更新日:2025.08.25 相続・贈与編, 専攻授業 - 相続, 税金・諸費用 法定相続人とは?範囲や順位、相続割合をわかりやすく解説 相続の手続き進めるうえで、まず押さえるべき出発点が「法定相続人」です。 この記事では、初めての相続で迷いがちな「誰が相続人か」「取り分はどのくらいか」「何から集めればよいか」を、民法と公的情報を元にわかりやすく整理しました。 【1分で分かる】この記事の内容 法定相続人とは法律で定められた遺産を相続する権利がある人 配偶者は常に相続人となり、子・親・兄弟姉妹の順で権利を持つ 法定相続分は誰が相続人になるかで割合が決まっている 相続人の確定には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要 遺言は法定相続より優先されるが、遺留分は保護される 一度の申し込みで 最大6 社に依頼 できる 売却したいけど何から始めたらいいかわからない方は 不動産売却のプロに相談しましょう! 大手から地元密着企業まで約2,500社参画 無料 売却のプロに相談する Contents1. 法定相続人とは?2. 法定相続人の範囲と順位3. 法定相続分の計算方法4. 法定相続人の確認方法と必要書類5. 「相続人がいない?」特殊ケースの相続ルール6. 遺言と遺留分7. よくある質問(FAQ)8. まとめ 1. 法定相続人とは? 法定相続人とは、民法で定められた、被相続人(亡くなった方)の遺産を相続する権利を持つ人のことです。 被相続人が遺言書を遺していない場合、この法定相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行って、誰がどの財産を相続するのかを決めるのが一般的です。 また、遺言書がある場合でも、法定相続人には最低限の遺産を相続できる「遺留分」という権利が保障されています。 (遺留分については6. 遺言と遺留分で解説します。) つまり、相続手続きを進める上で、まず誰が法定相続人なのかを正確に確定させることが、すべてのスタートラインとなります。 2. 法定相続人の範囲と順位 被相続人の配偶者、子、親、兄弟姉妹が法定相続人の範囲です。 これらの血族全員が実際の相続人になるのではなく、優先順位がより上位の血族が相続人となります。 配偶者は常に相続人 第1順位:子・孫(代襲相続を含む) 第2順位:親・祖父母 第3順位:兄弟姉妹・甥姪(代襲相続を含む) 以下で、それぞれ解説します。 2-1. 配偶者は常に相続人 被相続人の配偶者(夫または妻)は、常に法定相続人となります。後述する子や親、兄弟姉妹といった血族の相続人とは別の特別な立場にあり、必ず相続権を持ちます。 ただし、ここでいう配偶者は法律上の婚姻関係にある人に限られ、内縁関係のパートナーには相続権が認められていない点に注意が必要です。 2-2. 第1順位:子・孫(代襲相続を含む) 配偶者以外の親族には、相続人になれる順位が定められています。 最も順位が高いのが、被相続人の子です。子が複数いる場合は、全員が同じ順位の相続人となります。 実子だけでなく、養子や認知している子、婚姻関係にない女性との間に生まれた子も、法律上は同等に相続権を持ちます。 もし、相続が開始した時点(被相続人が亡くなった時点)で子がすでに亡くなっており、その子にさらに子(被相続人から見て孫)がいる場合は、孫が子に代わって相続人となります。これを代襲相続といいます。 2-3. 第2順位:親・祖父母 第1順位の相続人である子や孫が一人もいない場合、第2順位である被相続人の親(直系尊属)が相続人となります。 親(父母)がすでに亡くなっている場合は、祖父母が相続人となります。このように、上の世代へとさかのぼって相続権が移っていきます。 2-4. 第3順位:兄弟姉妹・甥姪 第1順位の子や孫、第2順位の親や祖父母が誰もいない場合に、初めて第3順位である被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。 兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子である甥や姪が代襲相続により相続人となります。ただし、孫への代襲相続とは異なり、甥や姪の子(被相続人から見て姪孫)への再代襲は認められていません。 “代襲相続とは?孫や甥姪が相続人になるケース” 代襲相続は、本来相続人となるはずだった子や兄弟姉妹が、以下の理由で相続権を失っている場合に発生します。 相続開始以前に死亡している 相続欠格(重大な不正行為など)に該当する 相続廃除(被相続人への虐待など)をされている 例えば、長男が父親より先に亡くなっていた場合、長男に子(父親から見て孫)がいれば、その孫が長男の代わりに相続人となります。これが代襲相続です。 この制度は、本来得られるはずだった相続への期待を保護し、世代間の公平を保つために設けられています。ただし、相続放棄をした場合は、その人は初めから相続人ではなかったとみなされるため、代襲相続は発生しません。 3. 法定相続分の計算方法 法定相続人が確定したら、次にそれぞれの相続人が受け取れる遺産の割合である「法定相続分」を確認します。これも民法で定められており、誰が相続人になるかの組み合わせによって割合が変わります。 法定相続分は、まず「配偶者が常に相続人になる」という原則と、血族相続人(子・親・兄弟姉妹)の順位を基に考えます。 配偶者がいる場合、残りの財産を血族相続人が受け取る形が基本です。 血族相続人が受け取る財産の割合は、誰が相続人になるかによって、以下のように決まっています。 