入居率も賃料もアップできる空室対策リノベーション予算別アイデア

空室がなかなか埋まらず、なにか手を打たなければならない場合、お部屋にリフォームやリノベーションをする方法があります。中でもリノベーションは、物件の価値をアップさせるレベルで手を加えるため、賃料アップも期待できます。
しかし、具体的にどのようなタイミングで、何をするのが正解かがわからないと、適切な空室対策にならない可能性もあります。本章では、空室対策をする3つのタイミングと、具体的な10のアイデアなどをまとめています。

この記事の内容 [目次を隠す]
1.空室対策リノベーション前の3大確認事項
空室対策のリノベーションとは、物件の価値が上がるタイプの工事をして、空室リスクを下げ、可能ならば賃料アップをはかるためのものです。リノベーションという言葉によく似た、以下の3つの工事方法の違いを理解しておくと、ご自分の物件にするべきことがハッキリしてきます。
- 原状回復と何が違うの?
- リフォームと何が違うの?
- フルリノベーションと何が違うの?
1-1.原状回復とは何が違うの?
原状回復工事とは、物件を入居当時の状態に戻すためのものです。ただし、普通に住んでいて自然に発生する汚れは、原状回復の対象ではありませんので、フローリングや壁紙の薄い汚れや黄ばみ、キッチンシンクやバスタブの汚れなどは、クリーニングで対応します。
クリーニングで対応しきれないレベルの汚れなどがあった場合は、フローリングと壁紙を貼り換えます。それ以外に、月日とともに故障・破損・摩耗してしまった箇所を、できる限り入居当時の状態にまで戻し、物件の現状維持につとめます。
原状回復の必要性は、退去時に入居者・不動産管理会社・オーナーの立ち合いのもとで、必要な個所を決めていきます。クリーニングはほぼ100%発生し、費用負担は退去者です。
原状回復工事は、基本的には入居者負担ですが、地域や不動産管理会社の運営方針によって考え方が違いますので、敷金で充当したい場合は、そのような慣習がある不動産会社と契約するようにしてください。
1-2.リフォームとは何が違うの?
リフォームとは、前項の原状回復をベースにして、設備の交換などにも手を加えていくことです。たとえば、古くなったキッチンを新しいものに変える、ふすまを洋風扉に変更する、お風呂をユニットバスからバストイレ別にするなどです。
多くの場合、原状回復工事と一緒に行います。新しいものに交換するのできれいにはなりますが、機能は同等のものあることが前提です。あくまで、マイナスゼロの状態に戻すための工事になります。
原状回復の延長線上にある工事ですが、リフォームをする理由が退去者の故意や過失によるもの以外では、費用負担はオーナーになります。リフォームの必要性は、不動産管理会社と相談したうえで決めることをおすすめします。
担当者は数多くの退去時の物件を見てきていますので、クリーニングでどこまでキレイになるのか、どの程度の不具合までなら修理のみでOKなのかを、経験則から判断できます。
1-3.フルリノベーションとは何が違うの?
リノベーションの中で最も規模が大きいものを、フルリノベーションといい、主に鉄筋コンクリート造のマンションや戸建住宅などで採用されます。物件全体を骨組み(スケルトン)だけにしたうえで、配管・配線・間取りのすべてを作り直します。
原状回復とリフォームがマイナスゼロをゴールにしているとしたら、リノベーションはプラスの状態を生み出すために行います。たとえば、同じキッチンを入れ替えるのでも、リフォームなら同等のキッチンに取り換えるだけですが、リノベーションの場合はシステムキッチン+食洗器などにして、機能向上や見た目の良さをアップさせます。
フルリノベーションをする場合は、バストイレなどの水回りの位置も変えるくらい大きな変更をして、古さを一切感じさせない物件に生まれ変わらせます。
リノベーション・フルリノベーションともに、空室対策としては大きな効果が期待できますが、費用が大きいため、経営計画と返済計画を見直し、建て替えも視野に入れて、慎重に比較検討してください。
賃貸経営・土地活用の
相談をしたい方はこちら
複数の会社にまとめて相談
2.空室対策リノベーションを検討すべき3大タイミングと変更点
現在経営中の物件が、どのような状態になったら、どこに何の空室対策リノベーションを検討するべきかを、3つのタイミングに分けて説明します。
- 空室がなかなか埋まらない→内装
- 建物全体が古くなってきた→エントランス・外壁
- 退去が起きた→水回りや間取り
2-1.空室がなかなか埋まらない→内装
内見に来ても契約まで至らない状態が2カ月以上続いたら、内装のリノベーションを検討してください。内装とは、主に物件の壁紙や床材、塗装などのことです。内装は広い範囲を占めているので、内装にどのような素材や色を使うかで、お部屋の印象が変わります。
