サブリースの解約が可能になる「正当事由」事例集|判例から事由を例示。認められなかった事例も掲載

この記事を読むことで「サブリース契約」を解約したいと思った時に、解約したい理由が正当事由として主張できるのかどうかを判断することができます。
サブリース契約ではオーナー側から解約を行うことは難しく、解約を認めさせるためには正当事由が必要となります。
- サブリース解約が認められた正当事由の事例と判例
- サブリース解約が認められなかった事例と判例
- サブリース解約の正当事由がない場合の対処法について
契約後にトラブルが発生しないよう、サブリース契約で賃貸経営を行っている方はぜひ参考にしてください。
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この記事の内容
1.「サブリースの解約」と「正当事由」「違約金」について
ここでは、サブリース契約の解約に必要な正当事由と違約金について解説します。
サブリースの仕組みや解約について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
1-1.「サブリースの解約」と「正当事由」
サブリース契約は賃貸借契約に該当し、オーナーが「貸主」・サブリース会社が「借主」に該当します。
原則として、貸主であるオーナー側からのサブリースの解約は、正当事由がなければ認められません。
借地借家法で「借主の権利」が守られているため、法律上ではサブリース会社が有利な立場にあるのが現状です。
1-2.違約金とその相場
サブリース会社が解約を認めてくれたとしても、オーナーからサブリース会社に対して違約金の支払いが必要になります。
違約金の相場は、家賃収入の約6か月分です。
ただし、具体的な金額はサブリース契約の内容によって異なるため、事前に契約書などを確認しておくとよいでしょう。
2.「サブリースの解約」が可能になる「正当事由」事例・判例集
「サブリースの解約」が可能になる「正当事由」には大きく分けて2パターンあります。
<サブリース解約の正当事由 2パターン>
- 建物の使用を必要とする事情が生じた
- 建物の賃貸借に関する従前の経過に問題があった
ここでは、それぞれの事例について判例とあわせて紹介します。
2-1.「建物の使用を必要とする事情」により正当事由として認められた事例・判例
オーナー本人または家族が住むために建物が必要となった場合、正当事由として認められる可能性が高いです。
たとえばオーナーが海外など遠方に長期的に住んでおり、帰国したことで自分の所有物件に住みたいと望んでいる場合、正当な解約事由として認められやすいです。
ほかにも、オーナーの生計維持のためにまとまった資金が必要となり、建物を空き家状態で売るためにサブリース解約が正当事由として認められた判例がありました。
以下でご紹介します。
<判例>
裁判所:東京地裁
概要:老朽化した自宅の補修改築のためにまとまった資金を必要とし、サブリース契約していた建物を空き家状態にして売却することを望み、立退料支払いを条件に認容された。
参照:不動産適正取引推進機構|サブリース会社に対する建物のオーナーの賃貸借契約解除及び建物明渡し請求が認容された事例
上記のように「建物の使用を必要とする事情」により、正当事由が認められたとしても、立ち退き料などの条件交渉が生じるケースが一般的です。
2-2.「建物の賃貸借に関する従前の経過」により正当事由として認められた事例・判例
「建物の賃貸借に関する従前の経過」とは、賃貸契約に至った経緯や事情、契約期間などを指します。
サブリース契約時にサブリース会社から「十分な説明を受けていなかった」「虚偽の情報を与えられていた」といった場合には、正当事由として認められます。
「建物の賃貸借に関する従前の経過」により正当事由として認められた実際の判例は以下のとおりです。
<判例>
裁判所:東京地裁
概要:オーナーがサブリース会社に対して、虚偽・不当な勧誘を行い、説明義務を怠ったなどの理由からオーナーが契約解約と損害金ならびに遅延損害金の支払いを求めた。
参照:不動産適正取引推進機構|賃貸マンションの建て主が、建物の建築等を勧誘した会社に対して行った損害賠償請求が一部認められた事例
この裁判では、説明義務を怠ったとしてサブリース会社に損害金の支払いが求められました。
2-3.「正当事由」として認められるその他の例
「サブリースの解約」が可能になる「正当事由」としては、以下のようなものもあるようです。
<正当事由として認められる 2例>
- 老朽化など建物の現状に問題がある
- 再開発事業などでやむをえず売却が必要になった
「老朽化などで建物の取り壊しや建て替えが必要になった」
正当事由として認められる理由としては、老朽化を放置しておくと建物に住んでいる賃借人にも悪影響を及ぼしかねないことが挙げられます。
ただし、建物の老朽化などを正当事由として主張するためには耐震診断や築年数など具体的な根拠を提示することが大切です。
たとえば、1981年5月31日までに建築された旧耐震基準の物件は現在の新耐震基準を満たしていない場合があり、取壊しや建て替えが必要な根拠として認められやすくなります。
「再開発事業などでやむを得ず売却が必要になった」
物件の所在地で再開発事業や公共工事が行われる際は売却せざるを得ないため、正当事由として認められるケースが一般的です。
