農地売却の税金は?特別控除やシミュレーションを徹底解説!

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農地売却の税金は?特別控除やシミュレーションを徹底解説!

農地は売却すると売却価格の2割弱程度の税金が生じるのが一般的です。
税金の負担額が大きいことから、節税対策を検討している方も多いのではないでしょうか。

一定の要件を満たす農地売却では、節税できる特別控除もあるため、どのようなときに控除の特例を利用できるかを知っておくことがポイントです。

そこでこの記事では「農地売却の税金」について解説します。
農地を売却したときに生じる税金や計算方法、特別控除による税金対策、税金計算シミュレーション等について紹介します。
ぜひ最後までおつきあいいただき、税金対策にお役立てください。

1.農地を売却したときに生じる税金

まずは、農地を売却したときに生じる以下の3点の税金について解説します。

(1) 所得税および住民税
(2) 印紙税
(3) 登録免許税

それではひとつずつ見ていきましょう。

1-1.所得税および住民税

所得税および住民税は、所得に対して課される税金です。
農地のような不動産を売却すると、「譲渡所得」と呼ばれる所得が生じます。

通常、所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税率が適用されますが、譲渡所得に関しては他の所得と分離して税金が課税されます。
他の所得と合算せずに個別に税金が課される制度を分離課税と呼びます。

所得税および住民税は譲渡所得に対し、個別に定められた税率を乗じて求めます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は、売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは長期譲渡所得、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは短期譲渡所得と分類されます。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

所有期間が5年超の物件は長期譲渡所得とされ、売却時の税率が下がるという点がポイントです。

所有期間に関しては、相続で引き継いだ農地は親の所有期間も引き継ぐことになります。
例えば、親の所有期間が5年超である農地の場合、相続後、すぐに売却しても長期譲渡所得の税率が適用できます。

1-2.印紙税

農地の売却では、売買契約書に印紙を貼るため印紙税が生じます。

印紙税の額は、売買契約書に記載する売買金額により、下表のように定められています。軽減税率適用期間内であれば、表中の右側に記載された印紙を貼り付けます。

契約書に記載する売買金額 本則 軽減税率※
1万円未満 200円 非課税
1万円以上10万円以下 200円 200円
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円
金額の記載のないもの 200円 200円

※2014年4月1日~2022年3月31日まで

1-3.登録免許税

売却する農地に抵当権が設定されている場合、抵当権抹消の登録免許税が発生します。
抵当権とは、債権者(銀行のこと)が優先的に弁済を受けることができる権利のことです。
農地を担保に入れて、お金を借りている場合は抵当権が設定されていることがあります。

抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
農地1筆(筆とは土地の単位のこと)あたり1,000円となり、例えば3筆に渡って抵当権が設定されている場合は3,000円の登録免許税が生じることになります。

2.譲渡所得の計算方法

譲渡所得の計算方法この章では譲渡所得の計算方法について解説します。
譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額は売却価額です。
取得費とは、農地の購入額になります。
譲渡費用は、仲介手数料や印紙税などの売却に直接要した費用のことです。

譲渡所得とは売却価額のことではなく、売却価額から取得費および譲渡費用を差し引いたものであることがポイントとなります。

取得費は購入額になりますが、農地の場合、先祖から引き継いでいる物件がほとんどであるため、購入額が不明となっているケースが多いです。

購入額が不明の場合には「概算取得費」と呼ばれるものを用います。
概算取得費とは、「譲渡価額の5%」です。

概算取得費を用いることで、譲渡所得は大きく算出されてしまい、その結果、税金も大きくなってしまうという特徴があります。

譲渡費用の中には、土地改良区に支払われた農地転用決済金等も含めることができます。
土地改良区とは、ほ場(ほじょう・田んぼのこと)整備や、農業用のため池・水路等の様々な土地改良施設の維持や管理を行っている団体のことです。