内見に来てもらえるということは、物件の持つエリア条件や画像検索ではリストに残っているということですので、実際に物件を見た後に、ライバル物件を選んだということになります。
変更点>
原状の空室物件は、原状回復をしてありますので、壁と床をメインとした内装のみをリノベーションして、室内に来た時の印象を良くします。原状回復では量産型のものを使っていると思いますが、これを、グレードアップしたものに変更します。
先に、床材を決めます。原状回復で使うのはシート張りのクロスが多いのですが、これを天然木や木材フローリングに変更します。可能であれば、部分的にタイルを使うと、アクセントになりデザイン性の高い部屋になります。
床材が決まったら、それに合わせて壁紙を決めます。床材とクロスのイメージが合っていないと「よくある賃貸物件」という印象から抜け出ることができません。柄物にするのに抵抗がある場合は、同じ白やベージュに凹凸(エンボス加工と言います)がついているタイプや、布製のクロスを選ぶと、センス良く高級感のある印象を与えます。
施工会社と相談をしても自信がない場合は、知り合いの若い方や、ファッションセンスが良い方にサンプルのクロスを見せて、選んでもらったものから選ぶようにしてください。
2-2.建物全体が古くなってきた→エントランス・外壁
空室が全体の2割程度の状態で、外観の劣化が気になり始めたら、エントランスと外壁に手を入れるタイミングです。順番としては、入居者に迷惑がかかりにくいエントランスから手をつけていき、それでも満室にならないならば、今度は外壁にも手を入れるなど、段階を追って空室対策をします。
外壁工事には高額な足場代がかかるので、他の補修などと合わせて時期を選ぶ必要があります。エントランスも外壁も、入居中の方に影響がありますので、必ず事前告知をしてください。
変更点>
エントランスは物件の顔なので、「エレガントで清潔」を心がけます。具体的には郵便受け・玄関マット・掲示板をグレード感のあるデザインのものに変えて、第一印象をアップします。エントランスの壁に汚れがある場合は塗装をし直します。また、フロアタイルが劣化している場合は交換し、新しくきれいなものにしてください。
施工後も、エントランスは汚れやすいので、床と壁は高圧洗浄やスチーム洗浄によるクリーニングをかけて、いつもピカピカにしておきます。エントランスの四隅、タイル目地に汚れがないかなどもチェックします。クリーニングは専用の機械を購入しておき、毎週の清掃で使ってもらうようにすると、いつも新品同様のエントランスが維持できます。
外壁は、建物の大きさによって施工内容が変わります。主に3つの方法があります。
工法 | 施工方法 | 判断めやす |
---|---|---|
外壁塗装 | 今の外壁の上に新しく塗装する | 経年しているが大きなヒビなどがない |
外壁カバー | 今の外壁を新しい外壁で覆う | 経年劣化と損傷もあるが外壁強度に問題がない |
外壁取り換え | 今の外壁と外して新しい外壁をつける | ヒビや損傷によって強度に問題がある |
どの方法でも、必ず足場を組むことになりますので、屋根・ベランダ・窓の補修や塗装なども一緒にする方が経費節約になります。不動産管理会社の担当者と相談しながら、無理のない修繕計画を立てておく必要があります。
2-3.退去が起きた→水回りや間取り
退去が起きると原状回復をしますが、その時に、水回りや間取りに手を加えることができます。とくに、退去から3カ月をめやすにして、次の入居者が決まりにくくなった、家賃を下げても内見申し込みが増えない場合は、積極的にリノベーションを検討してください。
退去した部屋から順番に手を付けていくことで、将来の空室対策になります。早めにはじめておくことで、経営計画にも影響が出にくくなります。
変更点>
原状回復のための立ち合いをしたときに、室内の状態をチェックして、変更箇所を決めていきます。水回りはキッチン・トイレ・バス、間取りは和室を洋室になど、今の生活様式に合ったものへと変更します。
すべて一度にする必要はないので、予算の範囲で変更してください。担当者は周辺エリアのライバル物件を見ていますので、手を入れるべき箇所を的確にアドバイスしてくれます。
3.予算3タイプ別:空室対策リノベーションアイデア
空室対策のリノベーションアイデアを、予算を3タイプに分けてまとめています。何をすればどのくらいかかるかがわかりますので、リノベーション計画の参考にしてください。
- プチリノベタイプ 予算10~100万円
- バリューアップタイプ 予算100~200万円台
- プランニングタイプ 予算300万円~
3-1.プチリノベタイプ 予算10~100万円
プチリノベとは、部分的なリノベーションのことです。お部屋探しの際に、ライバル物件と比べて明確な差別化ができて、印象を良くするための変更です。どれもDIYレベルの施工で済みますので、手先が器用な方や、日曜大工が好きな方であれば、ご自分でやっても問題ありません。
