更新日:2025.01.07 不動産売却の基礎講座, 不動産売却のノウハウ 使用貸借とは?不動産の事例や賃貸借との違い、注意点について解説 不動産を借りる際の選択肢の一つに「使用貸借」があります。使用貸借とはモノを無償で貸し借りする行為、あるいはそれに準ずる契約です。有償の賃貸借とは法的効力や権利関係が異なるため、事前に把握しておく必要があります。 本記事では、使用貸借の概要や不動産での事例、賃貸借の法的効力との違い、注意点について解説します。 この記事を読むと分かること 使用貸借の基礎知識 不動産における使用貸借の事例 使用貸借と賃貸借の法的効力の違い 「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格(※)”を見つけましょう※依頼する6社の中での最高価格 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます 完全無料一括査定依頼をスタート Contents1.使用貸借とは?2.不動産における使用貸借の事例3.不動産の使用貸借の法的効力は弱い?4.不動産の使用貸借に関する注意点まとめ 1.使用貸借とは? 使用貸借とは、モノを誰かに無償で貸し付ける、あるいは誰かから借りる行為(契約)を指します。賃料を受け取ってモノを貸し借りする「賃貸借」とは対照的なものです。 動産・不動産の違いは問わず、賃料のやり取りがあるかどうかが基準です。例えば、借主が「家具を修理するから工具を貸してほしい」と依頼し、貸主がそれを承諾した場合、使用貸借契約を締結したことになります。 使用貸借は、借主・貸主の信頼関係に基づいて行なわれるため、親族間や友人間、会社と従業員との間で契約を締結することが大半です。そのため、契約書を作成せず、口頭のみで契約を交わすケースも少なくありません。 契約終了後は、借主は借りたモノを貸主へと返還する必要があります。お金や食べ物のように「使ったらまったく同じものを返せなくなるモノ」の場合、使用貸借ではなく消費貸借に該当します。 なお、不動産の使用貸借は無償という性質上、借主の権利(使用借権)が弱くなるため、借地借家法は適用されません。 参考:“借地借家法”. e-Gov法令検索 【無料】一括査定依頼スタート 2.不動産における使用貸借の事例 不動産における使用貸借の代表的な事例は、親の土地を借りて子どもが家を建てるケースです。親の代わりに子どもが土地の固定資産税を納めていても、土地の賃料である地代を払っていなければ、使用貸借の範疇に含まれます。 無償で他者の不動産を使うという性質上、財産の贈与にも見えますが、使用貸借として扱われ、贈与税がかかることはありません。 一方、子どもが親に対して地代を支払うと賃貸借になるため、借主である子どもは借地借家法に基づく「借地権」を取得することになります。借地権とは、地代を支払って借りた土地(借地)に建物を建てる権利のことです。ただし、親子間の使用貸借において、権利金(不動産を譲渡する際に、賃借人が地主に支払う金銭)のやりとりが発生するケースはまれです。 しかし、権利金なしで地代だけを納めると「権利金相当額が贈与された」と見なされて、贈与税が課税される可能性があります。 また、賃貸借をしていた土地を親から相続した場合、その土地の相続税評価額が減額されますが、使用貸借の場合は更地扱いとなり、逆に相続税評価額が高くなってしまいます。結果的に納めるべき税金も増えるため、メリットばかりではない点に注意しましょう。 参考:“借地借家法”. e-Gov法令検索 借地権とは?種類や特徴、メリット・デメリットをわかりやすく紹介 借地権とは、建物を建てるために地代を払って他人から土地を借りる権利の 3.不動産の使用貸借の法的効力は弱い? 前述のとおり、賃貸借契約で不動産を借りると、借主は借地権によって保護されます。一方、使用貸借契約に基づいて無償で不動産を借りる場合には、借地権のような強力な権利は取得できないため、借主の立場も弱くなってしまいます。 ここでは、不動産における使用貸借と賃貸借の法的効力の違いについて見ていきましょう。 3-1.契約の解除 使用貸借契約を貸主から解除できるケースは、以下のとおりです。 使用貸借契約の解除要件(貸主) 内容 存続期間の満了 事前に期間を定めていた場合、期間満了に伴って契約は終了する 使用および収益の終了 期間を定めず使用貸借の目的を定めていた場合、その目的に沿って使用・収益を終えると契約は終了する 使用および収益に足りる期間の経過 期間を定めてはいないものの、使用・収益をするのに足りる期間が経過すれば、契約は終了する 存続期間・目的を定めていない 期間および目的を定めなかった場合、貸主からいつでも契約を解除できる なお、借主はいつでも自分から使用貸借契約を解除できるものの、何の制限もなしに解除されると、貸主が困ってしまうことが考えられます。そのため、契約締結時に「契約解除○日前に通知する」など、特約を定めておくと安心です。 一方、賃貸借契約は「家賃の滞納」や「物件の転貸(又貸し)」など、正当な事由がないと貸主から解除できません。