相続した土地を売却したら税金はいくら?節税方法や特例を解説

相続した土地の売却では、大きな税金が生じてしまうケースが見受けられます。
引き継いだ所有期間が5年超で、土地の取得費がわからない場合には、売却価格の2割弱程度の税金が発生することがよくあるのです。

ただし、節税方法が全く存在しないわけではなく、条件によっては相続した土地の売却でも十分な節税をすることは可能です。

そこでこの記事では、「相続した土地の売却の税金」や「節税方法」について、わかりやすく解説したいと思います。

  • 相続した土地の売却で生じる税金の種類
  • 譲渡所得と税率
  • 税金の具体的計算例
  • 節税方法

このようなことがご理解いただけるようになりますので、ぜひ最後までおつきあいいただき、上手な節税に繋げてください。

「土地を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格”を見つけましょう
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます
この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.相続した土地の売却で生じる税金の種類

相続した土地の売却で生じる税金の種類は、下表の通りです。

税金の種類 内容
相続登記の登録免許税 相続した土地を売却するには、名義変更が必要です。
相続を原因とする名義変更の登録免許税は以下の式で求められます。
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
印紙税 土地の売却で作成する売買契約書は、印紙を貼らなければならない課税文書です。
印紙税は売買契約書に記載する金額によって税額が変わります。
売買代金が「1,000万円超5,000万円以下」なら1万円、「5,000万円超1億円以下」なら3万円です。
所得税 土地の売却によって所得が生じると所得税が発生します。
住民税 土地の売却によって所得が生じると売却した翌年に住民税が発生します。
復興特別所得税 平成25年分の所得税から適用されている震災復興の財源確保のために設けられている税金のことです。
所得税に2.1%を乗じて求められます。
仲介手数料等に伴う消費税 土地の売却では、仲介手数料や測量費が生じた場合には、その支払いに対して消費税が生じます。

2.譲渡所得と税率

譲渡所得とは、個人が不動産を売却したときに得られる所得のことです。
土地を売却した場合、買った時よりも高く売れて譲渡所得がプラスになると税金が発生しますし、まったく高く売れなくて譲渡所得がマイナスになれば税金は発生しないことになります。

譲渡所得の求め方は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1譲渡価額とは売却価額です。
※2取得費とは、土地については購入額になります。
※3譲渡費用は、仲介手数料や印紙税など、売却に要した費用のことを指します。

取得費は土地の購入額のことですが、相続した土地では取得費がわからないケースも多いです。
取得費が不明な場合には、概算取得費と呼ばれるものを用います。
概算取得費は「譲渡価額の5%」です。

譲渡所得が発生した場合、税金は譲渡所得に税率を乗じて求められます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は、所有期間によって2種類存在します。
売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」と呼ばれます。

譲渡所得と税率

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

相続した土地の売却では、「取得費」も「所有期間」も親の取得費と所有期間を引き継ぐという点がポイントです。

親の所有期間が5年超であれば、相続直後に売却しても長期譲渡所得の税率が適用されます。

3.税金の具体的計算例

相続した土地の売却では、取得費が不明である場合が多いです。
ここでは、理解を深めていただくために、取得費が不明の場合の税金の計算例を紹介します。

(条件)
譲渡価額:4,000万円
取得費:不明
譲渡費用:127万円
所有期間:5年超(長期譲渡所得)

(計算例)

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 4,000万円×5% - 127万円
     = 4,000万円 - 200万円 - 127万円
     = 3,673万円

所得税 = 譲渡所得 × 税率
    = 3,673万円 × 15%
    ≒ 551万円

復興特別所得税 = 所得税 × 税率
        = 551万円 × 2.1%
        ≒ 11.6万円

住民税 = 譲渡所得 × 税率
    = 3,673万円 × 5%
    ≒ 183.7万円

税額 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
   ≒ 551万円 + 11.6万円 + 183.7万円
   ≒ 746.3万円

上記の例では、4,000万円に対して746.3万円(約18%)の税金が発生しました。
取得費が不明で長期譲渡所得となる土地の売却は、売却価格の2割弱の税金が生じることが多いです。

この記事をお読みの方の中には、これから不動産を売却しようとお考えの方が多いと思います。
不動産をできるだけ高くスムーズに売りたい方は、ぜひ「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」を使ってみてください。

不動産売却 HOME4U」は、売りたい物件の所在地や広さなど簡単な項目を入力するだけで、適した不動産会社をシステムが自動でピックアップしてくれます。
運営元であるNTTデータグループが優良な不動産会社をあらかじめ厳選して登録しているので、安心して利用できます。

