【簡単解説】サブリース新法とは|変更されたポイントを中心に簡潔に解説

この記事は、令和2年に新設された「サブリース新法」(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)について、できる限り初心者にも分かりやすいように、簡潔に解説しています。
- サブリース契約新法施行の背景
- サブリース新法で変わった点
- 新旧比較サブリース契約時の危険性・注意点への対処法
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1.サブリース新法施行の背景
サブリース新法とは、「サブリース事業者」と「オーナー」間の賃貸借契約を適正化するために設けられた法律のことです。
令和2年10月に策定されており、正式には「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、賃貸住宅管理業法)」と言います。
サブリース新法が施行された主な背景は、サブリース業者とオーナーとの間で、家賃減額や解約など「契約条件の誤認」を原因とするトラブルが多発して、社会問題化したことが挙げられます。
<サブリース新法施行の背景となったトラブル事例>
- 「家賃保証」に関するトラブル
- 「解約」に関するトラブル
- 「サブリース会社倒産」に関するトラブル
サブリース新法が施行される前に、多発していたトラブルの具体的な事例について下記で紹介します。
1-1.「家賃保証」に関するトラブル
多発していたトラブルの事例として「家賃保証」に関連するものが挙げられます。
サブリース契約において「家賃保証」はメリットの1つですが、さまざまな要因によって減額されてしまう可能性がある内容のものがほとんどです。
しかし、契約したオーナーの中にはそうした家賃の減額や免責期間等の内容を知らないまま契約を結び、以下のようなトラブルに発展してしまうことが多数ありました。
<家賃保証に関するトラブル相談事例>
1年過ぎた頃から5年間の家賃保証が守られず困惑。自宅の一部を賃貸するサブリース契約を締結したが、十分な説明がないまま家賃保証額を下げられ不満。
さらに、物件の新築後半年程度の期間は、不動産会社がオーナー側へ賃料を払わない「免責期間」が設定されているのもトラブルの原因になっています。>
1-2.「解約」に関するトラブル
トラブルの事例として「解約」に関連するものも多数存在しています。
「解約」がトラブルになりやすい理由としては、以下が挙げられます。
サブリースの「解約」がトラブルになりやすい理由>
サブリース契約をオーナー側から解約するには、「正当事由」と「解約違約金」が必要になる一方で、サブリース会社は契約期間中でも、一方的に解約ができることがトラブルに繋がりやすい大きな要因です。
上記のことが要因になってトラブル化した相談事例としては、以下が挙げられます。
<解約に関するトラブル相談事例>
サブリースの解約が可能になる正当事由事例や判例などについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
1-3.「サブリース会社倒産」に関するトラブル
多発していた問題として、「サブリース会社倒産」に関するトラブルが挙げられます。
サブリース契約には、サブリース事業を行う会社が経営破綻することで、サブリース会社がオーナーに滞納していた賃料が踏み倒されてしまう可能性があるためです。
特に有名な事例が、「かぼちゃの馬車事件」です。
かぼちゃの馬車とは、株式会社スマートデイズがサブリース事業で展開していたシェアハウスのブランド名で、同社は賃料の支払いを止めたのち経営破綻しています。
賃料が支払われなくなったオーナーは経営に行き詰まり、多額の借金が残りました。
しかし、かぼちゃの馬車事件では、社会問題となったことも相まって、2020年には物件(かぼちゃの馬車)を引き渡すことを条件に債務を相殺する代物弁済で解決が図られています。
2.サブリース新法で変わった点の比較
サブリース新法の制定前は、サブリース業者が契約のリスクやデメリットを十分に説明せずに、オーナーが契約を結んでしまうことでトラブルが起きていました。
賃貸住宅管理業法の「サブリース事業の適正化のための措置」においては、サブリース業者(または勧誘者)には以下のような行為規制が設けられるようになりました。
<サブリース新法の規制内容>
「サブリース新法」によって上記5つの規制内容が定められたことで、これまでから大きく変化した点は