ただし、物件の売却にあたりオーナーが将来的に大きな利益を得る場合、明け渡しに対して高額な立ち退き料をサブリース会社に支払わないと解約できない場合もあります。
3.「正当事由」が認められなかった事例・判例集
「正当事由」として認められなかった事例は以下のようなものがあります。
<サブリース解約の正当事由として認められなかった3つの事例>
- サブリース契約期間満了にともない契約終了を主張した
- 借地借家法の適用外を主張した
- 賃貸借契約の更新拒否を求めた
ここでは、それぞれの事例について判例とあわせて紹介します。
3-1.サブリース契約期間満了にともない契約終了を主張したが、正当事由として認められなかった
原則として、サブリース契約を含む賃貸借契約では、オーナーから一方的に契約更新を拒絶することができないため、サブリース会社が更新したいと申し出れば、解約は認められません。
サブリース契約期間満了になったとしても、解約における正当事由として認められなかった判例がこちらです。
<判例>
裁判所:東京地裁
概要:オーナーが契約満了を期にサブリース会社に「本件更新拒絶」通知を行ったがサブリース会社側がこの通知を受理しなかったために争われ、オーナー側の請求が却下された。
参照:不動産適正取引推進機構|サブリース業者を借主とする建物の賃貸借契約の更新拒絶につき正当事由が否定された事例
サブリース会社は建物の転貸によって収入を得ていることから、サブリース会社の利益が尊重された判例です。
3-2.借地借家法の適用外とした明け渡し請求が認められなかった
サブリース契約を含む賃貸借契約では、借地借家法が重視されており、借主の権利が保護されています。
当時の契約書に「解約申し入れによって解約できる」と記載があったことで、サブリース会社に建物の明け渡しを求めた判例がこちらです。
<判例>
裁判所:東京地裁
概要:契約書に解約申し入れの約定があること、またサブリース契約は借地借家法の想定外であるという主張の元、建物明け渡しをサブリース会社に訴えたが、貸主側の自己使用の必要性は低く、サブリース会社の使用目的の方が重いとされ、棄却された。
参照:不動産適正取引推進機構|サブリース契約には借地借家法第28条の適用がないとして求めた賃貸人の建物明渡し請求が棄却された事例
この判例では、貸主側が生計維持のために建物を使用する必要性が高ければ異なる結果になっていた可能性もありますが、3-1の判例と同様にサブリース会社の利益が尊重されました。
3-3.賃貸借契約の更新拒否が正当事由がないと認められなかった
借地借家法は、借人の権利を守る法律であり、貸主であるオーナーの要求は棄却されることがほとんどです。
以下の判例は、サブリース会社が倒産したためオーナーと借人が直接取引を行うことになり、物件の明渡しを求めましたが、正当事由として認められなかったものです。
<判例>
裁判所:最高裁
概要:オーナーから物件引き渡しならびに賃貸総統の損害額の支払いが求められたが、サブリースならびに居住者の権利が認められ棄却された。
参照:不動産適正取引推進機構|サブリース契約終了時に、賃貸人が再転借人に対し信義則上その終了を退行できないとされた事例
契約を結んでいたサブリース会社が倒産した場合、オーナーは借人と直接やり取りをしなければなりません。
その場合も、借地借家法で借人の権利が守られるため、借人が更新したいと申し出ればオーナーに正当事由がない限り更新せざるを得ません。
4.サブリース解約に正当事由がない場合の対処法
オーナーがサブリース契約の解約をしたいと思っても、正当事由がなければ原則として解約できません。
サブリース契約を解除したいものの正当事由がない場合、早めに専門家に相談することをおすすめします。
相談先としては、公的機関や不動産会社があります。
下記記事でサブリース解約の相談先について解説しているので、あわせてご覧ください。
まとめ
オーナー側からのサブリース契約解約は難しいですが、正当事由があれば解約することができます。
サブリース契約の解約を考えている方は、自分の解約したい理由が正当事由に該当するのか確認し、専門家に早めに相談するようにしましょう。
この記事のまとめ
サブリースの解約」と「正当事由」について
原則として、貸主であるオーナー側からのサブリースの解約は、正当事由がなければ認められません。
サブリース会社が解約を認めてくれたとしても、オーナーからサブリース会社に対して家賃収入約6か月分の違約金の支払いが必要になります。
詳細は「1.「サブリースの解約」と「正当事由」と「違約金」について」にて解説しています。
「サブリースの解約」が可能になる「正当事由」
サブリースの解約が認められた正当事由として、以下のようなものが挙げられます。
・建物の使用を必要とする事情
・建物の賃貸借に関する従前の経過
・老朽化など建物の現状に問題がある
詳細は「2.「サブリースの解約」が可能になる「正当事由」事例・判例集」」にて解説しています。
「正当事由」として認められなかった事例・判例
一方、正当事由として認められなかった事例・判例は以下のようなものがあります。
・サブリース契約期間満了にともない契約終了を主張した
・借地借家法の適用外を主張した
・賃貸借契約の更新拒否を求めた
詳細は「3.「正当事由」が認められなかった事例・判例集」で解説しています。