3.農地の種別と農地転用の可否

この章では、農地の種別と農地転用の可否について解説します。
農地は勝手に売却することは許されず、原則として許可が必要です。

農地の売却では「農地を農地として売る方法」と「農地を転用して売る方法」の2種類があります。
転用とは、農地を農地以外にするということです。

農地の売却許可は、農地法により以下のように定められています。

名称 内容 許可権者
3条許可 農地を農地として売る方法 農業委員会※1
5条許可 農地を転用して売る方法 都道府県知事(原則)
指定市町村の長(例外)※2

※1:農業委員会とは、市町村に設置された農地事務を担う行政委員会のことです。
※2:指定市町村は、農林水産大臣が指定した市町村を指します。

農地売却の許可は、農地法3条と5条に定められていることから、農地を農地として売る方法は「3条許可」、農地を転用して売る方法は「5条許可」と呼ばれます。

ただし、市街化区域内において農地を転用して売る場合には、許可ではなく届出だけで良いことになっています。

市街化区域とは、都市計画法で定められた「すでに市街地を形成している区域および概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」のことです。

農地法は農地を守るための法律であるため、農地を農地として売る場合には、3条許可を取ればどこでも売却することが可能です。

一方で、農地を転用して売るには、「転用ができる農地」と「転用ができない農地」が存在します。

農地の種別と農地転用の可否については下表の通りです。

種別 定義 許可の方針
農用地区区域内農地 市町村が定める農業振興地域整備区域内において農用地区域とされた農地 原則不許可
甲種農地 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等の特に良好な営農条件を備えている農地 原則不許可
第1種農地 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等の良好な営農条件を備えている地域 原則不許可
第2種農地 鉄道の駅が500m以内にある等の市街地化が見込まれる農地または生産性の低い小集団の農地 周辺の他の土地に立地することができない場合等は許可
第3種農地 鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域または市街化の傾向が著しい区域にある農地 原則許可

「農用地区区域内農地」と「甲種農地」、「第1種農地」に関しては転用そのものが認められないため、5条許可による売買はできず、3条許可による売買のみとなります。

「第2種農地」に関しては、条件によっては転用が認められ、5条許可による売買が可能です。
「第3種農地」であれば転用が認められるため、5条許可による売買ができることになります。

4.特別控除による税金対策

この章では、「特別控除による税金対策」について以下の4点を解説します。

(1)農地保有合理化等の800万円特別控除
(2)買入協議による1,500万円特別控除
(3)農用地利用規程に基づく2,000万円特別控除
(4)土地収用による5,000万円特別控除

それではひとつずつ見ていきましょう。

4-1.農地保有合理化等の800万円特別控除

農用地区域内の農地を売却した場合、一定の要件を満たすと農地保有合理化等の800万円特別控除が適用可能です。

農用地区域とは、農業振興地域内における集団的に存在する農用地や、土地改良事業の施行にかかる区域内の土地などの生産性の高い農地等、農業上の利用を確保すべき土地として指定された農地のことです。
農業振興地域は、今後、相当期間(概ね 10 年以上)にわたり、総合的に農業振興を図るべき地域のことを指します。

800万円特別控除を適用した場合、譲渡所得は以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 800万円

800万円特別控除が適用できるケースは、以下の3つのケースがあります。

(1)勧告に係る協議、調停又はあっせんにより売却した場合

勧告に係る協議、調停又はあっせんにより売却した場合

(2)農地中間管理機構に売却した場合

農地中間管理機構に売却した場合

農地中間管理機構とは、通称、「農業バンク」のことであり、都道府県に設置された信頼できる農地の中間的受け皿を担う組織のことです。

(3)農用地利用集積計画により売却した場合

農用地利用集積計画により売却した場合

農用地利用集積計画とは、農業者等から申出のあった売却等の内容が、農業経営基盤強化促進基本構想に合致する場合に市町村が作成する計画を指します。

800万円特別控除は、「農業委員会のあっせん」や「農地中間管理機構の事業の特例」、「農用地利用集積計画」等を活用して譲渡した場合に利用できます。

いずれも、買主は最終的に「意欲のある農業者」への売却であり、農地を農地として売る場合に適用できる特例です。

4-2.買入協議による1,500万円特別控除

買入協議による1,500万円特別控除とは、農業経営基盤強化促進法に基づき市町村長が通知する農地中間管理機構との買入協議により、農用地区域内の農地を農地中間管理機構に譲渡した場合に適用できる特例です。

買入協議による1,500万円特別控除を適用した場合、譲渡所得は以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 1,500万円

