「家を貸すと個人事業主になるのか?」「税金はどうなる?」を解説|確定申告の仕方や個人の税金対策も

不動産の賃貸経営を始めた場合、オーナーは個人事業主に該当するのか気になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では「家を貸す」ことを検討している方向けに、貸し出す事に伴う「税務処理」についてできるだけ簡潔且つ・網羅的に解説し、概要を理解できるようにしています。
- 家を貸しても個人事業主にはならない
- 家を貸したときの所得税の計算方法
- 家を貸した際の確定申告の手順
- 家を貸すときにできる節税対策
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1.家を貸すと個人事業主になる?
ここでは、家を貸しても個人事業主にはならない理由を詳しく解説します。
1-1.不動産所得と事業所得の違い
個人が得られる所得は、収入の種類によって「給与所得」や「不動産所得」、「事業所得」、「譲渡所得」 等、10種類に分けられています。
一方で「事業所得」は、個人事業主が自身の事業やビジネスによって得る収入を指します。
個人事業主になるには「事業所得」で収入を得ていることが要件になるため、家を貸して家賃収入を得ているだけでは個人事業主として扱われません。
参考:国税庁|No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分
1-2.不動産所得の事業的規模とは
家を貸して収入を得ている場合、一定の規模以上になると「事業的規模」に該当し、確定申告において最高65万円の「青色申告特別控除」が適用できるようになります。
事業規模に該当するための具体的な条件は以下のとおりです。
〈事業的規模に該当する具体的な条件〉
- アパート等の住宅を貸している場合:おおむね10室以上である
- 一軒家等の独立した住宅を貸している場合:おおむね5棟以上である
ただし、事業的規模に該当した場合でも個人事業主には該当せず、所得の種類は「不動産所得」のままになります。
詳細を知りたい方は、国税庁が公開している以下のページもあわせてご覧ください。
参考:No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁
2.家を貸したときの所得税の計算方法
ここでは、家を貸したときの所得税の計算方法について解説します。
家を貸すときにかかる経費や所得税シミュレーションも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
2-1.所得税の計算方法
不動産所得も課税対象となるため、家賃収入によって利益が生じた場合は所得税の確定申告を行う必要があります。
所得税の計算方法は以下のとおりです。
<所得税の計算方法>
課税所得金額 × 税率 ー 控除額
詳しい税率や控除額については、国税庁が公開している以下のページを参照してください。
2-2.家を貸すときにかかる経費
家を貸すときにかかる費用は経費として計上できます。
主な経費の例は以下のとおりです。
<家を貸すときにかかる経費>
項目 | 費用相場 |
---|---|
仲介手数料 | 家賃の半額~1か月分程度 |
管理委託料 | 家賃の5~15% |
リフォーム費・原状回復費 | 2万円〜(間取り・平米数・室内の状況によって変動) |
修繕費・管理費 | 修繕費:平均1万2,268円/月(修繕費は毎月一定額を積み立てるのが一般的) 管理費:平均1万5,958円/月 |
上記以外にも、固定資産税や所得税といった税金も経費として扱われます。
2-3.所得税シミュレーション
ここでは、以下の条件を例に所得税額をシミュレーションしてみましょう。
<所得税シミュレーションの条件>
項目 | 内容 | |
---|---|---|
収入 | 家賃 | 15万円/月 |
管理費 | 2万円/月 | |
給与所得 | 600万円/年 | |
必要経費 | 固定資産税・都市計画税 | 10万円/年 |
減価償却費 | 10万円/年 | |
修繕費用・管理費用 | 15万円/年 | |
損害保険料 | 2万円/年 | |
住宅ローンの利子分 | 10万円/年 | |
合計所得金額 | 757万円/年 |
改めて、所得税は以下の計算方法で求められます。
<所得税の計算方法>
課税所得金額 × 税率 ー 控除額
上記の計算式に当てはめると、所得税は以下のように計算できます。
757万円(課税所得金額) × 23%(税率) ー 63万6,000円(控除額)
なお、実際には所得税の税率23%に住民税の税率10%を加えた33%を乗じて税金が計算されるので、ご注意ください。
3.家を貸した際の確定申告の手順
家を貸したことによる不動産所得が年間20万円を超えた場合は、自分で確定申告を行わなければなりません。
家を貸した際の確定申告の手順は以下のとおりです。
〈家を貸した際の確定申告の手順〉
確定申告では前年1月1日から12月31日までの所得が対象となるため、収入と必要経費から不動産所得を算出する必要があります。
また、毎年2月16日から3月15日までに確定申告書を作成して税務署に提出しなければなりません。
確定申告を行った結果、納税の必要が生じた場合は原則3月15日までに納付してください。
白色申告では最大10万円の所得控除しか受けられないものの、青色申告では最大65万円の所得控除を受けることが可能です。不動産所得を青色申告として申告するためには、事業的規模として認められる必要があります。
しかし不動産の賃貸経営では事業的規模に該当しないことが多いため、青色申告が選択できないケースが一般的です。
4.家を貸すときにできる節税対策
家を貸すときにオーナーができる節税対策は以下のとおりです。
〈家を貸すときにできる節税対策〉
ここでは、それぞれの対策について詳しく解説します。
4-1.経費をしっかり計上する
不動産所得は家賃収入から必要経費を差し引いて計算するため、経費が計上されていれば所得を減らして節税につなげられます。
自宅の一部を賃貸物件として貸し出している場合や、賃貸経営で発生する経費の一部を私生活でも使用している場合には、「家事按分」の適用が可能です。
家事按分は経費を事業用と私的利用に分けて計上する方法で、たとえば光熱費・通信費・家賃の一部なども事業用の経費として計上できます。
支出が経費として認められるか迷う場合には、不動産会社や税理士に相談してみるとよいでしょう。
4-2.損益通算
損益通算とは、異なる所得の損失を相殺して税負担を軽減する手法です。
不動産所得が赤字の場合、給与所得や事業所得などほかの所得と合算し、全体の課税所得を少なくできます。
たとえば空室期間の長期化で賃貸物件の経費が収入を上回り、不動産所得がマイナスになった場合、赤字を給与所得から差し引けます。
ただし、損益通算には一定の条件があるため、詳細については税務署や税理士に相談しましょう。
まとめ
家を貸して収入を得た場合でも、個人事業主としては扱われません。
個人事業主になるには事業所得を得る必要があり、家賃収入は不動産所得に該当するため、要件を満たさないことになります。
ただし、給与所得以外の所得が年間20万円以上になれば確定申告が必要となるため、節税対策を行いながら、必ず決められた期日内に確定申告をするようにしてください。
この記事のまとめ
家を貸すと個人事業主になる?
以下2つの理由から、家を貸しても個人事業主にはなりません。
- 不動産所得と事業所得の違い
- 不動産所得の事業的規模とは
詳細は「1.家を貸すと個人事業主になる?」にて解説しています。
家を貸した際の確定申告の手順
家を貸した際の確定申告の手順は以下のとおりです。
- 不動産所得の計算(収入ー経費)をする
- 確定申告書の作成・提出する
- 所得税を納税する
詳細は「3.家を貸した際の確定申告の手順」にて解説しています。
家を貸すときにできる節税対策
家を貸すときにできる節税対策は以下のとおりです。
- 経費をしっかりと計上する
- アパートの資産価値
- 損益通算を行う
詳細は「4.家を貸すときにできる節税対策」にて解説しています。