.不動産売却と住民税の関連性

家と電卓

不動産を売却して利益(譲渡所得)を得た場合、翌年の住民税が高くなる可能性があります。

不動産売却における譲渡所得は、以下の計算式で算出できます。

譲渡所得=売却価格-(取得費-減価償却費+譲渡費用)

  • 売却価格
    実際に不動産が売れたときの金額で、売買契約書に記載された金額がベースとなる。
  • 取得費
    売却した不動産を取得したときの価格に、取得時の仲介手数料や測量費などを加えた合計金額。
  • 減価償却費
    建物部分における所有期間中の経年劣化を踏まえて、取得費から差し引く金額。
  • 譲渡費用
    不動産売却の過程で支払った仲介手数料や印紙税などの合計金額。

譲渡所得がプラスになると、所得税と住民税がセットで課税されます。

なお、譲渡所得に対する税金は「分離課税方式」で決まることも重要なポイントです。分離課税方式とは、ほかの所得と合算せずに一定の税率によって税額が決まる仕組みのことです。

分離課税方式とは

つまり、給与所得、事業所得、配当所得などの所得とは分けて税額が算出されることも把握しておきましょう。

参考:“No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)”. 国税庁. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

2-1.所得税と住民税の違い

所得税と住民税の違いを、表形式でまとめました。

所得税 住民税
種類 国税 地方税
対象所得 当年の所得 前年の所得
課税方法 <申告納税>

  • 納税義務者が年間所得および所得税額を計算し申告
  • 給与所得者は源泉徴収を経て年末調整で精算
<賦課課税>
以下の書類に基づいて課税

  • 住民税の申告書
  • 所得税の確定申告書
  • 給与支払報告書
  • 公的年金等支払報告書
納付方法 <申告納付>
確定申告によって税額を確定し、原則一括納付する

<源泉徴収>
給与から所得税(予測分)を事前に差し引き、年末調整で実際に納めた金額と確定した所得税を精算する

<普通徴収>
年4回に分けて納付する(6月・8月・10月・翌年1月)

<給与特別徴収>
6月~翌年5月の給与から毎月差し引く

<年金特別徴収>
4月~翌年2月の年金から差し引く

税率 累進課税(課税標準額によって変動) 所得割:10%
均等割:4,000円(※1)(※2)

(※1)2023年(令和5年)分までは、東日本大震災の復興増税で5,000円

(※2)2024年度(令和6年度)からは、森林環境税(国税)の課税で5,000円

参考:“所得税と個人住民税との違いはなんですか(市民税課) ”. 水戸市ホームページ. 2022-06-13. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

なお、譲渡所得が発生し、所得税の確定申告を行なった時点で、住民税の分も申告したことになります。

2-2.譲渡所得にかかる税金の計算方法

譲渡所得に一定の税率をかけることで、所得税・住民税の税額を算出できます。ただし、税率は売却した不動産の所有期間によって変わる点に気を付けてください。

短期譲渡所得 長期譲渡所得
所有期間 5年以下 5年超
所得税率
(復興特別所得税率を含む)
30.63% 15.315%
住民税率 9% 5%
合計税率 39.63% 20.315%

例えば、「2,000万円の譲渡所得があった」と仮定すると、税額は以下のように算出できます。

<短期譲渡所得の場合>

所得税:2,000万円×30.63%=612万6,000円
住民税:2,000万円×9%=180万円
合計:792万6,000円

<長期譲渡所得の場合>

所得税:2,000万円×15.315%=306万3,000円
住民税:2,000万円×5%=100万円
合計:406万3,000円

なお、所有期間の基準となる日は「売却した年の1月1日」です。例えば、2020年(令和2年)10月1日に不動産を購入し、2024年(令和6年)10月2日に売却した場合、実際に所有していた期間は4年ですが、計算上は2024年(令和6年)1月1日を基準とするため、所有期間は3年3ヵ月となります。

