媒介契約の費用はいくら?相場・違約金・売れない場合は?

媒介契約 費用

不動産売却の際に仲介会社と結ぶ契約を、「媒介契約」と呼びます。この媒介契約から生じうる様々な費用については、売却時の基礎知識として不動産売却の流れと併せて理解しておくことが大切です。

不動産売却を円滑に進めたい方は、ぜひ最後までおつきあいいただき、しっかり準備をしてください。

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この記事の監修者
秋山 芳生
家計簿アプリマネーフォワードMEの元事業責任者。
複数のベンチャー企業での上場経験を通じて資産構築をしFIREを達成。現在はFPとして講演・執筆・面談を行う傍らYouTube(チャンネル登録2万人以上)で情報発信するなどマルチに活動をしている。
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1.仲介手数料の発生要件

媒介契約から発生する主な費用は、「仲介手数料」です。

仲介手数料とは、売買を成立させた不動産会社が受け取ることのできる報酬のことを指し、法律上は「媒介報酬」と呼ばれます。

仲介手数料は、一定の要件を満たさないと不動産会社に請求権が発生しないことになっている点が特徴です。

媒介報酬の発生要件は、以下の3つの要件をすべて満たすことが必要となります。

【媒介報酬請求権の3要件】

  1. 不動産会社と依頼者との間で媒介契約が成立していること
  2. その契約に基づき不動産会社が行う媒介行為が存在すること
  3. その媒介行為により売買契約等が有効に成立すること

1つ目は、「不動産会社と依頼者との間で媒介契約が成立している」という要件です。

具体的には、売主と不動産会社との間で書面によって媒介契約書を締結しておく必要があります。

2つ目は、「媒介契約に基づき不動産会社が行う媒介行為が存在する」というものです。

具体的には、不動産会社が売買契約成立に向けて現地案内や物件・権利関係の調査・説明、代金額その他契約条件の調整等に尽力している行為が必要となります。

3つ目は、「媒介行為により売買契約等が有効に成立する」という要件です。

売主と買主との間で売買契約が成立しない限り、3つ目の要件を満たすことはできないため、つまり仲介手数料は「成功報酬型」の手数料であるということです。

成功報酬ということは、例えば媒介契約を締結しても、着手金や前金といった費用は発生しないことになります。

仲介手数料、これは不動産を売る際には避けては通れない費用ですね。成功報酬型であるため、実際に売買契約が成立した時のみ発生する点は、売主さんにとっても安心材料の一つです。

ですので、「着手金や前金といった費用は発生しない」ということを覚えておきましょう!

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

2.売れなかったときの費用

媒介契約を締結しても、結局売れなかったときは、費用は発生しないこととなっています。

「売れなかったとき」というのは、売買契約に至らなかったということであり、不動産会社には媒介報酬請求権の3要件が成立していないという状況です。

そのため、売れなかったときには不動産会社に仲介手数料の請求権は発生しないことから、仲介手数料は生じないことになります。

また、成功報酬である仲介手数料は、支払いのタイミングにも影響しています。

不動産の売却では、売買契約から引渡まで1ヶ月程度の時間を空けることが一般的です。

売却の流れ

媒介報酬請求権の3要件は、売買契約の締結時点で成立しているとされています。

そのため、仮に不動産会社が売買契約時点に100%の仲介手数料を売主に請求してきても、法律上の問題はありません。

ただし、不動産の売却は最後の引渡が重要であり、引渡までは不動産会社の協力を得なければならない部分が多く残されています。

不動産会社には引渡時まで緊張感を持って協力してもらう必要があることから、仲介手数料の半額分は引渡時まで支払いを留保することが一般的です。

よって、仲介手数料の支払いは、商習慣で売買契約締結時に50%、引渡時に50%となっています。

3.仲介手数料の計算方法

では、「仲介手数料」とはいくらくらい必要となるのでしょうか?