査定額は不動産会社によりバラつきが出ますが、「不動産売却 HOME4U」は最大6社から査定額を受け取れるので、どの会社が高く売ってくれそうか、しっかり比べることが可能です。

不動産売却 HOME4U」で、ぜひ優良な不動産会社を見つけ、売却成功への足掛かりとしてください。

4.相続した土地の売却の基本的な節税方法

相続した土地の売却の基本的な節税方法この章ではお待ちかねの「節税方法」について紹介していきます。
相続した土地の売却の基本的な節税方法は、以下の2点です。

  1. 取得費を判明させる
  2. 譲渡費用をしっかり計上する

それではひとつずつ見ていきましょう。

4-1.取得費を判明させる

概算取得費を用いてしまうと譲渡所得が大きくなってしまうため、取得費を判明させることが最大の節税策です。
購入時の売買契約書がない場合、以下のような資料を取得費の参考とすることができます。

【取得費の参考になる資料】

  • 分譲地の場合、当時の販売ディベロッパーから購入当時の売買契約書の写しをもらう
  • 当時仲介してくれた不動産会社や売主から購入当時の売買契約書の写しをもらう
  • 通帳の出金履歴から購入額を推測する
  • 住宅ローンの金銭消費貸借契約書から購入額を推測する
  • 抵当権設定額から購入額を推測する
  • 一般財団法人日本不動産研究所が公表している市街地価格指数から土地の取得費を算定する

購入時の売買契約書以外を取得費とする場合には、事前に必ず税務署に相談するようにしてください。

また、取得時の費用が判明している場合、一部の費用について取得費に加えることができます。
費用によって取得費を若干大きくすることができますので、節税に繋がります。

取得費に加えることができる費用は以下のような項目です。

  • 相続の際の不動産の登記費用(売却のために行った名義変更費用)
  • 取得時の仲介手数料
  • 取得時の売買契約書に貼付けした印紙代
  • 取得時の登録免許税
  • 取得時に司法書士へ支払った手数料
  • 取得時の不動産取得税
  • 取得に際して支払った立退料・移転料
  • 取得のための測量費
  • 取得のための建物の取り壊し費用
  • 購入時の整地、埋立て、地盛りの費用、下水道、擁壁の設置費用

該当するものがある場合には、ぜひ活用してください。

4-2.譲渡費用をしっかり計上する

譲渡費用をしっかり計上することも節税対策となります。
譲渡費用に計上できるものは、以下のような項目です。

  • 売却時の仲介手数料
  • 売買契約書の印紙代
  • 売却のために広告した場合の広告料
  • 売却のために測量した測量費
  • 売却のために鑑定をした場合の鑑定料
  • 売却のために借家人を立退かせるために支払った立ち退き料
  • 買主の登記費用を負担した場合はその負担額
  • 土地を売るために、その土地の上の建物を取り壊した場合、建物の取得費と取り壊し費用
  • すでに売買契約を締結していたが、さらに有利な条件で他に売却するため、その契約を解除した場合の違約金
  • 売却のために行った建物の補修費
  • 買主との交渉のために要した交通費、通信費等
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

ただし、以下の費用は譲渡費用に加えることができないものとなっています。

【譲渡費用として認められない支出】

  • 抵当権抹消費用
  • 遺産分割のために要した支出
  • 移転先家屋の購入費、修繕費、移転費用等
  • 譲渡資産の維持管理費等
  • 引越代

5.相続した土地の売却で使える特例

相続した土地の売却で使える特例 書類記入イメージ4章で紹介した節税方法以外にも、売却に際して利用できる特例もあります。
相続した土地の売却で使える特例は以下の6点です。

  1. 取得費加算の特例
  2. 相続空き家の3,000万円特別控除
  3. 低未利用土地等の100万円特別控除
  4. ふるさと納税
  5. 平成21年及び平成22年に取得した土地の1,000万円特別控除
  6. 農地を売った場合の特別控除

それではひとつずつ見ていきましょう。

5-1.取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続税を納税した人が土地を売却した場合に利用できる特例です。
相続税が発生しなかった人は多くいると思われますが、相続税が課税されなかった人には利用できない特例になります。

取得費加算の特例を利用した場合の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 取得費に加算する相続税額 - 譲渡費用

取得費に加算する相続税額の計算式は以下のようになります。

その者の相続税額= その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額
その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額

取得費加算の特例を適用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
  2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

ポイントとしては、「相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡」、つまり、「相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内」に売却することが必要です。

【国税庁HP】

5-2.相続空き家の3,000万円特別控除

相続した不動産のうち、一定の要件を満たす空き家は取り壊して「土地」として売却しても相続空き家の3,000万円特別控除を利用することができます。

相続空き家の3,000万円特別控除を適用すると、譲渡所得から3,000万円を控除することができます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