たとえば、以下のような部分にプチリノベができます。
プチリノベ箇所 | プチリノベ内容の例 | 予算めやす |
---|---|---|
扉の取っ手 | 収納棚やキッチンの取っ手やノブをオシャレなものに交換 | 1,500円~ |
フック | デザイン性の高いフックに交換 | 300円~/1個 |
アクセントクロス | トイレなどの狭い壁にデザイン性の高い壁紙を使う | 600円~/1M |
照明 | 玄関やトイレにオシャレなランプシェードを使う | 4,000円~ |
細部の塗装 | 剥げている木製部分を塗装する | 2,000円~ |
壁棚の取り付け | IKEAなどの通販で売っているものを取り付ける | 1,000円~ |
蛇口やハンドル | 汎用品をアンティーク調デザインのものなどに変更する | 8,000円~ |
※価格は主に楽天市場を参考にしています。
たとえば、一般的な賃貸によくみられるのは、左画像のような蛇口ですが、これを右のようなアンティーク調の雰囲気ある蛇口に変更するだけで、洗面台がオシャレな印象に生まれ変わります。キッチン用、洗面台用など、さまざまなものがあります。
一度に複数のプチリノベをする場合には、原状回復工をする際に施工会社にお願いしておけば、一緒にやってもらえます。施工会社には業者用の部品カタログがありますので、ご自分で気に入ったものを指定できます。プチリノベは、1つひとつの金額は大きくありませんが、数が増えるとまとまった金額になります。
3-2.バリューアップタイプ 予算100~200万円台
バリューアップタイプのリノベーションでは、空室対策と同時に、賃料アップをゴールにします。想定としては、5,000~1万円の賃料アップを目指して計画をします。
そのためには、物件が確実に機能向上している必要がありますので、工事は施工会社に依頼します
バリューアップリノベ箇所 | バリューアップの例 | 予算めやす |
---|---|---|
キッチンやトイレの交換 | シンクや便器の交換をする | 50~200万円 |
洗面所の設置 | 洗面台の交換・洗面台の新規設置 | 10~50万円 |
室内洗濯機置き場の設置 | 外部にあった洗濯機置き場を室内に移動 | 10~20万円 |
窓と窓枠の交換 | 窓ガラスの入れ替え・窓を二重サッシにする | 30~40万円 |
和室を洋室に変更 | 和室をフローリング・押し入れをクローゼットに変更 | 20~50万円 |
※価格は主に楽天市場を参考にしています。
価格はリクシル参考https://www.lixil.co.jp/reform/case/ とも記載あり
バリューアップタイプは、ひどく経年しているもの、または周辺のライバル物件と比較して、明らかに機能が劣っている、見た目の見劣り感がある部分から手を付けていきます。
たとえば、和室にある押入れを、ウォークインクローゼットにすると、見た目もおしゃれになるだけではなく、収納方法にも選択肢が増えて部屋が使いやすくなります。
収納が少なく、モノが散乱しやすい洗面台には、鏡裏と壁側に収納を増やし、さらに、洗面台を広いものに交換することでグレード感が出します。
水回り設備は、DIYやオーナー支給(オーナーが設備をネットで購入し、設置だけ施工会社が行う)も可能ではありますが、トラブル時の責任の所在があいまいになってしまいますので、注意してください。施工会社に頼めば、メーカー保証と同時に施工会社の保証も付きますので、万が一のことがあっても、すぐに対応してもらえます。
賃料は5,000~1万円アップを想定し、経営計画として、一回のリノベーションでどのくらいまでのバージョンアップが可能かを、不動産管理会社の担当者と相談しながら進めてください。
3-3.プランニングタイプ 予算300万円~
プランニングタイプとは、間取りの変更や水回りの変更なども含めた、規模の大きなリノベーションです。空室対策とともに、家賃を2~5万円くらいアップさせ、長期的に経営を安定化させることが目的なので、問題のない場所には手を入れません。
プランを作るときには、施工会社の担当者・不動産管理会社の担当者・オーナーを交えて、入居者ターゲットや想定家賃を設定し、変更が必要な個所を決めていきます。
プランニングリノベ箇所 | プランニング例 | 予算めやす |
---|---|---|
2DKを1LDKへ間取り変更 | 昔の団地タイプの間取りを、広いリビングのある間取りへ | 応相談 |
和室を洋室へ変更 | 畳の和室を全室フローリングに変更・ふすまを引き戸に | 応相談 |
室内にロフトを増設 | 利用しない空間にロフトや小あがりを作る | 応相談 |
玄関扉・室内ドアの交換 | デザイン性のあるドアに交換・押戸から引き戸へ交換 | 応相談 |
バスキッチンの変更 | ユニットバスをバストイレ別・出入口の方向を変更する | 応相談 |
見積は複数社からもらい、費用対効果をよく比較してから決めてください。