本章では、「仲介手数料の計算方法」について、以下の3点を解説します。

  1. 仲介手数料の上限額
  2. 速算式の理由
  3. 仲介手数料の相場

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

3-1.仲介手数料の上限額

仲介手数料は、不動産会社が受領できる上限額が決まっています。

仲介手数料は取引額によって計算方法が異なり、その計算方法か下表の通りです。

取引額 仲介手数料(別途消費税)
200万円以下 取引額 × 5%
200万円超から400万円以下 取引額 × 4% + 2万円
400万円超 取引額 × 3% + 6万円

仲介手数料には別途消費税が発生します。

例えば、売却金額が5,000万円の場合、400万円超の取引となるため、仲介手数料の上限額は以下の通りです。

仲介手数料 = 取引額 × 3% + 6万円
      = 5,000万円 × 3% + 6万円
      = 150万円 + 6万円
      = 156万円

仲介手数料には消費税が発生します。
税込の仲介手数料は以下の通りです。

税込仲介手数料 = 仲介手数料 × 110%
        = 156万円 × 110%
        = 171.6万円

3-2.速算式の理由

仲介手数料の求め方である「取引額×3%+6万円」や「取引額×4%+2万円」といった計算方法は、速算式と呼ばれます。

速算式に「+6万円」や「+2万円」といった端数が出てくる理由は、仲介手数料の報酬限度額は、国土交通省の告示によって以下のように定められているからです。

【仲介手数料の上限額の規定】

  1. 取引額が200万円以下の場合は取引額の5%
  2. 取引額が200万円超から400万円以下の場合は取引額の4%
  3. 取引額が400万円超の場合は取引額の3%
  4. 媒介報酬は上記の「1.」~「3.」の合計金額以内とする。

ポイントは、「上記の「1.」~「3.」の合計金額以内」という部分です。

国土交通省の告示を縦軸に料率、横軸に取引額として図示すると、下図のように表現できます。

まず、国土交通省の告示では、取引額が200万円以下の場合は取引額の5%と定めていることから、取引額が200万円以下の速算式も「取引額×5%」となります。

次に、取引額が200万円超から400万円以下のケースを考えます。

国土交通省の告示に従うと、上限額は「取引額が200万円以下の場合は取引額の5%」と「取引額が200万円超から400万円以下の場合は取引額の4%」の合計額ということです。

200万円超から400万円以下のケースでは、取引額を「X万円」とした場合、下図の図のAとBの面積の合計額となります。

Aの部分の面積は、横軸がX万円、縦軸が4%であることから、「X万円×4%」です。

Bの部分は、横軸が200万円、縦軸が1%(=5%‐4%)であることから、「2万円(=200万円×1%)」となります。

AとBの面積の合計額であることから、200万円超から400万円以下の場合には速算式が「取引額(X万円)×4%+2万円」となるということです。

同様の考え方で、400万円超の取引を見てみます。

400万円超の場合は、200万円超から400万円以下の部分にさらに「取引額の3%」の部分が加わります。
図で表すと、下図のAとB、Cの合計面積が仲介手数料の上限額です。

Aの部分は、横軸がX万円、縦軸が3%であることから、「X万円×3%」です。

Bの部分は、横軸が200万円、縦軸が2%(=5%‐3%)であることから、「4万円(=200万円×2%)」となります。

Cの部分は、横軸が200万円、縦軸が1%(=4%‐3%)であることから、「2万円(=200万円×1%)」です。

Bは4万円、Cは2万円であるため、BとCの合計は6万円となります。

Aは「X万円×3%」であるため、AとBとCの合計面積は、は「取引額(X万円)×3%+6万円」ということです。

3-3.仲介手数料の相場

仲介手数料は上限額で請求されることが一般的であるため、上限額がそのまま仲介手数料の相場となっています。

不動産の売却価格に関しては、統計的な平均額があるため、取引額から仲介手数料の相場をある程度推測することは可能です。

主要都府県の平均価格より計算した仲介手数料の相場(上限額)は以下のようになります。

都道府県 マンション 戸建て
平均価格 仲介手数料 平均価格 仲介手数料
東京都 4,807万円 150万円 5,061万円 158万円
神奈川県 3,294万円 105万円 3,711万円 117万円
神奈川県 3,294万円 105万円 3,711万円 117万円
埼玉県 2,619万円 85万円 2,446万円 79万円
千葉県 2,436万円 79万円 2,290万円 75万円
愛知県 2,230万円 73万円 2,860万円 92万円
大阪府 2,848万円 91万円 1,986万円 66万円
兵庫県 2,381万円 77万円 2,371万円 77万円
福岡県 2,159万円 71万円 1,941万円 64万円