ことです。
下記では5つの規制に関してそれぞれ、サブリース新法ができる「前」と「後」でどのような変化が起きたのか、具体的に分かりやすく比較しました。
2-1.誇大広告等の禁止
<【サブリース新法で変わった点】 誇大広告等の禁止>
旧:サブリース新法ができる「前」 | 新:サブリース新法ができた「後」 |
---|---|
誤解を招く表示でも違法にならなかった 変わる前の状態 例: ・家賃に定期的な見直しがあることを表示していない ・実際より高い利回りを表示している | 正確な広告によって、オーナーが誤解しない情報提供が必須になった 変わった点の例: ・家賃の見直しの表示が必須になった ・「表面利回り」なのか、「実質利回り」なのかを明確にして、必要な諸経費も表示が必須になった |
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
サブリース新法では、チラシや新聞、雑誌、テレビなどでサブリース業者が広告を打ち出す際の「正確性」が義務づけられて、オーナーが誤解しない情報提供がされるようになりました。
主な規制は、以下です。
<誇大・虚偽広告の禁止 主な規制>
国土交通省では「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」として、誇大広告や虚偽広告をしてはならない事項として、以下を挙げています。
<誇大広告や虚偽広告をしてはならない事項 具体例>
たとえば、定期的な家賃の見直しがある場合、「家賃保証」の文言に隣接する箇所に家賃が減額される旨を記していないのは、誇大広告にあたります。
2-2.不当な勧誘等の禁止
<【サブリース新法で変わった点】 不当な勧誘等の禁止>
旧:サブリース新法ができる「前」 | 新:サブリース新法ができた「後」 |
---|---|
故意に事実を告げなくても、違法にならなかった執拗な勧誘も可能だった 変わる前の状態 例: ・家賃が減る・契約解除などのリスク伝えない ・事実に反することを伝えても、問題にならなかった ・断っても勧誘し続けることが可能だった | 重要事項や、話を正しく伝えることが必須になった執拗な勧誘が禁止になった 変わった点の例: ・重要事項は必ず告げなければならない ・事実でないことは禁止になった ・一度断ったら再勧誘をしてはいけない |
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
賃貸住宅管理業法第29条では、サブリース業者の誤った情報や不正確な情報による勧誘、強引な勧誘などが禁止になりました。
不当勧誘にあたる具体的な例は以下のとおりです。
<不当勧誘にあたる具体例>
上記のようなことが行われた場合、「不当な勧誘」とみなされます。
2-3.特定賃貸借契約締結前の重要事項説明と書面の交付
<【サブリース新法で変わった点】 特定賃貸借契約締結前の重要事項説明と書面の交付>
旧:サブリース新法ができる「前」 | 新:サブリース新法ができた「後」 |
---|---|
重要事項の説明や、書面の交付はしなくてもよかった 変わる前の状態 例: ・「契約更新」や「解除」について説明しなくても問題にならなかった ・重要事項の書面をつくらなくてもよかった | 重要事項を具体的に、詳しく説明すること、また書面の交付が義務になった 変わった点の例:・重要な事項が細かく定められて、説明が必須になった ・重要事項の書面がつくられるようになって、オーナーが契約内容を確認しやすくなった |
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
賃貸住宅管理業法第30条では、「契約締結前に重要事項の説明」と「重要事項説明書を書面で交付」することを義務化されて、オーナーは契約内容を正しく理解し、リスクを踏まえた適切な判断ができるようになりました。
第30条で規制された内容の具体的な一例は、以下が挙げられます。
<重要事項説明の内容 一例>
なお、重要事項の説明はオンラインでも実施可能です。
サブリースとマスターリースの違いについては以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
2-4.特定賃貸借契約締結時の書面の交付
<【サブリース新法で変わった点】 特定賃貸借契約締結時の書面の交付>
旧:サブリース新法ができる「前」 | 新:サブリース新法ができた「後」 |