子(第1順位)が相続人になる場合:全体の1/2を子の人数で分ける 親(第2順位)が相続人になる場合:全体の1/3を親の人数で分ける 兄弟姉妹(第3順位)が相続人になる場合:全体の1/4を兄弟姉妹の人数で分ける これらのルールをまとめた、相続人の組み合わせ別の基本的な割合は以下の通りです。 相続人の組み合わせ 配偶者 子 親 兄弟姉妹 配偶者と子 1/2 1/2 – – 配偶者と親 2/3 – 1/3 – 配偶者と兄弟姉妹 3/4 – – 1/4 配偶者のみ すべて – – – 子のみ – すべて – – 親のみ – – すべて – 兄弟姉妹のみ – – – すべて ※子、親、兄弟姉妹が複数いる場合は、定められた相続分をその人数で均等に分けます。 計算してみよう! 法定相続分の計算は勘違いが起きやすいポイントでもあるので、以下の事例で確認してみましょう。 【ケース1】配偶者+子2人:配偶者1/2、子の合計1/2 → 長男1/4、長女1/4 【ケース2】配偶者+母(父は死亡):配偶者2/3、母1/3 【ケース3】配偶者+兄・妹:配偶者3/4、兄弟姉妹合計1/4 → 兄1/8、妹1/8 【ケース4】子3人のみ(配偶者は既に死亡):子合計すべて → 各1/3 4. 法定相続人の確認方法と必要書類 法定相続人を法的に確定させるためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取り寄せて調査する必要があります。これにより、ご自身の知らない相続人の存在が明らかになることもあります。 この章では、相続人調査に必要な書類と、その手順について解説します。 戸籍謄本の種類と取得方法 相続人調査の手順と注意点 4-1. 戸籍謄本の種類と取得方法 相続人調査で必要となる主な戸籍は以下の通りです。 戸籍謄本(現在戸籍):現在の戸籍情報が記載されたもの 除籍謄本:結婚や死亡、転籍などにより、戸籍内の全員がいなくなった状態の戸籍 改製原戸籍謄本:法改正によって作り替えられる前の古い様式の戸籍 これらの戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得できます。遠方の場合は、郵送での請求も可能です。請求の際には、本人確認書類(運転免許証など)や、被相続人との関係を証明する書類(自身の戸籍謄本など)が必要になります。 4-2. 相続人調査の手順と注意点 先述の通り、法定相続人の把握には、被相続人の全ての戸籍をたどる必要があります。 具体的に、以下の手順で相続人を調査します。 被相続人の死亡時の本籍地で戸籍謄本(または除籍謄本)を取得する 取得した戸籍の内容を確認し、一つ前の本籍地を調べる 一つ前の本籍地の役所で、さらに前の戸籍を請求する 上記を繰り返し、出生時の戸籍までさかのぼる すべての戸籍から、配偶者、子の有無、親の情報を読み解き、相続人を確定させる 戸籍の収集と解読は非常に手間がかかり、慣れていないと時間がかかってしまうことも少なくありません。ご自身で進めるのが難しいと感じた場合は、司法書士や行政書士、弁護士といった専門家に依頼することもできます。 5. 「相続人がいない?」特殊ケースの相続ルール 相続には、相続人がいなかったり、相続を希望しない人がいたり、行方が分からない人がいたりと、通常とは異なる特殊なケースも存在します。 ここでは、そうしたイレギュラーなケースのルールについて解説します。 相続放棄した場合の扱い 相続人が一人もいない場合(特別縁故者・国庫帰属) 相続人が行方不明の場合の手続き 5-1. 相続放棄した場合の扱い 相続人が家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行うと、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。 例えば、第1順位の子全員が相続放棄をした場合、相続権は次の第2順位である親へと移ります。相続放棄は、借金などマイナスの財産が多い場合に選択されることが多い手続きです。 5-2. 相続人が一人もいない場合(特別縁故者・国庫帰属) 法定相続人が一人もいない、または全員が相続放棄をした場合、最終的に遺産は国のもの(国庫に帰属)となります。 ただし、被相続人と生計を同じくしていた人や、療養看護に努めた人など、特別な縁故があった「特別縁故者」が家庭裁判所に申し立て、認められれば、遺産の一部または全部を受け取れる場合があります。 5-3. 相続人が行方不明の場合の手続き 相続人の中に行方不明者がいる場合でも、その人を除いて遺産分割協議を進めることはできません。 この場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる必要があります。選任された管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加し、手続きを進めることになります。 “遺産分割協議がまとまらない場合” 相続人全員での話し合い(遺産分割協議)で合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、調停委員が間に入り、各相続人の主張を聞きながら、解決策を探っていきます。 もし調停でも合意が得られなければ、裁判所が判断を下す審判に移行します。審判では、裁判官が法令と証拠に基づいて遺産分割の方法を決定し、その内容は強制力を持ちます。 遺産分割がまとまらない場合の手続きの流れ 遺産分割協議:相続人全員で話し合い、合意形成を目指す 遺産分割調停:家庭裁判所に申し立て、調停委員が仲介 遺産分割審判:調停不成立の場合、裁判官が分割方法を決定 ここで注意が必要なのは、相続税の申告・納付期限です。