仲介手数料は「平均価格×3%+6万円」筆者が算出

出典:“2021(令和3)年10月度 2021(令和3)年11月度”. 公益財団法人東日本不動産流通機構をもとに、HOME4Uが独自に作成

都市部の場合、ほとんどの物件の取引額が「400万円超」となるため、仲介手数料は「取引額×3%+6万円」の速算式によって計算されます。

仲介手数料の相場は売却の平均価格が高い東京都が最も高くなっており、150万円を超える水準となっています。

仲介手数料の計算方法は、売却を考える上で非常に重要なポイントです。上限が法律で定められているとはいえ、実際にいくらかかるのかは、物件の価格によって変わってきます。

計算式を知っておくことで、予想外の費用に驚くこともなくなりますし、費用の準備もしやすくなりますね。

また手数料を取って良い最大値で支払わないといけないわけではないので、手数料の交渉などを行ってコストをおさえる努力も重要です。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

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4.仲介手数料以外の費用

不動産を売却する際、仲介手数料以外にも費用がかかるケースがあります。

本章では、「仲介手数料以外の費用」について、以下の2点を解説します。

  1. 特別依頼に係る費用
  2. 低廉な物件の現地調査等の費用

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

4-1.特別依頼に係る費用

仲介手数料は上限額が決まっていますが、売主が特別な依頼をした場合には、不動産会社は上限額を超えて費用を請求できるようになっています。

このような費用のことを、「特別依頼に係る費用」と呼んでいます。

特別依頼に係る費用としては、例えば「特別に依頼した広告の料金」や「遠隔地への出張旅費」等が挙げられます。

「広告の料金」と聞くと「チラシをお願いしたら費用が発生するの?」と心配になる方がいらっしゃるかもしれませんが、特別に依頼した広告の料金とは、テレビコマーシャルのような法外な要求が対象です。

不動産会社が通常行うチラシやインタネット広告費用は、特別依頼に係る費用には該当しないこととなっています。

4-2.低廉な物件の現地調査等の費用

取引額が400万円以下となる不動産については、不動産会社は媒介報酬に加えて現地調査等の費用を請求することができます。

ただし、現地調査等の費用は、仲介手数料と合計して18万円までが請求できる額となっています。

不動産会社が受領できる手数料 = 仲介手数料 + 現地調査等の費用 <= 18万円

元々、仲介手数料は400万円のときは18万円(=400万円×4%+2万円)となっており、この18万円が現地調査等の費用を加えたときの上限額の基準となっています。

5.媒介契約の解除で発生する費用

媒介契約の解除で発生する費用

媒介契約の契約期間は、一般的には3ヶ月です。

契約期間内に売主の一方的な都合によって契約解除を行うと、不動産会社は契約の履行のために要した費用を請求できることになっています。

履行のために要した費用とは、具体的には以下のような費用です。

  • 現地調査費用:交通費、写真代
  • 権利関係調査費用:交通費、謄本代
  • 販売活動費用:新聞・雑誌の広告費、通信費、現地案内交通費
  • 契約交渉費用:交通費

ただし、不動産会社が請求できる履行のために要した費用は、約定報酬額を超えることができないという規定となっています。

約定報酬とは、媒介契約で定めた仲介手数料のことです。

つまり、一方的に契約を解除した場合、請求される金額は最大でも仲介手数料が上限ということになります。

履行のために要した費用を請求されないようにするには、契約期間満了時まで契約を解除しないことが最も確実です。

媒介契約は、最長でも3ヶ月であり、自動更新されることはありません。

仮に、依頼した不動産会社に不満がある場合でも、3ヶ月を過ぎたら費用を請求されることなく契約を解除することができます。

不動産が売れず、媒介契約を解除するときにも、費用が発生することがあります。契約期間内に解除する場合は特に注意が必要です。

成果報酬であったとしても、不動産会社がこれまでにかけた広告費などの費用を請求されることもあります。

契約を解除する前には、その条件をしっかりと確認しておくことが大切です。契約を結ぶ際には、解除条件についても、しっかりと話し合い、納得のいく契約を心がけましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