具体的には、「昭和56年5月31日以前に建築された家屋」であれば、解体して土地として売却すると3,000万円特別控除を利用できます。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続空き家の3,000万円特別控除の主な要件は以下の通りです。

  1. 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
  2. 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  3. 区分所有建築物(マンション等)以外の家屋であること
  4. 相続の開始直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
  5. 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
  6. 家屋を取り壊さずに売る場合、売却時において、その家屋が現行の耐震基準を満たしていること
  7. 相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

土地売却で相続空き家の3,000万円特別控除を利用するには、元々親が住んでいた空き家が存在していることが必要です。

一定の要件を満たした相続した空き家を、売主である相続人が取り壊すと、土地で売却しても利用できるという特例になります。

売主が支払った解体費用は譲渡費用に加えることができますので、税金はさらに節税することができます。

【国税庁HP】

5-3.低未利用土地等の100万円特別控除

相続した土地か否かに関わらず、一定の要件を満たす不動産の売却価格が500万円以下であれば、低未利用土地等の100万円特別控除が利用できます。

低未利用土地等の100万円特別控除を適用した場合の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 100万円

低未利用土地等の100万円特別控除の主な要件は以下の通りです。

  1. 譲渡した者が個人であること。
  2. 譲渡の年の1月1日において、所有期間が5年を超えること。
  3. 譲渡価額の合計が500万円以内であること。
  4. 譲渡した物件が都市計画区域内にあること。
  5. 譲渡した物件が「低未利用土地等であること」および「譲渡後の土地等の利用」について市区町村長の確認がなされたものであること。

ポイントは、「譲渡価額の合計が500万円以内であること」と「譲渡した物件が都市計画区域内にあること」の2点です。

都市計画区域とは都市計画法で指定されている区域のことであり、ある程度人口をかかえているエリアであれば指定されています。

500万円以内という価格以外の要件は比較的緩いため、低廉な土地を売却する場合には、ぜひ検討してみてください。

【国税庁HP】

5-4.ふるさと納税

相続した土地か否かに関わらず、ふるさと納税も節税方法の一つとなります。
ふるさと納税は「納税」という言葉が付いていますが、実際には寄付行為であり、応援したい自治体に寄付をすることで寄付金控除を受ける仕組みです。

ふるさと納税は、ふるさと納税控除上限額内であれば寄付合計額から自己負担(2,000円)を控除した額が住民税から控除および所得税から還付される制度となります。

ふるさと納税は、返礼品ももらえて税金控除も受けられる制度であるため、お得です。
土地の売却によって所得が増えれば、ふるさと納税控除上限額も増えますので、普段はもらえない返礼品を楽しむことができます。

5-5.平成21年及び平成22年に取得した土地の1,000万円特別控除

相続した土地か否かに関わらず、要件を満たしていれば平成21年及び平成22年に取得した土地の1,000万円特別控除を利用できます。

平成21年及び平成22年に取得した土地の1,000万円特別控除を適用した場合の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 1,000万円

親がたまたま平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地を取得していれば、特例を利用することができます。

比較的最近取得していた土地の場合、念のため取得日が要件の範囲内でないかどうかを確認するようにしましょう。

【国税庁HP】

5-6.農地を売った場合の特別控除

相続した土地が農地であった場合、一定の要件を満たす農地を売った場合には特別控除の制度があります。

特別控除の制度を利用した場合の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 ― 特別控除額

特別控除額には3種類あり、それぞれの金額と適用要件は下表のようになります。

譲渡の目的 特別控除額 適用要件
農地利用 800万円
  • 農用地区域内の農地を農用地利用集積計画又は農業委員会のあっせん等により譲渡した場合
  • 農用地区域内の農地を農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体に譲渡した場合
1,500万円
  • 農用地区域内の農地等を農業経営基盤強化促進法の買入協議により農地中間管理機構に譲渡した場合
転用 5,000万円
  • 農地が土地収用法等により買い取られる場合

【農林水産省HP】

まとめ

いかがでしたか。
相続した土地を売却したときの税金や節税方法について解説してきました。

相続した土地を売却すると、「相続登記の登録免許税」や「所得税」、「住民税」等の税金が発生しますが、「取得費を判明させる」、「譲渡費用をしっかり計上する」といったことが節税の基本となります。

また、特例もありますので、売却予定の土地で利用できそうなものがあれば、賢く使って節税するようにしましょう。

皆さんの売却活動と節税がうまく行くことを願っています。

土地を手放さずに活用を検討したい方はこちら!

【完全無料】土地活用プラン診断を行う

相続した土地を今すぐ売却したいと思った場合は、「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」をご利用ください。