---|---|
契約時の書面交付は明確に決まっていなかった 変わる前の状態 例: ・書面を交付していないことで、契約の内容を理解していないオーナーが多かった | 契約時の書面交付が義務化された 変わった点の例: ・書面の交付が義務になったので、オーナーが契約内容の確認を十分にできるようになった |
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
締結前だけではなく、締結時にも書面の交付が義務化されました。
その結果、オーナーとサブリース業者の間で契約書の内容に認識に相違が起きづらくなったうえに、オーナーが契約内容を後からでも十分確認できるようになりました。
国土交通省では、必要な事項が記載された「特定賃貸借標準契約書」や「実際の契約書記載例」を公開しています。
必要に応じて用意したり、確認したりするようにしましょう。
参考:国土交通省「特定賃貸借標準契約書」
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
2-5.書類の閲覧
<【サブリース新法で変わった点】 書類の閲覧>
旧:サブリース新法ができる「前」 | 新:サブリース新法ができた「後」 |
---|---|
サブリースに関連した、自社の書類閲覧についての決まりがなかった 変わる前の状態 例: ・特にオーナーがサブリース会社の状態について、確認できる方法は決まっていなかった | サブリース会社は業務や財産状況を記載した書類を保管して、オーナーが見られるようにしておく義務がある 変わった点の例: ・オーナーが要求すれば、サブリース会社の業務や財産状況が確認できるようになった |
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
かぼちゃの馬車事件をはじめ、サブリース事業を行う不動産会社が倒産した場合に賃料が支払われず社会問題化していました。
しかし「サブリース新法」によって、サブリース会社の状態をオーナーが確認できる手段が義務化されました。
書類は当該事業年度経過後3か月以内に作成し、3年経過するまでは営業所または事務所に備え置かなければなりません。
据え置きが必要な「特定転貸事業者の業務及び財産の状況を記載した書類」は、以下のとおりです。
<備え置きが義務になった 「特定転貸事業者の業務及び財産の状況を記載した書類」>
上記の書類は、出力できる形であれば電子データでも保管できます。
3.サブリース契約時の危険性・注意点への対処法
サブリース契約にはさまざまなトラブルに遭う危険性が潜んでいるため、以下のリスクと対処法を事前にチェックしておきましょう。
<サブリース契約に潜む危険性・注意点への対処法>
危険性 | 注意点 |
---|---|
家賃が減額される | 家賃保証の見直し期間を確認する |
空室によって家賃収入が減少する場合がある | 免責期間を確認する |
原状回復費用の負担がある | 修繕費用負担の確認をする |
オーナー側から解約できない場合がある | 契約解除の規約を確認する |
サブリース会社の倒産する可能性がある | 複数のサブリース会社で比較検討する |
特に評判のよいサブリース会社を見極めるためには、複数社の比較検討が欠かせません。
以下の記事では、サブリース契約時の注意点について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
サブリース新法は、アパートやマンションなどの賃貸経営を行うオーナーを保護する法律です。
サブリース業者とのトラブルを防止するためにも、契約前に交付される重要事項説明書や契約時に交付される契約書は、よく確認するようにしましょう。
本記事を参考にサブリース新法の理解を深め、自分にあったサブリース会社を選びましょう。
この記事のまとめ
サブリース新法施行の背景
詳細は「1.サブリース新法施行の背景」にて解説しています。
サブリース新法で変わった点 新旧比較
詳細は「2.サブリース新法で変わった点 新旧比較」で解説しています。
サブリース契約時の危険性・注意点への対処法
サブリース契約時に必要な注意点は以下のとおりです。
・家賃保証の見直し期間を確認する ・免責期間を確認する ・修繕費用負担の確認をする ・契約解除の規約を確認する ・複数のサブリース会社で比較検討する詳細は「3.サブリース契約時の危険性・注意点への対処法」にて解説しています。