6.媒介契約の種類別にみる違約金の違い

「媒介契約」には、実は3つの種類があるため、種類によって「違約金」にも違いがあります。

この章では、媒介契約の種類別にみる違約金の違いについて解説します。

媒介契約には、「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3種類があります。

大きく分けると、「一般媒介契約」と「専任媒介契約または専属専任媒介契約」の2つに分かれます。

一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約です。

それに対して、専任媒介契約または専属専任媒介契約は、1社にしか仲介を依頼できない契約となります。

専任媒介契約または専属専任媒介契約の違いは、自己発見取引ができるかどうかです。

自己発見取引とは、売主が自分で買主を見つけてくる行為のことを指します。

例えば、知人に買ってくれそうな方を紹介してもらったり、今のご時世だとSNSを利用して自分で見つけられることがあるかもしれませんが、それが自己発見取引です。

専任媒介契約と専属専任媒介契約では、1社にしか仲介を依頼できないため、契約期間中に売主が他社に仲介を依頼してしまうと契約違反となります。

つまり、専任媒介契約や専属専任媒介契約で他社に重ねて依頼したときは、違約金の請求対象です。

次に、専属専任媒介契約では売主が自己発見取引を行ってしまうと、契約違反となります。

つまり、専属専任媒介契約で自己発見取引を行うことも違約金の請求対象です。

さらに、一般媒介には他に依頼する不動産会社名を明らかにする「明示型」と、他に依頼する不動産会社名は明らかにしなくても良い「非明示型」の2種類があります。

明示型を選択した場合、他に依頼する不動産会社名を明らかにせずに他社へ仲介を依頼した場合は、契約違反となります。

つまり、一般媒介の明示型で他社を明示しなかったときは、違約金の請求対象です。

媒介契約の種類と違約金が請求されるケースを示すと、下表のようになります。

特徴 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
他業者への依頼 重ねて依頼ができる 重ねての依頼ができない 重ねての依頼ができない
自己発見取引 認められる 認められる 違約金が請求される
他業者によって成約した場合 明示型で明示していない不動産会社によって成約した場合は違約金が請求される 違約金が請求される 違約金が請求される

一般媒介の明示型で他社を明示しなかったときの違約金は、履行のために要した費用が請求されることが一般的です。

不動産会社が請求できる履行のために要した費用は、約定報酬額が上限となっています。

また、専任媒介契約と専属専任媒介契約で生じる違約金は、約定報酬額相当とされています。

つまり、専任媒介契約や専属専任媒介契約で契約違反をしてしまった場合には、仲介手数料と同額の違約金を請求されてしまうということです。

媒介契約の種類によって、違約金の取り扱いに違いがあるのは、知っておくべき大切なポイントです。

特に専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶ場合は、他社に依頼することができない、または自己発見取引が制限されるなど、注意が必要です。

契約を結ぶ前に、自分の状況に合った契約を不動産会社と選ぶことが、後悔しないための第一歩です。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

まとめ

いかがでしたか。

「仲介手数料」は成功報酬であるため、買主との売買契約が締結できた時点で発生します。

仲介手数料以外に発生する可能性のある費用としては、「特別依頼に係る費用」や「低廉な物件の現地調査等の費用」が挙げられます。

媒介契約では、契約を一方的に解除すると、不動産会社から契約を履行するために要した費用を請求される可能性があるので気をつけてください。

売主が契約に違反した場合には、違約金を請求されることもあります。

本記事で紹介した事柄を念頭に置きながら、売却の準備を進めていただければ幸いです。

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不動産を売却する際には、仲介手数料やその他の費用がどのように発生するのか、事前に知っておくことが大切です。

特に、成功報酬型の仲介手数料は、売買契約が成立した時点でのみ発生するため、売却がうまくいかなかった場合には費用がかからない点は安心材料の一つです。着手金や前金といった費用は発生しない、ということを覚えておいてくださいね!

一方で、契約解除や特別な依頼による追加費用が発生や、媒介契約の種類による違約金の取り扱いの違いなども、注意が必要なポイントです。このような知識を持っておくことで、不動産売却におけるトラブルを避けることができます。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生