なお、借主は使用貸借と同じく、いつでも契約を解除できます。 3-2.当事者が亡くなった際の対応 使用貸借では、借主が亡くなった時点で原則的に契約終了となります。ただし、あらかじめ特約を定めるか、借主の相続人が引き続き使用することに貸主が異議を唱えなければ、例外的に契約を継続できるため、万が一の事態にも対応可能です。 一方、賃貸借では借主が亡くなっても、相続人が新たな借主となるため、契約も継続できます。例えば、夫名義で借りた土地に家を建てていた場合、夫が亡くなっても妻が借主の立場を相続すれば、妻や子どもはそのまま同じ家に住み続けることが可能です。 また、貸主が亡くなった際は、使用貸借・賃貸借のどちらも相続人が新たな貸主となり、契約が継続されます。 3-3.原状回復義務 2020年(令和4年)4月施行の改正民法では、使用貸借における原状回復義務が明文化されました。これに伴い、借主がモノを受け取ったあとに何らかの損傷が生じた場合は、原状回復してから貸主へ返還しなければならなくなりました。 ただし、借主に帰責性(責められる理由や落ち度)が認められない場合は、原状回復の対象外となります。 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 引用:“民法 第五百九十九条3項”. e-Gov法令検索 また、通常の使用・収益に伴って生じた損耗や経年劣化については、改正民法でも明文化されていません。そのため、借主・貸主のどちらが負担すべきかという点は、契約内容や個々の解釈によって決定されます。 賃貸借も同じく、借主は原状回復義務を負います。賃貸物件から退去する際は、入居時の状態に戻してから返還しなければなりません。 しかし、賃貸借の通常損耗や経年劣化に関しては、その分を考慮した対価が賃料に最初から含まれていると判断されるため、原状回復の対象外と規定されています。 3-4.対抗要件 対抗要件とは、当事者間で成立した法律上の権利関係において、第三者に対して主張するための要件です。 使用貸借には、第三者への対抗要件がありません。例えば、借りていた物件が貸主から第三者へ売却・譲渡された場合、借主は地位を主張して物件の明け渡し請求を拒否できないということです。 ただし、明け渡し請求が不当だと認められるような特別な事情があれば、例外的に請求を退けられる可能性があります。 一方の賃貸借には、以下のような対抗要件があります。 借地上の建物の登記がある 借家に賃借権の登記がある 借家の引き渡しを受けている 上記のいずれかの要件を満たせば、借主は地位を主張できるため、物件を明け渡す必要はありません。 【無料】一括査定依頼スタート 3-5.使用貸借と賃貸借の違いまとめ 下記の表に、使用貸借と賃貸借の違いをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。 使用貸借 賃貸借 契約の成立 諾成契約(※) 諾成契約(※)ただし書面を要する場合がある 有償性 無償 有償 借主の権利 建物の使用収益 建物の使用収益 借主の義務 目的物の返還 目的物の返還、賃料の支払い 借地借家法の適用 × ○ 対抗要件 × ○ 当事者の死亡 借主の死亡:契約終了貸主の死亡:契約継続 借主の死亡:契約継続貸主の死亡:契約継続 (※)当事者の合意によってのみ成立する契約 4.不動産の使用貸借に関する注意点 使用貸借は口頭だけで契約することも可能ですが、のちに「言った・言わない」のトラブルを防ぐためには、多少面倒でも契約書を作成するのが無難です。 存続期間、目的、特約、トラブル時の対応などを書面に残しておけば、契約締結から時間が経っても、契約内容をきちんと確認・伝達できるようになります。親族間・友人間の貸し借りであっても、契約書を作っておきましょう。 また、親族に不動産を使用貸借する場合は、ほかの親族から事前に了承を得ることで、遺産相続にまつわるトラブルを予防できます。 そのほか、貸主から立ち退きを求められた際には、借主は立退料を受領したうえで退去し、紛争を避けるのも一案です。 まとめ 使用貸借とは、モノ(動産・不動産)を無償で貸し借りする行為(契約)です。賃料ではなく人間関係に基づいて行なわれるため、契約のほとんどは親族間や友人間などの親しい方同士で締結されています。 使用貸借については、賃貸借に比べると法的効力が弱くなること、契約の解除や原状回復義務にまつわる条件にも違いがあることを把握したうえで契約しましょう。 「使用貸借の相手がいない」「所有する不動産をすぐに現金化したい」といった理由で不動産売却をお考えの方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご利用ください。 「不動産売却 HOME4U」は、全国各地で高評価を得ている約2,500社の優良不動産会社と提携しており、最大6社を選んで一括で査定依頼ができます。不動産の査定価格には、数百万円もの差が生じる可能性もあるため、複数社の査定結果や対応を慎重に比較検討し、不動産売却の最良のパートナーを見つけてください。