期限は原則として「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」と定められており、遺産分割が長引いても延長はされません。 もし期限までに協議がまとまらない場合は、一度法定相続分で仮申告・納税を行い、その後に協議や審判で分割が確定した段階で修正申告や更正の請求を行う必要があります。 6. 遺言と遺留分 相続は原則として民法のルール(法定相続)に従いますが、被相続人が遺言書を残している場合には、遺言の内容が優先されます。これを「遺言相続」と呼びます。 ただし、遺言の内容が絶対というわけではありません。配偶者や子どもなど、一定の法定相続人には遺留分という最低限の取り分が法律で保障されており、この遺留分は遺言の内容よりも優先されます。 遺言がある場合の相続 遺留分とは? 遺留分の割合(具体例) 遺留分侵害額請求 6-1. 遺言がある場合の相続 被相続人が有効な遺言書を残していれば、相続はその遺言の内容に従います。たとえば「長男に自宅を相続させる」と書かれていれば、法定相続分とは異なっていても、その内容が基本的に優先されます。 このため「特定の財産を特定の人に残したい」「内縁の妻に財産を渡したい」など、法定相続では実現できない希望を叶えるために遺言書は非常に重要です。 6-2. 遺留分とは? 遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に保障された最低限の取り分のことです。遺言で自分の財産をすべて第三者に渡すと指定しても、配偶者や子には遺留分があり、その権利を侵害することはできません。 配偶者、子および直系尊属は遺留分を有する。 出典:e-Gov法令検索「民法1042条」. (参照2025-08-22) 6-3. 遺留分の割合(具体例) 遺留分は、法定相続分のうち一定割合です。家族構成によって次のように決まります。 遺留分の割合 相続人の組み合わせ 遺留分の割合 具体例 配偶者+子 全体の1/2 遺産6,000万円 → 遺留分3,000万円 配偶者のみ 全体の1/2 遺産4,000万円 → 遺留分2,000万円 子のみ 全体の1/2 遺産2,000万円 → 遺留分1,000万円 親のみ 全体の1/3 遺産3,000万円 → 遺留分1,000万円 兄弟姉妹のみ なし 遺留分請求不可 6-4. 遺留分侵害額請求 もし遺言によって遺留分が侵害されていた場合、相続人は遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)を行うことができます。これにより、侵害された分の金銭の支払いを他の相続人や受遺者に求められます。 遺留分を行使するには1年以内に請求する必要があります。期限を過ぎると権利が消滅するため注意が必要です。 7. よくある質問(FAQ) 最後に、法定相続人に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。 孫は法定相続人になる? 内縁の妻に相続権はある? 相続放棄した後の権利は? 遺言書がある場合の法定相続人の権利 Q 孫は法定相続人になる? A 通常、孫は法定相続人にはなりません。ただし、親である子(被相続人から見て)がすでに亡くなっている場合に、その子に代わって相続人となる「代襲相続」によって法定相続人になることがあります。 Q 内縁の妻に相続権はある? A 残念ながら、法律上の婚姻関係にない内縁の妻(事実婚のパートナー)には、法定相続人としての権利は認められていません。財産を遺したい場合は、生前に遺言書を作成しておく必要があります。 Q 相続放棄した後の権利は? A 家庭裁判所で相続放棄の手続きが受理されると、その人は初めから相続人ではなかったことになります。そのため、プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も一切引き継ぐ権利と義務がなくなります。 Q 遺言書がある場合の法定相続人の権利はどうなる? A 遺言書がある場合は、原則としてその内容が法定相続よりも優先されます。しかし、兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺言によっても侵害されない最低限の遺産の取り分「遺留分」を請求する権利が保障されています。 8. まとめ 今回は、相続の基本となる「法定相続人」について、その範囲や順位、相続分の計算方法、注意点などを解説しました。 配偶者は常に相続人 血族には順位があり、第1順位:子、第2順位:親、第3順位:兄弟姉妹 相続分は法律で定められた割合があり、相続人の組み合わせで決まる 相続人の確定には、出生から死亡までの戸籍謄本が必要 法定相続人を正確に確定させることは、円満な遺産分割協議を行うための、そして相続税の計算をするための、不可欠な第一歩です。 ご自身での戸籍収集や相続人の調査が難しい場合や、相続人間での話し合いがまとまりそうにない場合は、無理せず弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。専門家の力を借りることで、手続きの負担が軽減され、よりスムーズで円満な相続を実現できるでしょう。 一度の申し込みで 最大6 社に依頼 できる 売却したいけど何から始めたらいいかわからない方は 不動産売却のプロに相談しましょう! 大手から地元密着企業まで約2,500社参画 無料 売却のプロに相談する