買入協議による1,500万円特別控除を適用できるケースは下図の通りです。

農業経営基盤強化促進法に基づく買入協議により農地中間管理機構に売却した場合

買入協議による1,500万円特別控除を適用できるケース

4-3.農用地利用規程に基づく2,000万円特別控除

農用地利用規程に基づく2,000万円特別控除とは、農業経営基盤強化促進法に基づく農用地利用規程に基づき農用地区域内の農地を農地中間管理機構に譲渡した場合に適用できる特例です。

農用地利用規程に基づく2,000万円特別控除を適用した場合、譲渡所得は以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 2,000万円

農用地利用規程に基づく2,000万円特別控除を適用できるケースは下図の通りです。

農業経営基盤強化促進法の特例農用地利用規程に基づき農地中間管理機構に売却した場合

農用地利用規程に基づく2,000万円特別控除を適用できるケース

農用地利用規程とは、農用地利用改善団体が農用地利用改善事業を実施する場合において、実施内容等を定めた規定です。

農用地利用改善団体は、「集落等の地縁的なまとまりのある区域内の農用地の所有者・利用者等で構成する団体で、その区域内における農作業の効率化や農地の利用関係の改善等の農用地利用改善事業を実施する団体」のことを指します。

4-4.土地収用による5,000万円特別控除

土地収用による5,000万円特別控除とは、農地が土地収用等により売却される場合に適用できる特例です。

土地収用による5,000万円特別控除を適用した場合、譲渡所得は以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 最大5,000万円

農地が道路建設等の公共事業施行者によって買い取られた場合は、転用であっても最大5,000万円までの控除をすることが可能です。

【農林水産省HP】

5.税金計算シミュレーション

この章では税金計算シミュレーションについて解説します。

(条件)

面積:2ha(20,000平米)
売却価格単価:1,500円/平米
取得費:不明
所有期間:5年超(長期譲渡所得)
譲渡費用:100万円
適用できる特別控除:なし

(税金シミュレーション)

譲渡価額 = 面積 × 売却価格単価
     = 20,000平米 × 1,500円/平米
     = 3,000万円

取得費 = 概算取得費
    = 譲渡価額 × 5%
    = 3,000万円 × 5%
    = 150万円

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 3,000万円 - 150万円 - 100万円
     = 2,750万円

所得税 = 譲渡所得 × 15%(長期譲渡所得)
    = 2,750万円 × 15%
    = 412.5万円

復興特別所得税 = 所得税 × 2.1%
        = 412.5万円 × 2.1%
        ≒ 8.7万円

住民税 = 譲渡所得 × 5%(長期譲渡所得)
    = 2,750万円 × 5%
    = 137.5万円

税金 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
   = 412.5万円 + 8.7万円 + 137.5万円
   = 558.7万円

558.7万円は、売却価格3,000万円に対し、約18.6%となります。
農地の売却では所有期間が5年超で、かつ、取得費が不明なケースが多いため、特別控除を利用できないケースでは税金は売却価格の2割弱の金額が生じるケースが多いです。

6.相続税の納税猶予を受けている農地売却の注意点

相続税の納税猶予を受けている農地を売却したときは、その農地等納税猶予税額の全部又は一部を納付する必要があります。

納税猶予とは、一定の要件を満たす農地を相続または贈与を受けた場合、相続税や贈与税の納税を猶予できる制度です。

「免除」ではなく、「猶予」であるため、猶予の要件が満たされなくなった場合は、相続税等を納めなければならなくなります。

納税猶予は、農業を継続している限り適用を受け続けることができますが、農業をやめた場合には取り消されます。
農地を売却することは農業をやめたこととみなされるため、納税猶予が取り消されることになるのです。

【国税庁HP】

まとめ

いかがでしたか。
農地売却の税金について解説してきました。

農地の売却では、譲渡所得が生じると主に所得税と住民税が生じます。
取得費が不明の場合には、概算取得費を用いて譲渡所得を計算します。

農地の売却では、農地保有合理化等の800万円特別控除等の特別控除があります。
また、相続税の納税猶予を受けている場合には、売却時に相続税等が生じます。
農地を売却する場合には、控除の特例の要件をしっかり調べた上で実行するようにしてください。

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