参考:
“No.3211 短期譲渡所得の税額の計算”. 国税庁
“No.3208 長期譲渡所得の税額の計算”. 国税庁

3.不動産売却後の住民税を節税するコツ

住民税額決定通知書

不動産売却後の住民税を節税したい場合、以下のようなコツを押さえておきましょう。

  • 控除・特例を活用する
  • 取得費や譲渡費用を計上する
  • 税率が下がるまで待つ
  • ふるさと納税を活用する

それぞれ具体的に解説するので、ぜひ参考にしてください。

3-1.控除・特例を活用する

不動産売却にあたって一定の要件を満たせば、以下のような控除・特例の適用が受けられます。

控除・特例の種類 概要
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 ・マイホームを売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで差し引くことができる
・所有期間は問われないので、比較的適用しやすい
所有期間10年超の場合の軽減税率 ・売却した年の1月1日時点で不動産の所有期間が10年を超えていた場合、長期譲渡所得の税率が軽減される
譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は、税率が14.21%になる
特定の居住用財産の買換えの特例(※1) ・売却した年の1月1日時点で所有期間10年超のマイホームを売却し、一定期間内に新たなマイホームを取得した際、譲渡所得への課税を将来へ繰り延べできる
・上記2つの控除・特例とは併用できない

(※1)特定のマイホーム(居住用財産)を、2023年(令和5年)12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたとき

参考:
“No.3302 マイホームを売ったときの特例”. 国税庁
“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”. 国税庁
“個人住民税”. 東京都主税局
“No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例”. 国税庁. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

このような控除・特例を活用すれば、税負担をある程度抑えることができます。

3-2.取得費や譲渡費用を計上する

前述のとおり、譲渡所得は下記の式で算出できます。

譲渡所得=売却価格-(取得費-減価償却費+譲渡費用)

つまり、売却価格から差し引く取得費や譲渡費用の金額が大きくなれば、その分だけ譲渡所得を減らせるので、結果的に節税につながります。

取得費や譲渡費用に含まれる費用の例は、以下のとおりです。

<取得費>

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 設備費
  • 改良費
  • 搬入費
  • リフォーム費用
  • 建物の取り壊し費用
  • 立退料

<譲渡費用>

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 測量費
  • 建物の取り壊し費用
  • 立退料
  • 名義書換料

これらの費用をもれなく計上するためにも、不動産取引に関する収支はきちんと管理したいところです。

3-3.税率が下がるまで待つ

不動産を急いで売却する必要がなければ、税金が下がる時期まで待つのも一案です。所有期間が5年を超えると、長期譲渡所得になって税率が半分近くまで下がるので、数百万円単位で節税できるケースもあります。

また、所有期間が10年を超えると、前述の軽減税率の適用が受けられます。

3-4.ふるさと納税を活用する

ふるさと納税とは、自分の生まれ故郷やお気に入りの地域に寄附することで、寄附額から2,000円を差し引いた金額が所得税・住民税から控除される制度です。

また、寄附額の30%以内に相当する返礼品がもらえるのも嬉しいポイントです。返礼品は、その地域ならではの名産品の他、便利な日用品や家電製品などバラエティに富んでいます。

節税効果はもちろん、返礼品を受け取る楽しみもあり、トータルで考えて非常にお得な制度といえるでしょう。

参考:“よくわかる!ふるさと納税”. ふるさと納税ポータルサイト(総務省)

ふるさと納税については、「不動産売却後は「ふるさと納税」で節税!上限額をシミュレーションしよう」で詳しく解説しておりますので、ご覧ください。

まとめ

住民税は地方税の一種であり、自治体のさまざまな公共サービスの財源となる重要な税金です。非課税制度が適用される一部の世帯を除き、ほとんどの方に対して課税されます。

不動産売却で譲渡所得が発生した場合、翌年の住民税が増える可能性があるため、税金の仕組みをあらかじめ把握しておくことが大切です。

また、不動産売却に関する控除・特例を活用したり、取得費や譲渡費用をしっかり計上したりすれば、住民税の負担軽減につながります。

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不動産の査定価格には、数百万円以上の差が出ることもあるため、複数社の査定を慎重に検討しましょう。