4.空室対策リノベーションする・しない4つの判断基準
経営中の物件にリノベーションをする・しないの判断は、費用も発生するため、迷うものです。以下の4つの判断基準を参考にして、リノベーションのタイミングや内容を決めてください。
- 水回りフルリノベは耐用年数内なら不要
- ワンルームは基本リノベーション不要
- ファミリー物件はリノベ可にした方が良い
- 不動産管理会社からの提案を検討する
4-1.水回りフルリノベは耐用年数内なら不要
リノベーションを検討し、見積もりが集まってくるとわかりますが、ほとんどの工事会社が水回りの大がかりなリノベーションを提案してきます。たとえば、キッチン・バストイレ・洗面台の3か所を同時に刷新するなどです。
理由としては、水回りフルリノベーションはセット商品として高額であることと、入居者への印象が良く、空室対策の効果が上がりやすいためです。しかし、実際にはプロによる徹底的なクリーニングや、クロスの張替え程度でも対応できることが多く、本当に水回りをすべて変える必要があるほど傷んでいる物件は、少ない傾向にあります。
新品であっても、水回りは毎日使って必ず劣化しますので、耐用年数内であり、さらに不具合・故障などがないのであれば、水回りを全部取り換える必要はありません。水回りの耐用年数は、給水・給湯・排水・通気および衛生器具、消火、ガスなどの設備、排水処理水再利用を含めて15年です。
4-2.ワンルームは基本リノベーション不要
経営中のアパートがワンルームタイプの部屋の場合は、空室対策としてのリノベーションは不要です。理由は、ワンルームタイプは平均で25平米(16畳・7坪程度)と、賃貸物件の中では最も小さく、さらに動かせる設備がないため、変更できる部分がほとんどありません。
空室対策をするのであれば、リフォームに近い形で、手を加えるようにしてください。例えば、内装の壁紙をグレードの高いものにする、洗面台やトイレなどの小さな設備を最新のものに変更するなどです。これだけでも5,000~1万円の賃料アップ。変更する設備などは、近隣の満室物件を参考に、不動産管理会社と相談しながらすすめてください。
4-3.ファミリー物件はリノベ可にした方が良い
ファミリー物件は2~3LDK、都心部の平均で75平米前後(48畳・22坪程度)と広さがあるため、大きな範囲に手を加える必要があり、リノベーションをするとかなりの費用がかかります。リノベーションをしたからと言って、賃料を今より10万円もアップできるわけではありませんので、空室が埋まっても、総合的な経営メリットは少なめです。
ファミリー物件の空室対策は、リノベーションをしたものを賃貸に出すよりも、リノベーションをしても良い物件にするか、入居者が希望するリノベーションを施工する方が、費用対効果が高くなります。
たとえば、幼児・高齢者・ペットに対応できる、汚れない壁紙・床材や、バリアフリー・つかまり立ちができる手すりやバー、飛び出し防止の柵など、賃貸では自由に取り付けがしにくいものを、はじめから付加できる前提にします。
不動産会社に相談しながら、空室対策のオプションとしてすすめていきます。契約には原状回復の内容も含め、トラブルが起きないように注意してください。
4-4.不動産管理会社の提案を検討する
空室対策のリノベーションに成功し、空室が埋まって、長期安定収入につなげるためには、物件と建物の価値を、コストパフォーマンス良く維持していく方法を、一緒に考えてくれる不動産管理会社の存在が不可欠です。
理想は、地域のニーズを理解し、コスト管理に厳しく、経営の健全性を指南できる実績と知見が多い不動産管理会社です。このような会社は、空室対策をする際にも、本当にリノベーションをする必要があるのか、そのほかの方法で解決できるのではないかなど、オーナーと入居者の両方の視点で見極めてくれます。このような、経験とデータに基づいた提案であれば、オーナーも安心して検討できます。
空室対策でお悩みであれば、賃貸経営のパートナーとして信頼と実績のある不動産管理会社を探してみてください。NTTデータグループの運営する「賃貸経営HOME4U」の一括無料相談サービスであれば、一回の入力で、複数の会社にまとめて相談依頼ができます。
相談内容には賃貸管理のほか、入居者募集やサブリース(家賃保証・空室保証で貸す)、今後の経営プランの提案など、賃貸経営のお悩み全般に広く対応できる会社がそろっています。
まとめ
空室対策のリノベーションについてまとめました。物件に手を加えるのは、どんなタイミングで行うべきか、どこをどう変えれば、入居者が付きやすくなるのかなど、経営中のオーナーの悩みに即したアイデアを集めました。
空室対策にお悩みの方は、ご自分だけで悩むよりも、数多くの物件を案内して、成約を見てきた不動産賃貸経営のプロフェッショナルである、不動産管理会社に相談しながらすすめていく方が、結果的には、ストレスの少ない賃貸経営に近づきます。